- 決まりを作って様子を把握することと、厳しい言葉で従わせることは、研究では別の関わりとして扱われています。
- 成績とよい関係があるのは温かさを伴う見守りですが、その関係は小さく、家庭の関わりだけで学力は決まりません。
- 愛情を引っ込める関わりや、厳しい要求を続ける型では、成績の低さと結びつく結果があります。
- 言葉のしつけを調べた研究には、成績ではなく問題行動や気分を測ったものもあります。
- 家庭では答案のつまずきを確かめ、実行する決まりと見直す機会を子と決めるところから始められます。
保護者が強く叱ると成績は上がるか|厳しい言葉のしつけと子の学力の研究
通知表を開いて思っていたより低い評定を見ると、今度こそ厳しく言うべきかと迷うことがあります。Pinquart(2016)が子どもと青年の養育と学業成績についてまとめた実証研究は308件で、決まりを作って見守る関わりと、厳しく締めつける関わりでは、成績との関係の向きが異なりました。定期テストの点が悪かったとき、強く叱れば次は勉強するようになるのでしょうか。強く叱るほど成績が上がるという考えは支持されず、決まりと見守りは成績と小さな正の関係、厳しい統制は小さな負の関係を示しています。
ただ、強く言わないと決めても、宿題や提出物について何も伝えなくてよいのかという疑問は残ります。保護者が求めているのは、その場で返事をさせることより、次の勉強が進むことのはずです。そのためには、声の強さだけで判断せず、伝えた内容が行動の約束なのか、子の気持ちや価値を押さえつける言葉なのかを分けて見ると整理しやすくなります。通知表の数字をきっかけに、子をどう評価するかより、次に何を一緒に確かめるかへ話を進めるための研究です。
要点
- 決まりを作って様子を把握することと、厳しい言葉で従わせることは、研究では別の関わりとして扱われています。
- 成績とよい関係があるのは温かさを伴う見守りですが、その関係は小さく、家庭の関わりだけで学力は決まりません。
- 愛情を引っ込める関わりや、厳しい要求を続ける型では、成績の低さと結びつく結果があります。
- 言葉のしつけを調べた研究には、成績ではなく問題行動や気分を測ったものもあります。
- 家庭では答案のつまずきを確かめ、実行する決まりと見直す機会を子と決めるところから始められます。
決まりを作ることと、厳しく締めつけることを分ける
「厳しい家庭」という言い方だけでは、何をしている家庭なのかが見えません。帰宅後に取り組む課題を決めている場合もあれば、間違うたびに子の人格を否定する場合も、その言葉で語られてしまいます。研究を読むときの出発点は、この違いを分けることです。行動の見守りとは、決まりを作り、子が何をしているかを把握する関わりを指します。
これに対し、厳しい統制は強い圧力や罰で従わせる関わり、心理的統制は罪悪感や愛情の引き上げなどを通じて気持ちを動かそうとする関わりです。Pinquart(2016)のメタ分析、つまり複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法では、温かさ、行動の見守り、自律の尊重が成績のよさと小さく関係していました。一方、厳しい統制と心理的統制は、成績の低さと小さい、またはごく小さい関係を示しました。測っている学業成績は評定平均や学力テストで、同じ「統制」という訳語でも関わりの中身で方向が違います。
| 見る点 | 研究で正の関係 | 研究で負の関係 |
|---|---|---|
| 行動への関わり | 決まりを作り様子を把握する見守り | 強い圧力を伴う厳しい統制 |
| 気持ちへの関わり | 温かさや自律の尊重 | 心理的な締めつけ |
| 養育の組み合わせ | 温かさと決まりの両方がある型 | 厳しい統制や心理的統制を含む関わり |
| 成績との関係の大きさ | 小さい関係 | 小さい〜ごく小さい関係 |
家庭でこの区別を使うなら、言葉を発した後に何が具体的に残るかを見ます。「提出する課題を一緒に確かめたいです」と伝えれば、確認する対象が残ります。子の性格や家族への気持ちを問題にすると、課題をどう進めるかという話から離れてしまいます。厳しさを弱めるという方針も、次の行動をはっきりさせるという方針と組み合わせて考えられます。
支える型との比較で見ると、強い要求は有利ではない
Tan ほか(2026)は、複数のメタ分析をさらにまとめ直し、養育と子の学業の結果との平均的な関係を r = 0.16 と報告しました。r は、関わり方と成績がどの程度一緒に変わるかを表す相関係数です。この数値は小さな関係を示しており、特定の声かけによって点がどれだけ上がるかを示すものではありません。同じ分析でも、行動の見守りは正の関係、心理的統制と厳しい統制は負の関係という違いがありました。
ここでいう権威のある養育は、親が強い言葉で命令することではなく、温かさと決まりの両方がある型です。似た名称の権威主義的な養育とは区別され、成績と正の関係を示した型は前者でした。放任や無関心の型も正の関係を示しておらず、叱らないことをそのまま放っておくことへ置き換える読み方は合いません。親の関わりをなくすか増やすかより、何を決め、子の説明をどう扱うかが比較の軸になります。
Kim ほか(2013)は、米国の中国系444家庭を、思春期の初めから成人初期まで8年間追いました。厳しく要求するタイガー型は、支える型と比べて評定平均と最終学歴が低く、学業のプレッシャーや抑うつ症状、疎外感が多い結果でした。比べた相手が「何も求めない親」ではなく「支える型の親」である点が、この結果を読むうえで重要です。勉強への要求を持ちながら支える関わりと比べても、厳しく要求する型の方が学業で有利だったわけではありません。
子が勉強に向かわないとき、親は要求を弱めたらさらに進まなくなるのではないかと心配するかもしれません。その場合も、求める内容と伝える方法を別々に見直せます。提出の期限は伝えたまま、できなかった理由を聞く余地を残す、課題の場所を確認してから取り組み方を決める、といった選択ができます。家庭を何らかの型に当てはめるより、いま交わしたやり取りの中身を点検するために、この比較を使えます。
愛情を引っ込める言葉は、学習の決まりとは違う
Xu ほか(2024)は、中国の中学生2613人を1年半追い、親の心理的統制と成績の関係を調べました。愛情を引っ込める、罪悪感を持たせる、権威を振りかざすという関わりのうち、成績の低さを直接予測したのは愛情を引っ込めるやり方でした。ほかのやり方は成績を直接には予測せず、心理的統制の中でも結果は同じではありませんでした。ここでの「予測」は、先に調べた関わりが後の成績と統計的に結びついたという意味です。
愛情を引っ込める関わりを家庭の言葉に置き換えるなら、成績が悪い間は相手にしないという態度や、よい結果を出すことを親しさの条件にする言葉が考えられます。これは、提出物を出すという行動の約束とは性質が異なります。勉強をめぐる話し合いでも、話しかけてよいか、失敗を伝えてよいかまで成績次第にしない方針を置けます。修正する対象を、子との関係そのものから学習上の行動へ戻すためです。
Xie ほか(2022)が中国の養育の型と学力についてまとめた研究でも、情緒的な温かさと理解は学力によい関係を示していました。罰と厳しさ、過干渉と過保護、拒否と否定などは不利な関係で、関係の強さは子の年齢などによって違いました。厳しさという言葉に含まれがちな関わりを細かく分けると、子を理解することと、気持ちを押さえつけることを別に見る理由がわかります。成績を話題にするたびに、親子の関係まで評価し直す必要はありません。
たとえば、答案を見せるのをためらう子には、まず直す問題を探すために見ると目的を伝える方法があります。見せた後で以前の失敗を次々に持ち出すより、今回の課題について話す範囲を決めておきます。子がすでに点を気にしている場合も、さらに気持ちを追い込む言葉を加えるより、本人が説明できる問題から話を始められます。成績への不満を伝える場面と、子を受け入れる態度を切り離すための工夫です。
厳しい言葉の研究では、成績以外も測っている
Wang ほか(2014)は、米国の両親のいる976家庭で、父母の厳しい言葉によるしつけと子の問題行動、抑うつ症状を追いました。厳しい言葉はその後の問題行動や抑うつ症状の増加を予測し、逆に子の問題行動が親の言葉を厳しくする向きも示されました。普段の親の温かさは、この関係を弱めませんでした。この研究が測ったのは成績ではないため、ここからテストの点の上下を説明することはできません。
この結果を家庭で読む際は、言葉を強くするたびに相手の反応も強くなり、やり取りが続いていないかを振り返る材料にできます。親が勉強の話を始めた後、話題が態度への不満に移り、最後には何をする約束だったかが残らない場合を考えます。その場合は、言い合いを続けることより、課題について話せる状態に戻すことを優先できます。親が先に話を止めることも、学習を放棄することではなく、話す内容を立て直す選択です。
言葉で叱ることとは別の行為として、平手でたたく体罰を調べた研究もあります。Gershoff ほか(2016)のメタ分析は、体罰と子どもの不利な結果のリスクとの関係を示しましたが、抄録には成績が結果の項目に含まれるかの内訳がありません。身体への行為を、声の強さの延長として扱わず、研究の対象も区別して読む必要があります。子に勉強させるための手段として、身体的な罰を選ぶ根拠にはなりません。
親自身が腹を立てているときには、今は強い言葉になりそうなので後で答案を見たいと伝え、話す時機を変える方法があります。その際は、勉強の話を終わりにするのかと子が迷わないよう、改めて話す機会も決めます。再開したら、その間の態度を採点するのではなく、当初確かめたかった問題へ戻ります。声を抑えるだけで済ませず、会話の終わりに具体的な行動を残すことを目指します。
直後に机へ向かったかと、学力が育ったかを分ける
Do ほか(2026)は、ガーナの5〜8歳の663人について、3年間にわたる家庭や学校での厳しいしつけの累積を調べました。家庭で厳しいしつけを繰り返し受けた子ほど、学力が低いという関係がありました。一方、気持ちや行動を切り替えて調整する実行機能とは関係がなく、学校での厳しいしつけも、測った力を統計的に有意には予測しませんでした。家庭と学校、学力と実行機能を分けて結果を示している研究です。
叱った後に子が机へ向かうと、叱った効果が出たと受け取りたくなることがあります。しかし、机へ向かったという行動と、問題を理解できるようになったという変化は、確かめる対象が違います。家庭で勉強を見守る際も、始めた時刻だけでなく、どこまで進んだか、どこで止まったかを別に残せます。すぐに従ったかを最終的な判断にせず、学習内容へ目を戻すための区別です。
答案で計算の途中が抜けていたら、本人がその手順を思い出せるかを尋ねられます。途中までは説明できても最後の計算で止まるなら、見直す対象をそこに絞れます。問題文の意味が取れていなければ、もっと急いで書くよう求めても、確かめたい点とはずれます。誤答をまとめて意欲の問題とする前に、実際に何が起きたかを確かめる余地があります。
子がすぐ説明できない場合は、保護者が理由を決めず、途中の式や教科書の該当箇所を一緒に見るところまでにできます。問いを重ねることが負担になっているなら、本人に印を付けてもらい、後でその箇所から話を再開する方法もあります。点数の低さと、説明する準備が整っているかを別に扱います。見守りの記録には、親が納得したかより、次に確認する内容が残っているかを書き留められます。
答案を前に、次の1週間の決まりを1つ作る
家庭で試すときは、点が悪かった答案から、子と一緒に問題を1つ選びます。最初に尋ねるのは、なぜこの点だったのかという全体の説明より、その問題でどこまで考え、どこで止まったかです。本人が説明する間は、途中で別の問題や過去の成績へ話題を広げず、答案に残っていることを確かめます。これは研究で点の伸びが測られた手順ではなく、見守る対象を具体的にするための提案です。
次に、次の1週間に守る決まりを1つだけ作ります。たとえば、学校の課題を開いたときに止まった問題へ印を付け、終わりにその印の場所を伝えるという形です。保護者が毎晩そばにいられないなら、見てもらいたい箇所が後でわかるようにしておけます。本人が自分で進めたい場合は、細かな解き方まで親が指定せず、困った箇所を知らせる方法を相談できます。
振り返る日は、できたかどうかだけでなく、決まりが役に立った場面と進まなかった場面を並べます。印は付けられたのに見てもらう機会がなかったなら、直すのは報告の方法や時間です。課題を開く前から止まっていたなら、印を付ける決まりより前の段階を見直します。決まりを守れなかったという結論だけで終わらず、どこを変えるかまで決められます。
保護者が言いすぎたと感じた場合も、言葉について謝ることと、取り組む課題を確かめることは両立します。傷つける言い方を続けず、話し直す中で約束の内容を絞れます。強い言葉でその場の返事を得ることより、困った箇所を共有できる関わりを選ぶという方針です。次の答案を見るまでに整えるものは、叱る強さではなく、つまずきを確かめられる約束です。
よくある質問
叱らないと、宿題をしないままになりませんか
叱る言葉を強めないことと、宿題を見守らないことは別です。決まりを作る節で見たように、取り組む内容や困ったときの伝え方を決め、進み具合を把握する関わりは残せます。声をかけても始められない場合は、課題がどこにあるか、最初に何をするかを本人が説明できるかから確かめられます。命令を重ねる前に、約束が実行できる内容になっているかを見直す方法があります。
厳しく育てられて成績がよかった人もいるのではありませんか
厳しい関わりを受けた人の中に成績のよい人がいることと、厳しくすれば成績が上がることは別の話です。研究では、集団の中で支える型と比べたり、関わり方と後の成績との関係を調べたりしています。身近な成功例を家庭の方針にする前に、学習時間や支援の内容など、厳しさ以外に何があったかも分けて考えられます。子の反応を見ながら、いま変えられる約束の中身を選べます。
すでに強く叱ってしまった後は、どう話せばよいですか
言い方について謝り、次に話したい内容を答案の具体的な箇所へ戻す方法があります。謝った直後に同じ非難を繰り返すより、本人が説明する時間を取り、次の行動を一緒に決めます。子がその場では話せないなら、改めて話す機会を決め、気持ちの説明を急がせずに待てます。成績への対応と、子との関係をどう扱うかを切り離して話し直すための進め方です。
この記事の限界
測り方は、親子が答える養育の質問、評定平均、学力テストなどで異なり、家庭で交わした言葉と直後の学習を同じ条件で測った結果ではありません。多くは観察研究、つまり関わりを実験で変えずに調べた研究で、子の成績や行動が親の叱り方を変える向きもあり、叱り方が原因とは言い切れません。とくに厳しい言葉の研究には問題行動や気分を測ったものがあり、学力を測る研究とは結果の意味を分けて読む必要があります。
米国の中国系家庭、中国の中学生、ガーナの幼い子など対象が異なり、日本の小中高生の定期テストや内申を直接確かめた研究は今回の範囲に含まれていません。叱った直後の数日と数年後の影響を分けて測った研究が少なく、短い反応と長い変化をつなぐ証拠は限られています。
参考文献
- Pinquart. Associations of Parenting Styles and Dimensions with Academic Achievement in Children and Adolescents: A Meta-Analysis. Educational Psychology Review. 2016;28(3):475-493.
- Tan ほか. Parental Involvement, Parenting Styles, and Children’s Academic Outcomes: A Second-Order, Three-Level Meta-Analysis. Review of Educational Research. 2026;96(4):1287-1327.
- Kim ほか. Does “Tiger Parenting” Exist? Parenting Profiles of Chinese Americans and Adolescent Developmental Outcomes. Asian Am J Psychol. 2013;4(1):7-18.
- Xu ほか. Parental Psychological Control and Adolescent Academic Achievement: The Mediating Role of Achievement Goal Orientation. Behav Sci (Basel). 2024;14(3):150.
- Xie ほか. A Meta-Analysis of the Relationships between Chinese Parenting Styles and Child Academic Achievement. Best Evidence in Chinese Education. 2022.
- Wang ほか. Longitudinal links between fathers’ and mothers’ harsh verbal discipline and adolescents’ conduct problems and depressive symptoms. Child Dev. 2014;85(3):908-923.
- Gershoff ほか. Spanking and child outcomes: Old controversies and new meta-analyses. J Fam Psychol. 2016;30(4):453-469.
- Do ほか. Cumulative Exposure to Harsh Discipline at Home and School on Child Development: Evidence From Ghana. Dev Sci. 2026;29(5):e70274.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
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よくある質問
叱らないと、宿題をしないままになりませんか
叱る言葉を強めないことと、宿題を見守らないことは別です。決まりを作る節で見たように、取り組む内容や困ったときの伝え方を決め、進み具合を把握する関わりは残せます。声をかけても始められない場合は、課題がどこにあるか、最初に何をするかを本人が説明できるかから確かめられます。命令を重ねる前に、約束が実行できる内容になっているかを見直す方法があります。
厳しく育てられて成績がよかった人もいるのではありませんか
厳しい関わりを受けた人の中に成績のよい人がいることと、厳しくすれば成績が上がることは別の話です。研究では、集団の中で支える型と比べたり、関わり方と後の成績との関係を調べたりしています。身近な成功例を家庭の方針にする前に、学習時間や支援の内容など、厳しさ以外に何があったかも分けて考えられます。子の反応を見ながら、いま変えられる約束の中身を選べます。
すでに強く叱ってしまった後は、どう話せばよいですか
言い方について謝り、次に話したい内容を答案の具体的な箇所へ戻す方法があります。謝った直後に同じ非難を繰り返すより、本人が説明する時間を取り、次の行動を一緒に決めます。子がその場では話せないなら、改めて話す機会を決め、気持ちの説明を急がせずに待てます。成績への対応と、子との関係をどう扱うかを切り離して話し直すための進め方です。