- 認知能力の試験をまとめた研究では、受け直しによる得点の上昇が見られ、試験対策や同じ問題の使用で伸び方が変わりました。
- 受け直す間隔を延ばすことと、その間に何を学ぶかは別の条件です。早く受けるほど有利という結果ではありません。
- 形式への慣れによる伸びと、別の内容にも使える力の伸びを分けて見ます。
- 次回までに変える学習を決め、本人が感じる負担も聞いてから受験の時期を選びます。
一度落ちた試験をすぐ受け直すと受かりやすいか|英検と同じ形式の試験の受け直しの研究
英検会場で、前に受けたときの問題の並びや、解き終わらなかった箇所を思い返す子を待つと、保護者も次の結果が気になります。「今度は慣れているから、落ちてもすぐ受け直したほうが受かりやすいのでしょうか」という問いには、得点の変化と、その間の学習を分けて答える必要があります。同じ形式の試験では受け直しで点が上がる傾向がありますが、すぐに再挑戦するだけで英検に受かりやすくなるとは言えません。 次の回を選ぶ前に、前回から変えられることを成績表と本人の言葉で確かめるのが出発点です。
ここで根拠にするのは認知能力の試験や別の英語試験などの研究で、英検そのものの受け直しを調べた研究は含まれていません。問題の形式を知っていることと、初めて読む文や聞く内容を理解できることは、区別して見るべき変化です。不合格という結果だけで、受験の間隔も学習内容も一律に決めることはできません。申し込む時期を急いで決めるより、どの技能に取り組み、何を確かめて次へ進むかを具体的にすると、子どもと話す内容が定まります。
要点
- 認知能力の試験をまとめた研究では、受け直しによる得点の上昇が見られ、試験対策や同じ問題の使用で伸び方が変わりました。
- 受け直す間隔を延ばすことと、その間に何を学ぶかは別の条件です。早く受けるほど有利という結果ではありません。
- 形式への慣れによる伸びと、別の内容にも使える力の伸びを分けて見ます。
- 次回までに変える学習を決め、本人が感じる負担も聞いてから受験の時期を選びます。
受け直しで上がる点には、試験への慣れも含まれます
「前に受けたから次は有利」という見方には、得点に限れば研究の支えがあります。採用や入学の選抜に使う認知能力の試験を扱ったHausknecht ほか(2007)は、メタ分析という、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法で受け直しの効果を調べました。107の標本、134,436人の結果をまとめると、調整後の全体の効果量は .26 でした。効果量は、点数の差をばらつきを物差しにして表した数で、合格する人の割合を表す値ではありません。
この分析で比べたのは、主として受け直す前後の試験の得点です。試験対策の指導を伴う場合や、同じ問題の版を使った場合には、伸びが大きいという違いもありました。したがって、得点が上がったという結果を読む際には、受けた経験だけでなく、対策をしたか、問題が同じだったかも一緒に見ます。再挑戦という名前が同じでも、中身の条件まで同じではありません。
保護者が成績表を読む場面でも、合否だけに目を向けると、その違いが見えにくくなります。たとえば、答え方がわからず手を止めたのか、答え方はわかっていても単語を読めなかったのかでは、次に練習することが違います。前者なら問題の指示や回答の手順を確かめ、後者なら語彙を学ぶ予定を作る、という具合です。これは原因を確かめるための見方であり、子どもを慣れていない子、力がない子と分類するためのものではありません。
点の上昇を期待することと、上昇の中身を確かめることは両立します。解く順序を覚えたことも、その試験を受けるうえでは役に立つ準備です。ただし、本人が「前より解けた」と話したら、正解を覚えていたのか、初めての文でも理由を説明できたのかまで聞くと、次の学習の焦点を絞れます。
すぐ受けるか、待つかを期間だけで決めない
学校で図形の規則を見抜く問題を受け直した生徒を調べたFreund ほか(2011)では、すぐに受け直したときの伸びはごくわずかでした。一方、間をあけた受け直しでは大きな伸びが見られました。同じ研究の中で時期による違いがあり、受け直しの伸びを一定のものとして扱えないことが示されています。伸びの個人差は、生徒どうしより学級どうしで大きかったという特徴もありました。
この結果を家庭の選択に使うなら、「受け直す」という行動だけに期待を集めないことが要点です。次の試験まで待つ場合も、空いた期間に取り組む内容が決まっているかを確かめます。単に受験日を後ろへ動かすことと、苦手な内容を学び直すことは同じではありません。逆に、次の回が近くても、取り組む課題が具体的なら、その準備が進むかを見ながら判断できます。
IELTSという英語の検定試験の書く課題を扱ったGreen(2005)は、公式試験を受け直した15,380人と、大学で学ぶための英語準備講座の前後に試験を受けた476人を調べました。結果を予測する力は、講座の長さより最初の得点のほうが強いという結論でした。期間だけを見て、だれもが同じ幅で伸びると見積もる考え方には注意が要ります。最初にどこまでできていたかを、準備期間と合わせて見るための研究です。
家庭では、「次まで長く勉強する」という予定を、実際の作業に直してみます。書く課題なら、書けなかった理由を単語、文の組み立て、内容の選び方に分け、どこから取り組むかを決めます。学校の課題などと両立してその作業を続けられるかを見てから、受験の時期を選びます。待った長さではなく、その間に何を変えたかを説明できる計画にします。
形式への慣れと英語の力は、確かめる課題を変えて見る
知能検査の受け直しを分析したte Nijenhuis ほか(2007)は、上がった点と一般的な認知能力の関係に注目しました。一般的な認知能力とは、特定の問題だけでなく、さまざまな認知課題に共通して関わる力を指します。受け直しによる伸びは、その一般的な能力とは関係しない部分で生じていました。研究者は、これをほかの試験や外部の基準へ伸びが広がりにくい理由として説明しています。
英国の大学に来た中国人留学生のIELTS受験を調べたHu ほか(2021)は、153人について別の英語試験で英語の力を測りました。対策と、ある程度は受け直しによってIELTSの点は押し上げられても、ほかの英語の力の測定には伸びが広がらないという結果でした。目標の得点までに受けた回数が多い学生ほど、到着時の別の英語試験の点が低い関係もありました。ただし、その効果は小さく、IELTSの得点自体は大学での成績を予測していました。
家庭で見たい変化を分けると、次の表のようになります。左の欄は試験で迷わず動くための準備で、右の欄は内容が変わっても使えるかを確かめる視点です。どちらかを捨てるための表ではなく、解けた理由に合った次の課題を選ぶために使います。
| 見る場面 | 形式への慣れを確かめる視点 | 英語の力を確かめる視点 |
|---|---|---|
| 問題の指示 | 何を答える問題か迷わず把握できるか | 初めて読む文の内容を理解できるか |
| 書く練習 | 回答の形や書き始める手順を知っているか | 題材が変わっても自分の理由を英語にできるか |
| 聞く練習 | 音声と設問をどの順で扱うか把握しているか | 別の音声でも要点を聞き取れるか |
| 解き直し | 覚えている答えを再現しているか | 答えの根拠を本文や音声の内容から説明できるか |
似た課題での伸びを、初めての課題でも確かめる
オーストラリアの医学部の選抜を扱ったGriffin ほか(2008)は、287人の志願者の自己申告調査を用いた観察研究を行いました。観察研究は、研究者が条件を割り当てずに、実際に起きている違いを調べる方法です。前年に落ちて面接を受け直した人は、前年と同じか似た課題では少し得点が上がりましたが、新しい内容の課題では伸びが見られませんでした。面接は複数の短い面接を回る形式で、対策講座も面接全体の点を上げず、一部の課題では低い得点と結びついていました。
この比較の特徴は、以前に似た課題を経験したかどうかで結果を分けていることです。以前と同じことを上手に答えられるようになる変化と、新しい内容にも対応する変化を、別々に確かめています。受け直しの前後だけで比べるよりも、どこで伸びたかが具体的に見えます。英検の準備を見守るときにも、練習した答えを再現できる段階と、内容が変わっても答えられる段階を記録の上で分けられます。
たとえば、書いた英文を直した後は、その英文をもう一度書けるかを確かめます。そのうえで、別の題材についても同じ表現を使えるかを見ると、練習済みの答案だけでは気づかなかった箇所を拾えます。書き出せても理由が続かない場合と、理由は浮かんでも単語が出ない場合では、次に扱う内容が変わります。正解したかだけでなく、手が止まった箇所を残すと、学習の相談にも使えます。
聞く練習でも、何度も聞いた音声と初めて聞く音声を同じ欄に記録しないようにします。聞き慣れた内容でできたことは、そのまま練習の成果として残します。別の内容でまだ難しかったことも隣に書けば、できたことを取り消さずに、残った課題を示せます。受験前の記録は子どもを採点し続ける帳簿ではなく、次の練習を選ぶためのメモにします。
再挑戦の意欲と、繰り返す負担を一緒に聞く
TOEICという英語試験を繰り返し受けたタイの大学の英語専攻学生を調べたBoonmoh ほか(2026)は、大学4年生58人の調査と聞き取りを組み合わせました。形式に慣れて自信がついた学生もいましたが、多くの学生が落胆、不安、試験疲れを訴えました。研究は、繰り返す受験が気持ちや学業の目標にも影響することを報告しています。同じ経験が、すべての受験者に前向きな手応えを与えるわけではありません。
受け直す話をするときは、「また頑張れるか」という大きな問いを、具体的な困りごとに分けて聞きます。結果を見ることがつらいのか、勉強のやり方が決まらないのか、予定が詰まっているのかでは、保護者が手伝えることも違います。本人がすぐ受けたいと話す場合も、何を変えて臨みたいのかを聞きます。意欲があることと、実行できる準備があることの両方を確認するためです。
「次こそ受からなければ」と結果だけを約束させるより、準備の途中で確かめる内容を決める方法があります。語彙を学び直したら文の意味を説明する、書く練習をしたら別の題材にも使うなど、合否が出る前にも進み具合を見られる作業です。本人が嫌がる場合には、受験の話を続ける前に、何が負担なのかを本人の言葉で残します。すぐ答えを出さないことも、次の準備の条件を整える選択です。
向いていないのは、学習内容を変える余地がないまま、受験だけを追加していく進め方です。すでに負担を訴えているなら、回数を増やす約束より、取り組む課題と使える時間の見直しを先に置きます。次を見送る場合にも、何を確かめたら再び受験を考えるかを決めておくと、見送る理由を本人と共有できます。
成績表から、次回までに変える学習を選ぶ
不合格の成績表が届いたら、合計点だけでなく技能別の結果を開きます。読む、聞く、書く、話すという区分のうち、成績表に示されている項目と、本人が難しかったと話す場面を照らし合わせます。保護者が低い項目を見つけてすぐ課題を増やすより、どの場面で困ったのかを先に聞きます。結果の数字と本人の記憶は、学習の出発点を探すために並べて使います。
続いて、次回までに変えることを絞ります。語彙が課題なら、知らなかった語を意味のわかる文の中で扱う練習を選べます。書くことが課題なら、書けなかった理由を短い日本語で出してから英文にする練習、聞くことが課題なら、聞き取れなかった箇所を文字と照らす練習が候補です。これは家庭で課題を選ぶための手順で、研究で合格への効果を測った学習法として示すものではありません。
準備の内容が決まったら、実際の予定に置けるかを確かめます。すでに使っている教材や授業の課題から始めれば、受験のために作業を重ねすぎていないかも見直せます。申し込むかを決める前には、次の項目を本人と一緒に確認します。
- 成績表のどの技能と、本人のどの困りごとを結びつけたか
- 次の回までに変える学習が具体的な作業になっているか
- 練習した問題と、初めての内容を区別して確かめる予定があるか
- 学校の学習と両立して取り組める時間があるか
- 本人が再挑戦をどう受け止め、何を負担に感じているか
準備が進んでいる場合も、予定どおり進まなかった場合も、記録に戻って受験時期を考え直せます。子どもに求めるのは、合格の約束ではなく、前回と違う取り組みを具体的に話せることです。受け直す日の近さより、次の試験へ持っていく準備の中身が判断の軸です。
よくある質問
合格まであと少しなら、すぐ受けるほうがよいですか
合格までの差は、次の準備を考える材料ですが、それだけで受験時期を決めないようにします。技能別の結果と本人の振り返りを見て、形式に戸惑ったのか、内容を理解できなかったのかを確かめます。次の回までに変える作業が決まり、その作業を実行できるなら、近い回を選ぶ理由を具体的に話せます。合計点だけでは見えない課題を拾うことが先です。
同じ過去問が解けるようになれば、準備は足りますか
同じ問題を解けることは、練習した内容を確かめる材料です。答えを覚えている場合もあるので、選んだ根拠を説明できるか、別の内容でも使えるかを合わせて見ます。書く課題なら題材を変え、聞く課題なら別の音声を使って、手が止まる箇所を確かめます。練習済みの問題での成功と、初めての内容での課題を並べれば、次の練習を選びやすくなります。
本人は次を受けたいと言っていますが、不安も口にします
受けたい気持ちと不安の両方を、そのまま聞くところから始めます。試験そのものが気になるのか、準備が間に合わないことが気になるのかを分けて話すと、調整する点が見えます。準備の内容と予定を本人と確かめ、途中で難しくなった場合に見直す余地も残します。再挑戦したいという言葉を、結果の約束に変えずに扱うことができます。
この記事の限界
比べた相手は、受け直す前の自分、異なる時期の受験者、別の課題など研究ごとに異なり、早く受けるほど合格しやすいかを同じ条件で比べた結果ではありません。受け直しの研究の多くは大人の選抜試験で、日本の小中学生の検定試験を対象にした研究は今回の範囲に含まれていません。留学生の英語試験や医学部の面接での得点の変化と、子どもの検定の合否では、測っている結果にも違いがあります。
また、受験の間隔、間に行った学習、同じ問題への接触の影響を切り分けて、個々の子どもの次回の結果を予測することには限りがあります。英検の級ごとの受け直しの合否の記録は、研究に使える形では公表されていません。
参考文献
- Hausknecht ほか. Retesting in selection: a meta-analysis of coaching and practice effects for tests of cognitive ability. J Appl Psychol. 2007;92(2):373-385.
- Freund ほか. Retest Effects in Matrix Test Performance: Differential Impact of Predictors at Different Hierarchy Levels in an Educational Setting. Learning and Individual Differences. 2011;21(5):597-601.
- Green. EAP Study Recommendations and Score Gains on the IELTS Academic Writing Test. Assessing Writing. 2005;10(1):44-60.
- te Nijenhuis ほか. Score Gains on “g”-Loaded Tests: No “g”. Intelligence. 2007;35(3):283-300.
- Hu ほか. The Effects of Coaching and Repeated Test-Taking on Chinese Candidates’ IELTS Scores, Their English Proficiency, and Subsequent Academic Achievement. International Journal of Bilingual Education and Bilingualism. 2021;24(10):1486-1501.
- Griffin ほか. Does practice make perfect? The effect of coaching and retesting on selection tests used for admission to an Australian medical school. Med J Aust. 2008;189(5):270-273.
- Boonmoh ほか. Exploring the Impact of Repeated TOEIC Test-Taking on the Motivation and Performance of Fourth-Year EIC Majors at a Thai University. LEARN Journal: Language Education and Acquisition Research Network. 2026;19(1):376-406.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
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よくある質問
合格まであと少しなら、すぐ受けるほうがよいですか
合格までの差は、次の準備を考える材料ですが、それだけで受験時期を決めないようにします。技能別の結果と本人の振り返りを見て、形式に戸惑ったのか、内容を理解できなかったのかを確かめます。次の回までに変える作業が決まり、その作業を実行できるなら、近い回を選ぶ理由を具体的に話せます。合計点だけでは見えない課題を拾うことが先です。
同じ過去問が解けるようになれば、準備は足りますか
同じ問題を解けることは、練習した内容を確かめる材料です。答えを覚えている場合もあるので、選んだ根拠を説明できるか、別の内容でも使えるかを合わせて見ます。書く課題なら題材を変え、聞く課題なら別の音声を使って、手が止まる箇所を確かめます。練習済みの問題での成功と、初めての内容での課題を並べれば、次の練習を選びやすくなります。
本人は次を受けたいと言っていますが、不安も口にします
受けたい気持ちと不安の両方を、そのまま聞くところから始めます。試験そのものが気になるのか、準備が間に合わないことが気になるのかを分けて話すと、調整する点が見えます。準備の内容と予定を本人と確かめ、途中で難しくなった場合に見直す余地も残します。再挑戦したいという言葉を、結果の約束に変えずに扱うことができます。