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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年10月22日

ピアノを習うと勉強ができるようになるか|音楽の習い事と学力の比較の研究

日曜朝、子どものピアノの練習を聞きながら、学校の勉強にも役立つのだろうかと思うことがあるかもしれません。Schellenberg(2004)は、音楽レッスンの効果について「効果は比較的小さいものの、知能検査の下位検査や指標、標準化された学力の測定にも広がった」と結論づけています。この一節を読むと、習い続ける理由が増えたようにも感じられます。けれども、何を習い、何と比べ、どの力を測ったのかまで読むと、日々の練習と教科の点数の関係はもう少し複雑です。

この記事の要点
  • 音楽レッスンで知能検査の成績が伸びた試験はありますが、効果は小さく、伸びた力も研究ごとに違います。
  • 楽器を続けた生徒の学校成績が高いという観察には、本人や家庭のもともとの違いも関わります。
  • 別の活動をする組との比較や無作為の組分けを重視すると、学力への効果はほぼ見られないという分析があります。
  • 家庭では、弾きたい気持ち、練習の負担、教科で困っている内容を分けて話し合います。

ピアノを習うと勉強ができるようになるか|音楽の習い事と学力の比較の研究

日曜朝、子どものピアノの練習を聞きながら、学校の勉強にも役立つのだろうかと思うことがあるかもしれません。Schellenberg(2004)は、音楽レッスンの効果について「効果は比較的小さいものの、知能検査の下位検査や指標、標準化された学力の測定にも広がった」と結論づけています。この一節を読むと、習い続ける理由が増えたようにも感じられます。けれども、何を習い、何と比べ、どの力を測ったのかまで読むと、日々の練習と教科の点数の関係はもう少し複雑です。

武蔵境駅周辺で習い事と学習支援の予定を組む家庭でも、「ピアノを続ければ、算数や国語も得意になるのか」という疑問は判断に関わります。音楽を習う子は成績がよい傾向がありますが、学力を上げるためにピアノを選ぶ根拠は弱く、本人が音楽を続けたいかを判断の中心に置くことを勧めます。音楽の練習の成果、知能検査の得点、学校の成績は、それぞれ別に見ていく必要があります。研究の比較をたどりながら、期待してよい範囲と、家庭で話し合う順序を確かめていきます。

要点

  • 音楽レッスンで知能検査の成績が伸びた試験はありますが、効果は小さく、伸びた力も研究ごとに違います。
  • 楽器を続けた生徒の学校成績が高いという観察には、本人や家庭のもともとの違いも関わります。
  • 別の活動をする組との比較や無作為の組分けを重視すると、学力への効果はほぼ見られないという分析があります。
  • 家庭では、弾きたい気持ち、練習の負担、教科で困っている内容を分けて話し合います。

「伸びた力」は知能検査か、教科の成績か

ピアノを習うと勉強にもよいと聞いたときは、まず「よくなった」とされるものの名前を確かめます。知能検査は、言葉や図形を使った推理などを測る検査で、その結果を表す指標に知能指数があります。学校の学力テストは、教科で学んだ内容の理解や習得を測るものです。どちらも点数になりますが、同じ成績表のように扱うと、研究の成果を広く読みすぎてしまいます。

Schellenberg(2004)は、子ども144人を鍵盤楽器か声楽のレッスン、演劇のレッスン、レッスンなしの組に分けました。くじ引きのように本人の希望によらず組を分ける、無作為化比較試験という方法です。音楽の組では比較相手より知能指数の伸びが大きく、効果は比較的小さいという結果でした。演劇の組には社会的な行動の伸びがあり、音楽だけに成果が出たという比較でもありませんでした。

Kaviani ほか(2014)は、イラン・テヘランの幼稚園に通う5〜6歳児60人を、音楽レッスンと音楽の授業に参加しない組に無作為に分けました。毎週75分のレッスンを12回行った音楽の組では、知能検査の言葉の推理と短期記憶が伸びました。一方で、数の推理と図の推理には差がなく、伸びは検査全体に一様ではありませんでした。この試験が測ったのは就学前の検査の成績で、学校の算数や国語の点数ではありません。

家庭で研究の説明を読む際には、成果の欄を「演奏」「検査」「教科」に分けると整理しやすくなります。短期記憶は、少しの間情報を覚えておく力を指します。その検査でよい結果が出たことを、漢字や文章題の苦手が解消するという約束に置き換えず、測った力の名前のまま受け取ります。

楽器を続けた子の成績が高いという観察

学校の成績を直接扱った報告として、Guhn ほか(2020)はカナダ・ブリティッシュコロンビア州の公立校の7〜12年生112,916人の記録を調べました。以前の成績や地域の経済状況などをそろえても、学校の音楽、とくに楽器を続けた生徒は数学・理科・英語の試験の点が高い傾向でした。これは習う活動を研究者が割り当てず、実際の参加状況を調べる観察研究です。この論文には訂正が出ているため、ここでは細かな効果の値を使わず、比較の性質を中心に読みます。

人数が多いことは、学校の現状を広く見るうえで強みになります。ただし、観察した人数を増やすことと、習う前からあった違いを取り除くことは別の作業です。調べられた条件を統計上そろえる方法と、希望にかかわらず活動を割り当てる方法には違いがあります。「楽器を続けた生徒の点が高かった」という結果は、実際に選ばれた活動と成績の結びつきを表しています。

Habibi ほか(2025)の追跡研究では、音楽を2年間続けた子は、習っていない子より認知や言語の課題の点が高く、絵を使った語彙の伸びも大きい結果でした。同じ研究には、認知の成績が後に音楽を続けるかどうかを予測したという結果も含まれています。つまり、習い事から子どもの力へという向きに加え、子どもの力から習い事の継続へという向きも考える必要があります。追跡して順序を見ることで、続けた後の差だけを眺める場合より、関係の読み方が増えます。

この区別は、周りの子と比べるときにも使えます。演奏も勉強も得意な子を見て、自分の子にも同じ習い事をさせたくなったら、その子がいつから何を好んでいたかという情報も必要になります。家庭で判断する際には、目に見える習い事だけを成績の理由にせず、今の子どもの希望と困りごとを先に確かめます。

習い事を選ぶ前からの違いを見る

Schellenberg(2011)は、音楽を習った9〜12歳の子と習っていない子を比べ、音楽経験のある子の知能指数が高いことを報告しました。一方で、行動を抑えたり考えを切り替えたりする実行機能とは、ほとんど関係がありませんでした。著者は関連する研究も踏まえ、知能指数の高い子が音楽を選びやすいという方向を重視して解釈しています。習い事の経験がある子の特徴を、すべて習い事によって身についた力と扱わないための視点です。

Corrigall と Schellenberg(2015)は、音楽経験の長さが異なる7〜9歳の170人と、その家庭の特徴を調べました。経済状況や知能をそろえても、子どもの性格や、親が新しい経験を受け入れる傾向が、音楽を習う期間の長さを予測していました。こうした、本人や家庭の特徴に応じて活動を選ぶことを自己選択と呼びます。研究結果を読むときには、習う子と習わない子が出発点で同じだったかが重要になります。

自己選択という考え方は、家庭の優劣をつけるものではありません。音楽を選ぶ理由も、続けるための条件も家庭ごとに異なるため、その違いを含めて比べているという意味です。子どもの性格から、向いている習い事や将来の成績を決めつけるために使うものでもありません。本人が音を出すことを楽しんでいるなら、その希望を具体的に聞く方が、集団の平均から本人の姿を推測するより話を進めやすくなります。

例えば、練習を嫌がった日は「音楽が嫌なのか」と一度に判断せず、曲が難しいのか、今は別のことをしたいのかを分けて尋ねます。反対に、楽しそうに弾いている日は、何がおもしろかったかを子どもの言葉で聞きます。これは性格を評価する検査ではなく、続け方を相談するための聞き方です。習い事の効果を期待する前に、本人が何を選んでいるのかを知る手順になります。

比較相手を変えると、効果の見え方も変わる

Sala と Gobet(2020)は、子どもの音楽訓練と認知・学業の研究をまとめたメタ分析を行いました。メタ分析は、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法です。無作為の組分けや比較相手の条件を重視すると、効果はほぼゼロで、小さな効果が出たのは無作為化せず、比較相手に別の活動をさせなかった研究でした。全体の平均だけでなく、どの方法の研究で差が出ているかが結論を左右します。

比較する組が何も習わない場合は、音楽を習う組だけにレッスンという活動が加わります。演劇や美術などを習う組と比べる場合は、別の活動にも参加する相手に対して音楽の組が上回るかを見ます。この違いを押さえると、「何かを始めたことによる差」と「音楽を選ぶことによる差」を考え分けられます。次の表は、試験ごとの比較相手と、判断に使う結果を並べたものです。

研究 比べた相手 対象 判断に使う結果
Schellenberg(2004) 演劇・レッスンなし 子ども 知能指数の伸びの差は比較的小さい
Kaviani ほか(2014) 音楽の授業に参加しない組 テヘランの幼児 言葉の推理と短期記憶は伸び、数と図の推理は差なし
Mehr ほか(2013) 美術・何もしない組 未就学児 音楽以外の力への一貫した効果なし

Mehr ほか(2013)は、未就学児が6週間音楽教室に参加する無作為化比較試験を行いました。最初の試験で出た空間の力の差は、次の試験で再現されませんでした。合わせて見ると、美術の組や何もしない組より、音楽の組は検査で一貫してよい結果を示しませんでした。同じような問いをもう一度試して結果が続くかを見ることも、習い事を学力対策として選ぶ際の判断材料です。

小さな効果を認める反論と、数学を一緒に教える研究

音楽と学力の関係について、研究者の見方がすべて一致しているわけではありません。Bigand と Tillmann(2022)は、前節のメタ分析と同じデータを分析し直し、効果量は g = .234 で、小さいものの統計的に意味のある効果が残ると報告しました。効果量は、差の大きさをばらつきを物差しにして表す数で、テストの点数そのものではありません。ここで争点となっているのは小さな効果の扱いであり、大きく学力が伸びるという結論ではありません。

音楽で練習したことが別の課題にも及ぶことは、転移と呼ばれます。研究を読む際は、音楽に近い力への転移なのか、離れた教科への転移なのかを確かめます。反論があることを理由に強い期待を持つより、何に対するどの程度の効果を議論しているかを読む方が、家庭の目的に合います。統計上の差が見られることと、子どもの苦手教科への対策として選べることの間にも、判断の段階があります。

Akın(2025)のメタ分析では、音楽の取り組みが数学の成績に与える効果は g = 0.36 と報告されました。著者は、強いプラスの転移が得られたのは、学ぶ場で音楽と数学を一緒に使った場合だと結論づけています。これは数学も教える活動を含む比較で、楽器の練習だけを続けて教科の変化を待つ状況とは条件が違います。取り組みの中身に数学の学習が入っているかどうかを読む必要があります。

家庭で音楽を使って数に触れる活動を楽しむなら、何を学ぶ時間にするかを先に決めます。音楽を楽しむ時間には演奏の目標を置き、教科の困りごとを扱う時間には教科書の該当箇所を開きます。両方を組み合わせる場合にも、子どもが説明したり解いたりする内容を確かめます。活動が楽しかったという感想と、学ぶ内容を理解したかという確認を分けて受け止めるためです。

続けるか迷ったときは、練習への気持ちから話す

続けるかを決める話は、成績が上がったかという採点から始めず、本人が今も弾きたいかを聞くところから始めます。好きな曲を弾くこと、レッスンで教わること、自宅で練習することを分けて尋ねると、続けたい部分と負担な部分を具体的に扱えます。音楽を学ぶこと自体の価値は、学力への効果を比べる研究の外にあります。教科の点数を、演奏を楽しむ時間の合否判定に使う必要はありません。

負担を確かめる際には、予定表を開いて、練習と宿題が重なる場面を子どもと一緒に探します。練習が終わらず宿題に取りかかれない日があるなら、どちらをどこで区切るかを相談します。本人が望まない練習を増やしてまで学力への効果を期待する選び方は、音楽を楽しめていない子には向きません。負担の確認は、ピアノが成績を下げたと決める作業ではなく、今の予定を調整するための作業です。

  • 弾きたい曲や続けたい活動を、本人の言葉で聞きます。
  • 練習で止まる箇所と、練習を始めにくい時間帯を分けて確かめます。
  • 宿題と重なる予定を見つけ、練習の区切り方を決めます。
  • 教科の困りごとは教材を開き、音楽の予定と別に学校の先生へ相談します。

見直した後は、本人が選んだ練習の形で続けたいと思えるかを、あらためて話します。続けたい気持ちはあっても負担が残る場合は、曲や課題の進め方を音楽を教える人に相談する材料になります。休むことを選ぶ場合にも、これまで弾けるようになったことを、学校の点数とは別に受け止めます。「勉強ができるようになるために続けなさい」という一言は、子どもに向ける言葉から外します。

よくある質問

算数が苦手なら、ピアノを始めるより先にすることはありますか

まず、算数のどの問題で手が止まるかを、教科書や宿題を開いて子どもと確かめます。計算の途中、問題文の意味、習った内容の思い出し方など、困っている箇所を学校の先生へ伝える材料にします。音楽と数学を一緒に教えた研究の成果は、前節のように数学の学習を含む条件で読めます。ピアノを始めるかどうかは音楽への希望で相談し、算数への手助けは困っている内容に沿って選びます。

成績が変わらないなら、続けてきた意味はないのでしょうか

成績の変化だけで、続けてきた音楽の時間を評価する必要はありません。好きな曲を弾けるようになったことや、自分で音を工夫する楽しさは、本人に聞いて確かめることができます。保護者の期待と本人の目的が違っていたら、今から続ける理由を話し直します。勉強への見返りを求めるより、本人が大切にしている演奏の経験を具体的な言葉で受け止めます。

練習を休ませるか、やめるかをすぐ決めるべきですか

まずは、ピアノそのものが嫌なのか、今の課題や予定が負担なのかを分けて聞きます。弾くことは好きでも課題が重いなら、練習の区切りや進め方を相談する余地があります。学校の勉強が心配な場合は、教科の困りごとも並べて確かめ、習い事だけに理由を求めないようにします。続ける、休む、進め方を変えるという選択肢を、本人が希望を言える形で示します。

この記事の限界

当てはまる範囲は、鍵盤楽器・声楽を含む音楽活動の比較や、海外の学校で音楽を続けた子の記録までで、日本の小中高生への適用には隔たりがあります。ピアノだけに絞って学校の成績を測る無作為化比較試験は、この研究群には含まれていません。

音楽の訓練は短期の教室から継続的な活動まで幅があり、比べた相手や分析方法によって、効果の評価が異なります。家庭での練習の負担や本人の希望は集団の平均から決まるものではなく、対話と日々の様子で確かめる事項です。教科のつまずきは学校の先生に、練習の進め方は音楽を教える人に具体的な場面を伝え、それぞれの支援を相談することが判断につながります。

参考文献

  1. Schellenberg EG. Music lessons enhance IQ. Psychol Sci. 2004;15(8):511-514.
  2. Kaviani H, Mirbaha H, Pournaseh M. Can music lessons increase the performance of preschool children in IQ tests? Cogn Process. 2014;15(1):77-84.
  3. Guhn M, Emerson SD, Gouzouasis P. A population-level analysis of associations between school music participation and academic achievement. J Educ Psychol. 2020;112(2):308-328.
  4. Habibi A, Hsu E, Villanueva J. Longitudinal Effects of Continuous Music Training on Cognitive Development: Evidence From the Adolescent Brain Cognitive Development (ABCD) Study. Ann N Y Acad Sci. 2025;1553(1):283-299.
  5. Schellenberg EG. Examining the association between music lessons and intelligence. Br J Psychol. 2011;102(3):283-302.
  6. Corrigall KA, Schellenberg EG. Predicting who takes music lessons: parent and child characteristics. Front Psychol. 2015;6:282.
  7. Sala G, Gobet F. Cognitive and academic benefits of music training with children: A multilevel meta-analysis. Mem Cognit. 2020;48(8):1429-1441.
  8. Mehr SA, Schachner A, Katz RC. Two randomized trials provide no consistent evidence for nonmusical cognitive benefits of brief preschool music enrichment. PLoS One. 2013;8(12):e82007.
  9. Bigand E, Tillmann B. Near and far transfer: Is music special? Mem Cognit. 2022;50(2):339-347.
  10. Akın A. Let me make mathematics and music together: A meta-analysis of the causal role of music interventions on mathematics achievement. Educational Studies. 2025;51(4):386-404.

通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。

  • 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
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よくある質問

算数が苦手なら、ピアノを始めるより先にすることはありますか

まず、算数のどの問題で手が止まるかを、教科書や宿題を開いて子どもと確かめます。計算の途中、問題文の意味、習った内容の思い出し方など、困っている箇所を学校の先生へ伝える材料にします。音楽と数学を一緒に教えた研究の成果は、前節のように数学の学習を含む条件で読めます。ピアノを始めるかどうかは音楽への希望で相談し、算数への手助けは困っている内容に沿って選びます。

成績が変わらないなら、続けてきた意味はないのでしょうか

成績の変化だけで、続けてきた音楽の時間を評価する必要はありません。好きな曲を弾けるようになったことや、自分で音を工夫する楽しさは、本人に聞いて確かめることができます。保護者の期待と本人の目的が違っていたら、今から続ける理由を話し直します。勉強への見返りを求めるより、本人が大切にしている演奏の経験を具体的な言葉で受け止めます。

練習を休ませるか、やめるかをすぐ決めるべきですか

まずは、ピアノそのものが嫌なのか、今の課題や予定が負担なのかを分けて聞きます。弾くことは好きでも課題が重いなら、練習の区切りや進め方を相談する余地があります。学校の勉強が心配な場合は、教科の困りごとも並べて確かめ、習い事だけに理由を求めないようにします。続ける、休む、進め方を変えるという選択肢を、本人が希望を言える形で示します。