- Xie ほか(2013)は、中国の大学英語試験の受験者870人以上を10週間調べ、試験を重いものと捉える人ほど準備に打ち込んだと報告しました。
- Allen(2016)は、日本の大学生190人の研究で、IELTS の準備に打ち込んだ人ほど話す・聞く力が伸びたと報告しました。
- Allen ほか(2024)は、日本の高校で目標に合った4技能の検定からは悪い波及が見られず、大学入試からは強く見られたと報告しました。
- Green(2007)は対策に特化した講座にはっきりした有利を見いだせず、Koretz(2005)は目標を合わせても得点の水増しは防げないと指摘しています。
- 英検の対策と学校の勉強は、週の予定で分けて確かめます。内申は検定の結果とは別の記録として見ます。
試験対策の勉強は学校の英語にもつながるか|英検の波及効果と得点の水増しの研究
英検会場の受付前に、受験票を握った子の後ろで、保護者が対策問題のページをめくっています。日本の高校で4技能の検定を調べた Allen ほか(2024)は、学習の目標に合っていると受け止められた検定からは悪い波及が見られず、大学入試からは強い悪い波及が見られたと報告しました。英検の対策を塾に頼むと学校の内申にもつながるのか、それとも提出物の時間が減るのかが気になるところです。検定の準備と学校の英語は重なる部分がありますが、試験の形に合わせた練習だけでは学校で求められる力の全部にはなりません。
試験が勉強の中身や進め方を変えることを、研究では波及効果と呼びます。ここでは、技能の伸び、準備の仕方、授業への影響を分けて読みます。いずれも検定の合否や学校の評定そのものとは異なるため、何を測った結果なのかを確認する必要があります。
英検の対策が中学校の英語の内申を上げるかを直接調べた研究は、今回の根拠にはありません。そこで、検定と学校の英語の関係を調べた研究を、比べた相手と対象を確かめながら並べます。あわせて、家庭で一週間の予定から確かめられることを整理します。
要点
- Xie ほか(2013)は、中国の大学英語試験の受験者870人以上を10週間調べ、試験を重いものと捉える人ほど準備に打ち込んだと報告しました。
- Allen(2016)は、日本の大学生190人の研究で、IELTS の準備に打ち込んだ人ほど話す・聞く力が伸びたと報告しました。
- Allen ほか(2024)は、日本の高校で目標に合った4技能の検定からは悪い波及が見られず、大学入試からは強く見られたと報告しました。
- Green(2007)は対策に特化した講座にはっきりした有利を見いだせず、Koretz(2005)は目標を合わせても得点の水増しは防げないと指摘しています。
- 英検の対策と学校の勉強は、週の予定で分けて確かめます。内申は検定の結果とは別の記録として見ます。
英検の対策は学校の英語と重なるのか
検定の勉強が学校の英語にも役立つのかを考える前に、準備の仕方を扱った研究を見ます。中国の大学英語試験(CET-4)の受験者870人以上に10週間の準備期間の前後で質問紙をとった Xie ほか(2013)は、試験を進学や就職に使う重いものと捉える人ほど準備に打ち込んだと報告しました。試験をよく知る人ほど自分で準備を管理し、受験技術の練習も増えたとされています。
Xie ほか(2013)が示したのは、試験についての捉え方や知識と、準備の行動との関係です。試験を知ることが学校の成績を上げた、という比較ではありません。家庭で準備の変化を見る場合にも、計画を立てることと、その結果どんな力が伸びたかを分けて確認します。
日本の大学生190人に IELTS(英語の検定試験)を受けさせた Allen(2016)では、話す力が伸び、準備に打ち込んだ人ほど話す・聞く力が伸びました。著者は、それまでの学習で手薄だった話す・書く力への良い波及があったとまとめています。点の伸びとして報告された技能と、著者が波及の対象として論じた技能は区別して読む必要があります。講座に通わない自習の準備を扱った研究であり、英検の対策講座と学校の授業を比較したものではありません。
英語の検定は種類によって測る力が違います。IELTS で見られた話す力の伸びを、そのまま英検(実用英語技能検定)の対策に置き換えることはできません。家庭で重なりを調べるなら、学校の教科書の活動と検定の教材を横に置き、同じ単語や文法を扱う箇所を探します。読む・聞く・話す・書くのどの活動を練習しているかも書き添えると、重なっていない課題が具体的になります。
4技能の検定が授業に与える影響
4技能とは、読む・聞く・話す・書くの四つです。日本の高校でケンブリッジ英検(B1・B2)を定期的な到達度の試験として使った事例を、Allen ほか(2024)は教員と生徒への調査や授業の観察から調べました。大学入試からは強い悪い波及が見られた一方、学習指導の目標と合っていると受け止められた検定からは、そうした影響が見られなかったと報告しています。目標と試験の関係を考える手がかりですが、どの学校でも同じ結果になると示したものではありません。
この研究で扱われたのはケンブリッジ英検であり、英検そのものではありません。日本の高校の授業の事例として読む必要があります。英検対策を学校の課題と照らすときも、検定をひとまとめにせず、実際に使う教材と授業で求められる活動を確認します。検定の名前だけで、学校の英語を補えるかどうかは決められません。
試験を変えれば授業が変わる、という前提にも注意が必要です。日本の高校の英語の授業を観察した Watanabe(1996)は、文法訳読の授業が大学入試から生まれているかを調べました。文法訳読とは、文法を説明し、英文を日本語に訳すことを中心にした授業です。授業のやり方には、入試よりも教師の経歴・考え方・経験のほうが大きく効いている可能性があるとしています。
研究が見ているもの、見ていないもの
検定の対策を考えるとき、研究の結論と合わせて、比べた相手を確認します。とくに、対策の前後で何を測ったのかによって、結論の読み方は変わります。次の表では、講座の比較、質問紙、授業の事例、得点についての議論を区別しています。
| 試験対策への期待 | 波及について得られた結果 | 対策・授業の比較 | 学習者 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 検定の準備をすれば学校の英語も伸びる | 試験の捉え方や知識と準備の仕方に関係がありました | 10週間の準備期間の前後の質問紙 | 中国の大学英語試験の受験者870人以上 | Xie ほか(2013) |
| 対策講座に通えば点が上がる | 対策に特化した講座にはっきりした有利が見られませんでした | 対策特化の講座、学術英語の講座、その両方 | 英国の大学進学前の留学生 | Green(2007) |
| 4技能の検定は授業を歪める | 目標に合った検定では悪い波及が見られず、大学入試では強く見られました | ケンブリッジ英検と大学入試による波及の事例 | 日本の高校 | Allen ほか(2024) |
| 試験を指導目標に合わせれば水増しは防げる | 目標を合わせるだけでは得点の水増しは防げないと論じています | 比較試験ではなく得点の水増しの議論 | 米国の学校の学力試験 | Koretz(2005) |
| 入試が変われば授業も変わる | 教師の要因のほうが大きく効く可能性を示しています | 入試の影響と教師の要因を授業観察から検討 | 日本の高校 | Watanabe(1996) |
表を横に読むと、効果があるかないかの前に、比べた相手や調べ方が異なることがわかります。学校の評定を測った研究は含まれず、講座の点の伸びを比べた研究と、授業の観察から波及を読み取った研究が並んでいます。同じ「効果」という言葉でも、指している成果を分けて読む必要があります。
対策に特化した勉強に有利はあるのか
対策の時間を増やすか迷うときは、何と比べた結果なのかを確認します。英国の大学進学前の留学生を対象にした Green(2007)は、IELTS の対策に特化した講座、大学の学術的な書き方を教える講座、その両方の講座を比べました。IELTS の書く試験の伸びに、対策に特化した講座のはっきりした有利は見られませんでした。対策をしない場合との比較ではないため、試験の練習がすべて無意味だという結果としては読めません。
点が上がることと、広い意味での実力が伸びることも区別します。米国の学校の学力試験について論じた Koretz(2005)は、試験を学習指導の目標に合わせても、試験に出る形に合わせた準備による「得点の水増し」は防げないと指摘しました。これは、点が実力以上に上がる問題についての議論です。対策を重ねるほど実力との差が一定の向きで開くと測定した研究でも、英検の点が水増しされると示した研究でもありません。
これらを読むと、対策の名称や時間だけでなく、中身を確かめることが相談の出発点になります。過去問の形式に慣れる練習と、自分の言葉で説明したり書いたりする練習が、予定にどう置かれているかを見ます。面談では、一週間の指導の流れと、学校の課題を扱う時間を尋ねる方法があります。教材の書き込みや作文の欄も、実際に何をしたかを確認する材料になります。
日本の研究はどこまで進んでいるか
日本の大学入試の英語が高校の英語教育に与える波及を調べた Paxton ほか(2022)は、1993年から2022年6月までの研究をまとめました。学習者の行動・教師の行動・気持ちの面・リスニング導入に分けて整理し、複雑な波及を理解するには実証研究がさらに必要だとしています。4技能の試験や、とくに話す試験を含めることの波及も、今後の課題としています。検定を取り入れるだけで望む変化が起きると決めず、何を調べた研究があるかを確認する必要があります。
幼い子どもの検定受験については、別の観点の研究があります。日本の児童英検の受験を文章資料から分析した Otomo(2016)は、受験を始めるのは多くが大人で、試験の結果で人の価値が測られる「試験の文化」の中で競争が強まっていると論じました。学力への効果を量的に測った研究ではありません。家庭では、級や受験する回を決めるときに、誰の目的で準備を進めるのかを話し合う材料になります。
研究が足りないということは、効果がないと確定したことではありません。一方で、検定の合否だけを見て、学校の英語にも効果があったとは判断できません。家庭では、準備に使った時間、実際に行った活動、残った学校の課題を分けて記録する方法が考えられます。記録は家庭の予定を調整するために使い、対策の効果を証明するものとしては扱いません。
家庭で確かめられること
対策を選ぶ前に、一週間の予定を紙に書き出す方法があります。塾の日、学校の宿題の締め切り、家で英語に触れる時間を並べます。次の項目は、子を評価するためではなく、どこに時間が置かれているかを確かめるために使います。
- 検定の形式練習と学校の音読・作文・提出物が、同じ週に入っているかを見ます。
- 対策の時間を増やした後、学校の宿題が残っていないかを確認します。
- 選択式の問題を解く時間と、自分の言葉で説明したり書いたりする時間を分けます。
- 受験する級と回について、子の希望と大人の希望を聞き合います。
- 検定の教材と学校の教科書で、同じ単語や文法を扱う箇所を探します。
- 結果が返ったら、合否だけでなく技能ごとの結果と練習内容を見返します。
予定を書き出したら、実際に学校の宿題にかかった時間と、検定の練習で止まった問題をメモに残します。細かく数えることが負担なら、終わった課題と残った課題だけでも記録します。次の面談や家庭での話し合いで、どの時間を残し、どれを減らすかを決める材料にします。対策を優先する目的と、学校の課題を終える見通しを合わせて話します。
検定の練習と学校の課題を同じ予定に書き込み、押し出された課題がないか確かめます。重なる内容と別に残す内容を教材で確認します。その予定を講師と共有し、次の週に取り組む内容を決めておきます。
よくある質問
英検の対策をすれば、学校の英語のテストの点も上がりますか。
Xie ほか(2013)は、中国の大学英語試験の受験者870人以上を10週間調べ、試験の捉え方や知識と準備の行動との関係を報告しています。中学校のテストの点を比べた研究ではありません。家庭では、学校の教科書の活動や提出物と検定の形式練習を分け、それぞれに使う時間と残った課題を確認します。教材の重なる箇所も見ます。
英検の級を持っていると内申が上がりますか。
今回の根拠には、英検の対策が中学校の評定を上げるかを直接調べた研究はありません。級を取得したことと、学校でどの課題に取り組めたかを分けて確認します。内申が気になる場合には、通知表や返された課題を学校の先生と見返し、どの学習を補う必要があるかを相談します。検定の結果だけを、評定が上がる見通しとして扱わないことが大切です。
塾では英検対策だけをお願いしてもよいですか。
Green(2007)は、英国の大学進学前の留学生の IELTS の書く試験を比べ、対策に特化した講座にはっきりした有利を見いだせませんでした。日本の中学生に英検対策だけを行う場合の結果ではありません。塾に頼む内容を決める際は、学校の課題をどこで行うかも週の予定に置いて確認します。対策の教材も講師と見返します。
対策の時間が増えて、学校の宿題が終わらないときはどうすればよいですか。
まず、学校の教科書の単元と対策で扱う内容を並べ、重なる部分と別の練習を整理します。講師には学校の進度と、残っている宿題を伝えます。同じ内容をどう扱うか、別の課題にいつ取り組むかを相談し、予定を組み直します。それでも時間が足りない場合には、子の希望も聞きながら、受験する回を先に延ばす選択も検討できます。
この記事の限界
当てはまる範囲は、英国の大学進学前の留学生、中国の大学英語試験の受験者、日本の大学生や高校の授業などです。検定の種類も学習の目的もそろっていません。日本の高校の事例もケンブリッジ英検と大学入試による波及を扱っており、実用英語技能検定の対策が中学校の評定を上げるかという問いへの直接の答えにはなりません。
質問紙、授業観察、試験の成績、資料の分析は、それぞれ異なる側面を捉える方法です。検定の点の伸びと、学校の授業への取り組みや提出物の達成を、同じ成果とみなすことには限界があります。武蔵境の学校で求められる課題との重なりは子の教材をもとに確かめ、検定の準備が学校の課題を圧迫しているときは、学校の先生や講師と扱う内容を調整します。
参考文献
- Green A. Washback to Learning Outcomes: A Comparative Study of IELTS Preparation and University Pre-Sessional Language Courses. Assessment in Education: Principles, Policy & Practice. 2007;14(1):75-97.
- Xie Q ほか. Do Test Design and Uses Influence Test Preparation? Testing a Model of Washback with Structural Equation Modeling. Language Testing. 2013;30(1):49-70.
- Allen D. Investigating Washback to the Learner from the IELTS Test in the Japanese Tertiary Context. Language Testing in Asia. 2016;6(1):7.
- Allen D ほか. Washback from Four-Skills English Exams in the Japanese Secondary School Context. Language Assessment Quarterly. 2024;21(4-5):473-505.
- Watanabe Y. Does Grammar Translation Come from the Entrance Examination? Preliminary Findings from Classroom-Based Research. Language Testing. 1996;13(3):318-333.
- Paxton S ほか. Japanese University English Language Entrance Exams and the Washback Effect: A Systematic Review of the Research. Journal of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics. 2022;26(2):1-20.
- Koretz D. Alignment, High Stakes, and the Inflation of Test Scores. Yearbook of the National Society for the Study of Education. 2005;104(2):99-118.
- Otomo R. English Language Testing of Very Young Children: The Case of Japan. Cogent Education. 2016;3(1):1209802.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
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よくある質問
英検の対策をすれば、学校の英語のテストの点も上がりますか。
Xie ほか(2013)は、中国の大学英語試験の受験者870人以上を10週間調べ、試験の捉え方や知識と準備の行動との関係を報告しています。中学校のテストの点を比べた研究ではありません。家庭では、学校の教科書の活動や提出物と検定の形式練習を分け、それぞれに使う時間と残った課題を確認します。教材の重なる箇所も見ます。
英検の級を持っていると内申が上がりますか。
今回の根拠には、英検の対策が中学校の評定を上げるかを直接調べた研究はありません。級を取得したことと、学校でどの課題に取り組めたかを分けて確認します。内申が気になる場合には、通知表や返された課題を学校の先生と見返し、どの学習を補う必要があるかを相談します。検定の結果だけを、評定が上がる見通しとして扱わないことが大切です。
塾では英検対策だけをお願いしてもよいですか。
Green(2007)は、英国の大学進学前の留学生の IELTS の書く試験を比べ、対策に特化した講座にはっきりした有利を見いだせませんでした。日本の中学生に英検対策だけを行う場合の結果ではありません。塾に頼む内容を決める際は、学校の課題をどこで行うかも週の予定に置いて確認します。対策の教材も講師と見返します。
対策の時間が増えて、学校の宿題が終わらないときはどうすればよいですか。
まず、学校の教科書の単元と対策で扱う内容を並べ、重なる部分と別の練習を整理します。講師には学校の進度と、残っている宿題を伝えます。同じ内容をどう扱うか、別の課題にいつ取り組むかを相談し、予定を組み直します。それでも時間が足りない場合には、子の希望も聞きながら、受験する回を先に延ばす選択も検討できます。