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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年10月22日

脳トレのアプリで成績は上がるか|作業記憶の訓練と学習習慣の研究

夜九時、宿題を終えた子が脳トレの画面を開こうとするとき、保護者には遊びと勉強の境目が気になることがあります。「この練習を毎日続けたら、学校のテストも伸びますか」と尋ねたくなる場面です。脳トレで練習した課題は上達しますが、学校の成績まで上がるという確かな証拠は乏しいです。画面の得点が上がった喜びを認めることと、教科の勉強の代わりにすることは、別々に判断する必要があります。

この記事の要点
  • 練習した記憶課題の上達と、読み・算数など別の力への広がりは分けて評価します。
  • 算数や読みが伸びた報告はありますが、対象の選び方や学級の分け方に注意が必要です。
  • 別の活動をする組と比べた研究では、教科の力への確かな伸びが見られないという分析があります。
  • 家庭では教科の課題を決め、アプリの時間を思い出す練習に置き換えた場合と比べます。

脳トレのアプリで成績は上がるか|作業記憶の訓練と学習習慣の研究

夜九時、宿題を終えた子が脳トレの画面を開こうとするとき、保護者には遊びと勉強の境目が気になることがあります。「この練習を毎日続けたら、学校のテストも伸びますか」と尋ねたくなる場面です。脳トレで練習した課題は上達しますが、学校の成績まで上がるという確かな証拠は乏しいです。画面の得点が上がった喜びを認めることと、教科の勉強の代わりにすることは、別々に判断する必要があります。

武蔵境で通塾と家庭学習の予定を組む家庭でも、夜に残る時間を何に使うかは具体的な悩みになります。アプリを続けた回数だけで学習の成果を決めると、覚えたい漢字や解きたい問題とのつながりが見えにくくなります。そこで確かめたいのは、画面の中で何が伸びたか、画面を閉じてどんな課題に答えられるかという違いです。成績への効果を報告した研究も取り上げながら、比較の条件を読み解き、教科の練習と時間の使い方を比べる手順へ進みます。

要点

  • 練習した記憶課題の上達と、読み・算数など別の力への広がりは分けて評価します。
  • 算数や読みが伸びた報告はありますが、対象の選び方や学級の分け方に注意が必要です。
  • 別の活動をする組と比べた研究では、教科の力への確かな伸びが見られないという分析があります。
  • 家庭では教科の課題を決め、アプリの時間を思い出す練習に置き換えた場合と比べます。

画面の上達と教科の成果を分けます

脳トレという呼び名にはいろいろな課題が含まれますが、ここで扱う中心は作業記憶の訓練です。作業記憶とは、頭の中に一時的に情報を置いて操作する力を指します。たとえば見たものを覚えて順に答えるような課題で、その成績を伸ばす訓練と、国語や算数の力を伸ばす学習との関係が問われています。画面上で覚えられる量が増えたことを、そのまま文章題が解けるようになったことと数えると、測っている力を取り違えます。

練習した課題とは別の課題にも効果が及ぶことを、研究では転移と呼びます。似た記憶課題への広がりは近い転移、読みや算数など違う力への広がりは遠い転移として区別します。この区別を使うと、「記憶力が伸びた」という説明を見たときに、同じゲームの成績なのか、別の検査なのか、教科の成績なのかを確かめられます。保護者が知りたい学校のテストへの効果は、遠い転移に関わる問いです。

Simons ほか(2016)は、脳トレ会社が根拠として挙げた査読論文を点検した総説で、練習した課題の改善を支える証拠は豊富だとまとめています。一方、近い課題への証拠は少なく、遠い課題や日常の力への証拠はさらに乏しいという整理でした。また、研究の設計や分析に大きな欠点のある論文も多かったと報告しています。商品の説明を読む際は、研究が付いているかだけでなく、その研究が何を成果として測ったかまで見る必要があります。

成績につながった報告は、条件まで読みます

Holmes ほか(2009)は、作業記憶の低い子どもを対象に、力に合わせて難しくなる訓練と、難しさが変わらない訓練を比べました。難しくなる訓練では作業記憶の改善が続き、6か月後には算数の力も上がったと報告しています。訓練した記憶課題以外にも変化が見られた点で、期待を持たせる研究です。ただし、算数の改善という報告を読む際にも、対象が作業記憶の低い子どもだったという条件を一緒に受け止めます。

Jaeggi ほか(2011)が小学生と中学生で調べたのは、ゲームのような記憶課題と、練習していない推理の課題との関係です。訓練課題で大きく伸びた子だけが推理の課題でも伸び、その違いは訓練を離れて3か月後にも残りました。全員に同じ広がりが生じたという結果ではなく、訓練中の伸び方による違いを含んでいます。成果の指標は推理の課題であり、学校の教科の成績とは区別して読む研究です。

Söderqvist と Bergman Nutley(2015)は、4年生の訓練を受けた学級20人と、通常の授業を受けた別の学級22人を比べました。6年生での読みの改善は訓練した学級のほうが大きく、算数は差の傾向にとどまりました。くじ引きで子どもを組に分けた比較ではなく、学級ごとの比較なので、訓練と学級の違いを切り離す難しさがあります。読む力の改善を報告した点と、比較の規模が小さい点を、同時に受け止める必要があります。

Spencer-Smith と Klingberg(2015)は、特定の作業記憶訓練を扱う研究をまとめ、日常の不注意の改善を報告しました。対象には子どもと大人が含まれ、測っていたのは不注意の変化です。この論文には訂正が出ているため、引用先を見る際は訂正の記録も合わせて扱います。ここでの成果も、教科のテストの得点とは別の指標です。

子どもの研究をまとめると、遠い転移は小さめです

個々の研究で結果が違うときには、メタ分析という、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法が手掛かりになります。Sala と Gobet(2017)は、定型発達の子どもに限ったメタ分析で、訓練に近い力の効果量を g = 0.46、遠い力の効果量を g = 0.12 と報告しました。効果量は、差の大きさをばらつきを物差しにして表した数で、テストの得点や伸び率そのものではありません。この分析では、知能や読み書き、算数への広がりを支える証拠は乏しく、良い結果があっても小さいとまとめられています。

同じSala と Gobet(2017)の分析では、無作為に組を分け、比較相手にも別の活動をしてもらった研究ほど、効果が小さくなっていました。無作為に分けるとは、くじ引きのように本人や大人の判断で行き先を選ばずに組を作ることです。もともと得意な子や意欲のある子が訓練の側に集まる偏りを抑えるための工夫です。また、別の活動をする相手と比べることで、新しい活動に取り組むこと全体と、その訓練に特有の効果を見分けやすくします。

Melby-Lervåg と Hulme(2013)は、子どもと大人を含むメタ分析で、短期的な作業記憶の改善はあっても、知能や算数などへの確かな広がりはないとまとめました。さらにMelby-Lervåg ほか(2016)は、87本の論文に含まれる145の実験比較をまとめています。別の活動をした組との比較では、知能・読解・算数といった遠い力に確かな伸びが見られませんでした。成績への効果を考えるときには、訓練前の自分より良くなったかに加えて、別のことをした相手より伸びたかが大切です。

学校での試験では、何が伸びなかったのでしょうか

Roberts ほか(2016)は、オーストラリア・メルボルンの小学校で、作業記憶の低い子452人を無作為に訓練群と対照群に分けました。目で見る短期記憶には一時的な改善があった一方、読み・算数・つづりの利益は見られず、2年後の算数は訓練群のほうが低い結果でした。著者は、授業時間を失うことと持続的な利益がないことを含め、検査で対象を選んで学校で広く実施する方法を勧めていません。家庭での時間配分を考えるうえでも、訓練に使う時間だけでなく、その間に行わなくなる学習を見る視点が重要です。

Hitchcock と Westwell(2017)は、小学生148人を学級などの単位で分けて比べました。比較したのは、作業記憶の訓練、難しさが変わらない訓練、訓練なしという条件です。読解や算数、勉強中の集中、学校の先生が評価した行動のいずれにも効果が見られませんでした。次の表では、成果の種類と比較相手をそろえて、学校での試験の読みどころを並べます。

研究 伸びたもの 伸びなかったもの・不利だったもの 比べた相手
Roberts ほか(2016) 目で見る短期記憶の一時的な改善 読み・算数・つづりへの利益なし、後の算数は訓練群が低い 無作為に分けた対照群
Hitchcock と Westwell(2017) 教科や行動について明確な利益なし 読解・算数・集中・学校の先生が評価した行動 難しさが変わらない訓練群、訓練なしの群

アプリの時間が何と入れ替わるかを見ます

家庭で判断するときは、アプリをするかしないかだけでなく、その時間にほかに何をする予定だったかを考えます。宿題の誤りを直す時間や、授業で扱った内容を確かめる時間を削っているなら、その入れ替えが目的に合うかを点検します。成績を伸ばしたくて始めた場合ほど、教科の学習へ時間を戻す選択を残しておくことが大切です。楽しみとして続ける場合は、学力を上げるための必須課題という位置づけから外して話せます。

向かない場面としてまず挙げたいのは、アプリの得点を上げるために、本人が確かめたい教科の内容へ手を付けられなくなっている場合です。うまくできるまで終われない決め方にしているなら、得点の達成を終了条件にせず、予定していた区切りで終える形に変えます。画面が見づらい子や、操作の速さを求められることが負担な子には、その負担も選択の材料になります。こうした場合の見直しは、子どもの能力の評価ではなく、今の課題と道具の組み合わせを調整するための提案です。

また、アプリの記録を学校の成績と結びつけて子どもを問い詰める必要はありません。得点が伸びたときは、その課題でできることが増えたという範囲で受け止められます。教科でつまずいているなら、問題文のどこで止まったか、用語を思い出せるか、解き方を選べるかを別に確かめます。アプリを続けた努力の評価と、次に練習する内容の相談を分けると、家庭で話すべきことが具体的になります。

来週は教科の「思い出す練習」と比べます

家庭での比較は、今ある学習時間をどう使うか選ぶための試し方として行います。まず子どもと、覚えたい漢字や英単語、解き直したい計算など、学校で扱った範囲から確かめる内容を決めます。「勉強全体が良くなったか」ではなく、意味を答えられるか、手順を説明できるかといった見方にすると、後から確かめやすくなります。新しい教材を増やす前に、手元の教科書や返された課題で準備できます。

比べる期間は、いつものアプリを使う週と、その時間を教科の練習に置き換える週を1週間ずつ設けます。教科の週には、答えを隠して思い出し、その後に開いて確かめ、間違えた部分をもう一度扱います。時間はアプリを使っていた枠に収め、比較のために夜の予定を長くしない形にします。どちらの週にも同じ範囲を確かめる短い課題を置き、答えられた内容と本人の取り組みやすさを見ます。

書くのに時間がかかる子なら、知識を思い出せるかの確認は口頭にする選択もあります。つづりや漢字の形を確かめたいときには書く課題を使い、何を見たいかに合わせて方法を選びます。読みが負担になる場合も、問題を読んでもらってから答えるなど、普段の支え方を両方の週でそろえます。支え方を変えた日や新しい単元へ進んだ日は、その違いを結果と一緒に残します。

始める前に、次の項目を親子で確認すると、週末の話し合いに使えます。正答だけを見るか、本人の負担も見るかを先に決めておくと、結果を見てから都合のよい基準へ変えることを避けやすくなります。比較が続けにくい場合には、準備する課題を小さくし、普段の学習に組み込む形にします。

  • 確かめたい教科と範囲が決まっているか
  • アプリの週と教科の週で、使う時間の枠がそろっているか
  • 答えを見る前に思い出した内容を確認できるか
  • 親が手伝った部分と、自分で答えた部分を区別できるか
  • 続けやすさや負担を本人から聞けるか

週末には、得点の勝ち負けだけでなく、次の学校の課題に使えた内容と、まだ練習したい内容を話します。教科の練習へ置き換えたほうが目的に合っていれば、その時間配分を続ける選択ができます。来週は、いつもの脳トレの時間を、教科書の答えを隠して思い出す時間に置き換えて試します。

よくある質問

アプリの得点が上がったら、続ける意味はありますか

その課題を上手にできるようになった成果として受け止められます。続ける目的が楽しみなのか、学校の学習を助けることなのかで、判断する材料を分けます。「画面の上達と教科の成果を分けます」の節のように、成績が目的なら、教科の課題に答えられるかも見ます。アプリの達成感を認めながら、教科に使う時間を別に確保する選び方もあります。

作業記憶が低いと言われた子には勧められますか

作業記憶の低い子を対象に改善を報告した研究と、学校で成績への利益が見られなかった試験の両方があります。検査の結果だけで家庭の訓練を決めず、授業や宿題で何に困っているかを先に確かめます。学校の先生や検査を担当した専門家へは、困る課題の実物を持って相談すると、必要な支え方を話しやすくなります。

家庭で比べるとき、同じ問題を使えばよいですか

同じ問題を使う場合は、前に答えを見た経験も含めて結果を読みます。範囲と難しさが近い別の問題も用意し、覚えた答えだけでなく解き方を説明できるかを確かめる方法があります。家庭での短い比較は、アプリの効果を証明する試験ではなく、次に何を練習するか選ぶ材料です。点が変わらないときも、止まった箇所が具体的になれば、学校で相談する内容につなげられます。

この記事の限界

比べた相手は、通常の授業を受ける学級、難しさが変わらない訓練をする組、別の活動をする組など、研究によって異なります。対象にも作業記憶の低い子とそれ以外の子が含まれ、測ったものも記憶課題、推理、不注意、教科の学力とさまざまです。

日本の小中高生が市販の脳トレアプリを家庭で使い、定期テストや内申を伸ばしたか、学習習慣を身につけたかは、この研究群では確かめられていません。家庭で週を分けて比べる方法も、授業の進み方や試す順番の影響を受けるため、得点差をアプリだけの効果とは判断できません。個々の学習上の困りごとは、学校の課題や取り組んだ様子をもとに、学校の先生と相談して支援を選ぶ必要があります。

参考文献

  1. Simons DJ, Boot WR, Charness N. Do “Brain-Training” Programs Work? Psychol Sci Public Interest. 2016;17(3):103-186.
  2. Holmes J, Gathercole SE, Dunning DL. Adaptive training leads to sustained enhancement of poor working memory in children. Dev Sci. 2009;12(4):F9-15.
  3. Jaeggi SM, Buschkuehl M, Jonides J. Short- and long-term benefits of cognitive training. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011;108(25):10081-10086.
  4. Söderqvist S, Bergman Nutley S. Working Memory Training is Associated with Long Term Attainments in Math and Reading. Front Psychol. 2015;6:1711.
  5. Spencer-Smith M, Klingberg T. Benefits of a working memory training program for inattention in daily life: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2015;10(3):e0119522.
  6. Sala G, Gobet F. Working memory training in typically developing children: A meta-analysis of the available evidence. Dev Psychol. 2017;53(4):671-685.
  7. Melby-Lervåg M, Hulme C. Is working memory training effective? A meta-analytic review. Dev Psychol. 2013;49(2):270-291.
  8. Melby-Lervåg M, Redick TS, Hulme C. Working Memory Training Does Not Improve Performance on Measures of Intelligence or Other Measures of “Far Transfer”: Evidence From a Meta-Analytic Review. Perspect Psychol Sci. 2016;11(4):512-534.
  9. Roberts G, Quach J, Spencer-Smith M. Academic Outcomes 2 Years After Working Memory Training for Children With Low Working Memory: A Randomized Clinical Trial. JAMA Pediatr. 2016;170(5):e154568.
  10. Hitchcock C, Westwell MS. A cluster-randomised, controlled trial of the impact of Cogmed Working Memory Training on both academic performance and regulation of social, emotional and behavioural challenges. J Child Psychol Psychiatry. 2017;58(2):140-150.

通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。

  • 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
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  • 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人

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よくある質問

アプリの得点が上がったら、続ける意味はありますか

その課題を上手にできるようになった成果として受け止められます。続ける目的が楽しみなのか、学校の学習を助けることなのかで、判断する材料を分けます。「画面の上達と教科の成果を分けます」の節のように、成績が目的なら、教科の課題に答えられるかも見ます。アプリの達成感を認めながら、教科に使う時間を別に確保する選び方もあります。

作業記憶が低いと言われた子には勧められますか

作業記憶の低い子を対象に改善を報告した研究と、学校で成績への利益が見られなかった試験の両方があります。検査の結果だけで家庭の訓練を決めず、授業や宿題で何に困っているかを先に確かめます。学校の先生や検査を担当した専門家へは、困る課題の実物を持って相談すると、必要な支え方を話しやすくなります。

家庭で比べるとき、同じ問題を使えばよいですか

同じ問題を使う場合は、前に答えを見た経験も含めて結果を読みます。範囲と難しさが近い別の問題も用意し、覚えた答えだけでなく解き方を説明できるかを確かめる方法があります。家庭での短い比較は、アプリの効果を証明する試験ではなく、次に何を練習するか選ぶ材料です。点が変わらないときも、止まった箇所が具体的になれば、学校で相談する内容につなげられます。