- 家庭の蔵書や読書への態度は、子どもの読む力と結びついています。
- 本の数を親が答えた場合と子が答えた場合で、成績との関係の見え方が違います。
- 読書量と読む力の関係には、よく読める子ほどたくさん読むという向きもあります。
- 家庭で確かめる出発点は、蔵書の総数より、子が最近自分で選んで読んだ本です。
保護者の本棚は子の成績に関わるか|家庭の蔵書数と学力の研究
すきっぷ通りで子どもと本の話をしていると、自宅にももっと本を置いたほうがよいのかと気になることがあります。Park(2008)が25か国を比べた調査では、家庭の本の数と子どもの読む力に、ほぼすべての国で正の関係がありました。この結果を聞くと、本棚を充実させることが、そのまま勉強の支えになるようにも感じられます。けれども、家に本をたくさん置けば子の読む力や成績は上がるのでしょうか。
本の多い家の子は読む力が高い傾向がありますが、本を並べるだけで成績が上がるとは確かめられていません。 家庭の蔵書には、保護者の学歴や生活のゆとり、読書の扱い方なども重なっています。さらに、保護者の本が並んでいることと、子どもがその本を手に取って読むことは別の出来事です。研究を家庭の判断に生かすには、棚の大きさを比べる前に、何を数え、誰と誰を比べた結果なのかをほどいて読むと見通しがつきます。
要点
- 家庭の蔵書や読書への態度は、子どもの読む力と結びついています。
- 本の数を親が答えた場合と子が答えた場合で、成績との関係の見え方が違います。
- 読書量と読む力の関係には、よく読める子ほどたくさん読むという向きもあります。
- 家庭で確かめる出発点は、蔵書の総数より、子が最近自分で選んで読んだ本です。
家にある本の数と学力は、何を比べた結果か
Park(2008)は、国際的な読解力の調査に参加した小学4年生について、家庭の読み書き環境と読む力を比べました。調べたのは蔵書だけでなく、幼いころに家庭でしていた読み書きの活動や、保護者が読書をどう捉えているかも含みます。これらはいずれも、ほぼすべての対象国で読む力の高さと関係していました。ただし、関係の強さは国によって大きく違い、家庭の条件が同じ働き方をするわけではありませんでした。
ここでいう正の関係とは、片方が多い人ほど、もう片方も高い傾向があるという意味です。本の多い家庭と少ない家庭を並べたときの違いを表しており、同じ家庭に本を追加した前後の変化とは区別します。成績のよい子の家に共通するものを見つけることと、その共通点を家庭に取り入れて成績を変えることは、研究の問いとして異なります。蔵書の調査を読む際には、この違いを最初に押さえると、本の購入を急ぐ結論から距離を取れます。
また、読む力の検査と学校の成績も、同じものとして扱わないほうが正確です。文章の内容を理解する検査、学校で使う言葉を理解する課題、各教科の定期テストでは、答える内容が違います。読解を調べた結果は、まず読解についての結果として受け止めます。「家に本が多い」という身近な話に置き換えるときほど、測った力の名前を残しておくと、期待する変化を広げすぎずに済みます。
親の学歴を考えに入れても残る関係
Heppt ほか(2022)は、ドイツの小学2〜4年生2353人を対象に、本の数と学校で使う言葉の理解を調べました。親が回答した家庭の本や子ども向けの本の数は、親の職業と学歴を統計的に考えに入れても、言葉の理解を説明する手掛かりになりました。一方、子どもが回答した本の数には、それらの条件に加わる説明力がなく、関係も親の回答より小さくなりました。同じ家の本について尋ねても、回答者によって結果が変わった点が特徴です。
「学歴を考えに入れる」とは、親の学歴の違いだけで説明される部分を区別して、なお本の数と学力が結びつくかを見る分析です。この研究は、蔵書が親の職業や学歴とまったく同じ情報を表しているわけではないと示しています。同時に、ある時点の家庭どうしを比べる調査として読めば、本を増やした家庭の成果を追った結果と混同せずに済みます。家庭の環境を知る目安として役立つことと、家庭が実行する方法として効果があることは、別々に評価します。
Brunello ほか(2017)に対応する同じ著者の前版の抄録では、ヨーロッパの義務教育の延長を利用し、追加の教育と生涯の収入の関係を調べています。子どものころに家に本が多かった人ほど、追加の教育による収入の伸びが大きいという結果でした。著者は、家庭の文化的な環境や認知の力の発達によると説明しています。これは大人になってからの収入を扱う研究であり、現在の子どもの答案を見る際には、読む力を測った研究と分けて位置づけます。
本の数の答え方で、関係は大きくも小さくも見える
家の本を思い浮かべて数を答える質問は、簡単そうでも測定の難しさがあります。自分の部屋にある本を思い浮かべるのか、家族の棚まで含めるのかによって、答えの作り方が変わり得ます。こうした回答と実際の状態のずれを、測定誤差と呼びます。蔵書研究では、この誤差が成績との関係をどちら向きに動かすのかが論点になっています。
Engzell(2021)は、生徒が回答する蔵書数について、成績の低い子ほど本が少なくなりやすいことと、少なく答えやすいことの両方を指摘しました。親と子の回答を比べるなどして、これらの偏りが蔵書と成績の関係を大きく見せていると主張しています。この読み方では、回答された本の数に、家庭の環境だけでなく子ども側の特徴も入り込みます。そのため、本の数の差をそのまま家庭の教育環境の差と扱うと、説明を強めすぎることになります。
これに対してEriksson ほか(2022)は、国際読解力調査の小学4年生について、子と親の回答を比べ、逆向きの結論を示しました。本の数を少なく答える偏りは成績の高い子で大きく、成績の低い子では回答のばらつきが大きいという結果でした。著者は、こうした誤差によって本の数と成績の関係はむしろ小さく見積もられやすいとしています。測定の問題を指摘する研究があるから関係はすべて見せかけだと決めるのではなく、誤差の向き自体に議論があると読むのが適切です。
本棚にあることと、実際に読むことを分ける
Mol ほか(2011)は、幼児から大学生までの余暇の読書を扱う99研究、7,669人をメタ分析でまとめました。メタ分析とは、読書量と読む力の関係などを調べた研究を集め、その結びつきの強さをまとめて計算する方法です。読書量と読解、文字を読む力、つづりの力には中程度から強い相関があり、その関係は学年が上がるほど強くなっていました。相関とは一緒に増減する傾向のことで、この研究は、読める子が読む量を増やし、読書を通じてさらに伸びるという循環を支持しています。
この結果を蔵書の話と並べると、家庭で見る対象がはっきりします。棚に本があるかは利用できる環境の情報で、実際にどれを読んだかは子の行動の情報です。保護者の本を子が読まなくても、別の場所で選んだ本を読み進めているなら、その行動は蔵書の総数だけでは捉えにくくなります。研究が何を測ったかに沿って、家庭でも環境と行動の記録を分けてみます。
| 比べる事柄 | 研究で見たもの | 家庭で確かめるもの |
|---|---|---|
| 本が家に並んでいること | Park(2008)は蔵書の違う家庭と読む力の関係を比較 | 誰の本があり、子が手に取っているか |
| 本の数を答えること | Heppt ほか(2022)は親と子の回答の違いを比較 | 数の見積もりと実際に使う本の違い |
| 余暇に読むこと | Mol ほか(2011)は読書量と読む力の関係を統合 | 最近選んだ本と、読み進めた様子 |
| 読む力と量の変化 | van Bergen ほか(2021)は成長に伴う関係の向きを追跡 | 読み進めやすさと、自分から読む様子 |
読む量を増やす前に、読み進められるかを見る
van Bergen ほか(2021)は、子ども200人を5歳から15歳まで追跡し、読む力と読む量の関係を調べました。小学校低学年では、読む力が高い子ほどたくさん読むという向きが中心でした。読む量が力を伸ばす向きは思春期になってから現れ、著者は、読み方を学ぶ段階から読んで学ぶ段階への移行を重視しています。年齢をまたいで関係を追うと、よく読む子の成績がよいという同じ見え方にも、異なる順序が含まれていました。
この違いを家庭の観察に移すなら、読む量を増やす課題を出す前に、現在の本をどう読んでいるかを見る順番になります。文字を追うところで止まるのか、言葉の意味で止まるのか、内容への関心が続かないのかを区別して尋ねます。いずれの場合も、読まないという結果だけを見て、本が不足していると決める必要はありません。子の説明に合わせて、読みたい内容と読み進めやすさを別々に確かめられます。
家庭で避けたいのは、蔵書の研究を理由に、読みにくい本を最後まで読む課題へ置き換えることです。たとえば、子が内容を選ぶ余地をなくし、読了の報告だけを求める運用なら、確かめたかった読書の様子より課題の達成が中心になります。読むのが負担だと話す子には、冊数を増やす前に、どの箇所で止まったかを一緒に見る対応が考えられます。これは本を読ませる方法の効果を断定する話ではなく、負担の所在を見落とさないための手順です。
すでに読むことを楽しんでいる子に対しても、保護者の棚と好みが同じかどうかを評価する理由はありません。親が読んでほしい本と、子が今知りたい内容を分けて聞けば、家庭の期待だけで本を選ぶ状況を避けられます。長い本を読んだかだけを尋ねるより、何にひかれて手に取ったかを聞くほうが、選んだ理由を具体的に知ることができます。読書量を見る際にも、子が話せる範囲の情報から始めます。
家庭では最近読んだ本から確かめる
まず、最近自分で選び、最後まで読んだ本を挙げられるか、子に聞いてみます。題名を正確に思い出せなくても、表紙や内容の説明で構いません。思いつかない場合は、途中まで読んだ本や、気になっている題材へ話を移します。ここでの目的は読書の成績を付けることではなく、次の本を選ぶ出発点を見つけることです。
その際は、読んだ理由と途中の様子を分けて聞きます。たとえば、表紙にひかれたのか、知りたいことがあったのかでは、次に探したい本も変わります。最後まで読めた場合は、どこが面白かったかを本人の言葉で聞き、止まった場合は、その場所を開いてみます。内容が合わなかったのか、言葉が難しかったのかを子と確かめるだけでも、選択を具体化できます。
- 自分で選んだ本や読んでいた本を、題名・表紙・内容のいずれかで挙げられるか
- 読み進めた場所と止まった場所を、子の説明と本を照らして確かめたか
- 次に知りたい内容が、保護者の希望と区別して聞けているか
- 新しく所有することに限らず、借りて読む選択も残しているか
次は、すきっぷ通りで書店に立ち寄る機会や、図書館を利用する機会に、次に読む本を子ども自身に選んでもらいます。実際に本を開ける場では、表紙だけで決めず、読み始めの文章にも目を通せます。保護者は本の格や厚さを採点する役ではなく、本人が選んだ理由を聞く役に回れます。すぐに候補が決まらなければ、知りたい内容を持ち帰り、改めて探す形でも構いません。
家庭に戻った後は、棚に収まったかより、その本を開いたか、続きが気になったかを確かめます。選んだ本が合わなかった場合は、選び直した理由も残すと、次の判断に使えます。本棚を埋めることを目標にするより、手に取った本と読んだ様子を結びつけるほうが、家庭で何を変えるかを具体的に決められます。蔵書の多さは背景を知る目安であり、次の行動を決める材料は子が本に向き合った様子です。
よくある質問
家の本が少ないと、子どもは不利ですか
本の少なさだけで、その子の学力や今後の成績を判断することはできません。蔵書の調査は家庭どうしの傾向を見るもので、家族の本を読まない子と、借りた本をよく読む子の違いまで総数で表すものではありません。家の棚をほかの家庭と比べる前に、読める本へ手が届いているかと、最近どのように読んだかを見てください。所有の数と、読む機会を分けると、家庭で確かめる対象が絞れます。
保護者自身が読書をしていないと、子の読む力は育ちませんか
保護者の読書への態度と子の読む力には関係がありますが、親が日常的に本を読まないことだけで子の読む力が決まるという結果ではありません。家庭で取り組む際は、保護者も同じ本を読み終えることを条件にせず、子が選んだ理由や気になった内容を聞くところから始められます。忙しくて本を読めない日も、次に探したい題材をメモするなど、読書の話を扱う形は選べます。
本を増やした後は、テストの点で効果を見ればよいですか
本を増やした時期のテストの点だけを見ると、授業で扱った内容や学習の進み方も一緒に変わっています。家庭での記録には、選んだ本、読んだ様子、止まった理由を残すほうが、次の選択と結びつけやすくなります。文章を読む課題で困っている場合は、実際の問題と本人の説明を並べて見ると、読書の量とは別に手助けしたい部分が見えてきます。点数と読書の記録は、異なる手掛かりとして扱います。
この記事の限界
本の数の測り方は親や子の回答に依存し、そのずれが学力との関係を大きく見せるか、小さく見せるかについても研究の結論がわかれています。蔵書数は家庭の豊かさや親の学歴の目安でもあり、ここで扱った研究には、本そのものの効果をそれらから分けて確かめた試験はありません。読む力を中心とする国際調査や海外の追跡が中心で、日本の家庭で本を増やした後の内申や定期テストの変化を直接測った結果は含みません。
電子書籍を調べた研究もありますが、所有する数と利用する量の違いがあり、読書の媒体を比べるには利用実態を別に捉える課題が残ります。電子書籍や図書館で借りた本は、家の本の数を尋ねる従来の調査ではほとんど数えられていません。
参考文献
- Park. Home Literacy Environments and Children’s Reading Performance: A Comparative Study of 25 Countries. Educational Research and Evaluation. 2008;14(6):489-505.
- Heppt ほか. Number of books at home as an indicator of socioeconomic status: Examining its extensions and their incremental validity for academic achievement. Social Psychology of Education. 2022;25(4):903-928.
- Brunello ほか. Books are Forever: Early Life Conditions, Education and Lifetime Earnings in Europe. The Economic Journal. 2017;127(600):271-296.
- Engzell. What Do Books in the Home Proxy For? A Cautionary Tale. Sociological Methods & Research. 2021;50(4):1487-1514.
- Eriksson ほか. Higher-achieving children are better at estimating the number of books at home: Evidence and implications. Front Psychol. 2022;13:1026387.
- Mol ほか. To Read or Not to Read: A Meta-Analysis of Print Exposure from Infancy to Early Adulthood. Psychological Bulletin. 2011;137(2):267-296.
- van Bergen ほか. How Are Practice and Performance Related? Development of Reading from Age 5 to 15. Reading Research Quarterly. 2021;56(3):415-434.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
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よくある質問
家の本が少ないと、子どもは不利ですか
本の少なさだけで、その子の学力や今後の成績を判断することはできません。蔵書の調査は家庭どうしの傾向を見るもので、家族の本を読まない子と、借りた本をよく読む子の違いまで総数で表すものではありません。家の棚をほかの家庭と比べる前に、読める本へ手が届いているかと、最近どのように読んだかを見てください。所有の数と、読む機会を分けると、家庭で確かめる対象が絞れます。
保護者自身が読書をしていないと、子の読む力は育ちませんか
保護者の読書への態度と子の読む力には関係がありますが、親が日常的に本を読まないことだけで子の読む力が決まるという結果ではありません。家庭で取り組む際は、保護者も同じ本を読み終えることを条件にせず、子が選んだ理由や気になった内容を聞くところから始められます。忙しくて本を読めない日も、次に探したい題材をメモするなど、読書の話を扱う形は選べます。
本を増やした後は、テストの点で効果を見ればよいですか
本を増やした時期のテストの点だけを見ると、授業で扱った内容や学習の進み方も一緒に変わっています。家庭での記録には、選んだ本、読んだ様子、止まった理由を残すほうが、次の選択と結びつけやすくなります。文章を読む課題で困っている場合は、実際の問題と本人の説明を並べて見ると、読書の量とは別に手助けしたい部分が見えてきます。点数と読書の記録は、異なる手掛かりとして扱います。