- 都立一般入試は当日700点+調査書300点+ESAT-J 20点。内申の比重はおよそ3割。
- 実技4教科は2倍換算。換算内申1点=総合およそ4.6点に相当する。
- 評定は観点別評価(A/B/C)から決まる。点数ではなく落としている観点を特定する。
- 対策は学校別・教員別に設計する。塾選びでは定期テスト過去問の保有年数を確認する。
まず仕組み:都立高校入試で内申はどれだけ効くのか
「内申が足りない」という言葉は中学校でも塾でもよく聞きますが、その重みを数字で把握している家庭は多くありません。東京都立高校の一般入試(第一次募集)の判定は、原則として次の配点で行われます。
| 要素 | 配点 | 中身 |
|---|---|---|
| 学力検査 | 700点 | 当日の5教科(各100点=500点満点)を700点に換算 |
| 調査書点 | 300点 | 中学3年の9教科の評定から算出(換算内申を300点に換算) |
| ESAT-J(英語スピーキングテスト) | 20点 | 中3で受験した結果を加点 |
| 合計 | 1020点 | — |
比率にすると、当日点:調査書点はおよそ7:3です。ここで重要なのが「換算内申」という考え方です。調査書点のもとになる評定は、次のように計算されます。
換算内申=学力検査を行う5教科(国・数・英・社・理)の評定合計+実技4教科(音楽・美術・保健体育・技術家庭)の評定合計×2(最大 5×5+5×4×2=65)
つまり、実技4教科は入試において2倍の重みを持ちます。オール4の生徒が実技だけオール5になると、換算内申は4点上がります。300点満点への換算では1点あたり約4.6点ですから、実技4教科を1ずつ上げるだけで、当日点に換算しておよそ18点分に相当します。5教科の勉強時間を増やすより、実技の提出物を丁寧にやり直すほうが効率がよい、という場面は実際にあります。
制度は年度ごとに変更されることがあります。ESAT-Jの扱いや推薦入試の配点を含め、最新の実施要領は必ず東京都教育委員会の公表資料でご確認ください。ここでの説明は仕組みの理解を目的とした概説です。
評定はどうやって決まるのか——観点別評価という現実
現在の中学校の成績(評定1〜5)は、いきなり5段階が付くのではなく、まず観点ごとに A・B・C の評価が付き、それをもとに評定が決まります。観点は全教科共通で次の3つです。
- 知識・技能:用語や解法を覚えているか、技能として使えるか。定期テストの基本問題、実技の技能テストなどで測られます。
- 思考・判断・表現:条件を整理して説明できるか、資料から読み取って書けるか。記述問題、レポート、作品制作で測られます。
- 主体的に学習に取り組む態度:振り返りシート、提出物、授業内での改善行動など。「挙手の回数」ではなく、記録として残るものが中心です。
ここが、点数を取っているのに評定が伸びない生徒の分かれ目になります。定期テストで80点を取っていても、「思考・判断・表現」に対応する記述問題を白紙で出していれば、その観点はBやCで止まります。逆に、テストが平均点でも、提出物とレポートが安定していると評定4がつくことがあります。
したがって、内申が上がらないときにまず必要なのは、勉強時間を増やすことではなく「どの観点で落としているのか」を特定することです。通知表の観点別評価(A・B・C)を3学期分並べれば、教科ごとの弱点はかなり見えます。
武蔵野市の中学校で内申が伸びにくいと言われる理由
武蔵野市には第一中学校から第六中学校までの市立中学校があり、地域や学校によって定期テストの難度・進度・評価の傾向に差があります。保護者のあいだで「武蔵野市は内申が辛い」と言われることがありますが、これには制度的な背景と、地域的な背景の両方が関係しています。
絶対評価でも学校差は生まれる
現在の評定は相対評価(上位何%が5、という割り当て)ではなく、目標に到達しているかで判断する絶対評価です。ただし「どの水準を到達とみなすか」は各学校・各教員の運用に委ねられる部分があり、難度の高いテストを課す学校では、同じ学力でも評定が付きにくくなります。
学力層が厚い地域ほど、平均点が高くなる
教育熱心な家庭が多い地域では、定期テストの平均点が高くなりがちです。平均点が70点を超えるテストで70点を取っても、それは「平均並み」の評価にとどまります。同じ70点でも、地域や学校が変われば評価は変わり得ます。この不公平感が「内申が辛い」という実感につながっています。
対策の入口は「学校ごとの出題傾向」
ここから導かれる実務的な結論はシンプルです。内申対策は、学校別・教科別・担当教員別に設計しないと効きません。市販の問題集を一律にやるより、その学校の過去数年の定期テストで繰り返し出ている形式(記述の分量、資料の読み取りの有無、教科書の章末問題からの出題率)を把握したほうが、はるかに再現性があります。
武蔵境駅周辺には、学校別の定期テスト対策を掲げる個別指導塾が複数あります(駅周辺12校の比較はこちら)。教室を選ぶときは、「対策します」という言葉ではなく、お子さんの通う中学校の過去問を実際に何年分持っているかを具体的に確認してください。
学年別:内申のために何をするか
中学1年——「捨てない」ことが最大の投資
都立高校の一般入試で使われる調査書点は中学3年の評定ですが、中1・中2を捨ててよいという意味ではありません。理由は3つあります。第一に、推薦入試や私立の併願優遇では中2・中3の評定を見る学校があること。第二に、中3の内容は中1・中2の積み上げの上に立っており、遡り学習の負担が指数関数的に増えること。第三に、いちど「苦手教科」という自己認識ができると、それを覆すのに長い時間がかかることです。
特に英語は注意が必要です。中1の前半でつまずいたまま放置すると、その後の6年間ずっと英語を避け続けることになりがちです。英語は入試でも大学受験でも配点が大きい教科なので、最も早く手当てすべき科目だと考えてよいでしょう。
中学2年——実技4教科と提出物の型をつくる
中2は部活動が最も忙しく、学習の優先順位が下がる時期です。しかしここで実技4教科の提出物の型(いつ・どこまで・どの水準で出すか)を固めておくと、中3で5教科に集中できます。実技の評定は一夜漬けが効きません。作品や技能の積み重ねが評価されるため、前もって仕込む必要があります。
中学3年——評定と当日点の配分を計算する
中3では、志望校の合格ラインに対して「内申であと何点必要か」「当日点であと何点必要か」を数字で把握します。換算内申が1上がると総合得点でおよそ4.6点、当日点は5教科合計で1点=1.4点の換算です。この二つを天秤にかけて、限られた時間をどこに投じるかを決めます。多くの場合、2学期の定期テストと提出物が最後の勝負どころになります。
推薦入試・私立併願優遇では内申の使われ方が変わる
ここまでは一般入試の話ですが、内申が本当に効いてくるのは、実は推薦入試と私立の併願優遇です。
都立の推薦入試
都立高校の推薦に基づく選抜では、調査書点に加えて集団討論・個人面接・小論文(または作文)・実技検査などで判定されます。学校ごとに配点比率が公表されており、調査書の比重が高い学校もあれば、面接や小論文の比重が高い学校もあります。ここでの調査書点は一般入試の換算内申とは計算方法が異なり、実技を2倍にしない素点の合計を使う学校が一般的です。志望校の募集要項で、どの数字がどう使われるかを必ず確認してください。
私立高校の併願優遇・単願推薦
私立高校の多くは、中学校3年の2学期の評定を基準に「9教科合計◯以上」「5教科合計◯以上」といった出願の目安を設けています。数値は学校・コースごとに異なり、英検などの資格取得で1点加算といった加点制度を設ける学校もあります。この仕組みのため、2学期の通知表が出た時点で、受けられる私立の選択肢がほぼ確定します。中3の2学期が「最後の勝負」と言われるのはこのためです。
逆に言えば、英検準2級や2級を早めに取っておくと、内申の不足を一部補える場合があります。資格の使い方については英検を大学入試・高校入試でどう使うかで詳しく整理しています。
内申が上がらないときの原因の切り分け
「がんばっているのに内申が上がらない」という相談は多いのですが、原因はだいたい次の4つに分かれます。順に確認してください。
| 症状 | 疑うべき原因 | 打ち手 |
|---|---|---|
| テストの点は取れているが評定が上がらない | 提出物・記述問題・観点のどれかで落としている | 通知表の観点別評価を確認し、C評価の観点に的を絞る |
| 提出物は出しているのに評価が低い | 「出した」だけで、直し・振り返りが書かれていない | 間違えた問題の解き直しと、気づきの記述を追加する |
| ワークをやっているのに点が伸びない | 答えを写す・眺めるだけの作業になっている | 解答を隠して思い出す形式(検索練習)に変える |
| 5教科は良いが実技が低い | 実技4教科は2倍換算という認識がない | 実技のテスト範囲と提出物を先にカレンダーへ入れる |
3つめの「ワークをやっているのに伸びない」は非常に多いパターンです。学習科学の研究では、読み返しや書き写しよりも、いったん教材を閉じて思い出す作業(想起)のほうが記憶の定着に効くことが繰り返し示されています。同じ1時間でも、やり方によって結果は大きく変わります。この点は勉強が続かない子の学習設計で詳しく扱っています。
内申が志望校に届かないとき、どう考えるか
努力しても内申が届かないことはあります。そのときに取れる道は、おおむね次の4つです。感情的に決める前に、数字で比較してください。
- 当日点で挽回する:内申1点=総合約4.6点なので、換算内申が5足りないなら当日点で約23点、5教科で1教科あたり4〜5点を上乗せする計算になります。共通問題校であれば、過去問演習で十分に射程内のことが多い数字です。
- 当日点の比重が高い学校を選ぶ:自校作成問題を採用する進学指導重点校などは、そもそも当日点で差がつきやすい入試です。内申が不利でも学力があれば戦えます。
- 私立の併願優遇・単願推薦を厚くする:内申の水準で受けられる私立を早めに確定させ、精神的な余裕をつくったうえで都立に挑戦します。
- 志望校を組み替える:ただし「偏差値を下げる」という考え方ではなく、6年後にどうなりたいかから逆算します。大学進学実績や指定校推薦の枠、部活動、通学時間まで含めて比較すると、順位が入れ替わることがあります。
大切なのは、内申という一つの数字で子どもを評価してしまわないことです。内申は「中学校という限られた場での評価」にすぎません。実際、高校入学後に伸びる生徒は珍しくありませんし、大学入試では総合型選抜のように別の力が評価される入口も広がっています(総合型選抜の準備)。
塾をどう使うか——形態別の向き不向き
内申対策という目的に限れば、塾の形態にははっきりした向き不向きがあります。
- 学校別の定期テスト対策を持つ個別指導:出題傾向に合わせて演習を組める。
- 完全1対1:どの観点で落としているかを一緒に分析し、記述の書き方まで直せる。
- 自習室+質問対応:テスト2週間前の演習量を確保する場として。
- 受験学力に特化した集団授業のみ:学校の進度・出題と噛み合わないことがある。
- 映像授業のみ:質問と添削がないため、記述の観点が改善しにくい。
- 講師1名に生徒2〜3名の個別:解説を待つ時間が生じ、記述添削の密度が落ちる場合がある。
なお、当サイトの運営者が運営する武蔵野個別指導塾(武蔵境駅北口 徒歩30秒)は、講師1名に生徒1名の完全個別指導で、公式サイトによれば武蔵野市・三鷹市の中学校の定期試験過去問を10年分以上保有し、学校ごとの傾向を分析しているとしています。詳細は詳細レビュー(向かない人も記載)をご覧ください。他塾との比較は12校比較に整理しています。
面談で確認したい5つの質問
内申対策を目的に塾を探すなら、体験や面談で次を具体的に聞いてください。答えが曖昧な場合、実際には対応していない可能性があります。
- うちの子が通う中学校の定期テスト過去問は、何年分ありますか。
- 実技4教科の筆記対策はしてもらえますか(範囲・教材は何を使いますか)。
- 記述問題の添削は、誰が、どのくらいの頻度で行いますか。
- テスト2週間前の通塾回数や自習室の使い方はどうなりますか。
- 通知表の観点別評価を見て、指導方針を変えてもらえますか。
この記事のまとめ
- 都立の一般入試は 当日700点+調査書300点+ESAT-J 20点。内申の比重はおよそ3割。
- 実技4教科は2倍換算。5教科より投資効率が高い場面がある。
- 評定は観点別評価から決まる。点数ではなく「落としている観点」を特定する。
- 対策は学校別・教員別に設計する。塾選びでは過去問の保有年数を確認する。
よくある質問
都立高校入試で内申はどれくらい重要ですか?
一般入試(第一次募集)は学力検査700点+調査書点300点+英語スピーキングテスト20点の合計1020点で判定されます。調査書点は全体のおよそ3割です。推薦入試や私立の併願優遇では、さらに内申の比重が高くなります。
実技4教科はなぜ重要なのですか?
換算内申は「5教科の評定合計+実技4教科の評定合計×2」で計算されるためです。実技の評定を1上げると換算内申が2上がり、300点満点への換算でおよそ9点分に相当します。5教科より効率が高い場面があります。
テストで点を取っているのに評定が上がりません。
評定は観点別評価(知識・技能/思考・判断・表現/主体的に学習に取り組む態度)から決まります。記述問題を空欄にしている、提出物に直しや振り返りが書かれていない、といった理由で特定の観点がB・Cにとどまっている可能性があります。通知表の観点別評価を確認してください。
武蔵野市は内申が取りにくいというのは本当ですか?
評定は絶対評価ですが、到達水準の運用は学校ごとに差があり、定期テストの平均点が高い地域では同じ得点でも評価が伸びにくくなります。対策としては、通っている中学校の出題傾向に合わせた準備が有効です。
内申が志望校に届かない場合はどうすればよいですか?
当日点で挽回する、当日点の比重が高い学校(自校作成問題校など)を選ぶ、私立の併願優遇を確保する、志望校を組み替える、という4つの方向があります。換算内申1点=総合約4.6点として、必要な上乗せ点を数字で計算してから判断してください。