- 規則を意識させる明示的な指導は、規則を意識させない指導より大きな成果を示した研究の統合があります。
- 後の統合では指導全体の効果は大きい一方、明示的か暗示的かによる差は小さく、学ぶ前の状態や指導の密度も関係しました。
- 規則への気づきが増えても、新しい文を作る成績や文の正誤を判断する成績に差が出ない実験もあります。
- 家庭では、説明を再現する力と、手本なしで文を使う力を分けて記録し、説明と練習の配分を見直します。
英文法は規則を先に教わるべきか|明示的な文法指導と塾での英語の研究
子ども部屋の机で英文法の問題を前に手が止まったとき、規則を説明し直すのと、似た例文を見せるのとでは、どちらが助けになるのでしょうか。武蔵境で英語を学ぶ場を探す保護者にとっても、説明を丁寧にする授業と、英文に触れる時間を多く取る授業の違いは気になるところです。子どもが「説明はわかるけれど、問題になると迷う」と話すなら、説明のわかりやすさに加えて、その後に何をしているかを見る必要があります。
規則を意識させる指導には支持する研究がありますが、すべての文法で説明を先に長く行うと決めるより、短い説明と例文を使う練習の順番・配分を調整するのが判断の軸になります。 規則を言葉で説明することと、初めて見る文で使うことは、別々に確かめたい成果です。例文を見た後に規則を整理する学び方もあり、「説明か例文か」という選択だけでは授業の中身を捉えきれません。
研究を読むときにも、規則への気づきを調べたのか、文を作る力を調べたのかで結論の意味が変わります。保護者が見たいのは、説明を聞いた直後のうなずきだけでなく、手本が変わっても文の形を選べるようになったかという変化です。その違いを踏まえて、研究の比較と家庭での確かめ方をつなげていきます。
要点
- 規則を意識させる明示的な指導は、規則を意識させない指導より大きな成果を示した研究の統合があります。
- 後の統合では指導全体の効果は大きい一方、明示的か暗示的かによる差は小さく、学ぶ前の状態や指導の密度も関係しました。
- 規則への気づきが増えても、新しい文を作る成績や文の正誤を判断する成績に差が出ない実験もあります。
- 家庭では、説明を再現する力と、手本なしで文を使う力を分けて記録し、説明と練習の配分を見直します。
英文法の教え方を中学生の学習に結びつける前に
明示的な文法指導とは、学習者が規則に意識を向けるように教えることです。たとえば文の形が変わる理由を説明し、どこを見ればその形を選べるか示します。暗示的な指導は、規則そのものを説明するより、英文を理解したり使ったりする活動を通じて学ばせる方法です。説明をする人がいるかどうかだけでなく、子どもの注意を規則へ向けるかどうかが区別の中心になります。
この区別と「規則を先に教えるか」は重なりますが、同じ問いではありません。例文を比べて違いに気づいた後、規則を言葉にする授業も明示的な学びを含みます。反対に、規則を先に読んでも、子どもが意味を捉えず書き写すだけなら、家庭で確かめたい理解とは距離があります。授業を見る際は、説明の位置だけでなく、子どもが何に気づき、その気づきを何に使うのかまでたどると整理しやすくなります。
例文に多く触れることも、暗示的な指導だけの特徴ではありません。規則の説明がある授業でも、例文を読み、形を変え、別の意味を表す練習は組み合わせられます。説明が丁寧だから英文に触れる量は少なくてよい、例文が多いから説明は不要だと、互いを打ち消す関係にする必要はありません。説明と例文がどのようにつながっているかを、授業の流れとして見ることが大切です。
保護者が「文法を身につけてほしい」と考えるときには、その中身も具体化します。空欄に合う形を選ぶこと、誤りの理由を説明すること、伝えたい内容に合わせて文を作ることでは、求められる働きが違います。学校の課題で困っているのがどの場面かを押さえれば、説明を増やすべきか、使う練習へ進むべきかを考えやすくなります。方法の名前よりも、目の前の課題と練習が対応しているかを見ます。
規則を意識させる指導を支持する研究
Norris・Ortega(2000)は、母語以外の言語を学ぶ際の指導について、1980〜1998年に公表された研究を調べ、必要なデータのある49研究を統合しました。メタ分析という方法で、別々の言語指導の研究結果を集めて計算し直し、全体の傾向を調べています。学ぶ項目を絞った指導には大きな成果があり、平均的には明示的な指導が暗示的な指導を上回りました。ここでの比較は、規則を意識させる指導と、意識させずに学ばせる指導の違いに注目しています。
この結果を家庭の困りごとに結びつけるなら、子どもが例文のどこを見ればよいか迷っている場合に、着目点を言葉で示す選択肢が浮かびます。たとえば過去の出来事を表す文で迷うなら、出来事の時点と動詞の形を対応させて確認します。文全体を繰り返し眺めるだけで終わらず、変わる部分に注意を向けるための説明です。説明の長さではなく、次の問題で使える手掛かりになっているかが重要になります。
Spada・Tomita(2010)は、英語の単純な文法事項と複雑な文法事項について、41研究をまとめました。正しい形を選ぶために必要な判断条件の数で文法事項を分けたところ、どちらでも明示的な指導の効果量が大きいという結果でした。効果量は、成果の差をばらつきを物差しにして表した数です。同研究は、規則を意識して答える知識だけでなく、文の形を自発的に使うことへの寄与も示唆しています。
この比較からは、複雑な文法だから説明を避ける、単純な文法なら例文を見せるだけで足りる、と最初から分ける必要は薄いと読めます。むしろ説明した規則と、子どもが目の前で選ぶ形の対応を確かめるほうが具体的です。説明を受けた後に、例文のどの部分が規則に当たるか本人が示せれば、練習を進める手掛かりになります。説明を聞き終えることを区切りにせず、本人が判断する場面まで含めて授業を見るのです。
指導全体の大きな効果と、説明の有無による差を分ける
Kang・Sok・Han(2019)は、1980〜2015年の54研究、5,051人の学習者を対象に、言語の形に注意を向ける指導の効果をまとめました。指導全体の効果量はg = 1.06と大きい一方、明示的な指導と暗示的な指導の差は小さいという結果でした。gは効果量を表す記号です。この値は指導全体についてまとめた値であり、規則を説明した組が説明しない組を上回った幅として読む数値ではありません。
同じKang・Sok・Han(2019)の分析では、成果の測り方、学び始めの習熟度、研究の実施場面、指導の密度によって効果が変わりました。したがって、説明を取り入れているという情報だけより、学習者がすでに何を知っているか、どのように練習を重ねるかも見る意味があります。明示的な指導を支持する研究と、この分析とでは、集めた研究の範囲や比較条件が違います。古い結果を消して新しい結果だけ採るのではなく、説明の有無だけで成果が決まるという見方を調整する材料になります。
研究の数字を読む際は、「何かを教えた効果」と「教え方を替えた効果」を分けると混乱が減ります。ある指導で学習後の成果が高くても、別の指導でも同じ程度に高ければ、その教え方だけの優位性は小さくなります。家庭でも、問題が解けるようになったことと、説明を先にしたから解けたことは分けて記録します。前者は子どもの成果として受け止め、後者を考える際には練習量や問題の難しさを照らし合わせます。
| 比較の焦点 | 研究の結果 | 比べた相手・条件 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 規則を意識させる指導の優位性 | Norris・Ortega(2000)では明示的な指導の平均的な成果が大きい | 明示的な指導と暗示的な指導 | 母語以外の言語を学ぶ人の研究 |
| 文法の複雑さによる違い | Spada・Tomita(2010)では単純・複雑の両方で明示的な指導が有利 | 文法事項を分けたうえで指導法を比較 | 英語の文法を学ぶ人の研究 |
| 説明の有無による差の大きさ | Kang・Sok・Han(2019)では差は小さい | 明示的・暗示的という指導の分類 | 母語以外の言語を学ぶ人の研究 |
| 気づきと文を使う成果の違い | Lichtman(2016)では気づきに差があり、文を作る成績には差がない | 同じ人工言語を明示的または暗示的に学ぶ条件 | 子どもと大人 |
規則に気づくことと、新しい文を作ることの違い
Lichtman(2016)は、子どもと大人に、実験用に作った小さな言語を教えました。規則を意識させる条件と、意識させない条件を比べると、明示的に学んだ組では言語の仕組みへの気づきが増えました。一方、新しい文を作る課題と、文法的に正しいか判断する課題の成績は、どちらの条件でも同程度でした。気づきの違いと、実際の課題で現れる違いが一致しなかった実験です。
この結果は、説明を理解した様子を見て、学習のすべてが済んだと判断しないための材料になります。規則を口にできたら、その規則を使う別の文にも取り組んでみます。手本を写すときには止まらなくても、主語や出来事が変わると迷うなら、変わった条件を見て選ぶ練習に焦点を置けます。規則をもっと詳しく言い直す前に、どこで判断が止まるかを見つけるという順番です。
家庭での確認では、選択肢のある問題と、手掛かりを減らした問題を分けて残すと、変化を見やすくなります。たとえば正しい形を選べた後、同じ文法を使って身近な出来事を表す文を作ってもらいます。そこで語が出てこないなら単語を補い、文の形で迷ったなら使う規則を一緒に確かめます。止まった場所を記録することで、語彙の問題まで文法の説明不足として扱うことを避けられます。
答えを出す速さだけで判断する必要もありません。説明を思い出してゆっくり答えたのか、例文をそのまま思い出したのか、場面に合わせて形を選んだのかを、本人の言葉で聞き取ります。その際、文法用語を正確に言わせることを目的にしないほうが、判断の手掛かりを捉えやすくなります。「今の文のどこを見て決めたのか」という聞き方なら、正解かどうかとは別に考えた道筋を残せます。
説明を増やすと負担になる場面を見分ける
ここからは、研究の比較をもとに家庭で試す際の観察の提案です。規則を説明する方法でも、説明が重なるうちに子どもがどの例文の話かわからなくなる場面には注意が要ります。文法用語を覚える作業が増え、実際に文を使う時間が減っているなら、説明を追加する前に区切るとよいでしょう。説明を短くし、その場で例文の該当箇所を示してもらう形に変えます。
反対に、例文を続けて見ても同じ場所で迷い続ける子には、着目点のないまま量を増やす方法が合わないことがあります。その場合は、文が表す意味と、変化する形を結びつけて示します。例文を丸ごと覚えているのか、別の文でも規則を使えているのかを分けて見ます。本人が迷う場所を示せれば、教える側も説明する範囲を絞りやすくなります。
避けたい逆方向の変化は、正確な説明を求めるあまり、子どもが文を作ること自体をためらうようになることです。家庭でその様子が出たら、説明を言い切るまで先へ進ませるというやり方を見直します。文の意味が伝わる部分を受け止めてから、今扱っている文法に関係する形を確認します。間違いのすべてをその場で扱うより、今回の練習で見たい点を親子で共有するほうが、記録も明確になります。
また、説明がわかりやすいという子どもの感想は、学習の入口を知るうえで大切です。その感想と、別の問題を解いた結果を並べて残すと、理解した感覚から実際の使用へつながったかが見えてきます。規則の説明を好む子も、例から考えたい子も、成果を確かめながら順番を変えられます。最初の反応だけで、その子に合う方法を固定しない進め方です。
家庭では説明と例文の順番・配分を記録する
まず、学校で扱っている文法のうち、迷った問題を取り上げます。本人に答えを選んだ理由を聞き、規則を思い出せないのか、語の意味が難しいのか、どの規則を使うかで迷うのかを分けます。この段階で、別の教材へ広げるより、今使っている問題と説明を対応させます。比べたい困りごとが定まると、練習後にどこが変わったかも見やすくなります。
規則の見通しが立たない場合は、短い説明を読んでから例文の形を確かめます。説明の言葉で混乱する場合は、意味を理解できる例文を先に比べ、共通点が見えたところで説明へ戻ります。どちらでも、その後に手本とは内容の違う文へ進み、本人が形を選ぶ場面を設けます。保護者が答えを誘導した部分は記録し、手助けなしで答えた部分と区別します。
記録は採点表だけにせず、学習の流れが後からたどれる形にします。説明から始めたのか、例文から始めたのかに加えて、止まった場所と役立った手掛かりを書きます。別の日には、答えを覚えた同じ問題だけでなく、同じ文法を使う別の文を見ます。練習が増えたことや慣れたことも含め、どんな条件で使いやすくなったかを確かめます。
塾での学習について話す際も、この記録があると相談が具体的になります。「説明を増やしてほしい」だけでなく、どの説明の後にどの文で迷ったかを伝えられます。題名の問いへの答えは、規則を先に示す方法を有力な出発点としつつ、先に示すこと自体を目的にしない、というものです。子どもが次の文で使える手掛かりを残せたかを見ながら、説明と例文の配分を整えていきます。
よくある質問
規則を言葉で説明できれば、文法は身についたと考えてよいですか
説明できることは成果ですが、手本と内容の違う文で使えるかも確かめたいところです。Lichtman(2016)の実験でも、規則への気づきの増加と、文を作る成績の差は一致しませんでした。家庭では、理由を話してもらう課題と、自分で文の形を選ぶ課題を分けて残します。説明が上手になった部分を認めながら、使う段階で必要な練習を探します。
文法が苦手なら、例文だけを増やすほうがよいですか
同じ形のどこで迷っているのかを先に見ます。例文の意味は理解していても、変わる部分に気づいていなければ、着目点を短く示す方法が考えられます。逆に説明の用語で止まっているなら、意味のわかる例文を見てから規則へ戻る進め方を試せます。例文の量と説明の量を一緒に増やすより、迷い方に対応させることを優先します。
保護者が英文法を詳しく教えられなくても記録できますか
保護者が新しく解説を作る必要はありません。学校で使う教材の説明を本人と読み、どこを見て答えたか、どの言葉で迷ったかを残すだけでも相談の材料になります。正しい形の理由で親子の判断が割れたら、その箇所を学校の先生や学習を支える人に尋ねます。家庭では、説明する役を引き受けすぎず、学びの変化を見つける役割を持てます。
この記事の限界
比較に含まれる学習者の国・年齢や指導期間は研究ごとに異なり、海外を含む母語以外の言語学習の知見と、人工言語を使った実験が中心で、日本の中学生の塾で説明を先に置く順序を直接検証した比較ではありません。Norris・Ortega(2000)が指摘する測定方法の影響にも注意が必要で、規則を意識して使う問題に評価が偏ると、明示的な指導が有利に見えやすくなります。
家庭で示した手順は、研究で確立された個別の処方ではなく、本人の迷い方を観察して相談につなげるための提案です。理解の難しさが続く場合は、単語の読みや意味の理解も含め、学校の先生や必要に応じて専門家と、具体的な答案をもとに学習の進め方を検討します。 今迷っている英文では、規則の説明と意味のわかる例文のどちらが、本人の次の答えを支えていますか。
参考文献
- Norris JM, Ortega L. Effectiveness of L2 Instruction: A Research Synthesis and Quantitative Meta-analysis. Language Learning. 2000;50(3):417-528. doi:10.1111/0023-8333.00136
- Spada N, Tomita Y. Interactions Between Type of Instruction and Type of Language Feature: A Meta-Analysis. Language Learning. 2010;60(2):263-308. doi:10.1111/j.1467-9922.2010.00562.x
- Kang EY, Sok S, Han Z. Thirty-five years of ISLA on form-focused instruction: A meta-analysis. Language Teaching Research. 2019;23(4):428-453. doi:10.1177/1362168818776671
- Lichtman K. Age and learning environment: Are children implicit second language learners? Journal of Child Language. 2016;43(3):707-730. doi:10.1017/S0305000915000598
わからなくなった単元まで、講師と二人で戻ってやり直す。
- 向く人: 集団授業で質問できないまま進み、どこでつまずいたのか分からなくなった中学生・高校生
- 向く人: 苦手な科目を、つまずいた単元まで戻って一対一でやり直したい人
- 向かない人: 大勢と競い合う中で力が出る子や、集団授業の速い進度を求める人
- 向かない人: 塾に通うだけで成績が変わると考え、家で手を動かす時間を取れない人
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よくある質問
規則を言葉で説明できれば、文法は身についたと考えてよいですか
説明できることは成果ですが、手本と内容の違う文で使えるかも確かめたいところです。Lichtman(2016)の実験でも、規則への気づきの増加と、文を作る成績の差は一致しませんでした。家庭では、理由を話してもらう課題と、自分で文の形を選ぶ課題を分けて残します。説明が上手になった部分を認めながら、使う段階で必要な練習を探します。
文法が苦手なら、例文だけを増やすほうがよいですか
同じ形のどこで迷っているのかを先に見ます。例文の意味は理解していても、変わる部分に気づいていなければ、着目点を短く示す方法が考えられます。逆に説明の用語で止まっているなら、意味のわかる例文を見てから規則へ戻る進め方を試せます。例文の量と説明の量を一緒に増やすより、迷い方に対応させることを優先します。
保護者が英文法を詳しく教えられなくても記録できますか
保護者が新しく解説を作る必要はありません。学校で使う教材の説明を本人と読み、どこを見て答えたか、どの言葉で迷ったかを残すだけでも相談の材料になります。正しい形の理由で親子の判断が割れたら、その箇所を学校の先生や学習を支える人に尋ねます。家庭では、説明する役を引き受けすぎず、学びの変化を見つける役割を持てます。