- 課外活動への参加は学業のよさと結びつく研究があり、掛け持ちを一律に成績低下の原因とする見方には根拠が弱いです。
- 参加する数や時間が多いところでは、学業の状態が低くなる関係も見られます。
- 活動の件数、分野の幅、参加時間は別の指標で、研究の平均値は家庭の上限ではありません。
- 予定表には習い事と塾だけでなく、移動、宿題、睡眠を入れ、本人の疲れや不満と照らします。
習い事と通塾を掛け持ちすると成績は下がるか|課外活動の数と学力の研究
習い事からの帰り道、子どもが今日できたことを話し終えるころ、保護者は帰宅後の宿題を思い浮かべます。子どもは次の練習も楽しみにしているのに、手にはまだ開いていない教材の入ったかばんがあります。そこへ塾の予定を足そうとすると、楽しみを残したい気持ちと、勉強が後回しになる心配が重なります。習い事と通塾を掛け持ちするなら、成績が下がる前に何かをやめさせるべきなのでしょうか。
習い事を続けること自体が成績を下げる証拠は弱く、見直す目安は、活動の数だけでなく疲れや不満、宿題と睡眠の時間が残るかどうかです。課外活動を調べた研究には、参加の多い生徒ほど学業の状態がよいという結果と、多すぎるところでは下がるという結果があります。保護者が知りたいのは、ほかの家庭より予定が多いかではなく、いまの組み合わせを子どもが続けられるかです。そこで、活動を続ける意味を考える材料と、予定を減らす判断に使う材料を分けて読みます。やめる習い事の名前を先に決めるより、どの日の何が苦しいのかを具体的にする方が、本人の希望も扱いやすくなります。
要点
- 課外活動への参加は学業のよさと結びつく研究があり、掛け持ちを一律に成績低下の原因とする見方には根拠が弱いです。
- 参加する数や時間が多いところでは、学業の状態が低くなる関係も見られます。
- 活動の件数、分野の幅、参加時間は別の指標で、研究の平均値は家庭の上限ではありません。
- 予定表には習い事と塾だけでなく、移動、宿題、睡眠を入れ、本人の疲れや不満と照らします。
活動の数が多いほど成績が下がる、とは限りません
もともとの意欲や家庭の条件も関わる米国の高校生13,130人の追跡を分析したFredricks(2012)は、活動の数と時間の両方を調べました。高校生の課外活動への参加は、後の数学の点、成績、進学の見通しのよさと結びついていました。一方、数と時間が多いところでは、学業への適応が下がる関係も見られました。適応とは、ここでは成績や進学への見通しなど、学業面の状態を指します。
この研究の結果は、参加が増えるほど成績が一直線に下がるという形ではありません。同時に、活動を追加するたびに学業によいことが増えるという形でもありません。ほどほどの参加と、予定が非常に多い参加を同じ扱いにすると、研究の中にある違いを取り落とします。続けている活動を減らすか考えるときも、まず現在の生活がどのような状態かを見る読み方になります。
Fredricks(2012)では、高校生の活動への参加は平均で2〜3件、週平均5時間でした。この数字は調査対象の生活を記述した平均で、学力を保てる上限を示す数字ではありません。平均より活動が多いという理由だけで、家庭の予定を削る判断には進めません。反対に、平均より少なくても、帰宅後の宿題が終わらず本人が疲れているなら、予定の組み方を点検する理由があります。
参加時間だけを見れば同じでも、家庭の予定表には移動や準備も入ります。教室にいる時間を記録する欄と、家を出て戻るまでの時間を記録する欄を分ければ、その違いを見失いにくくなります。活動そのものを楽しんでいても、その前後の慌ただしさは別に聞けます。研究の平均を合否の線として使うより、自分の家で実際に使っている時間を見える形にする出発点として読む方が適切です。
続ける意味は、次のテストの点だけでは測れません
米国の12〜18歳1,115人を追ったMahoney ほか(2012)は、組織的な活動への参加時間と18〜24歳での状態を調べました。組織的な活動とは、決まった集まりや運営のもとで行う活動です。年齢などの背景と調査開始時の状態を統計的に考慮しても、参加時間が長いことは、後の心の充実、社会への参加、最終学歴のよさを予測していました。心の不調や薬物の使用、反社会的な行動の指標とは関係しませんでした。
経済的に多様な黒人と白人の若者を調べたFredricks ほか(2006)でも、参加する活動の場の数は、学業・心理・行動のよい結果と関係していました。ただし、活動別に見た運動への参加は、飲酒や薬物の使用とも結びついていました。参加する場を多く持つことと、どの場でも同じ経験をすることは別です。家庭で続ける意味を聞くなら、上達したい内容に加え、そこで過ごす時間を本人がどう受け止めているかも話題にできます。
Denault ほか(2009)が299人を追跡した研究では、活動への参加時間と数は学年とともに減っていました。初めの参加が多かった生徒は、後の学校への関わりが強く、社会への前向きな価値観も持っていました。参加の量をずっと同じに保つことと、活動を続けることは同義ではありません。進級後に以前の予定が合わなくなった場合も、これまで続けた経験を否定せず、今の生活に合わせて量を考えられます。
オーストラリアの1,146人を5年間追ったModecki ほか(2018)は、自己概念、つまり自分の力や特徴についての見方を調べました。進学の移行期に幅広い活動へ参加していた生徒は、参加時間を考慮しても、その後の全般的・学業的な自己概念の落ち込みが小さい結果でした。測っているものは点数そのものとは違います。家庭での話し合いでも、勉強の進み具合と、活動の中で本人が感じる手応えを別々に聞く余地があります。
「何件まで」と「どこが多すぎるか」を分けます
Knifsend ほか(2012)は、多様な民族の864人について、勉強・生徒会、芸術、クラブ、運動という4つの領域への参加を調べました。中程度の広がりで参加している生徒は、それより少ない生徒や多い生徒より、学校への所属感、学業への取り組み、評定平均が高い傾向でした。所属感とは、自分が学校の一員だと感じることです。ここで数えているのは活動の領域であり、通っている教室の件数とは違います。
例えば、同じ運動分野で別々の教室に通っている場合、教室の件数と活動分野の広がりは一致しません。音楽と運動を続けながら塾も加える予定は、学校の活動を分類した研究の区分と、そのまま同じ数え方にはできません。保護者が予定を見直す際には、件数の欄だけでなく、活動内容と拘束される時間の欄を作れます。比べる単位をそろえることで、研究の分類を家庭の上限と取り違えるのを避けられます。
続けるかどうかの話と、量を調整する話では、比較する相手も違います。活動への参加が少ない生徒との比較は、活動を持つ意味を考える材料です。参加が非常に多い生徒との比較は、量が増えたときの変化に目を向ける材料です。研究を読むときの問いを、次のように分けられます。
| 判断したいこと | 比べた相手・測った範囲 | 研究から読む材料 | 家庭で確かめること |
|---|---|---|---|
| 活動を続けるか | 参加時間の異なる若者の、その後の状態 | Mahoney ほか(2012)では参加時間と後の学歴などに正の関係 | 本人が残したい経験や目標 |
| 量が多すぎるか | 活動の数と時間の異なる高校生 | Fredricks(2012)では参加が多いところで学業面の低下 | 宿題や睡眠と重なる予定 |
| 幅を広げるか | 参加する活動領域の異なる生徒 | Knifsend ほか(2012)では中程度の幅で良好な傾向 | 同じ分野の追加か、新しい分野か |
| 忙しさをどう捉えるか | 活動の負担や忙しさの感じ方 | Brown ほか(2011)は本人の負担感の確認を重視 | 疲れや不満が出る場面 |
本人が選んだ活動でも、負担の確認は続けます
米国の9〜13歳882人を調べたBrown ほか(2011)は、活動に関するストレスと、子ども自身が感じる忙しさに注目しました。活動のストレスは宿題の時間と強く結びつき、自分で活動を選んだ子は、親と一緒に選んだ子より活動のストレスが多い結果でした。また、自由な時間をもっと望むことには、画面に使う時間が強く関係していました。著者は、活動に伴うストレスと、本人がどの程度忙しいと感じているかを保護者が確かめるよう述べています。
自分で選んだのだから最後まで続けるはずだと考えると、始めた後に出てきた負担を話す機会がなくなります。選んだ時点の希望と、実際に通ってみた感想は、分けて聞けます。本人の希望を尊重することには、続けたいという言葉だけでなく、日程を変えたい、練習量を相談したいという言葉を受け止めることも含められます。希望を聞き直すことを、約束を守れたかの採点にする必要はありません。
特に予定を増やす判断が合いにくいのは、すでに本人が疲れや不満を口にし、宿題や睡眠の枠が押し出されている場合です。活動名を取り上げて理由を問い詰めるより、帰宅後のどの作業が重いか、どの曜日が苦しいかを聞きます。宿題が長引くなら、量が多いのか、解き方に迷っているのか、始める時間が遅いのかを書き分けます。負担の場所が見えれば、活動の中止以外にも、日程や課題の進め方について相談する内容が具体的になります。
保護者の送迎の都合と、子どもの疲れも別々に扱えます。送迎しやすい日でも、本人には学校の課題が重なる日かもしれません。反対に、保護者からは忙しく見える日を、本人は楽しみにしている場合もあります。家族の都合と本人の感じ方を同じ予定表に書き込むことで、どちらかの説明だけで決めずに話せます。
予定表に、宿題と睡眠の場所まで書き込みます
家庭で確かめる作業は、普段の週の予定を横に並べるところから始められます。習い事、塾、宿題、睡眠を色分けして書き、移動と準備もそれぞれの予定の前後に足します。教室の開始時刻だけを入れると、家を出る前の支度や、帰ってから落ち着くまでの時間が見えません。予定表を埋め終えたら、新しい活動を入れる候補の時間が、今は何に使われているかを確かめます。
次に、予定上の時刻の横へ、実際の帰宅、宿題の開始と終了、寝た時刻を記します。細かい記録が負担なら、予定どおりだった日と、大きくずれた日を分ける書き方でも構いません。子どもが疲れや不満を口にした日は、その言葉を保護者の評価に置き換えず残します。「忙しそうだった」という観察と、「準備をするのがつらい」という本人の言葉は、違う情報として読めます。
- 習い事と塾の開始・終了に、移動と準備が含まれているか
- 宿題をする枠が、予定を書いた段階で残っているか
- 就寝の予定が、実際の宿題の終了で後ろへずれていないか
- 外出の予定がない夜を数え、その夜にも課題が集中していないか
- 疲れや不満を口にした日と、予定が重なった日が一致するか
空いている夜は、教室へ行かない夜と、本人が自由に使える夜を区別して見ます。外出がなくても、課題や家での練習がまとまっていれば、予定表の空白ほど余裕はないかもしれません。反対に、予定のある日でも、帰宅後に休み、宿題を終えて寝られていれば、その流れも記録に残します。うまく回った日の条件は、次の予定を組み替える際にも参照できます。
この記録は、子どもに時間の使い方を弁明させるためのものではありません。保護者も送迎や連絡にかかる予定を書き、家族で動かせる部分を探すために使います。全部を本人の工夫に任せず、大人が調整できる曜日や開始時刻も候補に入れます。書いた内容は子どもと一緒に読み返し、本人の感覚と違うところを直せます。
やめる名前より、変えたい生活の状態を決めます
予定を見直すときは、残したいことと、変えたいことを別に書きます。活動の楽しさを残しながら、帰宅後の慌ただしさを減らしたいという希望は、同時に持てます。本人が大事にしている内容を聞いたうえで、曜日の移動、参加の仕方の変更、一時的な休みなど、選べる方法を確認します。塾を加える場合も、授業時間だけでなく、そこから出る家庭の課題をどこで進めるかまで予定に入れます。
変更の目的は、成績という言葉だけでなく、日常で見える形にしておきます。例えば、寝る前に課題が残らないことや、帰宅後に休む時間を取れることなら、予定表と照合できます。変更後は点数だけを待つのではなく、狙った生活の状態に近づいたかを本人と見ます。次の試験の点が動いても、出題内容や学習の進み具合と合わせて読み、変更した活動だけを理由にしない扱いにします。
活動を休む案が出たときは、本人が心配していることも聞きます。上達の機会、仲間との関係、再開できるかなど、気になる内容は家庭ごとに違います。運営側に確かめることと、家庭で決められることを分けておけば、想像だけで続けるかやめるかを迫らずに済みます。決めた後も感想を聞き直す予定を持つと、本人の希望を継続の条件として扱えます。
掛け持ちの数だけで、子どもの努力や家庭の判断を評価する必要はありません。続けたい気持ちがあり、学習と休息の時間も保てているなら、その状態を確認しながら予定を組めます。疲れや不満が重なるなら、その日の負担を具体的にして変更を検討できます。残す活動の名前より、変更によって取り戻したい時間が、話し合いの焦点です。
よくある質問
塾を始めるなら、習い事は先にやめるべきですか
先にやめると一律に決める根拠は弱いです。まず塾への移動と家庭の課題まで予定に加え、今の宿題や睡眠の枠と重なるかを見ます。重なりがある場合は、本人が続けたい内容を聞き、曜日や参加の仕方を変えられるか確かめます。前の節の予定表で、追加後に何が押し出されるかを見てから、継続や休みを検討できます。
本人が全部続けたいと言えば、そのままでよいですか
続けたいという希望と、負担なく過ごせているかは別に確認します。「本人が選んだ活動でも、負担の確認は続けます」の節で見たように、自分で選んだことだけで負担が小さいとは決まりません。好きな内容と、つらい時間帯を分けて尋ねれば、全部をやめる話にせず調整の相談ができます。言葉だけでなく、宿題や就寝の予定が実際に保たれているかも合わせて見ます。
テストの点が下がったら、掛け持ちが原因でしょうか
点数の変化だけでは、どの予定が関わったかは特定できません。まず答案でつまずいた内容と、家庭で課題を進められた日を見比べます。予定が重なった日に宿題が残っていたなら、その重なりを調整する話ができます。勉強する時間はあっても内容に迷っていたなら、習い事の削減だけを選択肢にせず、学習内容について学校の先生や講師と相談できます。
この記事の限界
研究の対象者は米国などの学校の課外活動に参加する若者が中心で、日本の通塾と習い事の掛け持ちを内申と結びつけて調べたものではありません。ほとんどが観察研究、つまり生活に手を加えず関係を調べる方法で、習い事を減らしたら成績が上がるかを確かめた試験は含まれていません。もともとの意欲や家庭の条件によって参加の量が違う可能性があり、活動そのものの効果と分けて読むうえで制約があります。
成績、後の学歴、自分の力についての見方は異なる測定で、長期の関連から目前の試験の変化を予測することにも隔たりがあります。習い事の種類ごとの違いは、大きな標本をまとめた広い分類でしか捉えられておらず、個々の教室や活動をやめる順番を決める細かさには達していません。
参考文献
- Fredricks. Extracurricular participation and academic outcomes: testing the over-scheduling hypothesis. J Youth Adolesc. 2012;41(3):295-306.
- Mahoney ほか. The Over-Scheduling Hypothesis Revisited: Intensity of Organized Activity Participation During Adolescence and Young Adult Outcomes. J Res Adolesc. 2012;22(3):409-418.
- Fredricks ほか. Is Extracurricular Participation Associated with Beneficial Outcomes? Concurrent and Longitudinal Relations. Developmental Psychology. 2006;42(4):698-713.
- Denault ほか. Intensity and Breadth of Participation in Organized Activities during the Adolescent Years: Multiple Associations with Youth Outcomes. Journal of Youth and Adolescence. 2009;38(9):1199-1213.
- Modecki ほか. Finding What Fits: Breadth of Participation at the Transition to High School Mitigates Declines in Self-Concept. Developmental Psychology. 2018;54(10):1954-1970.
- Knifsend ほか. Too much of a good thing? How breadth of extracurricular participation relates to school-related affect and academic outcomes during adolescence. J Youth Adolesc. 2012;41(3):379-389.
- Brown ほか. Are kids too busy?: early adolescents’ perceptions of discretionary activities, overscheduling, and stress. J Sch Health. 2011;81(9):574-580.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
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よくある質問
塾を始めるなら、習い事は先にやめるべきですか
先にやめると一律に決める根拠は弱いです。まず塾への移動と家庭の課題まで予定に加え、今の宿題や睡眠の枠と重なるかを見ます。重なりがある場合は、本人が続けたい内容を聞き、曜日や参加の仕方を変えられるか確かめます。前の節の予定表で、追加後に何が押し出されるかを見てから、継続や休みを検討できます。
本人が全部続けたいと言えば、そのままでよいですか
続けたいという希望と、負担なく過ごせているかは別に確認します。「本人が選んだ活動でも、負担の確認は続けます」の節で見たように、自分で選んだことだけで負担が小さいとは決まりません。好きな内容と、つらい時間帯を分けて尋ねれば、全部をやめる話にせず調整の相談ができます。言葉だけでなく、宿題や就寝の予定が実際に保たれているかも合わせて見ます。
テストの点が下がったら、掛け持ちが原因でしょうか
点数の変化だけでは、どの予定が関わったかは特定できません。まず答案でつまずいた内容と、家庭で課題を進められた日を見比べます。予定が重なった日に宿題が残っていたなら、その重なりを調整する話ができます。勉強する時間はあっても内容に迷っていたなら、習い事の削減だけを選択肢にせず、学習内容について学校の先生や講師と相談できます。