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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年11月5日

中学に上がると成績が下がるのは普通か|学校の移行の研究と通塾の時期

学年末に持ち帰ったプリントを、子どもが教科ごとの束に分けています。Ryan ほか(2013)は、小学校から中学校への移行をはさむ調査で、学校の勉強そのものに感じる価値が低下したと結論づけています。保護者には、進学後に点が落ちてもよくあることとして待ってよいのか、それとも通塾を考えるべきなのかという疑問が残ります。進学に伴う成績低下は複数の研究に現れますが、すべての子に起きる当然の変化とは言えません。

この記事の要点
  • 進学前後の成績の変化と、学校を移ること自体の影響は別の問いです。
  • 中学校と一貫した学年構成の学校との比較では、学力に差が出ない報告もあります。
  • 点が低くなること、伸びが鈍ること、学ぶ意欲が変わることを分けて扱います。
  • 家庭での確認は、答案の中身と小学校の単元とのつながりから始めます。

中学に上がると成績が下がるのは普通か|学校の移行の研究と通塾の時期

学年末に持ち帰ったプリントを、子どもが教科ごとの束に分けています。Ryan ほか(2013)は、小学校から中学校への移行をはさむ調査で、学校の勉強そのものに感じる価値が低下したと結論づけています。保護者には、進学後に点が落ちてもよくあることとして待ってよいのか、それとも通塾を考えるべきなのかという疑問が残ります。進学に伴う成績低下は複数の研究に現れますが、すべての子に起きる当然の変化とは言えません。

「普通」という言葉には、集団の平均に表れる変化という意味も、何もしなくてよいという意味も入り込みます。しかし、平均が下がったという報告だけで、目の前の子のつまずく単元や支援の要否まで決まるわけではありません。学校を移った生徒と同じ学校に残った生徒の比較、移行前後の点の比較、本人の学ぶ意欲の調査は、それぞれ違う問いを扱っています。通塾を考える時期の話に進む前に、何が測られ、誰と比べられているかを確かめると、点の変化を必要以上に大きくも小さくも扱わずに済みます。

要点

  • 進学前後の成績の変化と、学校を移ること自体の影響は別の問いです。
  • 中学校と一貫した学年構成の学校との比較では、学力に差が出ない報告もあります。
  • 点が低くなること、伸びが鈍ること、学ぶ意欲が変わることを分けて扱います。
  • 家庭での確認は、答案の中身と小学校の単元とのつながりから始めます。

中1ギャップと成績を、どの比較で捉えるか

Ryan ほか(2013)は、小学校から中学校への移行をまたいで、6か月おきに4回、生徒の変化を調べました。最初の調査の対象は738人で、成績の平均の低下は、移行の時点と中学校での最初の年の変化によるものでした。進学した直後だけを切り取らず、その後の経過まで測っている点が、この調査の特徴です。抄録には下がり幅が示されておらず、特定の点数を「中学で下がる標準的な幅」として置く形にはなっていません。

このような追跡調査は、同じ生徒たちが時間の経過とともにどう変わるかを捉えます。一方、学校を移る影響を知る問いでは、同じ年代に学校を移らなかった生徒の経過も比較の候補に入ります。さらに、成績を調べるか、共通の学力検査を調べるか、本人に意欲を尋ねるかで、結果の意味が変わります。学校の移行の研究には、こうした異なる比較が並んでいます。追跡する期間が移行の直前直後だけなのか、移行した後も続くのかによっても、捉えられる経過は違います。移行時点の変化と、その後に続く変化を分けるには、測定した時期も読み取る要素に入ります。

調べたいこと 比べるもの 主に捉える変化
進学の前後で何が起きたか 同じ生徒の異なる時期 成績や学ぶ意欲の経過
学校を移る影響があるか 移った生徒と残った生徒 移行の有無による違い
以前の伸びが続いているか 移行期とそれまでの学力の伸び 伸び方の中断
特定の支援が役立つか 支援の活動と対照の活動 活動後の成績や行動

学力の低下が続いた研究では、誰に影響が大きかったか

Rockoff ほか(2010)は、公立校のデータから、6年生か7年生で小学校から中学校へ移る影響を推定しました。数学と英語で約0.15標準偏差の学力低下があり、データのある8年生まで続いていました。標準偏差は、集団の点のばらつきを表す物差しであり、この数字はテストの点数そのものとは異なります。もともとの学力が低い生徒では影響が強く、男女では似た傾向でした。

この分析では、早い学年で在籍していた学校の学年構成を使う、操作変数という推定方法が採られています。これは、学校を移るかどうかに関係する条件を手がかりにして、その影響を推定する方法です。進学前後の点を単純に引き算する比較とも、生徒をくじ引きで別の学校へ割り当てる実験とも異なります。比べた相手を読む際には、学校の学年構成を利用した推定である点が要になります。

Schwerdt ほか(2013)は、米国フロリダ州全体の行政データを用い、同様に操作変数による方法で移行の影響を調べました。小学校から中学校へ移った年に学力が急に下がり、その低下は10年生まで続いていました。同じ研究は、高校への移行については小さな一時的低下があり、その後の伸びの筋は変わらないとしています。どちらも学校が変わる出来事ですが、移行する段階によって経過が異なっていました。

フロリダ州の分析では、学力以外に欠席の増加や、その後の中退の多さとの関連も報告されています。学力の変化を追うだけでなく、学校に通い続ける経過も扱った研究です。中学校への移行と高校への移行を含む行政データによって、学校段階をまたぐ経過が調べられています。

学校を移らない生徒にも変化があった研究

Whitley ほか(2007)は、全国を代表する調査データで、7年生になるときに学校を移った生徒と、同じ学校に残った生徒を比べました。学力について、移行したかどうかによる差はありませんでした。一方で、5年生から7年生にかけての数学の成績低下は、学校を移った生徒にも残った生徒にも見られました。著者たちは、環境の変化よりも発達による変化で説明しています。

この比較では、進学後の点が下がったという出来事と、学校を移ることが下げたという説明とが切り離されています。残った生徒にも変化があるため、移った生徒だけの前後を見た場合とは、原因の捉え方が変わります。比較の相手が同じ時期を過ごしていることに、ここでの意味があります。発達という説明も著者の解釈であり、校舎や学級の変化を単独で操作した実験の結果ではありません。

Weiss ほか(2006)は、米国の都市の学校区で、中学校に通う8年生と、小学校段階からその学年まで続く学校の生徒を比べました。学校の種類による結果の違いはほとんどなく、差があったのは自尊感情と、本人が感じる脅威でした。自尊感情は、自分を価値のある存在として感じることです。学力の差だけを問う場合と、生徒が学校をどう受け止めているかまで問う場合とでは、同じ比較から拾う結果が違います。

比較相手の通う学校は、小学校段階の後も同じ学校に在籍できる学年構成です。移行を経験した生徒の結果と、同じ年代でその移行を経験しない生徒の結果を並べる構成になっています。また、全国を代表する調査と都市の学校区の調査では、生徒を取り出す範囲も違います。前者は移行の有無を、後者は在籍する学校の種類を軸に、生徒の結果を比べています。

点の低下、伸びの途切れ、意欲の変化を分ける

Akos ほか(2015)は、学力の経過を追い、5年生から6年生の間の移行の影響を、点の低下というより学力の伸びの中断として示しました。点が以前より悪くなったかを問う測り方と、それまでの伸びが続いたかを問う測り方は異なります。同じ点を保っていても、それ以前に伸び続けていたなら、伸び方としては変化しています。この研究では、低所得の生徒や特別支援の対象の生徒で中断が大きくなっていました。

この結果にある所得や支援の区分は、調査対象を分けて経過を調べるための条件です。その区分に属する子の将来を固定する性質として扱う話ではありません。移行前にどのくらい伸びていたかを含めると、最終時点の点だけを並べる比較とは別の違いを捉えられます。伸びの中断という表現は、支援を考える対象を、目に見えて点が落ちた生徒だけに限らない見方につながっています。

Nishimura ほか(2013)は、異なる学年の生徒を同時期に調べる横断調査と、同じ生徒を追う縦断調査を行いました。移行を追う調査の対象は128人で、自ら進んで学ぶ動機づけが下がり、やらされる形の動機づけが上がっていました。ここで動機づけとは、何を理由に学ぼうとするかという、行動を支える気持ちの方向を指します。測定の対象は成績ではなく、学ぶ動機でした。

横断調査では、小学校段階と中学校段階の生徒を含めて、学年の異なる集団を並べています。これに対して縦断調査では、小学校から中学校へ移る本人の中で、学ぶ理由がどう変わるかを追っています。調査の組み合わせによって、集団間の違いと個人内の経過という、異なる方向から学ぶ動機を測っています。

心配の受け止め方を変える支援で、何が測られたか

Borman ほか(2019)は、学校区全体の実験で、中学校の始まりになじめない心配の受け止め方を変える活動を調べました。心配を一時的で普通のことと捉え直す短い介入を行い、対照の活動と比べると、6年生の落第点の数は18%減りました。同じ実験では懲戒に関わる出来事や出席も測られており、教科の学力検査だけを成果とした研究ではありません。落第点の数が減ることと、平均点が同じ割合だけ上がることも別の結果です。

この実験は二重盲検、つまり活動の割り当てについて関係する双方に情報を伏せる形で行われました。比べた相手にも活動が用意されているため、活動をした生徒と何もしていない生徒を単純に並べる構成とは異なります。扱われた支援の中身は、困難な経験をどう受け止め直すかという働きかけです。教科を先取りして教えたり、練習する問題を増やしたりする指導を比較した実験ではありません。

ここでの「普通」は、不安を抱いた本人がその経験を理解するために、介入の中で用いられています。成績が落ちるのを当然と判断して、支援をせず経過を待つ条件を指す言葉ではありません。実際に活動を用意した組と対照の組の比較なので、何も変えずに自然に戻るまで待つ過程とは研究の組み立てが違います。落第点という指標も、学力の細かな伸びを測る検査とは違う面から成果を捉えています。

比較の単位となった活動は、学校に入ったばかりの時期の、学業と人間関係に関する困難な経験を扱っています。教科の問題をどこまで解けるかを測る支援とは、働きかけの対象が違います。学校区での落第点や行動という成果を、この心理的な働きかけに対応させて調べた実験です。

家庭で確かめる手順と、通塾前に学校へ聞くこと

家庭では、点が下がった教科の答案と、そこにつながる小学校の教材を用意するところから始めます。合計点の上下を確かめたら、次は間違った問題の中身を見ます。たとえば計算の途中で止まるなら、式を立てる部分と計算する部分を分け、以前に扱った分数や小数でも同じ箇所で止まるかを確かめます。これは原因を決めつける検査ではなく、学校の先生へ具体的な質問を持っていくための準備です。

学校の先生には、「中学に慣れていないだけですか」と広く聞く前に、実際に止まった箇所を伝えます。授業中にも同じところで困っているか、今の単元に戻るために何を復習するとよいか、学校で質問できる機会があるかを尋ねます。テストの問題で求めた内容と、授業中にできている内容も照らし合わせます。答案だけでは見えない授業中の様子が加わると、家で困っている時間だけを基準に判断せずに済みます。

通塾を検討するときは、復習したい単元と、その子が説明を必要としている箇所を先に書きます。説明を聞いた直後は進めても、ひとりで解くと止まるなら、その違いも伝えます。反対に、学校の課題で十分に練習でき、質問先も使えている場合は、新しい学習予定を重ねる前に今の取り組みを確かめます。日々の課題を終える余裕が乏しい子に、困り方を整理しないまま学習の場だけを増やす提案は向きません。

始める時期は、進学した月だけで決めず、困っている内容と利用できる支援を並べて考えます。学校で聞いた復習箇所を試し、その後に自力で進める部分が変わったかを記録します。待つ場合も支援を加える場合も、次に確かめる内容を残しておけば、同じ不安だけで話を繰り返さずに済みます。「中学に上がったのだから」という一言で、点の低下を片づけません。

よくある質問

成績の平均とは、定期テストの点のことですか

必ずしも同じ意味ではありません。本文の比較表で示したように、成績の経過、学力検査、本人への質問では測っているものが違います。教科のテストの合計点と、学校生活を通じてつく成績とを混ぜると、何が変わったかが曖昧になります。「成績が下がった」という説明を読む際は、どの測定の話なのかが先にあり、数字の大小はその後に置かれる話です。

中学校への移行と、転校は同じ話ですか

この本文で扱っている移行は、学校の段階や学年構成が変わるときの変化です。住まいの変更などによる転校の事情をまとめて扱っているわけではありません。学校を移るという共通点はあっても、同じ学校に残る比較相手が誰かによって、調べる問いは変わります。本文の「学校を移らない生徒」の節も、校舎が変わったという事実だけで比較を組み立ててはいません。

進学した学年で通塾の開始を決められますか

この記事の手順は、開始学年の答えを出すためではなく、支援してほしい内容を具体化するためのものです。小学校の復習が必要なのか、今の授業への質問先が足りないのかで、検討する支援は変わります。通い始める日を先に置く話と、学習のどこを補うかを定める話を分けています。本文の手順節は、学校から得た説明も加えて検討する順序を示しています。

この記事の限界

当てはまる範囲は、調べた学校の学年構成や、成績と学力検査のどちらを測ったかに左右され、異なる比較を同じ条件として扱うことはできません。米国の小中一貫した学校との比較は、小学校と中学校が別の学校であることがほぼ前提の日本に、そのまま当てはめられません。移行を追った調査にも対象国の記載がないものがあり、動機づけを測る研究は、定期テストの点の変化を直接捉えてはいません。

進学時に塾へ通い始める場合と後から始める場合を比べた結果はなく、本文の手順は、家庭で状況を把握するための提案として示しています。中1ギャップを日本の定期テストや成績で測った研究は採用した文献にはなく、測定による裏づけに先行して言葉が広まっている面があります。

参考文献

  1. Ryan ほか. Changes in Academic Adjustment and Relational Self-worth Across the Transition to Middle School. Journal of Youth and Adolescence. 2013;42(9):1372-1384.
  2. Rockoff ほか. Stuck in the middle: Impacts of grade configuration in public schools. Journal of Public Economics. 2010;94(11-12):1051-1061.
  3. Schwerdt ほか. The impact of alternative grade configurations on student outcomes through middle and high school. Journal of Public Economics. 2013;97:308-326.
  4. Whitley ほか. Differences in Achievement between Adolescents Who Remain in a K-8 School and Those Who Transition to a Junior High School. Canadian Journal of Education / Revue canadienne de l’éducation. 2007;30(3):649.
  5. Weiss ほか. Reexamining Middle School Effects: A Comparison of Middle Grades Students in Middle Schools and K–8 Schools. American Journal of Education. 2006;112(2):239-272.
  6. Akos ほか. Sociodemographic Moderators of Middle School Transition Effects on Academic Achievement. The Journal of Early Adolescence. 2015;35(2):170-198.
  7. Nishimura ほか. Changes in academic motivation among elementary and junior high school students. The Japanese journal of psychology. 2013;83(6):546-555.
  8. Borman ほか. Reappraising academic and social adversity improves middle school students’ academic achievement, behavior, and well-being. Proceedings of the National Academy of Sciences. 2019;116(33):16286-16291.

通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。

  • 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
  • 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
  • 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
  • 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人

このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒、講師が一人の生徒に付きっきりの完全1対1で、大学教員や東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生などが教えます。アルバイト講師はいません。

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よくある質問

成績の平均とは、定期テストの点のことですか

必ずしも同じ意味ではありません。本文の比較表で示したように、成績の経過、学力検査、本人への質問では測っているものが違います。教科のテストの合計点と、学校生活を通じてつく成績とを混ぜると、何が変わったかが曖昧になります。「成績が下がった」という説明を読む際は、どの測定の話なのかが先にあり、数字の大小はその後に置かれる話です。

中学校への移行と、転校は同じ話ですか

この本文で扱っている移行は、学校の段階や学年構成が変わるときの変化です。住まいの変更などによる転校の事情をまとめて扱っているわけではありません。学校を移るという共通点はあっても、同じ学校に残る比較相手が誰かによって、調べる問いは変わります。本文の「学校を移らない生徒」の節も、校舎が変わったという事実だけで比較を組み立ててはいません。

進学した学年で通塾の開始を決められますか

この記事の手順は、開始学年の答えを出すためではなく、支援してほしい内容を具体化するためのものです。小学校の復習が必要なのか、今の授業への質問先が足りないのかで、検討する支援は変わります。通い始める日を先に置く話と、学習のどこを補うかを定める話を分けています。本文の手順節は、学校から得た説明も加えて検討する順序を示しています。