- 1対1に有利な総説や試験がある一方、少人数でも同程度だった比較があります。
- オンラインの低学年の試験と、その授業記録を調べた続報は、同じ試験に基づく証拠です。
- 個別に練習する機会と、仲間と練習する機会の配分は、人数によって変わります。
- コンピュータ支援や教材も変えた比較では、人数以外の条件も結果に関わります。
- 見学では、手元を見てもらう時間、子が話す時間、待っている間の課題を確かめます。
少人数の個別塾は1対1より伸びにくいか|指導の人数比の研究
改札前で、保護者が子どもと並んで塾の案内を開いています。「同じ個別指導でも、ほかの子と一緒だと教えてもらう時間が減るのですか」という疑問が浮かびます。人数の表示を比べると、講師を独り占めできる授業ほど成果が出るようにも感じられます。1対1を支持する研究はありますが、少人数の個別指導を一律に伸びにくいとは決められません。
気になるのは、隣に子がいるかどうかだけでなく、その間に自分の子が何をしているかです。説明を待って手が止まっている時間と、自分で問題を進めている時間は、どちらも講師が直接話しかけていない時間です。また、ほかの子の発言を聞いて一緒に取り組む授業と、それぞれ別の教材を解く授業でも、学習の進み方は違います。案内に記された人数だけでは、こうした中身までは見えてきません。
研究でも、人数の組み合わせに加え、読みか算数か、オンラインか、教材の支えがあるかが異なります。そこで、人数を直接比べた試験と、指導方法もまとめて比べた試験を分けて取り上げます。最後には、見学で子の手元や発言をどう記録するかという手順につなげます。
要点
- 1対1に有利な総説や試験がある一方、少人数でも同程度だった比較があります。
- オンラインの低学年の試験と、その授業記録を調べた続報は、同じ試験に基づく証拠です。
- 個別に練習する機会と、仲間と練習する機会の配分は、人数によって変わります。
- コンピュータ支援や教材も変えた比較では、人数以外の条件も結果に関わります。
- 見学では、手元を見てもらう時間、子が話す時間、待っている間の課題を確かめます。
マンツーマンと少人数を比較するとき、何を比べているのか
「講師の注意が自分に向くほど伸びる」という考えには、もっともらしさがあります。誤りに気づいてもらいたいとき、説明を聞き直したいとき、講師が別の子に対応していれば順番を待つからです。ただし、授業のすべてを説明に使うわけではなく、子が読む、考える、解くといった時間もあります。指導の人数比を成果と結びつけるには、この授業全体を比べる視点が要ります。
Neitzel ほか(2022)は、読みでつまずく小学生への支援を対象に、厳しい基準を満たす65研究、51プログラムを統合しました。1対1の指導には正の効果があり、少人数の指導にも正の効果があるものの、それほど大きくないという結果でした。正の効果とは、比べた相手に対して読みの成績が良い方向に動いたという意味です。複数の支援を見渡したときに、マンツーマンの強みを示す結果です。
この総説が扱うのは、読みの支援プログラムのまとまりです。同じ講師と同じ教材を保って人数だけを切り替える比較とは、問いの立て方が違います。指導者の教え方や支援の組み込み方も含んだ結果として、授業の形ごとに成果を整理しています。学級全体に対する方法でも同程度の成果を得る報告があり、個別の時間を切り離すだけでなく、学校内の支援のつながりも論点です。
一方、直接比較の試験では、参加する子を異なる人数の組へ割り当て、同じ試験の中で結果を見ます。通常の授業だけを受ける組があれば、追加の指導が役に立つかという問いにも答えられます。追加の支援の有無と、支援する人数の違いは別の比較であり、以下の試験でもこの違いを保って見ていきます。
オンラインの読みの試験では、注意の向け方も調べています
Robinson ほか(2025)は、幼稚園から小学2年までの子を、オンラインの1対1、子2人に講師1人、指導なしの組に分けました。無作為化比較試験とは、くじ引きのような方法で組を分けて比べる試験です。もともとできる子が特定の指導を選ぶ、といった偏りを減らしながら、読みの初期の力を測っています。結果は1対1の伸びが大きい傾向で、開始時の成績が目安を大きく下回る子で特に目立ちました。
この比較では、対面の机で隣に子が座る形とは異なり、画面を通して講師が子に働きかけます。指導を受けない組を置いているため、追加の支援そのものと、支援の人数の違いを分けて扱う設計です。抄録は人数間の差を「傾向」と表現しており、統計的に確かな差とまでは言えません。統計的に確かかどうかとは、観測された差を偶然のばらつきだけで説明しにくいか、という問題です。
Hsieh ほか(2026)は、この同じ試験の授業記録を機械で分析した続報です。別の子どもにもう一度試した独立の試験ではなく、先の結果が出た授業の中で何が起きていたかを調べています。教科内容を教える時間や関係づくりの時間は、形式の間で似ていた一方、マンツーマンの子は注意と個別の支援を多く受けていました。講師の授業時間の使い方と、それぞれの子が受け取る働きかけを分けた分析です。
続報の著者は、複数の子を同時に参加させる指導の工夫を講師が使えるようにすると、改善につながる可能性を挙げています。焦点は、指導を受けずに待つ時間を減らし、学習から離れてしまうことを抑える点です。著者の提案は、教科の内容に割く時間の配分に加えて、その時間の中へ子をどう参加させるかを扱っています。
少人数で足りた試験では、練習の中身が違いました
Miles ほか(2022)は、小学1年生を無作為に分け、1対1の読みの指導、少人数の読みの指導、指導なしを比較しました。別々の参加者集団は146人と104人で、それぞれ50回の指導を扱っています。読みの成果では、指導を受けた組が対照の組を上回り、指導の形式どうしはおおむね同程度でした。同じ支援プログラムを、教える相手の人数が違う形で提供した比較です。
この設計では、支援を受けた子が始める前より伸びたかだけでなく、支援を受けない組の伸びも比べています。時間が過ぎれば通常の学習でも変化するため、対照を置く意味があります。また、単発の説明を理解したかではなく、指導を重ねた後の読みの力が対象です。少人数の具体的な人数の記載は抄録になく、プログラムの開発者も研究に関わっています。
Doabler ほか(2019)は、算数に困難のある幼稚園児465人を対象に、子2人に講師1人と、子5人に講師1人の支援を比べました。測った6つの成果は同程度でしたが、授業観察では練習の経験が違っていました。子が少ない組では個別の練習が頻繁で質も高く、子が多い組では仲間と練習する機会が多くありました。成果と、授業中に得られる経験の両方を調べた点が特徴です。
読みの試験がマンツーマンを含むのに対し、算数の試験は人数の異なる集団どうしの比較です。また、測定された成果だけを並べると、個別に応じてもらう経験の違いは見えにくくなります。逆に、個別の練習の多さだけに注目すると、仲間と取り組む練習を見落とします。観察された練習の質と頻度、最後に測った学習成果は、それぞれ異なる情報を持っています。
教材も変わる試験と、人数の関連を調べる研究
Chambers ほか(2011)は、経済的な困難の大きい地域の33校で、読みにつまずく小学生への支援を1年間比べました。コンピュータ支援を組み込んだ6人組と、標準的なマンツーマンの指導という組み合わせです。片方には機器を使う学習の支えが入り、もう片方には標準の個別の支援が入っています。人数の表示以外にも、子が課題に取り組む方法が異なる比較です。
Gunnes ほか(2025)は、中学2年相当の数学が苦手な生徒を対象に、無作為化試験を行いました。小集団の組には研修を受けた教師と教材が用意され、大集団の組では教師の研修はあっても新しい教材はありませんでした。授業観察では、小集団の教師のほうが、予定した教え方を実行する程度が高かったと報告しています。下表ではこの試験の結果を、ばらつきを物差しにした単位である標準偏差で示しています。
| 人数・比較した形 | 対象 | 学年・教科 | 結果 |
|---|---|---|---|
| コンピュータ支援の6人組と1対1 | 読みにつまずく子 | 小学1・2年の読み | Chambers ほか(2011)では小学1年は集団の組が上、小学2年は差なし |
| 小集団と大集団、教材の条件も異なる | 数学が苦手な生徒 | 中学2年相当の数学 | Gunnes ほか(2025)では小集団・研修・教材の組で0.06標準偏差の上昇、大集団の組では効果なし |
Hall ほか(2018)は、少人数による読みの指導26研究をメタ分析し、人数と効果の関連を調べました。メタ分析とは、複数の研究結果をまとめて計算し直す方法です。人数と効果の相関は r = 0.21 で、小さな正の関連でした。相関は一緒に増減する傾向を表すもので、この分析はマンツーマンとの直接比較ではなく、少人数の指導の中で人数の違いを見ています。
人数だけで選ぶと、どんな子の困り方を見落とすのか
少人数の授業で問題になるのは、講師がほかの子を見ている間、自分の課題に取り組めない状態です。手順の入口で止まり、その先を自分で決められない子には、待つ時間が空白になりえます。隣の子が説明を受けている間に何もすることがなければ、席にいる時間と練習する時間が離れてしまいます。これは子の性格の問題ではなく、課題の渡し方や講師の戻り方と組み合わさった不適合です。
反対に、講師の説明を聞いた後、自分で試している途中に何度も声をかけられると、考えの続きを保ちにくい子もいるでしょう。その場合は、講師が近くにいる時間を増やすだけで困り方が解けるとは限りません。答えを待ってもらいたいのか、途中の誤りを早く指摘してもらいたいのかで、求める関わりは異なります。マンツーマンにも、教える側が話し続け、子が答えを作る時間を圧迫する組み方はありえます。
同じ教材を一緒に進める少人数の授業では、互いの準備の差も問題になります。前提となる読み方や計算に戻る子と、先の課題に進む子が一緒なら、共通の説明が双方にちょうどよいとは限りません。別々の課題を渡している授業では、逆にそれぞれの進み具合を講師が把握する負担が生じます。人数とともに、何を共通に教え、どこを別々に扱うかが、その子への適合を左右する条件です。
ここに挙げた困り方は、研究で確定した子どもの分類ではなく、授業を照合するための具体例です。待てる子と待てない子に固定して扱うと、単元によって支援の必要度が変わる点を取り逃がします。既習の問題を練習する時間と、新しい考え方に初めて触れる時間では、同じ子でも求める助けが変わります。
家庭で準備し、見学で確かめる手順
家庭では、子が最近止まった問題を手元に置き、どこまで自分で進めたかを聞きます。「どこもわからない」という答えなら、問題文を読む、使う方法を選ぶ、計算する、といった作業に分けて聞き直します。できなかった理由を決めつけず、助けが要った箇所を短く書き残します。その記録を使い、見学では同じような箇所で講師がどう応じるかを見ます。
見学中は、講師が話している長さだけで授業を評価しないようにします。子のノートや答案へ視線を向け、途中の考え方を確かめているかにも注目します。子がうなずいているだけのやりとりと、自分の言葉で説明しているやりとりを分けて記録します。観察できる範囲で、次の項目を確かめます。
待つ時間を記録するときは、長さとともにその中身も添えます。課題を解いていたのか、答え合わせを待っていたのか、何をすればよいかわからなかったのかを区別します。子が静かにしているだけでは、困っていたとも順調だったとも判断しにくいため、後から本人の感覚も聞きます。「説明がわかったか」だけでなく、「待っていた間は何をしていたか」と尋ねると、観察とのずれも残せます。
見学後は、人数の表示の横に、子が助けを受けた箇所と、自分で進めた箇所を書き並べます。教科や単元が違う授業を比べた場合は、その違いも一緒に残します。待つ間の課題が合わなかったときは、人数を変える前に、課題の渡し方を調整できるかを確かめます。手が止まった箇所を記録できたら、次の見学で講師に尋ねる内容を絞れます。
よくある質問
子が隣の子を待っていたら、その授業は合わないのですか
待っているという見た目だけで、すぐに合わないとは判断しません。手順の節で示したように、自分で取り組む課題があったか、困ったときに講師へ知らせられたかを分けて振り返ります。隣の説明を聞くよう求められていたなら、その内容が本人の課題とつながっていたかも確かめます。終わった後に子が疲れたと話す場合も、待つこと、課題の難しさ、周囲の声のどれが負担だったかを具体的に聞きます。
マンツーマンなら、ずっと講師が説明してくれるほうがよいですか
説明の長さだけを希望するより、子がどの段階で助けを要するかを伝えるほうが、授業の調整を頼みやすくなります。「人数だけで選ぶと」の節にあるとおり、自分で考える途中と、入口で止まっているときでは必要な対応が違います。説明を聞いた後に、子が自分で問題を進める時間も観察の対象です。会話が途切れず続いていたという印象と、子が自力で取り組めた内容を別々に残します。
中学生の数学でも、読みの研究を選ぶ参考にしてよいですか
研究の結論を、そのまま数学の得点差の予想に使うのは避けます。「教材も変わる試験」の節では中学生の数学も扱いましたが、対象や指導の組み合わせを確かめて読む話です。選ぶ際には、計算の途中、文章題の読み取り、解法の説明のうち、本人が支援を求める箇所を明確にします。読みの試験で扱う力と目の前の困り方を混ぜず、見学時の質問を具体化する手掛かりとして使います。
この記事の限界
比べた相手には指導なしの組や別の人数の組があり、教材や教え方も異なるため、人数の違いだけを切り出せる程度は研究によって異なります。対象の多くは小学校低学年までの読みと算数で、中高生を対象にした試験はGunnes ほか(2025)だけです。国や期間を抄録から特定できない研究もあり、オンラインの記録と対面の授業、学習成果と授業中の練習経験では測るものも違います。
根拠にした試験は日本の小中高生の家庭学習や学校外の指導を直接検証したものではなく、学年と指導内容をそろえた検証が課題として残ります。日本の個別指導の塾で1対1と1対2を比べた試験は見つかっておらず、差の大きさを塾の成績の数字として示すことはできません。
参考文献
- Neitzel ほか. A Synthesis of Quantitative Research on Programs for Struggling Readers in Elementary Schools. Reading Research Quarterly. 2022;57(1):149-179.
- Robinson ほか. The Effects of Virtual Tutoring on Young Readers: Results From a Randomized Controlled Trial. Educational Evaluation and Policy Analysis. 2025;47(4):1245-1265.
- Hsieh ほか. The Power of Personalized Attention: Comparing Pedagogical Approaches in Small Group and One-on-One Early Literacy Tutoring. Education Sciences. 2026;16(1):142.
- Miles ほか. Maximising access to reading intervention: comparing small group and one‐to‐one protocols of Reading Rescue. Journal of Research in Reading. 2022;45(3):299-323.
- Doabler ほか. Examining the Impact of Group Size on the Treatment Intensity of a Tier 2 Mathematics Intervention Within a Systematic Framework of Replication. Journal of Learning Disabilities. 2019;52(2):168-180.
- Chambers ほか. Small-Group, Computer-Assisted Tutoring to Improve Reading Outcomes for Struggling First and Second Graders. The Elementary School Journal. 2011;111(4):625-640.
- Gunnes ほか. Small‐ and large‐group instruction and a didactic method in mathematics for low‐performing adolescents: results from a randomized field experiment. The Scandinavian Journal of Economics. 2025;127(3):613-652.
- Hall ほか. Meta-analysis of targeted small-group reading interventions. Journal of School Psychology. 2018;66:54-66.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒、講師が一人の生徒に付きっきりの完全1対1で、大学教員や東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生などが教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
子が隣の子を待っていたら、その授業は合わないのですか
待っているという見た目だけで、すぐに合わないとは判断しません。手順の節で示したように、自分で取り組む課題があったか、困ったときに講師へ知らせられたかを分けて振り返ります。隣の説明を聞くよう求められていたなら、その内容が本人の課題とつながっていたかも確かめます。終わった後に子が疲れたと話す場合も、待つこと、課題の難しさ、周囲の声のどれが負担だったかを具体的に聞きます。
マンツーマンなら、ずっと講師が説明してくれるほうがよいですか
説明の長さだけを希望するより、子がどの段階で助けを要するかを伝えるほうが、授業の調整を頼みやすくなります。「人数だけで選ぶと」の節にあるとおり、自分で考える途中と、入口で止まっているときでは必要な対応が違います。説明を聞いた後に、子が自分で問題を進める時間も観察の対象です。会話が途切れず続いていたという印象と、子が自力で取り組めた内容を別々に残します。
中学生の数学でも、読みの研究を選ぶ参考にしてよいですか
研究の結論を、そのまま数学の得点差の予想に使うのは避けます。「教材も変わる試験」の節では中学生の数学も扱いましたが、対象や指導の組み合わせを確かめて読む話です。選ぶ際には、計算の途中、文章題の読み取り、解法の説明のうち、本人が支援を求める箇所を明確にします。読みの試験で扱う力と目の前の困り方を混ぜず、見学時の質問を具体化する手掛かりとして使います。