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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年10月26日

共働きの家の子は成績が下がるか|保護者の就労と子どもの学力の研究

夜9時、仕事を終えて宿題のノートを開くと、まだ空欄が残っている場面を考えます。Lucas-Thompson ほか(2010)は、乳幼児期の母の就労について、影響の大きさは小さく、全体の関係は主に統計的に明確でないため、幼い子を持つ母が働くことへの心配を和らげる結果だと結論づけています。それでも、夜まで家にいない日が重なると、子の勉強や成績に響くのではないかと気になります。共働きそのものが子の成績を下げるという証拠は弱く、差を読むには子の年齢、勤務の時間帯、家庭の条件を分ける必要があります。

この記事の要点
  • 就労の有無をまとめて比べた研究では、学力に明確な差がないという結果が中心です。
  • 不利な関係が見られた研究でも、子の発達の時期、雇用の形、家庭の条件によって結果が違います。
  • 日本の研究では、正規フルタイム就労と認知の成績との負の関係は、母の学歴で異なっていました。
  • 母の就労だけに目を向けず、父の勤務時間帯も含めて、家族で対応できる時間を確かめます。
  • 家庭では、帰宅が遅い曜日の宿題と就寝を記録し、通塾の曜日を検討する材料にできます。

共働きの家の子は成績が下がるか|保護者の就労と子どもの学力の研究

夜9時、仕事を終えて宿題のノートを開くと、まだ空欄が残っている場面を考えます。Lucas-Thompson ほか(2010)は、乳幼児期の母の就労について、影響の大きさは小さく、全体の関係は主に統計的に明確でないため、幼い子を持つ母が働くことへの心配を和らげる結果だと結論づけています。それでも、夜まで家にいない日が重なると、子の勉強や成績に響くのではないかと気になります。共働きそのものが子の成績を下げるという証拠は弱く、差を読むには子の年齢、勤務の時間帯、家庭の条件を分ける必要があります。

空欄がある理由は、帰宅後のノートだけではつかみにくいものです。取りかかる時間がなかったのか、問題の意味で止まったのか、確認してもらうまで待っていたのかで、次にできることは違います。研究を読むときも、働いているかどうかだけでなく、何を比べて何を測ったのかを見ると、家庭で確かめる点が絞れます。仕事を続けるかという大きな判断の前に、宿題と寝る準備が重なる曜日の様子から見ていきます。

要点

  • 就労の有無をまとめて比べた研究では、学力に明確な差がないという結果が中心です。
  • 不利な関係が見られた研究でも、子の発達の時期、雇用の形、家庭の条件によって結果が違います。
  • 日本の研究では、正規フルタイム就労と認知の成績との負の関係は、母の学歴で異なっていました。
  • 母の就労だけに目を向けず、父の勤務時間帯も含めて、家族で対応できる時間を確かめます。
  • 家庭では、帰宅が遅い曜日の宿題と就寝を記録し、通塾の曜日を検討する材料にできます。

働いている家庭と働いていない家庭の平均を比べる

Goldberg ほか(2008)は、母が働いているかどうかで子の学力が違うかを、68研究のメタ分析で調べました。メタ分析では、就労と学力を調べた個々の研究結果を集め、全体の関係を計算します。学力テスト、成績、学校の先生による評価では、就労の有無による有意な差はありませんでした。有意な差がないとは、この分析で差があると判断する統計上の基準を満たさなかったという意味です。

同じ分析では、働き方を細かく分けると、パートタイムのほうがフルタイムより小さく有利でした。また、ひとり親の家庭が多い集団や、中流上層ではない集団では、就労と学力に正の関係が見られました。女子では、より正の関係が見られたことも報告されています。全体の平均だけでなく、どの家庭が多く含まれた研究なのかによって、結果の読み方が変わります。

「共働きの家庭」と聞いて思い浮かべる生活も、毎日の勤務が一定か、曜日によって帰宅時刻が違うかで異なります。研究上の「働いている」という分類は、宿題を見る人や、質問できる時間まで同じことを意味しません。平均に明確な差がなかったという結果は、就労という属性だけで成績を判断しないための手掛かりです。家庭の様子を見る際にも、保護者が在宅している時間の長さだけで結論を出さず、子が実際に困っている場面を確かめます。

乳幼児期の就労と、その後の学力を分けて読む

Lucas-Thompson ほか(2010)は、乳幼児期の母の就労と、その後の学力や問題行動との関係を69研究でまとめました。全体としては有意な関係がない結果が中心で、学校の先生が評価した学力は、母が働いていた子で高くなっていました。一方、中流で両親のいる家庭や、乳児期の早い時期の就労では、不利な関係が見られた分析も含まれていました。同じ分析の中でも、働いていた時期や家庭の条件を分けると結果が異なっています。

Pilkauskas ほか(2018)は、米国の都市部の主に低所得の2,011家庭を調べました。出生から5歳までの母の就労を記録し、5歳と9歳の子の行動や認知の力との関係を見た研究です。語彙や学力の検査では、幼少期の就労の増加そのものが高い得点と関係していました。就労の安定は問題行動の少なさと関係しており、学力の結果とは区別して読む内容です。

この違いから、生活の安定と学力検査の得点を、同じ結果として扱わない読み方ができます。「子の様子がよい」という言葉には、授業での評価、言葉を理解する力、行動上の困りごとの少なさなど、別々の内容が入ります。保護者が気にしているのが宿題の提出なら、まず提出の状況を、問題の理解なら答案の内容を見るほうが話を具体的にできます。研究に出てくる学力という言葉も、家庭での心配も、中身を確かめてから対応を選びます。

早い時期の就労で不利な結果が出た研究にも条件がある

Waldfogel ほか(2002)は、米国の全国追跡調査に参加した1,872人を、出生から7〜8歳まで追えるデータで調べました。白人の子では、乳児期の早い時期の母の就労に、認知の力への持続する不利な結果が見られました。一方、その後の幼児期の就労には有利な結果があり、黒人とヒスパニックの子では同様の関係は見られませんでした。就労した時期や対象の集団を抜きにして、不利な結果だけを取り出すと研究の内容が変わってしまいます。

この研究では、家族に共通する変わりにくい特徴を統計上考慮すると、認知の指標によっては就労との関係が小さくなりました。別の指標では関係が残り、すべてが同じように変わったわけではありませんでした。家庭どうしをそのまま比べたときの差と、家庭の特徴を考慮した後の差を区別することが、結果を読むうえでの焦点です。成績の差を見つけたことと、働くことだけをその原因とすることには隔たりがあります。

Burchinal ほか(2007)は、同じデータを用いた先行研究どうしで、母の就労について異なる結論になった理由を分析方法から検討しました。早期の就労が幼い子の認知の力を下げるという結論は強すぎ、それだけを実践や政策の判断の土台にすべきではないと指摘しています。これは先に挙げた追跡研究の結果をそのまま取り消す話ではなく、分析方法が結論に関わるという別の検討です。仕事を減らすという判断まで進むには、何をそろえて比較した結果なのかも読む姿勢が求められます。

日本の研究と父の勤務時間帯から見える違い

日本を対象にしたWang ほか(2026)では、母の正規フルタイム就労は、子の認知の成績と負の関係がありました。ただし、その関係は高卒以下の母に限られ、非正規就労では子の認知の成績との関係は見られませんでした。認知の成績は、考える力や理解する力などを測った成績を指します。この研究は、働いてきた状況の積み重ねを見て、原因と結果の関係に近づけるための統計手法を使っています。

この結果を読む際は、「日本のフルタイムの家庭」という大きな括りに置き換えず、雇用の形と学歴によって関係が異なった点まで含めます。学歴の区分は分析で家庭の条件を比べるためのもので、保護者の努力を採点するものではありません。個々の家庭で見直す対象は、その区分に当てはまるかどうかだけでなく、現に宿題が進まない時間帯や、質問を持ち越している場面です。子と話すときも、親の働き方を理由に点数を説明してしまうより、困っている課題を直接確かめるほうが次の対応を選べます。

香港の共働き家庭の幼児を調べたKim(2021)は、父の標準的でない時間帯の勤務が、子の発達の総合得点の低さと関係すると報告しました。この関係は低所得の家庭で目立ち、母の標準的でない時間帯の勤務では同じ関係は見られませんでした。ここで測っているのは子の発達の総合得点で、学校の教科別の点数とは区別します。保護者の勤務を家庭で書き出す際にも、母の予定だけでなく父の予定を並べるという視点につながります。

差が出た条件と出なかった条件を並べる

研究結果を見比べるときは、「有利か不利か」の欄より先に、比べた条件の欄を読むと筋道がつかめます。就労の有無、雇用の形、勤務する時間帯は、それぞれ違う問いです。以下の表では、本文で扱った研究について、関係の違いが表れた条件を並べています。人数や点数を並べて順位をつける表ではなく、結果を読むときの確認箇所を示しています。

研究 比べた条件・対象 差が出た条件 差が出なかった条件
Goldberg ほか(2008) 母の就労の有無や勤務の形と子の学力 パートタイムがフルタイムより小さく有利 就労の有無で見た全体の学力
Waldfogel ほか(2002) 米国の子の早期の就労経験と認知の力 白人の子では就労した時期で有利・不利が異なる 黒人・ヒスパニックの子では同様の関係なし
Wang ほか(2026) 日本の母の雇用の形・学歴と子の認知の成績 高卒以下の母の正規フルタイム就労で負の関係 非正規就労と認知の成績
Kim(2021) 香港の共働き家庭の勤務時間帯と幼児の発達 父の標準的でない勤務時間帯で負の関係 母の標準的でない勤務時間帯と発達

家庭の予定に置き換えるときの見方

予定表に就労時間を書くだけで終わらせず、その横に子の宿題が止まった場面を添えます。たとえば、問題文を読んでも取りかかれなかったのか、終わってから確認を待っていたのかを書き分けます。前者なら課題の内容を確かめる話になり、後者なら確認する時間をあらかじめ決める話になります。どちらも「家にいないから勉強が進まない」という説明を、実際の行動に沿って細かくする作業です。

保護者が帰るまで待つ方法が合わない子には、待っている間に何をしてよいかを先に相談できます。自力で進められる課題と、質問を残しておく課題を本人が選ぶ形も考えられます。反対に、自分で終えられている子なら、帰宅後に最初から全部やり直させる予定を加える必要はありません。確認を増やすかどうかも、共働きという分類ではなく、子の現在の進め方に合わせて判断します。

遅い曜日の宿題と就寝を記録し、通う曜日を見直す

家庭で試す方法として、まず保護者の帰宅が遅い曜日を書き出します。父母のどちらが対応できるか、ほかに普段から関わっている大人がいるかも、予定がわかる範囲で添えます。次に、その曜日の宿題に取りかかった時刻と終えた時刻、寝る時刻を記録します。これは研究で効果が確かめられた学習法ではなく、生活のどこを調整するか選ぶための手順です。

記録は細かな監視にならないよう、本人と使い道を決めてから始めます。空欄を叱る材料にせず、難しい問題で止まった日は、そのことも短く残します。学校の課題が普段より多かった日や予定が変わった日を区別しておけば、帰宅の遅さだけに理由を求めずに読み返せます。同じ曜日がもう一度来るところまで続け、繰り返す困りごとと、その日だけの事情を見比べます。

  • 帰宅が遅い曜日と、その日に対応できる人を記入します。
  • 宿題の開始・終了と、寝る時刻を残します。
  • 質問を待っていたのか、内容が難しかったのかを添えます。
  • 通塾日の前後に課題が残る様子があるかを見ます。
  • 変更できる曜日を家族と子で検討し、変更後も同じ項目を見ます。

塾の曜日を動かせるなら、記録をもとに、宿題と寝る準備が重なりにくい候補を選びます。移した先に別の用事がないか、子がその日に通えるか、送迎が必要なら誰が担えるかも一緒に確認します。夜遅くまで保護者の確認を待つ予定がつらい子には、帰宅後の確認を前提とした時間割をそのまま続けない選択もあります。曜日を動かしにくい場合は、質問を残す方法や確認の時間を先に見直せます。

見直した後は、宿題の空欄が減ったかだけでなく、寝る準備までの流れが保てたかを見ます。子が自分で進められた部分も記録に残すと、大人が毎回手を出す箇所を選びやすくなります。共働きかどうかで家庭を評価するより、滞っている曜日と作業を見つけるほうが、調整する場所がはっきりします。宿題と就寝の記録を持ち寄るところからなら、家族の予定の見直しを無理なく試せます。

よくある質問

成績が下がったら、仕事を減らすべきですか

成績の変化だけを見て、仕事を減らす判断を急ぐ根拠は弱いです。本文で見た研究では、就労の有無だけでなく、働いた時期や家庭の条件によって関係が違っていました。まずは答案や提出の状況と、その時期の予定を並べ、問題が理解できなかったのか、取り組む時間が取れなかったのかを確かめます。勤務の調整を検討する場合も、どの時間に何の手助けが要るのかを具体的にしてから家族で話せます。

フルタイムよりパートタイムなら安心ですか

本文のメタ分析では勤務の形による小さな差がありましたが、それだけで各家庭に合う雇用の形は決まりません。働く時間が短くても、子が質問したい時間と保護者が対応できる時間が一致するかは、予定を見て確かめることです。雇用の名称に安心の基準を置くより、子が止まったときにどうするかを先に決められます。本人がすでに進められている部分と、手助けを求めている部分を分けると、必要な対応が絞れます。

帰宅後に宿題を全部見る時間がありません

まず子に、確認してほしい箇所と、自分で終えられた箇所を示してもらう方法があります。全部を最初から見直す予定では負担が大きいなら、質問が残った問題を中心に確認する形を相談できます。内容の説明が難しい問題は、学校や塾で質問するために、止まったところがわかる印を残せます。誰がいつ対応するかを共有しておけば、帰宅した保護者がその場で宿題の全体を把握することから始めずに済みます。

この記事の限界

当てはまる範囲を考えるうえで、根拠の多くは乳幼児期の母の就労を測ったもので、中高生の時期の保護者の就労と成績を扱う研究は少ない点が残ります。日本の研究も認知の成績を扱っており、定期テストや内申、通塾の曜日を変えた効果を直接示す内容ではありません。米国などの家庭の比較には就労以外の条件も重なり、分析方法によって結論が変わるという指摘もあります。

母の就労に測定が偏っているため、結果を家庭全体の関わり方の評価や、母だけの責任に置き換える読み方には無理があります。父の働き方や在宅勤務を測った研究はまだ少なく、家にいる時間と子に対応できる時間の違いも、今後確かめる課題として残っています。

参考文献

  1. Lucas-Thompson ほか. Maternal work early in the lives of children and its distal associations with achievement and behavior problems: a meta-analysis. Psychol Bull. 2010;136(6):915-942.
  2. Goldberg ほか. Maternal employment and children’s achievement in context: a meta-analysis of four decades of research. Psychol Bull. 2008;134(1):77-108.
  3. Pilkauskas ほか. Maternal employment stability in early childhood: Links with child behavior and cognitive skills. Dev Psychol. 2018;54(3):410-427.
  4. Waldfogel ほか. The effects of early maternal employment on child cognitive development. Demography. 2002;39(2):369-392.
  5. Burchinal ほか. Maternal employment and child cognitive outcomes: the importance of analytic approach. Dev Psychol. 2007;43(5):1140-1155.
  6. Wang ほか. Maternal Employment and Children’s Cognitive Ability in a Gender-Inegalitarian Society. Demography. 2026;63(4):1179-1209.
  7. Kim. Parental Nonstandard Work Schedules and Child Development: Evidence from Dual-Earner Families in Hong Kong. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(10):5167.

通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。

  • 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
  • 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
  • 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
  • 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人

このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒、講師が一人の生徒に付きっきりの完全1対1で、大学教員や東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生などが教えます。アルバイト講師はいません。

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成績の変化だけを見て、仕事を減らす判断を急ぐ根拠は弱いです。本文で見た研究では、就労の有無だけでなく、働いた時期や家庭の条件によって関係が違っていました。まずは答案や提出の状況と、その時期の予定を並べ、問題が理解できなかったのか、取り組む時間が取れなかったのかを確かめます。勤務の調整を検討する場合も、どの時間に何の手助けが要るのかを具体的にしてから家族で話せます。

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本文のメタ分析では勤務の形による小さな差がありましたが、それだけで各家庭に合う雇用の形は決まりません。働く時間が短くても、子が質問したい時間と保護者が対応できる時間が一致するかは、予定を見て確かめることです。雇用の名称に安心の基準を置くより、子が止まったときにどうするかを先に決められます。本人がすでに進められている部分と、手助けを求めている部分を分けると、必要な対応が絞れます。

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