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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年11月1日

家の手伝いをする子は勉強もできるか|家事の分担と学力の研究と学習習慣

食卓に残った皿を子が重ね、その隣には宿題のノートが閉じたまま置かれています。White ほか(2019)は、学校生活の初期に家事をすることが、その後の自分の力への評価や人を助ける行動、自分にもできるという感覚の発達と関連していたと結論づけています。手伝いで段取りを覚えることは勉強にも良いのでしょうか、それとも宿題に取り組む時間を奪うのでしょうか。手伝いをする子に学力や行動を調整する力が高い傾向はありますが、家事を増やせば成績が上がるという因果関係は確立していません。

この記事の要点
  • 幼いころに手伝いをしていた子は、後の算数の点や自分への評価がやや高い傾向があります。
  • 家事と実行機能の関連を示す調査はありますが、教科の成績を測った結果とは区別します。
  • 家事の量と自己制御が一緒に伸びる関係を認めなかった追跡研究もあります。
  • 重い家事負担は、就学や読み・計算の力と負の関連を示しています。
  • 家庭で確かめる際は、手伝いの種類と所要時間、宿題との重なりを記録します。

家の手伝いをする子は勉強もできるか|家事の分担と学力の研究と学習習慣

食卓に残った皿を子が重ね、その隣には宿題のノートが閉じたまま置かれています。White ほか(2019)は、学校生活の初期に家事をすることが、その後の自分の力への評価や人を助ける行動、自分にもできるという感覚の発達と関連していたと結論づけています。手伝いで段取りを覚えることは勉強にも良いのでしょうか、それとも宿題に取り組む時間を奪うのでしょうか。手伝いをする子に学力や行動を調整する力が高い傾向はありますが、家事を増やせば成績が上がるという因果関係は確立していません。

皿を運ぶ、食事の準備をする、自分の持ち物を整えるといった行動は、ひとまとめに家事と呼ばれます。しかし、研究が扱う家事には、日常の分担から生活を支える重い負担まで幅があります。調べた結果も、算数の点、自分への評価、問題を解く力、学校に通っているかという状態で違います。手伝いを勉強のための訓練と見る前に、誰のどんな仕事を調べ、何と比べていたのかを読むと、期待できる範囲がはっきりします。

要点

  • 幼いころに手伝いをしていた子は、後の算数の点や自分への評価がやや高い傾向があります。
  • 家事と実行機能の関連を示す調査はありますが、教科の成績を測った結果とは区別します。
  • 家事の量と自己制御が一緒に伸びる関係を認めなかった追跡研究もあります。
  • 重い家事負担は、就学や読み・計算の力と負の関連を示しています。
  • 家庭で確かめる際は、手伝いの種類と所要時間、宿題との重なりを記録します。

家の手伝いと学力の関係は、自己評価と分けて読む

White ほか(2019)は、米国で幼稚園に入った子を追う全国規模の調査から、9971人のデータを分析しました。親が答えた幼稚園時点の手伝いの頻度と、小学3年の自己評価や算数の点を結びつけた研究です。手伝いを少しでもしていた子は、その後の算数の点がやや高いという結果でした。同じ時期の印象だけを並べず、前の時期の生活と後の結果をつないでいる点が特徴です。

この研究の中心には、子自身が自分をどう見ているかという指標もあります。学業についての自己評価は、実際の試験で正答できたかとは別に、自分の力をどう感じるかを表します。友人との関係や生活への満足も扱われており、家事と結びついた結果を全部まとめて「勉強ができる」と呼ぶと、測定の中身が変わってしまいます。算数の点の結果と、学業に自信を持つという結果は、同じ研究の中でも分けて記されています。

比べた相手も、手伝いをするよう研究者に指示された子と、禁止された子ではありません。日常的に手伝っている子や、ほとんど手伝わない子など、生活の中ですでに頻度の違う子を比べています。性別、世帯収入、親の学歴の違いは統計的に調整されており、それらの条件をそろえて関係を調べようとしています。これは観察研究、つまり暮らしに手を加えずに調べる方法で、頻度の違いがどんな家庭の営みと重なっているかが解釈の焦点です。

段取りの力を測る調査では、家事の種類にも違いがある

「手伝いで段取りが身につく」という説明に近い研究が、Tepper ほか(2022)の調査です。5〜13歳の子の親や保護者207人に、家事への参加と実行機能について質問紙で答えてもらいました。実行機能とは、気持ちや行動を切り替え、計画して調整する力です。この調査では、自分の身の回りの家事や家族のための家事をよくする子ほど、その一部の働きが高いという関連がありました。

関連があったのは、作業記憶と抑制です。作業記憶は、必要な情報をしばらく頭に置きながら作業する働きで、抑制は、反射的に動きそうなときに行動を抑える働きです。自分の食事を作るような身の回りの家事と、家族の食事を作るような家事には関連がありましたが、ペットの世話には関連がありませんでした。家事なら中身を問わず同じ働きと結びつく、という一律の結果ではありません。

測り方にも特徴があり、家事への参加も実行機能も、親の回答からとらえています。研究者が作業中の子を直接観察して、手順を覚える力や行動を止める力を試験した結果とは区別されます。同じ回答者が両方を評価するため、子の普段の姿への全体的な印象が回答に重なる余地があります。また、横断調査という同じ時点での調査なので、家事が多い子と少ない子の違いを見ています。学力試験の得点や、家事を始める前後の伸びを測った研究とは、問いの立て方が違います。

幼児の問題解決では、親の手助けも調べられている

Xia ほか(2025)は、幼児の家事への参加と問題解決の力との関係を調べました。子には問題解決の課題に取り組んでもらい、親には家事への参加や手助けの仕方を尋ねています。家事への参加が多い幼児ほど、問題解決の力が高いという関連がありました。親による家事の報告だけでなく、子が課題に取り組む側の測定を組み合わせた点で、親が両方を評価する調査とは異なります。

この研究が注目した親の手助けは、子の代わりにすべて済ませることとは違います。子が取り組めるよう最初は手を貸し、必要に応じて助けを引いていく関わりを扱っています。そのような手助けは、家事への参加と問題解決の力の関係を強めていました。家事をどれだけするかに加え、大人がどう関わるかも分析に入っているため、家事の回数だけで結果を説明する読み方には収まりません。

Xia ほか(2025)は、31組の親子のやりとりを録画して、手助けの仕方も分析しました。質問紙に書かれた関わりと、やりとりの映像から調べる関わりでは、得られる情報の種類が違います。研究者は、子の必要に合わせて適切な時期に助けを出し、引くことの重要性を述べています。ただし、家事を増やした群と増やさない群を比べた実験ではなく、家事への参加と課題のできの横断的な関係です。対象は就学前の子で、測った成果も幼児の問題解決であり、教科の成績とは別の位置にあります。

家事と自己制御が一緒に伸びるかを追うと、結果は違う

Damian ほか(2020)は、米国のメキシコ系の子674人を、10歳から19歳まで追跡しました。調べた自己制御は、注意や行動を意識して調整する性質で、「家事を任せると自分を律する力が育つ」という説明に関わる指標です。長く追うと、家事が多い子の特徴だけでなく、家事の量と自己制御が時間とともにどう変わるかを調べられます。この研究では、家事と自己制御が一緒に伸びるという関係は見られませんでした。

この結果は、同じ時点で家事の多い子に高い能力が見られた調査とは、比べているものが異なります。横断調査は、調査した時点で子どうしにどんな違いがあるかを問い、縦断研究は、同じ子を追いながら後の状態や変化も問います。すでに違いがあることと、家事の増加に沿って力が伸びることは別々の関係です。段取りの良い子が仕事を任されやすいという説明も検討の余地があり、観察された関連の向きを考える際の論点となります。

同じ研究では、自己制御そのものは、後の仕事の状態と結びついていました。初めの自己制御の水準や、その後の伸びが、若い成人期の仕事の負担感や満足などを予測する結果です。家事との関係が見られなかったという結果は、自己制御という力そのものを無意味とした結果ではありません。また、家事をする経験すべてに価値がないと判定した研究でもありません。自己制御の変化という、家事が勉強につながるときに想定される途中の道筋を問い直した研究で、学業成績は測っていません。

年齢に合った手伝いと、生活を圧迫する家事は分ける

Putnick ほか(2015)は、低・中所得の30か国で、7〜14歳の子がいる186,795家族のデータを調べました。家の外の仕事、家業の手伝い、家事と、学校への就学との関係を比べた調査です。いずれも就学とは負の関連があり、とくに家業と家事で一貫した関係が見られました。関係の強さは国や性別によって変わり、測った結果は試験の点ではなく学校に通っているかという状態です。

Chudgar ほか(2022)は、バングラデシュとパキスタンの12〜14歳の子について、児童労働と基礎学力との関係を調べました。基礎学力は読みや計算の力を指し、学校に通っているかを調べる研究から、測定の焦点が変わっています。危険な労働で負の関連が大きく、家事に強く従事する子にも基礎学力の低さとの関連がありました。短い手伝いを経験するかという問いとは違い、生活の中で担っている負担の重さが中心です。

分けて見る点 年齢に合った手伝い 重い家事の負担
研究の比較 普段の参加や頻度の違い 家事・労働への従事や負担の違い
主な結果 自己評価、実行機能、幼児の問題解決との正の関連 就学、読み・計算との負の関連
学力との接点 米国の追跡では算数と正の関連 低・中所得国の調査では基礎学力と負の関連
判断で分けたい条件 子が担える仕事の内容 生活の中で子が背負う仕事の重さ

家事という名前が同じでも、学校生活と両立する分担と、教育への参加を圧迫する負担では条件が違います。こうした研究で問題になるのは、手伝いをしているかという有無だけでなく、どのような生活条件で仕事を担っているかです。すでに宿題の時間が押されている子や、家族の用事を終えるまで休めない子は、さらに家事を加える提案の対象には向きません。保護者の働き方だけで分担の良し悪しを決める話にすると、子が実際に背負っている仕事が見えにくくなります。

家庭では手伝いと宿題がぶつかる場所を記録する

手伝いを見直すときは、まず普段どおりの生活を続けながら、何をしているかを書き出します。記録する期間は1週間ほどに区切り、家事の名前、始めた時刻、終えた時刻、宿題の予定との重なりを並べます。これは学力を上げる効果が確かめられた期間ではなく、曜日による違いを拾うための観察の区切りです。親の見積もりと子が感じる負担を別々に残すと、短い仕事でも取りかかりを中断させている様子を見つけやすくなります。

  • 手伝いの種類と、実際にかかった時間を記録する
  • 宿題の途中で呼ばれたか、終わりが延びたかを残す
  • 子が自分で決めた順番と、大人が手を貸した箇所を分ける
  • 疲れや困りごとを、仕事の量と一緒に振り返る
  • 負担が重い仕事は、大人への戻し方や分担の変更を考える

段取りの練習として任せるなら、子が安全にでき、終わりが見える仕事を選びます。たとえば食器を片づける仕事なら、何から運び、どこに置けば終わるかを子に説明してもらいます。大人は危険な作業を引き受け、子が手順で止まったところだけ一緒に確かめます。家事のできと勉強の点を交換条件にせず、仕事を見通せたか、自分で順番を変えられたかという行動を見ます。

予定とぶつかっていたら、家事の時刻を動かす、仕事を小さくする、大人が引き取るなど、記録に沿って調整します。疲れている日まで同じ量を守らせるより、宿題に戻れたか、休む時間が残ったかも確かめます。手伝いを続ける目的は、生活を一緒に回し、自分の役割を覚えることとして説明できます。家事を足せば、その分だけ勉強の力も伸びるという言い伝えは、これらの調査結果では支えられません。

よくある質問

手伝いをあまりしない子は、勉強でも不利ですか

手伝いの少なさだけで、その子の学力や今後の伸びを決める読み方はできません。米国の追跡研究は、頻度の違う子の集団に見られた傾向であり、個々の子の成績を手伝いの有無で判定したものではありません。また、自分の学力への評価と算数の点は別に測られており、家事をしていないことから自信や学力の低さをひとまとめに推測する根拠にもなりません。

ペットの世話でも段取りの力は育ちますか

実行機能を調べた質問紙調査では、自分や家族のための家事には関連があり、ペットの世話には関連がありませんでした。これは、その調査の測り方で実行機能との関係が見られなかったという結果で、世話という行動の価値全体を否定する評価ではありません。何を担当し、どんな順番を自分で考えるかという観察と、研究が測った力との関連は、別々の問いとして扱います。

勉強のために、手伝いをすべて減らしたほうがよいですか

重い負担と基礎学力の負の関連を示した研究は、子どもの労働が教育に関わる地域の調査です。短い日常の分担をなくした場合と続けた場合の成績を比較したものではなく、家事を一切なくすという結論とは異なります。手順の節で示した記録は、手伝い全体に良し悪しを付けるためではなく、宿題を中断させる仕事や、子に負担が偏っている仕事を具体的に見つけるために使います。

この記事の限界

当てはまる範囲は、米国の子の追跡、幼児や学齢期の子の家事参加の調査、低・中所得国での就学や基礎学力の調査で異なります。扱った研究はいずれも観察研究で、手伝いをする家庭の他の特徴が混じるため、手伝いそのものが結果の原因だとは言い切れません。親の回答で家事の頻度を測る研究と、子に課題を行わせる研究があり、自己評価や実行機能と教科の学力は別の指標です。

日本の小中高生で手伝いと成績を追った研究や、手伝いを増やす群をくじ引きで決めて学力を比較する試験は、今回の根拠にはありません。先進国で手伝いが勉強の時間を削るかを直接測った研究もなく、時間の取り合いについて研究から出せる答えはまだありません。

参考文献

  1. White ほか. Associations Between Household Chores and Childhood Self-Competency. Journal of Developmental and Behavioral Pediatrics. 2019;40(3):176-182.
  2. Tepper ほか. Executive functions and household chores: Does engagement in chores predict children’s cognition? Australian Occupational Therapy Journal. 2022;69(5):585-598.
  3. Xia ほか. The relationship between involvement in household chores and problem-solving abilities among preschool children and the moderating role of parental scaffolding. Acta Psychologica. 2025;260:105629.
  4. Damian ほか. The co-development of chores and effortful control among Mexican-origin youth and prospective work outcomes. Journal of Research in Personality. 2020;84:103883.
  5. Putnick ほか. Is Child Labor a Barrier to School Enrollment in Low- and Middle-Income Countries? International Journal of Educational Development. 2015;41:112-120.
  6. Chudgar ほか. Child labor as a barrier to foundational skills: Evidence from Bangladesh and Pakistan. Prospects. 2022;52(1-2):137-156.

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  • 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
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よくある質問

手伝いをあまりしない子は、勉強でも不利ですか

手伝いの少なさだけで、その子の学力や今後の伸びを決める読み方はできません。米国の追跡研究は、頻度の違う子の集団に見られた傾向であり、個々の子の成績を手伝いの有無で判定したものではありません。また、自分の学力への評価と算数の点は別に測られており、家事をしていないことから自信や学力の低さをひとまとめに推測する根拠にもなりません。

ペットの世話でも段取りの力は育ちますか

実行機能を調べた質問紙調査では、自分や家族のための家事には関連があり、ペットの世話には関連がありませんでした。これは、その調査の測り方で実行機能との関係が見られなかったという結果で、世話という行動の価値全体を否定する評価ではありません。何を担当し、どんな順番を自分で考えるかという観察と、研究が測った力との関連は、別々の問いとして扱います。

勉強のために、手伝いをすべて減らしたほうがよいですか

重い負担と基礎学力の負の関連を示した研究は、子どもの労働が教育に関わる地域の調査です。短い日常の分担をなくした場合と続けた場合の成績を比較したものではなく、家事を一切なくすという結論とは異なります。手順の節で示した記録は、手伝い全体に良し悪しを付けるためではなく、宿題を中断させる仕事や、子に負担が偏っている仕事を具体的に見つけるために使います。