- 平均との位置関係を知らせて成績が上がった高校生の研究がありますが、情報をなくすと効果も消えました。
- 大学生では、本人が思っていたより実際の順位が高かった場合に、知らせた後の成績が下がった研究があります。
- 励ましや改善のこつを添えた個別の通知には、短期の得点の伸びを示す研究があります。
- 満足したか、自分の能力をどう評価したか、次の試験で伸びたかは、異なる結果として扱います。
- 家庭では本人の予想を聞いてから結果を読み、復習する単元と確かめ方を決めます。
塾のテストの順位を知らせると子は伸びるか|成績の順位を伝える研究
模試返却で順位の欄に目が止まると、その紙を子に見せて奮起を促すべきか、答案の中身から話すべきか迷うものです。Azmat ほか(2010)の高校生を扱った研究は、同じ著者の前版の抄録で、平均との位置関係を知らせたときに成績が5%上がったと報告しています。順位を知ることで次の勉強に向かうなら、知らせる意味はありそうです。ただ、子が数字を見て安心するのか、落ち込むのか、復習に取りかかるのかは、それぞれ別に見たいところです。
塾のテストの順位を知らせれば、子は次の試験で伸びるのでしょうか。研究の答えは、順位の情報で伸びる場合も下がる場合もあり、持続する効果は限られるというものです。 本人が予想していた位置と実際の位置のずれに加え、順位と一緒にどんな情報を渡したかで、研究の結果は違っています。家庭での扱いを考えるときは、順位を見せるか隠すかだけでなく、返却された答案から次に取り組む内容まで話せるかを確かめます。数字を受け取ったときの表情と、その後に解けるようになった問題を分けて見ることが、結果の読み違いを減らす出発点です。
要点
- 平均との位置関係を知らせて成績が上がった高校生の研究がありますが、情報をなくすと効果も消えました。
- 大学生では、本人が思っていたより実際の順位が高かった場合に、知らせた後の成績が下がった研究があります。
- 励ましや改善のこつを添えた個別の通知には、短期の得点の伸びを示す研究があります。
- 満足したか、自分の能力をどう評価したか、次の試験で伸びたかは、異なる結果として扱います。
- 家庭では本人の予想を聞いてから結果を読み、復習する単元と確かめ方を決めます。
平均との位置関係を知らせて伸びた高校生
「順位が出れば競争心が生まれ、勉強するようになる」という考え方には、近い結果を示す研究があります。Azmat ほか(2010)が扱ったのは、高校で平均との位置関係を知らせる仕組みが導入された機会です。自然実験とは、研究者が実験用にすべての条件を作るのではなく、現実の制度や運用の変化を利用して効果を調べる方法です。この研究では、相対的な成績の情報がある時期とない時期を比べています。
伝えられたのは、単純に上から何番目かという順番だけではありません。自分の点が学級の平均より上か下か、さらに平均からどれだけ離れているかという情報でした。伸びは成績の高い層だけに限らず、成績の分布全体に見られました。外部で採点する全国試験でも確かめられており、学校の中での評価だけを見た結果ではありません。
一方、同じ研究で、その情報がなくなった後には効果が消えています。ここは、最初の伸びと組にして読むべき部分です。結果を知ったときの変化と、知らせなくなっても学び方が残ることは違います。前版の抄録をもとに読むこの研究では、対象国の記載がなく、家庭での伝え方を考える材料は高校の運用と情報の内容です。
この結果を塾の成績表の読み方に結びつけるなら、まず順位欄が何を比べているかを確かめます。同じ教室の受験者なのか、同じテストを受けた全体なのかで、その欄が示す集団は変わります。また、順位だけの欄と、平均点や単元別の結果まで載った欄は、取り出せる情報が違います。保護者の「位置を知れば頑張れるはず」という期待を置く前に、紙から実際に読み取れる内容を子とそろえると、話題を具体的にできます。
励ましを添えた通知も、伸びは短期間でした
順位を伝えた研究でも、数字の渡し方は同じではありません。Holmes ほか(2025)は、大学の中級ミクロ経済学の授業で、学級内の順位を個別のメールで知らせています。ミクロ経済学は、人や企業の選択などを扱う経済学の分野です。メールには順位だけでなく、励ましの言葉と改善のこつも添えられていました。
この通知による得点の伸びは、成績の分布全体で見られました。ただし伸びは短期間にとどまり、授業が進むにつれて効果はゼロに近づきました。したがって、最初の通知の後に点が伸びたという部分だけを取り出すと、研究の見取り図が変わってしまいます。伝えた直後の試験と授業が進んだ段階とを分けることで、この通知が持っていた効果の長さが見えてきます。
家庭で参考にする際は、メールに含まれた内容にも目を向けます。「この位置にいる」という知らせと、「ここを直せる」という案内を一緒に届ける形だったためです。数字を読んだ後に何をするかまで示す通知と、数字を見た本人の奮起に任せる通知とでは、受け取る側に残る作業が異なります。研究結果を読むときも、順位という共通語だけでまとめず、何が添えられたかを残しておきます。
たとえば家庭で「次は上を目指そう」と声をかけるなら、その後に答案を開くところまでを会話に含めます。どの単元なら解説を読んで進められそうか、どこは説明を聞きたいかを子に選んでもらう形です。これは成績表を学習に使うための提案であり、研究で用いたメールの再現ではありません。励ましを言ったことで話を終えず、子が着手できる課題を言葉にして残します。
思っていたより高い順位で成績が下がることもあります
順位の通知には、反対向きの結果もあります。Azmat ほか(2019)は、大学生に成績の分布の中での自分の位置を、6か月ごとに3年間知らせた現場実験を報告しています。順位の情報を知らせる条件では、知らせない条件に比べて、合格した試験の数と評定平均が下がりました。評定平均は、複数の授業の成績をまとめた平均の指標です。
この研究で見逃せないのは、通知前の予想によって結果が違った点です。自分の順位を低く見積もっていた学生、つまり実際には思っていたより上にいた学生で、成績が下がりました。反対に、自分の位置を実際より高く見積もっていた学生では、成績が上がりました。単に「下の順位を見せると落ち込む」という説明では、この違いを捉えられません。
同じ研究では、試験前の満足度は上がっていました。満足することと試験の成績が伸びることが、同じ向きに動いたわけではありません。また成績への影響は短期で、卒業時点の通算の評定平均と卒業率には差がなくなりました。通知があった期間全体を、成績が下がり続けた期間として読むことも避けます。
家庭で結果を読む前に本人の予想を聞く意味は、ここにあります。数字そのものが高いか低いかに加え、子にとって予想外だった方向を知るためです。予想よりよかったときも、答案に残る課題を見られるかを確かめ、予想より悪かったときは、まずどの部分を意外に感じたかを聞きます。子を「安心すると手を抜く型」などと決めず、今回の受け止め方として記録すれば、次の返却時にも話を続けやすくなります。
点数への満足と、自分の能力の評価を分けます
順位を見るときの反応を考えるには、点数を知らせた場合との比較も役立ちます。Zhao(2022)は、大学生の数学の試験で、点数と百分位の高低を組み合わせて知らせました。百分位は、集団の中でどのあたりに位置するかを表す指標です。満足度と気分には点数の影響が強く一貫しており、相対的な位置の影響は弱いか、統計的にはっきりしませんでした。
この結果が扱っているのは、主として結果を受け取った人の満足度と気分です。点数を知らせるほうが次の成績を伸ばす、という結論に読み替えないようにします。家庭でも、子の表情を見て「順位を見せたからやる気が出た」と決める前に、点数について何を思ったのかを聞けます。同じ成績表に並ぶ項目でも、子が気にしている欄は保護者の見ている欄と違うかもしれません。
Larkin(1978)は、金融に関する能力を測る課題で、点数、順位、言葉による評価という伝え方を比べました。点数を知らされた人は、順位や言葉による評価を知らされた人より、自分の能力を低く評価する傾向がありました。この研究で見ているのは、課題の結果を受け取った後の自己評価です。点数に置き換えさえすれば、本人の自信への影響を避けられるという話ではありません。
成績表を前にした会話では、反応と判断を分けて書き留める方法があります。「思ったよりできたと感じた」という本人の受け止めと、「文章題の式を立てられた」という答案の事実を別に残します。前者には本人の言葉を使い、後者は実際の解答で確かめます。気持ちを否定せずに聞きながら、次の勉強を決める材料も持てる形です。
テストの順位の意味は、直す内容の情報とは違います
フィードバックとは、学習の結果や取り組み方について情報を返すことです。Wisniewski ほか(2019)は、教育でのフィードバックを調べた435研究をメタ分析、つまり複数の研究をまとめて計算し直す方法で検討しました。学習への平均の効果量は d = 0.48で、中程度とされる結果でした。効果量は、差の大きさをばらつきを物差しにして表した数で、ここではテストの得点そのものではありません。
この分析では研究どうしのばらつきが大きく、返す情報の中身によって効果が変わっています。著者は、異なる形のフィードバックを、それぞれ別の方法として解釈する必要性を指摘しています。そこで成績表を使うときも、位置の情報と、解答を改善するための情報を分けます。どちらを受け取ったかは、次のように見比べられます。
| 受け取る情報 | その情報から読み取れること | 答案と合わせて確かめること |
|---|---|---|
| 集団の中での順位 | 今回の受験者の中での位置 | 誰と比べた順位か、どの教科の結果か |
| 平均との位置関係 | 平均より上か下か、どれほど離れたか | 平均との違いがどの単元にあるか |
| 自分の得点 | 今回の問題で得た点 | 正解できた問題と、解き直す問題は何か |
| 間違いへの説明 | 解き方のどこを変えるか | その説明を使って自分で解けるか |
| 次に取り組む課題 | 復習で着手する内容 | 教材のどの部分を開けば始められるか |
家庭で答案を見るときは、「数学を頑張る」を、解答で確かめられる言葉へ置き換えます。式の立て方を説明する、計算の途中を残す、問題文の条件を拾う、といった形です。どれを選ぶかは順位の上下だけで決めず、間違った箇所と本人の説明を照らして決めます。正解した問題にも目を向ければ、すでにできていることを保ったまま、直す箇所を絞れます。
順位は集団の中での位置を示すので、本人の得点が伸びても、ほかの受験者の結果次第で動き方が変わります。そこで復習の成果を確かめる欄には、順位とは別に、選んだ課題を自分で解けたかを残します。子が説明を求めた部分も書いておくと、講師に答案を見せるときに話題が定まります。位置の知らせを受け取ることと、学習を直すための情報を得ることを、続いた手順にして扱います。
返却された日は、予想を聞いてから単元を選びます
成績表が届いた日は、保護者の評価を先に伝える前に、子が自分の位置をどのあたりと考えていたかを聞きます。すでに順位を見ている場合は、見る前にはどう思っていたかを尋ねる形にします。「もっと下だと思った」「ここは得意だった」という言葉を、そのまま受け止めます。予想の正しさを採点するためではなく、今回の結果のどこが本人にとって新しい知らせだったかをつかむためです。
次に、順位と得点を確認し、答案から復習する単元を絞ります。子が解説を読めば進められそうな箇所か、講師に説明してもらいたい箇所かも、ここで分けます。順位がよかった場合にも、できた単元とまだ曖昧な単元を並べて読みます。順位が悪かった場合には、全体の評価を繰り返すより、解き直せそうな問題から話を始めます。
この手順を急いで全部終わらせることより、子が結果について話せる状態かを見ます。順位を見て言葉が出なくなったり、数字の確認を何度も繰り返したりしているなら、その場で競争心を引き出そうとせず、答案を開く話を後に回せます。本人が順位を知りたがる場合は、その関心を受け止めたうえで、どの問題を直すかまで一緒に決めます。順位を材料にしにくい反応が出ているときは、知らせ方を固定せず、個別に話す内容を調整します。
家庭で試すのは、本人と成績表を読む手順です。順位を人前に貼り出して競わせる方法へ広げることは勧めません。返却のたびに残すものを、上がったか下がったかの記録だけでなく、本人の予想と取り組む単元の記録にします。次の答案でその単元を確かめられることが、順位の知らせを学習に結びつけたかどうかの目印です。
よくある質問
順位が低いときは、子に見せないほうがよいですか
低い順位だから見せない、と一律に決める根拠にはなりません。大学生の研究では、順位の高低だけでなく、本人の予想とのずれで結果が違いました。まず本人が結果をどう予想し、何を知りたいと思っているかを聞きます。見せる場合は数字への感想だけで話を終えず、正解できた箇所と復習する箇所を答案から選び、子が取り組める内容までつなげます。
順位が上がって喜んでいるなら、効果があったと考えてよいですか
喜んでいることは本人の受け止めとして尊重できますが、それと学習の伸びは分けて見ます。満足度や気分を測った研究と、試験の成績を測った研究では、確かめている結果が異なります。家庭では、何をうれしく感じたかを聞いたうえで、前に困っていた問題を解けるか確認します。喜びを打ち消すための確認にせず、できるようになった内容を本人と言葉にする機会にします。
塾には順位以外に何を伝えてもらうと役立ちますか
答案のどこで考え方がずれたか、次にどの教材のどの単元を扱うかという説明を求めると、家庭で着手する内容が明確になります。総合的な評価だけでなく、子が自分で直せる箇所と、説明を受けたい箇所を分けてもらう形です。話す際には本人の予想や、結果を見た後の言葉も添えられます。順位の上げ方という大きな相談を、返却された答案に沿う具体的な相談へ変えます。
この記事の限界
測り方は、試験の得点や評定平均、満足度、自己評価と研究によって異なり、学力と気持ちの結果を同じ効果としてまとめることはできません。順位の通知で成績の改善や低下を示した研究は高校生・大学生が対象で、小中学生の塾のテストを扱う研究は今回の範囲に含まれていません。順位の情報と励ましや改善の説明を組み合わせた通知もあり、それぞれの役割を切り分ける比較には不足があります。
日本の家庭で結果を読む場面や、本人への個別通知と人前での貼り出しを直接比べる検証は、ここに挙げた研究の対象外です。順位を知らされ続けた子の気持ちが長い時間の中でどう変わるかを追った研究も、今回扱った範囲には見当たりません。
参考文献
- Azmat ほか. The Importance of Relative Performance Feedback Information: Evidence from a Natural Experiment Using High School Students. Journal of Public Economics. 2010;94(7-8):435-452.
- Holmes ほか. Does Supportive Feedback on Class Rank Improve Scores for Intermediate-Level Microeconomics? The Journal of Economic Education. 2025;56(1):22-29.
- Azmat ほか. What You Don’t Know…Can’t Hurt You? A Natural Field Experiment on Relative Performance Feedback in Higher Education. Management Science. 2019;65(8):3714-3736.
- Zhao. Absolute Standing Feedback Is More Influential than Relative Standing Feedback. Journal of Educational Psychology. 2022;114(4):701-715.
- Larkin. Score, Rank, or Evaluation: Does Type of Performance Feedback Make a Difference? Contemporary Educational Psychology. 1978.
- Wisniewski ほか. The Power of Feedback Revisited: A Meta-Analysis of Educational Feedback Research. Front Psychol. 2019;10:3087.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒、講師が一人の生徒に付きっきりの完全1対1で、大学教員や東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生などが教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
順位が低いときは、子に見せないほうがよいですか
低い順位だから見せない、と一律に決める根拠にはなりません。大学生の研究では、順位の高低だけでなく、本人の予想とのずれで結果が違いました。まず本人が結果をどう予想し、何を知りたいと思っているかを聞きます。見せる場合は数字への感想だけで話を終えず、正解できた箇所と復習する箇所を答案から選び、子が取り組める内容までつなげます。
順位が上がって喜んでいるなら、効果があったと考えてよいですか
喜んでいることは本人の受け止めとして尊重できますが、それと学習の伸びは分けて見ます。満足度や気分を測った研究と、試験の成績を測った研究では、確かめている結果が異なります。家庭では、何をうれしく感じたかを聞いたうえで、前に困っていた問題を解けるか確認します。喜びを打ち消すための確認にせず、できるようになった内容を本人と言葉にする機会にします。
塾には順位以外に何を伝えてもらうと役立ちますか
答案のどこで考え方がずれたか、次にどの教材のどの単元を扱うかという説明を求めると、家庭で着手する内容が明確になります。総合的な評価だけでなく、子が自分で直せる箇所と、説明を受けたい箇所を分けてもらう形です。話す際には本人の予想や、結果を見た後の言葉も添えられます。順位の上げ方という大きな相談を、返却された答案に沿う具体的な相談へ変えます。