- 挙手の多さと学業成績の関連は、評価に発言の回数を加点した結果とは別の問いです。
- 発言の記録には、回数だけでなく、理由を述べたか、生徒から話し始めたかという違いがあります。
- 学級での取り組みを扱う研究は、声に出す行動と、考えたり関心を持ったりする面を組み合わせています。
- 学校への確認は評価の説明から始め、子が授業で確かめたい内容と、伝えやすい方法を具体化します。
授業中に手を挙げる子は内申が高いか|発言と成績の研究
三者面談で、保護者が「もっと手を挙げて」という言葉をメモに残します。Böheim ほか(2020)は、高校の授業で生徒266人の挙手を記録し、学業成績との関係を調べています。発言が少ないと内申は下がり、手を挙げる回数を増やせば上がるのでしょうか。よく発言する子の成績が高い傾向は報告されていますが、挙手を増やせば内申が上がるという答えは出ていません。
面談の言葉には、学んだ内容を口に出してほしいのか、考えの根拠を示してほしいのかという、授業の中身に関わる問いもあります。一方、保護者の気がかりは、今の評価が何に基づき、どこを変えればよいかという点です。この違いを置き去りにして、発言を増やす約束だけを持ち帰ると、何を確かめるのかが曖昧なままです。
研究が扱う「成績」には、学力を測るテストの点と、教師がつける評価があります。また、手を挙げた回数、実際に話した時間、理由を添えた説明も、それぞれ別の記録です。これらを同じものとして扱わず、授業を観察した研究がどこを測り、何と比べたのかをたどります。
要点
- 挙手の多さと学業成績の関連は、評価に発言の回数を加点した結果とは別の問いです。
- 発言の記録には、回数だけでなく、理由を述べたか、生徒から話し始めたかという違いがあります。
- 学級での取り組みを扱う研究は、声に出す行動と、考えたり関心を持ったりする面を組み合わせています。
- 学校への確認は評価の説明から始め、子が授業で確かめたい内容と、伝えやすい方法を具体化します。
内申・授業態度・発言を結びつける前に、測ったものを見る
Böheim ほか(2020)の研究は、高校の授業を録画し、生徒がどれだけ手を挙げるかを記録したものです。挙手の頻度は学業成績と関連し、考える面での取り組みや、教師の支えをどう受け止めているかとも関連しました。ただし、抄録には「成績」を何で測ったかの説明がなく、テストなのか教師の評定なのかは特定されていません。ここで観察した行動は、発言に先立つ挙手です。
Sedova ほか(2019)は、チェコの中学校の9年生639人を対象に、言語を学ぶ授業の発話を調べました。記録したのは生徒ごとの発話時間と、理由を述べた発話の数で、成果として標準化された読解テスト、つまり共通の物差しで読む力を測る試験を使っています。個人ごとには発話と得点に強い関連がありましたが、学級ごとに見ると、理由を述べた発話と成績との関連はありませんでした。この結果は個人と学級で異なり、測った成果も学校の内申ではなく読解の点です。
挙手の記録では、話す意思を示すところまでを数えます。それに対して、発話時間の記録は実際に話している長さを、理由を述べた発話の記録は説明の中身を扱います。声を出す前の動作と、その後の説明を別々に記録しているため、「発言が多い」という言葉の内側にも測り方の幅があります。
| 研究で記録したもの | 比べた相手・単位 | 成果の測り方 |
|---|---|---|
| 高校の授業での挙手 | 生徒間の挙手頻度の違い | 学業成績。具体的な測定方法は抄録に記載なし |
| チェコの言語の授業での発話時間と理由を含む発話 | 個人ごとの差と学級ごとの差 | 標準化された読解テスト |
先に知っていた内容が、発言に関わることもある
Decristan ほか(2023)は、中等教育の数学で932人・40学級、初等教育の理科で681人・35学級を対象とした録画研究を報告しています。授業中の発言を記録するとともに、学習の前と後に共通の基準による評価を行いました。数学と理科では対象の学校段階も異なり、それぞれの授業で参加と学習のつながりを調べています。単に発言する子を後から数えるだけでなく、授業前の知識を測っている点が特徴です。
この研究では、もともとの知識が学級全体での発言に関わることと、生徒主導の参加が学習に関わることの両方が示されました。「話して学ぶ」という向きだけでなく、「知識があるので話せる」という向きも検討する設計です。前から持っている知識を考慮することで、発言と成果の間にある時間の順序を扱っています。
また、発言の扱いは、生徒主導か教師主導かで分けられています。自ら授業のやりとりに加わる参加と、教師が主導するやりとりの中での参加を、一括して数えていません。どちらも声を出す活動でも、やりとりの始まり方が異なります。この区別を置いたうえで、学習前の評価と学習後の評価の関係を調べています。
話さなかった子を、取り組んでいない子と同じにしない
O’Connor ほか(2017)は、6年生の2学級・44人を扱った小規模な研究で、数学の話し合いと学習の関係を分析しました。元になった研究では、頻繁な話し合いを重視する授業と、話し合いを含まない直接指導を、学習内容を厳密にそろえて比べています。その既存データを分析し直し、さまざまな要因を調整すると、授業中に声に出して参加した程度と、成果を測る点数との関連はどちらの条件でもありませんでした。著者はこの結果について、活発に参加する文化が既にできている学級に最もよく当てはまるとしています。
この分析の問いは、授業形式のどちらが勝つかだけではありません。それぞれの形式の中で、声に出した程度の違いが、結果の点数と結びつくかを調べています。学習内容をそろえた比較のデータを使うことで、異なる内容を学んだから点が違ったという説明を抑える設計です。対象の小ささと、既に参加の文化がある学級という条件が、この比較の特徴です。
Schnitzler ほか(2021)は、8年生20学級の397人について、数学の授業を録画し、質問紙も用いて取り組みを調べました。挙手に加え、考える面や感情の面を組み合わせて生徒の取り組みを分類し、年度末の成績と結びつけています。取り組みの低い型と比べて、高い型の生徒は年度末の成績が伸び、著者は取り組みにはさまざまな形があると述べています。分類には静かな取り組みの型もあり、外から見える発言だけに測定を絞らない設計です。
教師の評価と、評価への納得を分けて考える
Kelly(2008)は、中学校の英語・言語の授業のデータから、学力、努力、教師のつける成績の関係を調べました。授業を進める助けになるだけで学力に結びつかない行動に対し、教師が高い成績で報いることはまれでした。成績の差の大部分は、生徒の学力と、学力の伸びに近い行動で説明されました。この分析で分けているのは、授業運営を助ける行動と、学習成果に近い行動です。
ここでの比較は、点を取る力とは別に、どのような努力が成績に結びついているかというものです。授業が滞りなく進むことに役立つ行動を、理解が深まることと同じ扱いにはしていません。教師の成績を成果として取り上げながら、その説明に用いる行動の種類を分けています。挙手の回数を増やす介入を行う設計とは違い、既にある学力と行動と評価の関係を分析しています。
Westphal ほか(2025)は、大学生431人が学校時代の口頭参加の成績を振り返り、それを学力の正確な指標と受け止めるかを調べました。語学では数学よりも正確な指標と受け止められ、採点の透明性を感じた学生や男子学生ほど、正確と評価していました。一方、数学では成績の高い学生ほど、その評価を妥当でないと受け止めていました。教科と学生の側の条件によって、受け止めが異なる結果です。
この研究で回答したのは、当時の学校の教師ではなく、学校時代を振り返った大学生です。調べた対象は、口頭参加の成績が能力を表していたと思えるかという認識です。採点の透明性も、その受け止めと関連づけて検討しています。実際の答案を別の採点者に渡して一致を確かめる検査とは、評価の確かさへの近づき方が異なります。
発言しにくさには、教室の関係も関わる
Mundelsee ほか(2025)は、中学生204人を学校で1週間観察し、内気さと挙手の関係を調べました。生徒本人が内気さ、教師との関係、友人との関係について答え、研究者は授業の進め方を観察して挙手も記録しています。本人の感じ方と教室での行動を組み合わせた調査で、発言しにくさを子の性格だけで説明する設計ではありません。
内気さの強い生徒では、教師との関係が挙手を促す側に関わっていました。一方で、友人関係が良いほど手を挙げにくいという結果もあり、人との関係は同じ方向に働いていません。教師とのつながりと友人とのつながりを別々に扱うことで、教室で話しやすくなる条件の複雑さが示されています。授業の進め方についても、挙手を促す側に関わる要因が検討されています。
観察の項目には、教師が待つ時間や学級の大きさ、教科も入っています。発言しやすさの条件を調べる際に、子が感じている人間関係だけでなく、その時間に行われている指導の特徴も記録しています。本人への質問で得た答えと、観察者が授業で数えた動作は、異なる方法で得られた情報です。それらを結びつけて、どの条件の下で手が挙がるかを調べています。
家庭で評価の説明と参加の方法を確かめる手順
家庭では、学校から配られた評価の観点の説明を開き、気になった教科の記述を子と一緒に読みます。「授業態度」という広い言葉だけで終えず、何を見て判断するのかが書かれている箇所に印を付けます。説明に発言への言及があれば、その内容と、面談で聞いた言葉を並べます。発言の回数、説明の根拠、学び方を見直す姿などを、保護者の推測で同じ項目にまとめないようにします。
学校の先生には、「もっと手を挙げて」という言葉が、どの授業のどの様子を指すかを聞きます。「答えを知っているときに参加してほしいのか」「考えの理由まで伝えてほしいのか」と内容を具体化すると、子も次の授業で取り組むことを選びやすくなります。評価の説明と助言の関係が曖昧なら、どの観点につながる話かを尋ねます。内申の配点を家庭で決めつけるのを避けるための確認です。
- 評価の説明のうち、気になる教科の箇所を子と読んだか
- 面談の言葉が指す授業中の様子を具体的に聞けたか
- 子が次の授業で確かめたい内容を言葉にできたか
- 声に出しにくいときの質問や記述の方法を学校に確かめたか
- 試した後に、理解が進んだ点と伝えにくかった点を残したか
次に子と決めるのは、授業の中で何を確かめたいかです。例えば、解き方の途中の疑問を聞く、別の答えが出た理由を尋ねる、自分の説明の根拠を確かめる、といった内容から選びます。すぐに言葉が出ない子なら、短いメモを用意する方法を候補にします。前提の知識で止まっている場合は、その箇所を学び直してから疑問を言葉にする順にします。
全体の前で話す負担が強い場合は、質問を記述で伝える形や、提出する学習記録で考えを示す形について学校の先生に聞きます。提出物を増やす競争にせず、今ある課題のどこに考えを残せるかを確認します。塾で練習する場合も、発言回数の達成を課すより、本人が説明したい内容を短く話す練習に絞ります。方法を試した後は、疑問が解けたか、どこで言葉に詰まったかを記録します。
振り返りでは、手を挙げたかどうかに加え、先生に伝えられた内容を子の言葉で残します。負担ばかりが増えた場合は、話す場所や伝える形を見直し、次の確認に持っていきます。まず学校の評価の説明と授業の様子を照らし、次に子が選んだ参加の方法を試して記録します。
よくある質問
「もっと手を挙げて」は、今の評価が低いという意味ですか
その言葉だけでは、現在の評価についての説明なのか、これからの授業への助言なのかが曖昧です。評価を扱う節では成績とその受け止めを分けましたが、面談でも評価の根拠と今後の目標を分けて聞けます。具体的な授業の様子が添えられていれば、子の受け止めと照らせます。目標への提案を既に決まった評定の説明として受け取らず、何について話しているかをはっきりさせるための問いです。
正解の自信がないときも、発言したほうがよいですか
正解を答えることだけが発言の内容ではなく、疑問や途中までの考えを伝える形もあります。手順の節に挙げた準備は、答えを暗記して発表する練習に限らず、自分が止まった箇所を言葉にするためにも使えます。ただ、発表の時間か質問の時間かで、授業の中の位置づけは違います。話す内容がまとまらない子についても、ためらいの理由を聞かずに積極性の有無を判定するのを避けます。
学校では静かなのに、塾では話せる場合はどう考えますか
相手や人数が異なる場所での姿を、そのまま同じ尺度で採点する必要はありません。発言しにくさを扱う節のように、子の特徴と、話すときの周囲の条件を分けて捉えます。本人が「ここなら質問できる」と説明する内容には、困りごとを具体化する材料があります。塾で話せる姿を根拠に学校でも同じ振る舞いを求めるより、話しやすい条件を言葉にして学校での方法を考えます。
この記事の限界
測り方は授業中の行動、学力テスト、教師の成績、評価への受け止めと異なり、同じ「成績」という言葉でも調べている中身に幅があります。挙手の回数と通知表の内申を直接比べた研究は採用した論文にはなく、成果として読解テストの点を扱う研究も混じっています。授業を録画した日の行動から年度末の成果を見る方法と、大学生が過去の評価を思い出して回答する方法では、記録の時点と確かさも異なります。
対象は初等・中等教育の生徒に加えて過去を振り返る大学生で、日本の小中高生の検証はなく、観察期間も授業の録画と学校生活の観察で異なります。発言の少ない子が成績で不利かを直接測った研究も採用分にはなく、学校ごとの評価の説明を確かめる余地は、なお残ります。
参考文献
- Böheim ほか. Student hand-raising as an indicator of behavioral engagement and its role in classroom learning. Contemporary Educational Psychology. 2020;62:101894.
- Sedova ほか. Do those who talk more learn more? The relationship between student classroom talk and student achievement. Learning and Instruction. 2019;63:101217.
- Decristan ほか. Student participation in whole-class discourse: individual conditions and consequences for student learning in primary and secondary school. Learning and Instruction. 2023;86:101748.
- O’Connor ほか. The silent and the vocal: Participation and learning in whole-class discussion. Learning and Instruction. 2017;48:5-13.
- Schnitzler ほか. All better than being disengaged: Student engagement patterns and their relations to academic self-concept and achievement. European Journal of Psychology of Education. 2021;36(3):627-652.
- Kelly. What Types of Students’ Effort Are Rewarded with High Marks? Sociology of Education. 2008;81(1):32-52.
- Westphal ほか. What does it take for students to value grades for oral participation? Transparency is key. Frontiers in Education. 2025;10:1522695.
- Mundelsee ほか. Opening the Gateway to Oral Participation: Exploring Facilitative Contextual Factors in the Association Between Student Shyness and Hand Raising. American Educational Research Journal. 2025;62(1):53-91.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
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よくある質問
「もっと手を挙げて」は、今の評価が低いという意味ですか
その言葉だけでは、現在の評価についての説明なのか、これからの授業への助言なのかが曖昧です。評価を扱う節では成績とその受け止めを分けましたが、面談でも評価の根拠と今後の目標を分けて聞けます。具体的な授業の様子が添えられていれば、子の受け止めと照らせます。目標への提案を既に決まった評定の説明として受け取らず、何について話しているかをはっきりさせるための問いです。
正解の自信がないときも、発言したほうがよいですか
正解を答えることだけが発言の内容ではなく、疑問や途中までの考えを伝える形もあります。手順の節に挙げた準備は、答えを暗記して発表する練習に限らず、自分が止まった箇所を言葉にするためにも使えます。ただ、発表の時間か質問の時間かで、授業の中の位置づけは違います。話す内容がまとまらない子についても、ためらいの理由を聞かずに積極性の有無を判定するのを避けます。
学校では静かなのに、塾では話せる場合はどう考えますか
相手や人数が異なる場所での姿を、そのまま同じ尺度で採点する必要はありません。発言しにくさを扱う節のように、子の特徴と、話すときの周囲の条件を分けて捉えます。本人が「ここなら質問できる」と説明する内容には、困りごとを具体化する材料があります。塾で話せる姿を根拠に学校でも同じ振る舞いを求めるより、話しやすい条件を言葉にして学校での方法を考えます。