- 長いコマの時間割で読解や数学の伸びが大きかった報告がある一方、共通の試験への効果は研究によって異なります。
- 高校の生物では、長い授業と短い授業のどちらが良いかが学年によって逆転しました。
- 注意の低下は、経過時間だけでなく講義の見せ方と関係していました。
- 同じ授業量でも、続けて学ぶか、間隔を空けるかで後日の記憶に差が出た研究があります。
- 塾で確かめる項目は、活動の切り替え、授業の間隔、子どもの予備知識と授業後の説明です。
塾の1コマは長いほうが身につくか|長い授業と短い授業の研究
放課後、子どもが開いたノートの横で、保護者は塾の時間割にある終了時刻を指でたどります。子どもは解きかけの問題を見ながら、続きを考える時間はほしいけれど、説明を聞き続けると疲れると話します。長く学べる安心と、最後まで取り組めるかという心配が、同じ時間割の上に重なります。塾の授業は長いほうがじっくり身につくのか、短いほうが集中を保てるのかが、選ぶときの疑問です。
長い授業で成績が伸びた研究はありますが、長ければ身につくという一律の結論は出ていません。短い授業が良かった学年もあり、授業中の見せ方や、次に学ぶまでの間隔も検討の対象です。「じっくり考えた」「疲れた」という感想と、後で内容を説明できるかという成果は、別の問いとして扱うと違いが見えます。研究を読む際にも、学校で付く成績、共通の試験の点、後日の記憶を分けると、良かったという報告と差がなかったという報告の関係がつかめます。
要点
- 長いコマの時間割で読解や数学の伸びが大きかった報告がある一方、共通の試験への効果は研究によって異なります。
- 高校の生物では、長い授業と短い授業のどちらが良いかが学年によって逆転しました。
- 注意の低下は、経過時間だけでなく講義の見せ方と関係していました。
- 同じ授業量でも、続けて学ぶか、間隔を空けるかで後日の記憶に差が出た研究があります。
- 塾で確かめる項目は、活動の切り替え、授業の間隔、子どもの予備知識と授業後の説明です。
塾の授業時間の長さを、学校の時間割の研究から読む
長いコマには、説明を聞いてから問題に取り組むまでを、途中で終わらせずに進められるという期待があります。研究で取り上げられる代表的な形が、ブロック・スケジュール(1コマを長くして科目数を減らす時間割)です。ただし、以下の中心は学校の時間割を比べた研究で、塾のコマの長さを直接比べた研究ではありません。授業を長くすると、科目の配置や同じ教科を学ぶ頻度も変わるため、終了時刻だけが違う比較とは区別して読みます。
Zepeda ほか(2006)は、高校のブロック・スケジュールを扱う58件の実証研究をまとめた総説です。総説とは、複数の研究を集めて結果や課題を検討する論文を指します。成績の平均点や学校の雰囲気は良くなるようでしたが、標準テスト、つまり共通の基準で測る試験の点や、出席への効果はばらばらでした。教員と生徒は長いコマを好意的に見ていましたが、その理由は明確になっていませんでした。
この総説で並んでいる結果は、「学校生活を良く感じた」と「共通の試験で学力が上がった」が同じ意味でないことを示しています。学校内の成績の平均と標準テストは、そもそも別の指標です。また、測定期間が短く、大事な情報が抜けた研究が多いという弱さも指摘されています。好意的な受け止めや成績の改善は得られていても、どの授業で何が変わったのかを詳しく追える研究ばかりではないという評価です。
長いコマで伸びた学校と、伸びなかった学校
Lewis ほか(2005)は、高校生の9年生と11年生の標準テストを生徒ごとにつなぎ、読解と数学の伸びを調べました。学期ごとに科目を入れ替える長いコマの型では、従来型の時間割と、教科を隔日で学ぶ長いコマの型に比べ、伸びが大きいという結果でした。入学時点の違う集団の平均を並べるだけでなく、生徒ごとの点の変化を扱っている点が特徴です。一方、くじ引きで時間割を割り当てた試験ではなく、通った学校の違いも混じる比較です。
Mattox ほか(2005)は、従来の時間割からブロック・スケジュールに切り替えたミドルスクール5校で、6年生の数学の点が上がったと報告しました。こちらは、時間割を変える前と後を比べた研究です。同時期に従来型を続けた学校を対照として置いたかどうかは、抄録に記載されていません。Lewis ほか(2005)が異なる時間割での伸びを比べたのに対し、この研究は切り替えに伴う変化を捉えており、比較の組み方が異なります。
対してArnold(2002)が調べた隔日型のブロック・スケジュールでは、時間とともにテストの点が有意に上がる結果は出ませんでした。著者は、導入した年に改善が見えても、その後の伸びの鈍化によって打ち消される可能性を指摘しています。長いコマという呼び名が共通でも、学期内で集中的に学ぶ配置と、隔日で同じ教科に戻る配置では結果がそろっていません。導入直後に変化があったかと、その変化が続いたかも、研究の結論を分ける条件です。
後の理科の成績と、生物の学年別の逆転
Dexter ほか(2006)は、大学で入門の生物・化学・物理を学ぶ7000人超を調べ、高校の時間割と大学の理科の成績の関係を検討しました。高校時代に長いコマで学んだ人に、大学の理科への準備という点で有利さは見られませんでした。授業のやり方の頻度にも大きな違いはなく、成績の差は小さいという結果です。高校の時間割は本人の申告に基づくため、授業中の細かな進め方まで直接観察した比較とは異なります。
これに対してLabak ほか(2020)は、高校の生物の授業の前後に筆記試験を置き、長い授業と短い授業を比べました。対象は281人で、授業前の知識を測った後に、それぞれの時間割で学び、授業後の到達を測っています。長いコマが良かったのは3年生だけで、1・2年生では短いコマのほうが良く、最上級の学年では差がありませんでした。同じ教科でも、学年をまとめた答えだけでは見落とす違いが出ています。
この生物の研究では、もとの成績の層によっても結果が異なりました。著者は、年齢、予備知識、全体の成績、学ぶ内容の複雑さを合わせて考えるよう述べています。予備知識とは、新しい内容を学ぶ前に、すでに知っている用語や考え方のことです。長い時間を使う学びに合うかどうかを、学年名だけで固定せず、扱う内容との関係で考える論点が示されています。
| 研究で比べたもの | 対象と測った成果 | 結果の特徴 |
|---|---|---|
| Lewis ほか(2005)の学期ごとに科目を入れ替える長いコマと、従来型・隔日型 | 高校生の読解と数学の伸び | 学期ごとに入れ替える型が上回った |
| Arnold(2002)の隔日型と従来型 | 学校のテストの点の推移 | 隔日型で有意な上昇は見られなかった |
| Dexter ほか(2006)の高校時代の時間割の違い | 大学の入門理科の成績 | 長いコマに有利さは見られなかった |
| Labak ほか(2020)の長い授業と短い授業 | 高校の生物の授業前後の筆記試験 | 学年によって優劣が逆転した |
注意が続くかは、講義の見せ方でも変わる
「長く座っていたから学べた」と「長く座っていたから注意が落ちた」は、どちらも時間だけで結果を説明する言い方です。Young ほか(2009)は、大学の講義で注意の持続を測り、学習の評価と関係づける探索的な研究を行いました。注意の持続は、目の前の内容に注意を向け続ける働きを指します。普通の講義形式では注意が低下し、学ぶ内容の習得にも悪く響きうるという結果でした。
同じ研究では、見せ方を変えた講義で注意の低下が避けられました。その違いは、必ずしも学生同士のやりとりなど、双方向の参加を取り入れることだけで生じたわけではありません。著者の報告が示すのは、講義中の提示の変化と注意の推移との関係です。授業に参加型の活動という名前が付いているかだけでは、研究で扱われた違いを十分に表せません。
Young ほか(2009)の抄録の冒頭には、講義開始から10〜30分で注意が落ちるという記述もあります。これは先行研究をまとめた説明であり、この研究自身が測った注意の限界時間ではありません。したがって、この数字を子どもの集中が切れる時刻や、授業を終えるべき時刻として読むのは取り違えです。注意が落ちた通常の講義と、低下を避けた講義を同じ研究の中で比べている点に、結果の意味があります。
また、注意の測定とテストの成績は、関連づけて調べられていても別の結果です。見せ方を変えた条件で注意が保たれたという報告は、どの教科でも長い授業が優れるという主張とは違います。高校の時間割を丸ごと変える研究に対し、この研究は講義の進め方を検討しています。時間割の研究が示した差を、注意だけで説明し切るための実験ではなく、授業の中身を考えるための別の比較です。
授業を長くすることと、間隔を空けることの違い
Foot-Seymour ほか(2019)は、9〜12歳の子どもに、ウェブサイトの信頼性を判断する授業を行いました。同じ授業量を3日続けて学ぶ条件と、週1回ずつ学ぶ条件を比べています。最後の授業から35日後に、事実をどれだけ覚えているかを試験し、新しいサイトの評価にも知識を使わせました。間隔を空けた子どものほうが事実を多く覚え、評価した理由もうまく説明できました。
この比較が扱うのは、授業をどの間隔で配置するかです。長いコマと短いコマを直接比べた実験ではありません。同じ量を教えていても、連続した日にまとめる条件と、間に日を置く条件では、後から取り出せる知識に違いが出ています。授業を受け終わった時点の印象だけでなく、時間がたってからの記憶と説明を測った点が、時間割の選び方に関わる論点です。
題材も、計算練習や単語の暗記とは異なります。サイトの情報が信用できるかを考え、その理由を言葉で説明する学びです。事実の知識を覚える試験と、新しい対象を評価する課題を分けているため、覚えていることと使って説明することの両方で差が出たと読めます。教えたサイトをそのまま再現させるだけの課題ではない点も、この結果の特徴です。
ここまでの研究には、学校の科目配置、授業中の提示、授業どうしの間隔という異なる変更が登場しました。長いコマの学校で良かったという報告と、間隔を空けた授業で良かったという報告は、同じ比較の追認ではありません。また、授業の総量を増やす問いとも区別されます。時間をまとめて確保する工夫と、同じ内容に再び触れる日を分ける工夫は、別々の条件として扱うと研究の違いが明確です。
家庭と塾で、長さが合うかを確かめる手順
家庭では、候補の授業を終了時刻だけで比べず、開始から終了までに子どもが何をするかを書き出します。塾には、説明を聞く、解く、考え方を話す、解き直す活動が、どこで何回切り替わるかを尋ねます。長い時間の大部分が説明なのか、自分で考える時間が十分にあるのかを区別します。以下は研究の効果を再現するための決まった方法ではなく、授業の実際を確かめるための観察項目です。
長いコマを好む子でも、新しい用語が続く単元では、途中から話を追いにくくなるかもしれません。反対に、考え方をつかんで自力で解き始めたところで終了するなら、短いコマの区切りが合わないことも考えられます。こうした様子は、子どもの性格の評価にせず、どの教材のどの活動で起きたかを書き留めます。学年とともに予備知識も確かめると、授業を短くするか、説明や演習の配分を変えるかを話し合いやすくなります。
間隔を変えられる場合は、通う日の配置と、次に同じ教科を学ぶ日を並べます。授業の総量や教材まで同時に変えると、何に反応したかが追いにくいため、変更した条件を記録に残します。授業後に「楽だった」「大変だった」と言ったかに加えて、後日、解き方や内容を自分の言葉で説明できたかも確かめます。次の授業の前にその記録を講師と見直し、説明と演習の配分を調整します。
よくある質問
長い授業なら、学ぶ内容も深くなりますか
長い時間を確保しただけで、学びの深さまで決まるわけではありません。学校の時間割では読解や数学が伸びた報告がある一方、後の大学の理科では有利さが見られなかった報告もあります。授業内で考える時間が増えたか、説明を聞く時間が延びただけかは、別の条件です。本文の比較表のように、測った教科や試験の時点が違う結果を、すべて「深く学べた」という評価にまとめると違いを失います。
短い授業が良かった学年なら、短くしたほうがよいですか
生物の研究で短い授業が良かった学年があることは、長い授業を一律に勧める考えへの反例です。ただし、その学年の子をすべて同じ長さにそろえる基準とは別です。研究者も年齢だけでなく、予備知識や内容の複雑さを合わせて検討するよう述べています。まだ用語を学んでいる段階と、知っている考え方を使って問題に取り組む段階の違いも、手順の節で挙げた観察の対象です。
授業を分けた結果は、短いコマを選ぶ根拠になりますか
間隔を空けた授業で記憶と説明が良かった研究は、学ぶ日の配置を検討する根拠です。長いコマを短いコマに置き換えた比較ではないため、直接には別の問いを扱っています。まとめて学ぶ日程を変えることと、授業中の活動を短く区切ることも区別されます。本文で扱ったサイトの評価課題では、同じ授業量を別の日程に配置したうえで、時間がたってからの知識と説明の違いを測っています。
この記事の限界
研究の対象者は学校の生徒や大学生で、塾に通う日本の小中高生が同じ教材を異なる長さで学ぶ条件とは隔たりがあります。中心となる今世紀初めの学校の時間割の研究では、多くが無作為の割り付けをしておらず、学校ごとの指導や生徒の違いが結果に混じります。授業内の注意を測る研究と、後日の成績を測る研究でも評価の範囲が違い、同じ物差しで授業の長さを順位づける資料ではありません。
国や人数、具体的な授業の進め方が抄録にそろって記されていない研究もあり、どの条件で差が生じたかを細部まで追うには制約があります。個別に教える授業で長さだけを変えた比較も今回の研究群にはなく、個別の授業に適した長さの目安は研究から決められません。
参考文献
- Zepeda ほか. An Analysis of Research on Block Scheduling. Review of Educational Research. 2006;76(1):137-170.
- Lewis ほか. The Effects of Block Scheduling on High School Academic Achievement. NASSP Bulletin. 2005;89(645):72-87.
- Mattox ほか. The Effect of Block Scheduling on Middle School Students’ Mathematics Achievement. NASSP Bulletin. 2005;89(642):3-13.
- Arnold. Block Schedule and Traditional Schedule Achievement: A Comparison. NASSP Bulletin. 2002;86(630):42-53.
- Dexter ほか. Traditional and Block Scheduling for College Science Preparation: A Comparison of College Science Success of Students Who Report Different High School Scheduling Plans. The High School Journal. 2006;89(4):22-33.
- Labak ほか. Effects of Block vs. Traditional Scheduling on High School Science Success—Lessons from Biology Classes. Education Sciences. 2020;10(8):209.
- Young ほか. Students pay attention! Combating the vigilance decrement to improve learning during lectures. Active Learning in Higher Education. 2009;10(1):41-55.
- Foot-Seymour ほか. Judging credibility: Can spaced lessons help students think more critically online? Applied Cognitive Psychology. 2019;33(6):1032-1043.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒、講師が一人の生徒に付きっきりの完全1対1で、大学教員や東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生などが教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
長い授業なら、学ぶ内容も深くなりますか
長い時間を確保しただけで、学びの深さまで決まるわけではありません。学校の時間割では読解や数学が伸びた報告がある一方、後の大学の理科では有利さが見られなかった報告もあります。授業内で考える時間が増えたか、説明を聞く時間が延びただけかは、別の条件です。本文の比較表のように、測った教科や試験の時点が違う結果を、すべて「深く学べた」という評価にまとめると違いを失います。
短い授業が良かった学年なら、短くしたほうがよいですか
生物の研究で短い授業が良かった学年があることは、長い授業を一律に勧める考えへの反例です。ただし、その学年の子をすべて同じ長さにそろえる基準とは別です。研究者も年齢だけでなく、予備知識や内容の複雑さを合わせて検討するよう述べています。まだ用語を学んでいる段階と、知っている考え方を使って問題に取り組む段階の違いも、手順の節で挙げた観察の対象です。
授業を分けた結果は、短いコマを選ぶ根拠になりますか
間隔を空けた授業で記憶と説明が良かった研究は、学ぶ日の配置を検討する根拠です。長いコマを短いコマに置き換えた比較ではないため、直接には別の問いを扱っています。まとめて学ぶ日程を変えることと、授業中の活動を短く区切ることも区別されます。本文で扱ったサイトの評価課題では、同じ授業量を別の日程に配置したうえで、時間がたってからの知識と説明の違いを測っています。