- グリットは、長い目標への情熱と粘り強さをまとめた概念です。
- 成績との結びつきは、興味の一貫性より努力の粘り強さで強い傾向です。
- まじめさや計画性との重なりが大きく、独立した能力としての位置づけには批判があります。
やり抜く力(グリット)とは何か|成績との関係と批判を整理するQ&A
英検会場を出た子が、かばんにしまいかけた単語帳をもう一度開きます。「このまま続ければ成績は伸びるのでしょうか」と、そばの保護者は気になります。グリットは「長い目標への情熱と粘り強さ」を指す言葉ですが、続ける姿勢と学習の成果は分けて捉える必要があります。やり抜く力は成績と弱いから中程度に関係しますが、新しい力として鍛えれば成績が上がるとまでは言えません。研究の焦点は、努力を続ける側面と、同じ興味を持ち続ける側面で異なり、従来の性格の物差しとの重なりも議論されています。
要点
- グリットは、長い目標への情熱と粘り強さをまとめた概念です。
- 成績との結びつきは、興味の一貫性より努力の粘り強さで強い傾向です。
- まじめさや計画性との重なりが大きく、独立した能力としての位置づけには批判があります。
やり抜く力、グリットとは何か
Duckworth ほか(2007)は、米国の成人の学歴、大学生の成績、士官学校での継続、つづりを競う大会の順位などを調べました。グリットは知能検査の指標であるIQとは関係せず、成功を表す指標のばらつきの平均4%を説明しました。これは成績がその割合だけ上がったという意味ではなく、人による結果の違いをどれだけ説明できたかという数字です。対象に学校の外の達成や継続も含まれ、努力を続ける性質が幅広い結果と結びつくという出発点でした。
Duckworth ほか(2009)は、短い質問紙でグリットを測る物差しを作り、中高生の後の成績を予測する結果を報告しました。本人の回答で測った性質と、その後の成績を対応させた研究です。早い時点の回答から後の成績を予測することと、指導によってその性質を変えることは、研究で答えようとする問いが異なります。
成績とどのくらい関係するか
Lam ほか(2022)は、複数の研究の結果をまとめて計算するメタ分析で、137研究を検討しました。成績との相関、つまり得点どうしが一緒に高低する傾向は、グリット全体で加重平均のr = 0.19でした。努力の粘り強さはr = 0.21、興味の一貫性はr = 0.08で、成績との結びつきの強さに違いがありました。全体の関連は弱いから中程度で、個人主義と集団主義という文化の区分による差は見られませんでした。
この分析が区別した粘り強さは、難しくても努力を続ける側面です。興味の一貫性は、関心の向かう先を長く保つ側面です。同じ言葉にまとめられていても、成績との関係では同じ重みを持っていません。
誠実性と何が違うか
誠実性は、まじめさ・計画性の性格の傾向です。Credé ほか(2017)は、グリット研究のメタ分析で、グリットと誠実性が非常に強く関係すると報告しました。情熱と粘り強さをまとめた上位の性質としての構造には疑問が残り、主に役立つのは努力の粘り強さという結果でした。その側面は、誠実性の違いを統計的に考慮した後も成績を説明していました。
一方、Rimfeld ほか(2016)は、英国の16歳4,642人を対象に、義務教育の修了試験の成績を調べました。性格、主に誠実性で成績のばらつきの約6%を説明し、そこにグリットを加えても説明はほとんど増えませんでした。こちらが問うたのは、性格の情報を既に持っているときに、グリットを測ることで成績の予測がどれだけ増えるかです。研究をまとめた分析と英国の試験の調査では対象が異なり、粘り強さが持つ追加の説明力にも違いがあります。
| 比べ方 | 研究が示したこと |
|---|---|
| グリットの得点と成績を対応させる | 弱いから中程度の関連 |
| 努力の粘り強さと興味の一貫性を比べる | 粘り強さの側面で関連が強い |
| 性格による予測にグリットを追加する | 英国の試験の調査では追加の説明はごく小さい |
家で鍛えられるか、家庭では何を確かめるか
家で取り組むなら、グリットの得点を高める訓練と位置づけず、学習の進め方を観察します。続けた時間だけで評価すると、解き方がわからず手が止まっている子にも、同じ作業の継続を求めることになります。課題の難しさが合っていないと感じるときは、続行を求める前に、説明や課題の量を見直す方針にします。これは研究で効果を測った訓練ではなく、子の困り方を捉えるための手順です。
- 取り組む前に、何をできるようにしたいかを子の言葉で残す
- 途中で止まった箇所と、そのときに求めた助けを記録する
- 終えた後に、自力で解けた箇所や説明できた内容を確かめる
- 続けた理由と、やり方を変えた理由を並べて振り返る
塾と記録を共有するときも、「粘り強いか」という人物評にまとめず、止まった問題と理解できた内容を伝えます。興味が移ったことだけを失敗扱いせず、本人が目標をどう捉え直したかも記録します。つまずいた箇所まで残せれば、次に説明を補う部分を具体的に絞れます。
よくある質問
興味が変わる子は勉強に不利ですか
成績との関係をまとめた節では、興味の一貫性と努力の粘り強さに違いがありました。興味が変わるという特徴だけで、その子の成績を判断する根拠にはなりません。
グリットは誠実性の別名ですか
誠実性との比較の節にあるように、重なりは大きいという結果です。ただし、努力の粘り強さに追加の説明力があった分析もあり、完全に同じ意味の言葉と扱うのは正確ではありません。
グリットの研究は努力を否定していますか
否定しているわけではなく、努力を続ける側面と成績との関連は報告されています。批判の中心は、それを独立した新しい力として扱うと、従来の性格の測定にどれだけ情報を加えられるかという点です。
この記事の限界
比べた相手は主に得点や性格の異なる人で、訓練を受けた組と受けない組ではありません。グリットを伸ばして成績が上がるかを調べる、くじ引きで組を分ける無作為化比較試験は今回の範囲では見つかりませんでした。本人が質問紙に答える測定には、自己評価の違いも混じります。
対象や追跡期間は研究によって異なり、米国と英国の調査が中心です。日本の小中高生に同じ物差しを使った大規模研究は今回の範囲になく、国内で成績との関係を判断する資料が不足しています。
参考文献
- Duckworth ほか. Grit: perseverance and passion for long-term goals. Journal of Personality and Social Psychology. 2007;92(6):1087-1101.
- Duckworth ほか. Development and validation of the short grit scale (grit-s). Journal of Personality Assessment. 2009;91(2):166-174.
- Lam ほか. Grit and Academic Achievement: A Comparative Cross-Cultural Meta-Analysis. Journal of Educational Psychology. 2022;114(3):597-621.
- Credé ほか. Much ado about grit: A meta-analytic synthesis of the grit literature. Journal of Personality and Social Psychology. 2017;113(3):492-511.
- Rimfeld ほか. True grit and genetics: Predicting academic achievement from personality. Journal of Personality and Social Psychology. 2016;111(5):780-789.
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- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
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よくある質問
興味が変わる子は勉強に不利ですか
成績との関係をまとめた節では、興味の一貫性と努力の粘り強さに違いがありました。興味が変わるという特徴だけで、その子の成績を判断する根拠にはなりません。
グリットは誠実性の別名ですか
誠実性との比較の節にあるように、重なりは大きいという結果です。ただし、努力の粘り強さに追加の説明力があった分析もあり、完全に同じ意味の言葉と扱うのは正確ではありません。
グリットの研究は努力を否定していますか
否定しているわけではなく、努力を続ける側面と成績との関連は報告されています。批判の中心は、それを独立した新しい力として扱うと、従来の性格の測定にどれだけ情報を加えられるかという点です。