- 読みが遅れている子の一部に改善が出た試験がありますが、追試では読みや記憶に一貫した差が出ませんでした。
- 改善した検査と改善しなかった検査を分けると、学力全般が伸びたという理解との違いが見えます。
- 偽薬との比較と魚を食べる群との比較では、確かめている問いが違います。
- 成績を上げる目的でサプリを選ぶ前に、食事と睡眠の記録、学習で困る場面の整理ができます。
魚の油のサプリで子の成績は上がるか|DHAと学力の研究
学年末に子どもの答案を見返すと、次の学年までに家庭でできることを探したくなります。「魚の油のサプリを飲めば、読む力や記憶も伸びるのでしょうか」と気になる保護者もいるでしょう。健康な子がサプリを飲むことで、読みや記憶、学校の成績が安定して上がるという根拠は乏しいです。 一部の子や検査で改善した報告はありますが、同じ研究班の追試では再現されませんでした。
オメガ3脂肪酸は魚の油に多く含まれる脂肪の一種で、DHAはその仲間です。成分について知ることと、その成分を追加して教科の学習が進むかを確かめることは、別の問いになります。研究を読むときには、飲ませた子の変化だけでなく、何を飲んだ子と比べ、どの力を測ったかに目を向けます。読む時間を測る検査と学校の成績を区別すると、「効果があった」という言葉の中身が見えてきます。
武蔵境の学校に通う子について考える際も、商品を選ぶ前に、困っている場面と普段の生活を確かめる順序が役立ちます。食事を変えることを急がず、まずは魚を含む食事と睡眠の様子を記録する方法があります。以下では研究の比較をたどり、家庭で相談の準備をする手順まで扱います。
要点
- 読みが遅れている子の一部に改善が出た試験がありますが、追試では読みや記憶に一貫した差が出ませんでした。
- 改善した検査と改善しなかった検査を分けると、学力全般が伸びたという理解との違いが見えます。
- 偽薬との比較と魚を食べる群との比較では、確かめている問いが違います。
- 成績を上げる目的でサプリを選ぶ前に、食事と睡眠の記録、学習で困る場面の整理ができます。
読みの改善は、追試でも続いたのか
Richardson ほか(2012)は、英国オックスフォードシャーの普通の小学校で、読みが遅れ気味の7〜9歳の子を調べました。条件に合った362人を対象に、DHAと、味や色を似せた偽薬を比べています。偽薬とは、調べたい成分を含まず、比較のために用いるものです。この試験のDHAは藻類の油に由来し、比較側にはトウモロコシ油と大豆油が使われました。
この研究は、くじ引きのように偶然で組を分ける無作為化比較試験です。さらに、参加者側と評価する側の双方が割り当てを知らない二重盲検という方法を採っています。どちらを使っているかという期待が、評価に混ざることを抑えるための仕組みです。家庭で飲む前と後だけを比べる場合より、成分を追加した違いを確かめやすい設計になっています。
Richardson ほか(2012)の結果を全体で見ると、読みへの効果はありませんでした。一方、読みが特に遅れていた一部の子では、改善が認められています。親による行動の評価は改善しましたが、学校の先生の評価と作業記憶にはほとんど効果がありませんでした。作業記憶とは、情報を頭の中に一時的に置き、使う力です。
その後、Montgomery ほか(2018)は、同じ研究班による追試で英国の読みが特に遅れている子376人を無作為に分けました。同じDHAを用い、偽薬を飲む群と比べましたが、読み・作業記憶・行動の変化に一貫した差は出ませんでした。追試は、最初の有望な結果が別の参加者でも起きるかを確かめる役割を持ちます。読みの苦手さだけでサプリの効果を期待するより、最初の報告と追試を組にして受け止める必要があります。
改善したのは、どの検査だったのか
Johnson ほか(2017)は、スウェーデンの普通学級の子ども154人で、オメガ3とオメガ6を含む製剤を偽薬と比べました。3か月後には、文字と音を対応させて読む時間や、見た文字を分析する時間など、一部の読みの指標が改善しました。注意の問題が大きい子では効果が目立ったと報告しています。使った製剤には別の脂肪酸も含まれるため、結果を読む際は成分の組み合わせも比較条件に含めます。
Al-Ghannami ほか(2019)がオマーンのマスカットで行った試験は、魚油のサプリと焼き魚を食べる群の比較でした。認知の検査、つまり記憶や情報の処理などを調べる課題のうち、差が出たのは特定の検査だけでした。この試験には偽薬の群がなく、参加者がどちらの群かを知っている非盲検の方法が使われています。魚を食べる場合との比較として読み、偽薬に対する効果を調べた試験とは区別します。
比べた相手と測った力を並べると、改善という言葉が指す範囲を追いやすくなります。表の「改善の範囲」は、その研究で見えた結果を示しています。「子どもの学力」という大きな言葉にまとめる前に、対象と検査の組み合わせに目を向けます。
| 研究 | 対象 | 比べた相手 | 改善の範囲 |
|---|---|---|---|
| Johnson ほか(2017) | スウェーデンの普通学級の子 | 偽薬 | 文字と音を対応させる時間など、一部の読みの指標 |
| Al-Ghannami ほか(2019) | オマーンの子 | 焼き魚を食べる群 | 特定の認知検査。非盲検の比較 |
| Parletta ほか(2013) | オーストラリアの先住民の遠隔地の学校の子 | 偽薬 | 人物画の検査は改善。読み・つづりには効果なし |
記憶や学校の成績を調べた結果を読む
Cooper ほか(2015)は、大人と学齢期の子を含む24本の試験をメタ分析でまとめました。メタ分析とは、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法です。対象は、オメガ3の補充を偽薬と比べた無作為化試験で、全体でも健康な人の群でも、認知の指標に改善は見られませんでした。もともとオメガ3が不足していた人では短期記憶の改善が報告されましたが、著者は効果の証拠を限定的に評価しています。
普通の学校の子を広く対象にした試験にも目を向ける必要があります。Kirby ほか(2010)は、8〜10歳の450人でオメガ3と偽薬を比べました。16週間後に、多くの認知・行動の指標のうち差が出たのは3つだけで、そのうち1つは偽薬の方が良い結果でした。成分を飲んだ側が全般に優れていたという結果ではなく、測った項目ごとのばらつきが目立ちます。
学校の成績そのものを調べたvan der Wurff ほか(2023)は、血中のオメガ3が低い思春期の子を対象にしました。オキアミ油と偽薬を比べ、英語・オランダ語・数学の成績と数学の標準テストを測っています。成績にも数学のテストにも、統計的に明確な効果は見られませんでした。ただし途中で参加をやめた子や飲み忘れた子が多く、著者は慎重な解釈を求めています。
家庭の判断では、検査の改善と、期待している学校での変化を対応させることが大切です。たとえば知りたいのが文章題の理解なら、文字を読む時間だけの結果とは分けて考えます。保護者が望む変化を「宿題の指示を読める」「習った内容を説明できる」のように言葉にすると、研究との違いも、相談したい点も具体的になります。商品についての説明を読むときも、効果という言葉の後に、実際に測った項目が書かれているかを確かめます。
「不足している子なら効く」を家庭で決めない
van der Wurff ほか(2020)は、子どもから若い成人までの試験33本を系統的レビューで調べました。系統的レビューとは、あらかじめ決めた条件で研究を集め、結果や方法を点検するまとめ方です。摂取量が多く、血中のオメガ3の指標が十分に上がった試験ほど、認知への効果が出やすいと報告しています。それでも定型発達の子を対象にした量の多い試験で、改善があったのは半分でした。
このレビューは、量と結果の関係を考える手掛かりですが、家庭で増量するための基準とは用途が違います。血中の指標を含む研究条件と、家で魚を食べた回数とを同じ物差しにすることは避けます。「魚が苦手」「最近食べていない」という生活上の事実は、相談時に伝える材料として扱います。成績の伸び悩みを、そのまま特定の成分の不足に結びつけない姿勢が必要です。
Tan ほか(2016)は、学習障害のある子への脂肪酸の補充について、条件に合う2本の小さな試験、計116人を検討しました。ところが、読み・書き・つづり・算数を標準的な検査で測った点数は、どちらの試験でも報告されていませんでした。そのため、学習の力への効果を結論づける証拠は不足しているとしています。学習上の困難が大きいこと自体を、サプリを選ぶ根拠にしないために重要な結果です。
子どもの困り方を尋ねるときは、原因を先に決めず、実際に起きている場面から話します。「何を読んでいるときに止まるか」「説明を聞いた後、どこまで自分で進められるか」を尋ねる形があります。本人の返事を栄養の話へ急いで結びつけず、答案や宿題と照らして確かめます。食事に関する相談と、学習の進め方に関する相談をそれぞれ具体的にすると、家族も相談先も話の焦点を合わせやすくなります。
体調の変化と、向かない選び方を確かめる
学力への期待だけで選ぶ前に、研究で記録された体調の変化にも目を向けます。Johnson ほか(2017)には軽い腹痛や下痢の記録があり、Tan ほか(2016)のレビューでも消化器症状が扱われています。ここでいう消化器症状は、おなかや消化に関する不調です。サプリを始める前には、かかりつけの医師に相談してください。
相談では、何を改善したくて検討しているかを最初に伝えます。読むときの困りごと、普段の食事、睡眠、すでに使っているサプリなどを、わかる範囲でまとめておきます。候補がある場合は、名称だけでなく成分が書かれた表示も見せられるようにします。これは自分で適否や量を決める手順ではなく、医師が状況を把握するための準備です。
学力だけを目的に、本人が嫌がるものを続けさせる選び方は向いていません。「飲んでいるのに、なぜ覚えられないの」と成果を求める声かけも避けたいところです。研究の結果は、子どもに成績を約束させる材料にはなりません。本人が負担に感じていることを聞き、学習で必要な手助けを別に考えます。
成績が変わったときも、すぐにサプリの結果と決める前に、同じ時期の出来事を見返します。習った単元、取り組んだ課題、学校での説明など、前後で違う条件を書き添える方法があります。家庭の記録は、研究のように条件をそろえた比較とは異なりますが、相談で経過を伝える役には立ちます。飲む前後の点数を追うことが子どもの負担になるなら、点数以外の困りごとを話せる時間を設けます。
来週は、普段の食事と睡眠を確かめる
家庭でまず行うこととして、魚を含む普段の食事と睡眠を1週間記録する方法があります。これは成績を上げる方法の実験ではなく、現在の生活を思い出して相談するための準備です。食事を評価したり、望ましい量に合わせたりするより、実際に食べた料理と眠った頃の時刻を残します。正確に思い出せない日は空欄にし、子どもに答えを急がせずに進めます。
記録を始める前には、家族で残す項目をそろえます。魚が入っていたかだけでなく、料理名がわかれば書き、食べにくかったものがあれば本人の言葉を添えます。睡眠については、寝床に入った頃と起きた頃の時刻に加え、朝の眠さを本人に聞く方法があります。眠った時刻を把握しているかと、寝床に入った時刻とは区別して扱います。
見返す際には、食事の偏りを本人の責任にせず、家族で把握できたことから話します。学習については、持ち帰った答案のうち本人が説明しやすいものを選び、どこで困ったかを聞きます。学校の先生には、その課題で家庭が見た様子を伝え、授業中の様子と照らし合わせます。医師への相談には食事や睡眠の記録を持参し、成績への期待も含めて話します。
記録をつけ終えても、家だけで成分の不足を判定する必要はありません。相談の材料がそろったことを一区切りにし、子どもに細かな監視が続くと思わせない配慮が必要です。来週は、食事と睡眠の記録を子どもと一緒に見返す時間を設けます。
よくある質問
魚をあまり食べない子なら、サプリを選ぶべきですか
魚をあまり食べないというだけで、学力のためにサプリを選ぶ判断はできません。不足している人に効果の兆しがあったという研究は、普段の献立だけで不足を決める根拠とは別です。まず食べている料理や食べにくさを残し、補充を考える理由と一緒に医師へ伝えます。本人の好みを責めず、現在の生活を共有することが相談の出発点になります。
「読みの検査で改善」とあれば、国語の成績も上がりますか
研究で改善した検査の内容を、先に確かめる必要があります。文字と音を対応させる時間を測ることと、文章の意味を理解して答えを書くことでは、評価する課題が違います。本文の比較表では、それぞれの研究が扱った範囲を分けています。家庭で望む変化を具体的にして、研究が測った項目と同じかを見比べると、期待を広げすぎずに読めます。
飲み始めて点数が上がったら、効果と考えてよいですか
点数が上がったことは喜びながら、サプリだけが原因かという判断は分けます。同じ時期に学んだ内容や練習の仕方も変わるため、飲む前後の点数だけでは条件がそろいません。研究で偽薬との比較や無作為の割り当てを使うのは、こうした違いを小さくするためです。家庭では、点数の変化を本人への期待や圧力に変えず、取り組みの経過として受け止めます。
この記事の限界
比較相手は偽薬が中心ですが、魚を食べる群と比べた試験もあり、製剤の成分や評価した課題も研究ごとに異なります。読みの検査や認知の課題が中心で、日々の宿題や教科の成績を扱った結果とは測定の範囲が違います。
日本の子や、魚をよく食べる食生活の国の子について、成績への効果を確かめた試験はここで扱った研究群にはありません。もともとの食事や健康状態、読みの困難の程度が異なるため、個々の子への適否はこれらの結果だけでは決められません。学習上の困りごとは学校の先生と共有し、食事やサプリについては本人の状態を知る医師との相談が判断の土台になります。
参考文献
- Richardson AJ, Burton JR, Sewell RP. Docosahexaenoic acid for reading, cognition and behavior in children aged 7-9 years: a randomized, controlled trial (the DOLAB Study). PLoS One. 2012;7(9):e43909.
- Montgomery P, Spreckelsen TF, Burton A. Docosahexaenoic acid for reading, working memory and behavior in UK children aged 7-9: A randomized controlled trial for replication (the DOLAB II study). PLoS One. 2018;13(2):e0192909.
- Johnson M, Fransson G, Östlund S. Omega 3/6 fatty acids for reading in children: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial in 9-year-old mainstream schoolchildren in Sweden. J Child Psychol Psychiatry. 2017;58(1):83-93.
- Al-Ghannami SS, Al-Adawi S, Ghebremeskel K. Randomized open-label trial of docosahexaenoic acid-enriched fish oil and fish meal on cognitive and behavioral functioning in Omani children. Nutrition. 2019;57:167-172.
- Parletta N, Cooper P, Gent DN. Effects of fish oil supplementation on learning and behaviour of children from Australian Indigenous remote community schools: a randomised controlled trial. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2013;89(2-3):71-79.
- Cooper RE, Tye C, Kuntsi J. Omega-3 polyunsaturated fatty acid supplementation and cognition: A systematic review and meta-analysis. J Psychopharmacol. 2015;29(7):753-763.
- Kirby A, Woodward A, Jackson S. A double-blind, placebo-controlled study investigating the effects of omega-3 supplementation in children aged 8-10 years from a mainstream school population. Res Dev Disabil. 2010;31(3):718-730.
- van der Wurff ISM, von Schacky C, Bergeland T. Krill oil supplementation’s effect on school grades in typically developing adolescents. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2023;191:102553.
- van der Wurff ISM, Meyer BJ, de Groot RHM. Effect of Omega-3 Long Chain Polyunsaturated Fatty Acids (n-3 LCPUFA) Supplementation on Cognition in Children and Adolescents: A Systematic Literature Review with a Focus on n-3 LCPUFA Blood Values and Dose of DHA and EPA. Nutrients. 2020;12(10):3115.
- Tan ML, Ho JJ, Teh KH. Polyunsaturated fatty acids (PUFAs) for children with specific learning disorders. Cochrane Database Syst Rev. 2016;9:CD009398.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
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よくある質問
魚をあまり食べない子なら、サプリを選ぶべきですか
魚をあまり食べないというだけで、学力のためにサプリを選ぶ判断はできません。不足している人に効果の兆しがあったという研究は、普段の献立だけで不足を決める根拠とは別です。まず食べている料理や食べにくさを残し、補充を考える理由と一緒に医師へ伝えます。本人の好みを責めず、現在の生活を共有することが相談の出発点になります。
「読みの検査で改善」とあれば、国語の成績も上がりますか
研究で改善した検査の内容を、先に確かめる必要があります。文字と音を対応させる時間を測ることと、文章の意味を理解して答えを書くことでは、評価する課題が違います。本文の比較表では、それぞれの研究が扱った範囲を分けています。家庭で望む変化を具体的にして、研究が測った項目と同じかを見比べると、期待を広げすぎずに読めます。
飲み始めて点数が上がったら、効果と考えてよいですか
点数が上がったことは喜びながら、サプリだけが原因かという判断は分けます。同じ時期に学んだ内容や練習の仕方も変わるため、飲む前後の点数だけでは条件がそろいません。研究で偽薬との比較や無作為の割り当てを使うのは、こうした違いを小さくするためです。家庭では、点数の変化を本人への期待や圧力に変えず、取り組みの経過として受け止めます。