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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年11月1日

好奇心の強い子は成績が伸びるか|知りたい気持ちと学力の研究と保護者

図書館の棚の前で、子どもが図鑑を開き、気になった写真を指で示しています。Shah ほか(2018)が米国の6200人を調べた研究では、幼稚園の時点で好奇心が高いと親に評価された子ほど、読みと算数の成績がやや高い傾向がありました。好きなことを次々に調べる子を見ると、その気持ちを育てれば学校の成績も伸びるのかと気になります。好奇心と成績には関連がありますが、好奇心を育てれば成績が上がるという因果関係までは確かめられていません。

この記事の要点
  • 好奇心が高い子ほど読み・算数がやや高いという調査結果は、好奇心を育てる授業の効果とは別です。
  • 成人の実験では、答えを強く知りたいと思った問題は、翌日にも覚えやすいという結果でした。
  • 好奇心に近い性格の測り方と、知識・成績などの測る対象によって、関連の強さは変わります。
  • 家庭での観察では、子が出した問いと、答えを確かめた後の説明を分けて残す方法が考えられます。

好奇心の強い子は成績が伸びるか|知りたい気持ちと学力の研究と保護者

図書館の棚の前で、子どもが図鑑を開き、気になった写真を指で示しています。Shah ほか(2018)が米国の6200人を調べた研究では、幼稚園の時点で好奇心が高いと親に評価された子ほど、読みと算数の成績がやや高い傾向がありました。好きなことを次々に調べる子を見ると、その気持ちを育てれば学校の成績も伸びるのかと気になります。好奇心と成績には関連がありますが、好奇心を育てれば成績が上がるという因果関係までは確かめられていません。

この違いは、学習支援に何を期待するかにも関わります。知りたいと思った答えを覚えること、日頃から知的な活動を好むこと、教科の成績が高いことは、それぞれ別の測定対象です。研究には、幼い子を親が評価した調査も、成人が問題の答えを覚える実験もあり、見ている時間の幅も違います。好奇心をひとまとめの長所として扱う前に、誰の何を測り、何と比べた結果なのかをたどると、期待できる範囲が見えてきます。

要点

  • 好奇心が高い子ほど読み・算数がやや高いという調査結果は、好奇心を育てる授業の効果とは別です。
  • 成人の実験では、答えを強く知りたいと思った問題は、翌日にも覚えやすいという結果でした。
  • 好奇心に近い性格の測り方と、知識・成績などの測る対象によって、関連の強さは変わります。
  • 家庭での観察では、子が出した問いと、答えを確かめた後の説明を分けて残す方法が考えられます。

好奇心と学力の関連は、成績を上げる効果と違う

「好奇心の強い子は勉強も伸びる」という言い伝えには、今の成績の高さと、これからの伸びが重なっています。ある時点で好奇心が高い子の成績も高ければ、両者に相関、つまり一緒に高くなったり低くなったりする関係があると表せます。一方、好奇心を育てる働きかけの後に成績が改善したかを問うには、働きかけを受けた場合と受けなかった場合を比べる設計が要ります。人どうしの違いと、同じ人に働きかけた後の変化は、研究上も別の問いです。

von Stumm ほか(2011)は、メタ分析という複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法で得た相関を使い、成績と知能、知的好奇心、努力の関係を検討しました。知的好奇心は、日頃から知的なことに関わろうとする傾向として捉えられています。努力に当たる誠実性は、まじめさや計画性などの性格の傾向です。成績を最も強く予測したのは知能で、好奇心と努力も直接の予測因子となり、合わせた予測力は知能に匹敵すると報告されました。

ここでいう予測は、集めたデータの中で成績の違いをどれだけ説明できるかという意味です。研究者は既存の相関を組み合わせ、要因どうしのつながりを表す経路モデルを検討しています。新たに子どもへ問いかけ方を教え、その後の点数の伸びを追った研究とは設計が異なります。知的好奇心を成績と関わる要因として位置づけた点と、教え方の効果を測ったかという点を分けると、この研究の役割が明確です。

よく言われること 研究で扱った内容 比べた相手・条件 対象
好奇心が高い子は成績も高い 好奇心の評価と読み・算数の関連 親が評価した好奇心の程度の違い 米国の幼稚園児
知りたい答えは覚えやすい 問題への好奇心と答えの記憶 答えを知りたい気持ちの強弱 成人の実験参加者
好奇心を育てれば成績が上がる 育てる働きかけによる変化が問われる 働きかけをする組としない組 上の調査・記憶実験とは別の検証対象

幼稚園児の読み・算数と結びついた親の評価

Shah ほか(2018)は、米国で出生時から追っている子どもの調査データを使いました。幼稚園の時点の好奇心は親の回答から得点にし、読みと算数は子どもに直接測定しています。好奇心が高いと評価された子ほど、読み・算数がやや高いという関係が見られました。家庭の経済状況が低い子では、その関係が大きかったという結果も報告されています。

この分析では、自分の注意や行動を調整する自己制御や、家庭の条件を考慮しています。単に好奇心と読み・算数を並べるだけでなく、ほかの特徴と重なる部分を統計的に調整したうえで関連を調べた点が特徴です。ただし、好奇心も学力も幼稚園の同じ時点で測った横断研究、つまりその時点の姿を比べる調査です。出生時から続く調査に含まれていても、この分析で問うているのは同じ時点での関連です。

親の回答と直接の学力測定を組み合わせた点にも意味があります。読み・算数の高さまで親の印象だけで答えている調査とは異なり、学力の側には子ども自身の課題の結果が使われています。一方、好奇心の得点は、大人から見た子の様子を反映します。親の評価による好奇心と、その場で本人が感じた「答えを知りたい」という気持ちは、同じ測り方ではありません。

家庭の経済状況による違いも、支援の効果の違いとは区別されます。調査で関連が大きかったことは、その層で好奇心の評価が学力の違いと強く結びついていたことを意味します。家庭に新しい活動を加えた結果、どの層でどれだけ伸びたかを比べたものではありません。研究者は好奇心を育てる可能性に注目していますが、観察した関連と提案している働きかけには段階の違いがあります。

知りたい答えの記憶を測った実験

Gruber ほか(2014)は、成人を対象に、問題の答えをどれほど知りたいと思うかと、その答えを覚えることの関係を実験室で調べました。答えを強く知りたいと思った問題では、そうでない問題に比べ、直後も翌日も答えをよく覚えていました。さらに、好奇心が高まっている間に偶然見た顔写真も覚えやすいという結果でした。知りたい対象の答えに加え、その間に見た別の情報の記憶も扱っています。

実験では、脳の活動を画像で捉える方法も使われました。記憶に関わる海馬などの働きと、好奇心の状態との関係を調べています。脳のどの部分が関わるかという結果と、実際に答えや顔を覚えていたという行動の結果は、測定の水準が異なります。脳の活動が記録されている点だけを根拠に、学校の勉強全体への効果を大きく見積もる読み方は避けたいところです。

この実験の比較は、好奇心が強い性格の子と弱い性格の子を分けるものではありません。個々の問題について生じた「答えを知りたい」という状態と記憶を結びつけています。普段は関心を示す話題が少ない人にも、強く答えを知りたい問題があるという区別が、研究の問いには含まれます。日頃の性格としての好奇心と、問題に触れたときの一時的な好奇心を分けて扱う研究です。

記憶の対象も、教科の成績と同じではありません。問題の答えが残ること、説明の仕組みを理解すること、別の問題を解けることには、それぞれ別の確かめ方があります。この研究が直接捉えたのは答えや顔写真の記憶であり、学校の成績を測る設計ではありません。幼稚園児の読み・算数の調査とは、好奇心の捉え方も、覚える対象も、結果を調べる時点も違っています。

測り方を変えると、関連の強さも変わる

von Stumm ほか(2013)は、好奇心など、知的な活動に打ち込む性格と成人の知的な能力との関係をまとめました。112研究、60,097人を対象としたメタ分析では、平均の相関は .30 で、尺度や測るものによって0から .58 まで幅がありました。尺度は、性格などを一定の方法で得点にする物差しを指します。この平均は、子どもの好奇心を伸ばす授業で得られる成績の上昇幅ではなく、成人のさまざまな指標間の関連をまとめた値です。

対象となった知的な側面には、知識や成績、入試の点などが含まれます。同じ「知的な活動が好き」という性格の指標でも、何の結果と組み合わせるかによって、関連の強さは変わります。平均だけを示すと、ほとんど結びつかない組み合わせも、比較的強く結びつく組み合わせも見えにくくなります。この研究は、好奇心に近い性格の多面性を示すとともに、測定対象をそろえて比べる重要性を示しています。

子どもの測定については、Jirout ほか(2012)が定義と測り方を見直しています。総説、つまり既存の研究を検討した論文では、子どもの好奇心をどう測るかについて広く共有された定義がないと指摘しています。測定研究の多くが成人向けの質問紙を使い、幼い子には向かない点も取り上げています。そのうえで、幼児の行動から捉える課題を提案しています。

質問紙への答えと行動課題では、子に求めることも違います。自分の傾向を言葉で評価する方法と、課題の中で何をするかを見る方法を、同一の得点として扱うわけにはいきません。言葉で自分を説明することが難しい幼い子には、成人向けの問いに答える方法自体が負担となり得ます。ここでの「向かない」は子どもの学ぶ力の評価ではなく、測定方法と対象年齢の不一致を指しています。

認知能力との重なりと、説明できなかった道筋

Mammadov(2022)は、性格の主要な傾向と学業成績の関連をまとめたメタ分析で、認知能力が最も重要な予測因子だったと報告しています。認知能力は、考えたり理解したりする力を検査などで捉えたものです。分析内の相対的重要度は64%で、次に誠実性が続きました。この割合は、成績の全体が認知能力だけで決まる割合ではなく、分析に入れた予測因子の間での重みを示します。

好奇心に近い「開放性」は、新しい考えや経験に開かれた性格の傾向で、全体での重要度は弱い一方、小中学校の段階では関連が大きかったという結果でした。この研究の性格の物差しは、答えを知りたい気持ちを問題ごとに尋ねるものとは違います。開放性には好奇心と近い面があっても、同じ名前に置き換えると測定の違いが消えてしまいます。知能・努力と並ぶ好奇心の役割を強調した研究と比べる際も、どの性格の指標を使ったかが論点です。

Mussel(2022)は、1964人を5年にわたって追う縦断研究で、好奇心が成績に結びつく途中の過程を調べました。縦断研究は、同じ人たちを時間を置いて調べる方法です。最初に認知能力と好奇心を測り、後に知的な活動を調べ、さらに後の時点で中等・高等教育の成績や学歴を本人の振り返りで尋ねています。好奇心と認知能力は互いに関係し、どちらも中等教育の成績と関係していました。

しかし、好奇心が強い人は知的な活動を増やし、それを通じて成績が上がるという道筋は、この分析では支持されませんでした。関連があることに加え、間にある行動まで調べたため、もっともらしい説明を検討できた研究です。成績は本人による過去の振り返りなので、その都度、試験で直接測る手順とは異なります。時間を空けて測った研究でも、測定の順番と尋ねている出来事の時点を区別して読むことが求められます。

家庭では問いの中身と答えの残り方を記録する

家庭で試すなら、好奇心に点数を付ける前に、子が自発的に出した問いをそのまま残す方法があります。「なぜ葉の形が違うのか」と尋ねたのか、「この生き物の名前を知りたい」と言ったのかで、求めている答えは違います。大人が問いを作ったときは、その問いと子の反応を分けて書きます。これは成績を上げる効果が実証された訓練の処方ではなく、関心と理解を見分けるための観察の提案です。

予想を求めるときは、正解を当てる試験にしないようにします。言葉が出ないなら、考える時間を置いたり、先に説明を読んだりする進め方も選べます。すぐ答えを知りたい子に、いつまでも予想を求め続ける必要はありません。問いを増やすことが負担になり、調べたい話題まで避ける様子が出たら、その問いかけ方はいったん止めます。

塾での学びを確かめる際も、「楽しそうだった」という印象に加えて、授業の後に子が何を尋ね、何を説明したかを記録します。自発的な問いが増えた記録と、問題を解けた記録は別々に残すと、変化した部分がわかります。興味を示した話題だけ得意になった場合と、授業で扱った範囲を広く理解した場合も区別します。問いの数だけを目標にすると、中身や本人の負担が記録から抜け落ちます。

好奇心を性格の評点にすると、静かに本を読む姿や、説明を聞いてから疑問を持つ姿を拾いにくくなります。記録には、その場で聞こえた言葉と確かめた内容を残し、性格全体への評価を急がないようにします。出発点となるShah ほか(2018)の調査でも、親が捉えた好奇心の高さは、幼稚園児の読み・算数の高さと関連していました。

よくある質問

質問をあまりしない子は、成績が伸びにくいのでしょうか

質問の少なさだけで、その子の学力の伸びを判断する根拠にはなりません。測り方を扱った節で見たように、研究の好奇心には親の回答や本人の質問紙などが使われ、日常の質問の回数と同じではありません。言葉にした問いの量だけから、知りたい気持ちの全体を読み取るのは難しいです。研究が捉えた集団の傾向を、その子の将来を決める判定に変えないことが要ります。

好きな分野を調べていれば、ほかの教科も伸びますか

記憶実験の節で扱った結果は、答えを知りたい問題や、その間に見た情報を覚えることについてです。偶然見た顔写真が記憶に残ったことと、別の教科の学力が上がることは、測っている成果が違います。成績との関連を調べた研究も、好きな分野の学びがほかの教科へ広がる経路を直接示したものではありません。記憶の広がりと教科学習の広がりは、別に検証する課題です。

認知能力のほうが重要なら、好奇心は気にしなくてよいですか

認知能力の重みが大きかった結果は、好奇心と成績の関連を打ち消すものではありません。性格をまとめた分析では、何を好奇心に近い指標として使うかや、学校の段階によって関連の強さが違いました。また、成績を予測する重みと、本人が何を知りたいと思うかという学びの内容は別の話です。予測因子の順位だけで、子が抱いた疑問の価値を決めることはできません。

この記事の限界

好奇心の測り方は親の回答、成人向けの質問紙、問題ごとの知りたい気持ちなどさまざまで、同じ呼び名でも測っているものが異なります。幼稚園児の学力調査と成人の記憶実験では対象も期間も異なり、翌日までの記憶と学校生活を通じた成績の変化には距離があります。成績を後から本人に尋ねた追跡調査もあり、直接の学力測定と振り返りの回答では、結果に入り込む誤差の性質が異なります。

今回扱った研究には日本の子どもで好奇心と成績を追ったものがなく、日本の家庭や塾での関わり方に応じた成績の変化は未検証です。好奇心を育てる働きかけで成績が上がるかについても、今回の研究群にはくじ引きで組を分けた比較がなく、成績を上げる効果は今後の検証課題です。

参考文献

  1. Shah ほか. Early childhood curiosity and kindergarten reading and math academic achievement. Pediatric Research. 2018;84(3):380-386.
  2. von Stumm ほか. The Hungry Mind: Intellectual Curiosity Is the Third Pillar of Academic Performance. Perspectives on Psychological Science. 2011;6(6):574-588.
  3. Gruber ほか. States of curiosity modulate hippocampus-dependent learning via the dopaminergic circuit. Neuron. 2014;84(2):486-496.
  4. von Stumm ほか. Investment and intellect: a review and meta-analysis. Psychological Bulletin. 2013;139(4):841-869.
  5. Jirout ほか. Children’s Scientific Curiosity: In Search of an Operational Definition of an Elusive Concept. Developmental Review. 2012;32(2):125-160.
  6. Mammadov. Big Five personality traits and academic performance: A meta-analysis. Journal of Personality. 2022;90(2):222-255.
  7. Mussel. Processes Underlying the Relation between Cognitive Ability and Curiosity with Academic Performance: A Mediation Analysis for Epistemic Behavior in a Five-Year Longitudinal Study. Journal of Intelligence. 2022;10(2):23.

通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。

  • 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
  • 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
  • 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
  • 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人

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よくある質問

質問をあまりしない子は、成績が伸びにくいのでしょうか

質問の少なさだけで、その子の学力の伸びを判断する根拠にはなりません。測り方を扱った節で見たように、研究の好奇心には親の回答や本人の質問紙などが使われ、日常の質問の回数と同じではありません。言葉にした問いの量だけから、知りたい気持ちの全体を読み取るのは難しいです。研究が捉えた集団の傾向を、その子の将来を決める判定に変えないことが要ります。

好きな分野を調べていれば、ほかの教科も伸びますか

記憶実験の節で扱った結果は、答えを知りたい問題や、その間に見た情報を覚えることについてです。偶然見た顔写真が記憶に残ったことと、別の教科の学力が上がることは、測っている成果が違います。成績との関連を調べた研究も、好きな分野の学びがほかの教科へ広がる経路を直接示したものではありません。記憶の広がりと教科学習の広がりは、別に検証する課題です。

認知能力のほうが重要なら、好奇心は気にしなくてよいですか

認知能力の重みが大きかった結果は、好奇心と成績の関連を打ち消すものではありません。性格をまとめた分析では、何を好奇心に近い指標として使うかや、学校の段階によって関連の強さが違いました。また、成績を予測する重みと、本人が何を知りたいと思うかという学びの内容は別の話です。予測因子の順位だけで、子が抱いた疑問の価値を決めることはできません。