- 大学生の選択式試験では、書き直しによって平均では得点が増える報告が多くあります。
- 集団全体の得と、書き直した本人の得は別で、点が下がる学生もいます。
- 自信が弱い答えにも程度の違いがあり、当てずっぽうとまとめて扱うと判断の中身が抜けます。
- 家庭で確かめる際は、変更前の答え、変えた理由、採点後の結果をつなげて残します。
テストで答えを書き直すと損をするか|最初の直感の研究
昇降口で靴を履き替える子が、かばんからテストの問題用紙を取り出します。指で押さえた選択肢には消し跡があり、最後まで迷った様子が残っています。保護者には、答えを変えたという話だけでは、読み違いを直したのか、理由なく選び直したのかがわかりません。見直しで答えを書き直してよいのか、それとも最初の直感を守るべきなのかという疑問が生まれます。
答えを書き直す行為を、それだけで損と決める必要はありません。 ただし、「見直す」と「別の答えにする」は別の動作です。問題を読み返したうえで元の答えを残すことも、条件の見落としに気づいて変えることもあります。選択肢の記号だけを見ていると、こうした判断の違いは隠れてしまいます。
判断の材料になるのは、提出前の変更を追った試験や実験です。そこには、最初と最後の正誤を数える調べ方も、書き直した学生ごとの得失を調べる方法もあります。以下では、平均の結果、個人差、自信の扱いを順に見たあと、答案に残せる記録へ進みます。返却後に正解を写す学習とは分けて、試験中に答えを選び直す判断に焦点を当てます。
要点
- 大学生の選択式試験では、書き直しによって平均では得点が増える報告が多くあります。
- 集団全体の得と、書き直した本人の得は別で、点が下がる学生もいます。
- 自信が弱い答えにも程度の違いがあり、当てずっぽうとまとめて扱うと判断の中身が抜けます。
- 家庭で確かめる際は、変更前の答え、変えた理由、採点後の結果をつなげて残します。
テストの答えの書き直しは、何と比べて損なのか
「最初の答えを変えなければよかった」という言葉には、比べる相手がはっきりしています。その問題で最初に書いた答えと、最後に提出した答えです。元は正解で、変更後に不正解なら、その変更で点を失ったといえます。逆に、読み返して誤りを直せた問題では、書き直しが得点を支えています。
ただし、失敗した変更だけを集めた説明では、試験全体の得失を数えたことにはなりません。別の問題で正しく直せたか、間違った選択肢から別の間違った選択肢へ移ったかも、調べる対象です。さらに、問題ごとの変更を合計した数字と、学生ごとに得点が増えたかを数えた数字では、答えている問いが異なります。どちらも「書き直しの結果」と呼べるため、何を数えたのかが説明の入口です。
| 比較するもの | 数える対象 | 答えられる問い |
|---|---|---|
| 最初の答えと提出した答え | 同じ問題の正誤の変化 | この変更で得点が増えたか |
| 得をした変更と損をした変更 | 試験内に残った書き直し | 全体でどちらの方向が多いか |
| 得点が増えた学生と減った学生 | 書き直した人ごとの結果 | 人によって得失が違うか |
| 変更を促す指示の有無 | 条件を変えた模擬試験 | 声をかけると行動がどう変わるか |
比較の形には、本人が選んだ問題だけを調べる場合と、外から指示を加える場合があります。前者では、学生が何を迷い、どの問題を直すと決めたかも結果に入り込みます。後者は、その選び方に働きかけたときの変化を見る方法です。すべての答えを機械的に変える操作と、見直した末の選び直しは、研究の手順としても異なります。
消し跡と論文の整理から見える、変更の向き
Coffey ほか(2024)は、大学生と大学院生を対象とする10論文をスコーピングレビューで整理しました。これは、関連する研究を集め、何が調べられてきたかを見渡す方法です。看護教育が中心で、答えの変更は誤答から正答への動きが多く、書き直しによって正答数や総得点が下がるという想定に反する内容でした。著者たちは、答えの変更を認めることを支持しています。
この整理が扱っているのは、提出前に答えを変更する行動です。学習者が採点済みの答案を受け取り、模範解答を見ながら直す活動ではありません。また、看護教育を中心とする専門的な試験では、学んだ内容を選択肢の中から選ぶ判断が調べられています。勉強し直して知識を増やす過程よりも、既に書いた解答を試験中に再検討する過程が焦点です。
Merry ほか(2021)は、大学の生理学・生物学の試験で答案の消し跡を調べました。2回の試験を通じて、誤答から正答への変更は2.8回(標準偏差2.2)、逆方向は1.0回(標準偏差1.4)でした。標準偏差は、学生間のばらつきの大きさを示す数字です。元の選択と最終的な選択をたどったことで、書き直しが正答を増やす側にも減らす側にも動く様子を数えています。
同じ調査には、教員と学生が書き直しをどう受け止めるかを尋ねる部分もあります。教員では損になるという考えが最も多い一方、学生では役立つと考える人がわずかに過半数でした。また、前の試験で変更が得になったかは、次の試験での得失を予測しませんでした。答案の比較は、その場での変更の向きだけでなく、試験をまたいだ結果のつながりも調べています。
平均の得点が上がっても、損をする人はいる
Mueller ほか(1977)は、最初の答えを変更することについて18研究を整理しました。どの得点帯でも失った点より得た点が多い傾向がありましたが、得点の高い学生ほど得が大きいという内容でした。全体の平均だけでなく、もともとの成績によって結果を分けて見ています。調べているのは、元の解答を残した場合に相当する得点と、変更を反映した得点との関係です。
Di Milia(2007)が扱ったのは、オーストラリアの学生と留学生を含む学部生・大学院生の試験です。いずれの集団でも、書き直した人のうち約50%で得点が増え、25%で得点が減りました。成績上位の学生では、誤答を正答へ変えることが多く、正答を誤答へ変えることが少ないという結果もありました。得点増の報告と、損をした人の存在を同時に示す分析です。
ここでの比較の単位は、書き直した人です。変更をしなかった学生まで含む全受験者のうち、どれだけの人が損をするかを示す割合ではありません。また、ある問題の変更が正しかったかと、本人の答案全体で点が増えたかも違います。得点が増えた学生の答案に、失敗した変更が混ざる場合もあり得ます。
得点帯を分ける分析と、本人ごとの増減を分ける分析には、それぞれ役割があります。前者はどの層で利点が大きいかを示し、後者は同じ集団の中にも損失があることを見せます。どちらも、成績の低い学生に書き直しを禁じる群と、認める群を作って効果を比べた手順とは異なります。学生の特徴を手がかりに結果を読み分ける比較です。
自信の低さと、当てずっぽうは同じではない
Ramsey ほか(1987)は、選択式試験で学生の自信や問題の難しさと書き直しによる得点を調べました。学生が変えたいと思って行った変更は、自信が低くても有意な得点増につながったと報告しています。有意とは、偶然のばらつきだけで説明するのが難しいとする統計上の判断です。この研究が扱った変更には、本人が選び直そうとする判断が先にあります。
自信の低い答えには、いくつかの状態が考えられます。候補を絞れたものの最後の選択に迷う場合も、問題文の意味をつかめずに記号だけ選ぶ場合もあります。どちらも本人の言葉では「自信がない」になり得ますが、判断に使える内容は違います。変更の前に何をわかっていたかを分けると、自信という言葉だけでは見えない比較ができます。
Siedlecka ほか(2025)は、173人に一般知識テストを行い、最初の回答を確定するか、修正するかを選ばせました。少しでも初めの答えに自信があった場合の修正は、初めから当てずっぽうだった場合の修正より正しいことが多くありました。一方、自信を報告させることで修正や試験全体の正確さが高まる証拠はありませんでした。自信の程度と結果の関係、自信を答えさせる操作の結果を、同じ実験で調べています。
この比較は、「少し自信がある」と「当てずっぽう」を区切っている点が特徴です。前の研究は、変更への自信が低くても得をするかを扱い、こちらは最初の回答の自信と修正の正確さを関係づけています。したがって、同じ尺度の両端をそのまま比べた結果ではありません。著者たちは、自信の報告自体が負担となり、有益な修正の過程を妨げる可能性を説明として挙げています。
変更を促す指示と、本人が選ぶ問題
Tiffin-Richards ほか(2022)は、模擬試験の条件をそろえた実験で、書き直しを促す指示を調べました。促すことで変更の回数は少し増えましたが、誤りの率は増えませんでした。また、自信が高いと初めの答えを変えにくく、難しいと感じると変えやすいという関係がありました。指示による行動の変化に加え、受験者がどの問題を選ぶかも調べた実験です。
回数と率は、異なる側面を表しています。答えを変える機会が増えたかという問いは、変更の回数で捉えます。一方、誤りの率は、その行動や解答の正確さに関わる指標です。この実験の報告は、行動を促したという事実だけで判断せず、正確さも併せて調べたものです。
Stylianou-Georgiou ほか(2017)は、教育心理学の授業の期末試験を材料にしました。書き直しと成績の関係には、本人の側と問題の側の条件が組み合わさって関わるとしています。試験を受ける人だけに特徴を求めず、取り組む問題も分析の視野に入れた報告です。著者たちは、こうした複数の条件の関わりが、受験者にも教育者にもこの方法が誤解されやすい理由になり得ると述べています。
模擬試験で指示を変える比較と、授業の期末試験に現れた関係を見る比較では、出発点が違います。前者では外から働きかけた指示を検討し、後者では試験の中で起きた選び直しを捉えています。さらに、本人が難しいと感じたかという評価は、問題の内容と本人の知識との関わりを伴います。人と問題の組み合わせを含めて扱う点が、この期末試験の分析の特徴です。
家庭で確かめる手順は、理由と正誤をつなぐ
家庭では、練習用の答案を用意し、答えを変える際に理由を短く残す方法から始めます。最初の解答を別の欄に控えておけば、採点後にも変更の前後を追えます。「否定の語を読み落とした」「計算し直すと符号が違った」など、問題のどこを見て考えが変わったかを書きます。これは得点増を約束する方法ではなく、その子の判断を確かめるための記録です。
変更は、理由を言える問題に絞って試します。「なんとなく違いそう」という段階なら、どの選択肢のどの部分が気になるかを確かめます。何も手がかりがない場合は、当てずっぽうの問題として別の印を付け、理由が見つかった変更と混ぜずに残します。正解がわかったあとで説明を作り直すと、試験中の判断が見えなくなるため、記録は答え合わせの前に行います。
理由を書こうとして手が止まる子には、長い説明を求めず、見落とした語に線を引く形も選べます。解答するだけで時間が足りない練習では、全問に記録欄を増やす方法は避け、見直した問題に限って残します。本番の試験では、書き込みの可否や解答用紙のルールに従います。自信の細かな採点や文章作りが解答を圧迫するなら、記録の仕方を軽くします。
保護者と答案を見るときは、変えて失敗した箇所だけを問い詰めず、変更の理由と最終的な正誤を対応させます。読み違いの修正がうまくいったのか、根拠が曖昧な選び直しで迷いが増えたのかを、問題の実物で確かめます。練習の記録には、試験名や教科も添えて別々に保管できます。まず、書き直す前の答えを余白に控えます。
よくある質問
見直しても答えを変えなかった問題は、記録しなくてよいですか
元の答えを残すと判断した問題も、余裕があれば記録できます。手順の節の変更前後の記録に、読み返して残した印を加えると、見直した問題と手を付けなかった問題を分けられます。採点後には、条件を読み直して納得したのか、迷ったまま残したのかも一緒に確かめます。すべての問題に詳しい説明を書く負担が大きければ、迷いが続いた箇所に対象を絞る方法もあります。
塾で「最初の答えを守るように」と言われたらどうしますか
その言葉が、どの問題や解き方を指しているのかを講師に尋ねると、話が具体的になります。例えば、根拠のない変更をやめる話なのか、計算ミスに気づいても変更しない話なのかで、練習の内容は変わります。手順の節で残した答案があれば、変更時の理由を示しながら話せます。助言の言葉だけで塾を判断するのではなく、子が実際に迷った箇所について説明を確かめます。
変えて間違えた子に、何と声をかければよいですか
「変える前に何を考え、どこで考えが変わったか」を、答案を見ながら聞く方法があります。正解を知った保護者の立場から理由を決めず、本人が試験中に見ていた語や式をたどります。説明が出てこなければ、わからないままと記録して、次の練習で控えを残す準備をします。その場で「直感が弱い」「見直しが苦手」といった本人の性質の評価へ結びつけず、解答した経過を扱います。
この記事の限界
対象者は大学生と大学院生が中心で、看護教育や生理学・生物学などの選択式試験の結果が、議論の主な材料です。小中学生の定期テストや記述式問題の書き直しは対象外であり、日本の小中高生について同じ得失を直接確かめた研究はありません。対象の国や年齢、実施期間の詳しさにも差があるため、各報告の結果は、説明されている試験や課題の条件に沿って扱っています。
答案の消し跡、学生ごとの得点、自信の報告、指示を変えた模擬試験では測る内容が異なり、同じ方法の長期的な効果を追った資料としてはそろっていません。書き直してはいけない問題を見分ける方法の検証は少なく、変更するかどうかは、その子の答案に残した理由と正誤をもとに判断します。
参考文献
- Coffey ほか. Changing test answers: A scoping review. Nurse Education Today. 2024;133:106052.
- Merry ほか. Should students change their answers on multiple choice questions?. Advances in Physiology Education. 2021;45(1):182-190.
- Mueller ほか. Implications of Changing Answers on Objective Test Items. Journal of Educational Measurement. 1977;14(1):9-13.
- Di Milia. Benefiting from Multiple‐Choice Exams: The positive impact of answer switching. Educational Psychology. 2007;27(5):607-615.
- Ramsey ほか. Effects of Student Confidence and Item Difficulty on Test Score Gains Due to Answer Changing. Teaching of Psychology. 1987;14(4):206-210.
- Siedlecka ほか. Assessing confidence reduces the benefits of response revisions in a general knowledge test. European Journal of Psychology of Education. 2025;40(3):83.
- Tiffin-Richards ほか. When do examinees change their initial answers? The influence of task instruction, response confidence, and subjective task difficulty. Learning and Instruction. 2022;82:101654.
- Stylianou-Georgiou ほか. Answer changing in testing situations: the role of metacognition in deciding which answers to review. Educational Research and Evaluation. 2017;23(3-4):102-118.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒、講師が一人の生徒に付きっきりの完全1対1で、大学教員や東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生などが教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
見直しても答えを変えなかった問題は、記録しなくてよいですか
元の答えを残すと判断した問題も、余裕があれば記録できます。手順の節の変更前後の記録に、読み返して残した印を加えると、見直した問題と手を付けなかった問題を分けられます。採点後には、条件を読み直して納得したのか、迷ったまま残したのかも一緒に確かめます。すべての問題に詳しい説明を書く負担が大きければ、迷いが続いた箇所に対象を絞る方法もあります。
塾で「最初の答えを守るように」と言われたらどうしますか
その言葉が、どの問題や解き方を指しているのかを講師に尋ねると、話が具体的になります。例えば、根拠のない変更をやめる話なのか、計算ミスに気づいても変更しない話なのかで、練習の内容は変わります。手順の節で残した答案があれば、変更時の理由を示しながら話せます。助言の言葉だけで塾を判断するのではなく、子が実際に迷った箇所について説明を確かめます。
変えて間違えた子に、何と声をかければよいですか
「変える前に何を考え、どこで考えが変わったか」を、答案を見ながら聞く方法があります。正解を知った保護者の立場から理由を決めず、本人が試験中に見ていた語や式をたどります。説明が出てこなければ、わからないままと記録して、次の練習で控えを残す準備をします。その場で「直感が弱い」「見直しが苦手」といった本人の性質の評価へ結びつけず、解答した経過を扱います。