- 学校の複式学級をめぐっては、不利がないという結論と、小さな不利を指摘する結論があります。
- 人数の都合で学年をまとめることと、教育の目的から年齢を混ぜることを区別します。
- 年上が年下を教える活動には学業上の利点が報告されていますが、同室にいるだけの状態とは違います。
- 学力と、自分は勉強ができるという見方は、別々に確かめる項目です。
- 見学では、隣の子の学年、話し声の届き方、講師が机を回る様子を観察します。
学年の違う子と同じ教室で学ぶと伸びるか|個別塾の教室と異学年学級の研究
放課後の教室を見学するとき、小学生の隣で中高生が別の教材を開いていたら、互いの勉強にどう響くのか気になります。Veenman(1995)は、複数の学年や年齢を混ぜた学校の学級を調べた研究をまとめ、認知・学力やそれ以外の面にも、こうした学級で学ぶ不利な影響は見られないと結論づけています。では、個別塾でも年上や年下の子が隣にいるほうが、集中して成績を伸ばせるのでしょうか。学年が混ざるだけで伸びるとは言えず、見るべきなのは学級をまとめた理由と、実際にどのように教えているかです。
年上の子が年下の子を教える活動と、別々の課題を同じ部屋で進める授業では、子どもどうしの関わりが違います。また、年上の子を見て励みになると大人が期待していても、本人は比べられているように感じるかもしれません。学年の組み合わせだけで教室を選ぶ前に、研究が何と何を比べたのかを押さえ、見学では自分の子が説明を聞けるか、質問できるかに目を向けます。
要点
- 学校の複式学級をめぐっては、不利がないという結論と、小さな不利を指摘する結論があります。
- 人数の都合で学年をまとめることと、教育の目的から年齢を混ぜることを区別します。
- 年上が年下を教える活動には学業上の利点が報告されていますが、同室にいるだけの状態とは違います。
- 学力と、自分は勉強ができるという見方は、別々に確かめる項目です。
- 見学では、隣の子の学年、話し声の届き方、講師が机を回る様子を観察します。
個別塾の同じ部屋と、学校の複式学級は違います
複式学級は、学校の先生が複数の学年をまとめて教える学級です。同じ学年だけで編成する単一学年の学級と比べると、先生が扱う学年の範囲が広くなります。ただし、学年が混ざっているという見た目が同じでも、編成の理由や授業の進め方まで同じになるわけではありません。
人数の都合で学年をまとめた学級では、もともと別の学年に属する子どもたちを、学校運営の条件に合わせて組み合わせています。一方、教育の目的から意図して年齢を混ぜた学級は、異なる年齢の子が関わることを授業の組み立てに含めています。この区別をせず、まとめて「異学年はよい」「異学年はよくない」と読むと、何を変えた結果なのかが見えにくくなります。
個別塾について考えるときは、さらに授業の単位を確かめます。同室の子がそれぞれ別の内容を進め、講師が個々の机で説明するなら、部屋全体が学校の学級と同じ授業を受けているわけではありません。隣の子と課題を共有するのか、講師の説明を待つ時間に何をするのかなど、学年表だけでは読み取れない点があります。
保護者が知りたいのは、混ざった学年の名称より、自分の子の勉強がどう進むかです。見学前には、学校の復習をしたいのか、解き方の説明を聞きたいのか、自分で演習を進めたいのかを子と話しておけます。その目的を持って教室を見ると、年上の子の存在に目を奪われず、本人に必要な説明や作業の時間を確かめやすくなります。
不利がないという結論には、研究上の論争があります
導入で挙げた研究の結論に対し、Mason ほか(1996)は、複式学級に入る子の選ばれ方と指導の質に注意を向けました。学級の成績を比べる際には、そもそもどんな子がその学級に入ったのかが結果に関わります。著者たちは、複式学級には学力への少なくとも小さな負の効果があり、学校の先生の意欲にも悪い影響が生じる可能性があると指摘しました。
これに対してVeenman(1996)は、利用できる研究をメタ分析の手順で分析し直しました。メタ分析では、学級の型を比較した各研究の結果を共通の物差しにそろえ、全体の差を計算します。その結果、平均の効果量は実質的にゼロか、それに近いと報告しました。効果量は、比較した組の差がどれほど大きいかを共通の物差しで表す数です。
続くMason ほか(1997)は、人数の都合でまとめた組み合わせ学級と、意図して年齢を混ぜた学級を区別して研究を見直しました。前者については、学力に少なくとも小さな負の効果があるという結論でした。ここでの争点は、年齢の違う子が視界に入ることの是非ではなく、どんな編成と指導を同じ種類の学級として集計するかです。
この論争を読む際には、賛成の論文と反対の論文を単純に数えるより、それぞれが何を分類し直したかを追います。平均で差が小さいという話と、特定のまとめ方に不利があるという話は、比べる対象を確かめてから並べるべきものです。家庭が教室を判断するときにも、学年が混ざっているという説明だけで評価を終えず、なぜその組み合わせにしているのかを聞く手掛かりになります。
入る子の条件をそろえると、学力の差はどうなるか
米国の全国調査を用いたThomas(2012)は、小学校の入門期の子を対象に、単一学年の学級と組み合わせ学級を比べました。上の学年と組み合わせた学級には、成績のよい子が選ばれやすいという偏りがありました。しかし条件をそろえると、同じ学校の中では、学級の型と学力の関係は見られませんでした。
この結果で注目したいのは、学級の平均点が高いことと、その学級に入ったことで伸びたことの違いです。もともと勉強が進んでいる子が集まっていれば、編成による上乗せがなくても、平均点は高く見えます。逆に、支援が必要な子が多く集まる学級なら、平均点の低さだけで指導の価値を判断することもできません。どの子が入る仕組みなのかを確かめることは、授業の効果を読む出発点です。
研究の結論は、編成の目的と比較相手を添えると整理しやすくなります。次の表は、部屋にいる子の年齢差ではなく、学級をまとめた理由に沿って並べたものです。見学で説明を聞くときにも、どの行の話に近いのかを意識すると、学校研究と目の前の教室との違いを考えやすくなります。
| まとめた理由・見方 | 研究の結果 | 比べた相手・対象 |
|---|---|---|
| 複式学級と意図的な混合を広く扱う | Veenman(1995)は不利な影響を認めず | 学年・年齢の編成が異なる学校の学級 |
| 人数の都合による組み合わせを区別する | Mason ほか(1997)は小さな負の効果を指摘 | 意図的な年齢混合と区別した組み合わせ学級 |
| 入る子の条件をそろえて比べる | Thomas(2012)は学級の型と学力の関係を認めず | 米国の同じ学校内の単一学年と組み合わせ学級 |
年上が年下を教える活動には、別の根拠があります
Chang ほか(2025)は、年上の生徒が年下の生徒を教える異年齢の個別指導をメタ分析しました。学業への全体の効果量は0.34で、教わる側は0.33、教える側は0.39でした。両方に小〜中程度の正の効果が見られ、著者たちは、とくに教育に使える資源が限られた状況で年上の生徒を教え手にする利点を強調しています。
これは、年齢差のある子を同じ部屋に置くこととは別の活動です。教える側と教わる側という役割があり、実際に学習内容をやり取りするところまでが研究の対象です。年上の子が黙って自分の問題集を解いている場面を、この活動と同じものとして扱うことはできません。
教え合う時間があると説明されたら、誰が教える内容を決めるのか、説明が食い違ったときに誰が確かめるのかを聞けます。教わる子が疑問を言い直せるか、教える子にも自分の課題を進める時間が残るかも、見ておきたい点です。年上の子の善意に任せるだけなのか、大人が活動を組み立てているのかでは、保護者が確認する内容が変わります。
反対に、子どもどうしで教え合わない教室なら、講師からの説明と本人の演習を中心に見ます。年下の子と話さないことを、それだけで機会の損失と評価する理由はありません。本人が説明を求める相手と、自分の課題に取り組む時間が明確なら、その授業の目的に沿って良し悪しを判断できます。年齢差を活用する活動の価値と、個々の勉強を進める場の価値を混同せずに考えます。
成績と「自分はできる」という見方は別に見ます
Munser-Kiefer ほか(2023)は、小学生の複式学級と単一学年の学級で、読むことについての自己概念の変化を追いました。自己概念は、自分をどれくらい勉強のできる人だと見ているかという見方です。複式学級では、平均の学力が高いのに自己概念が低くなる時期があり、主に成績の低い子で見られました。その後の学年の終わりには回復し、著者たちは上の学年と比べる影響を和らげる教育上の支えを求めています。
ここでは、実際に読めるかという測定と、本人が自分をどう見ているかという測定がわかれています。大人には十分に進んでいるように見えても、本人は隣の子より遅いことを気にする場合があります。点が保たれているから気持ちも問題ないと決めず、課題の難しさと周囲への気兼ねを別々に尋ねる読み方ができます。
たとえば、子が年上の子を気にして質問を控えると話したときは、その場面を具体的に聞きます。答えを知らないところを見られたくないのか、別の説明を遮るのが気になるのかで、講師に伝える内容が変わります。前者なら他の子の進度を持ち出さず本人の課題を確かめること、後者なら質問を出す合図を決めることが、対応を相談する候補です。
上の学年の子がいることを励みにする子も、周囲と比べることが負担になる子も、最初から決めつけずに見ます。年下の子に尋ねられるのを断れず、自分の作業が止まると話す子なら、教える役割を引き受ける範囲も確認します。学年が違う環境に慣れさせることを目標にせず、本人が説明を聞き、取り組み、困ったところを伝えられるかを観察の中心に置けます。
見学では、学年・声・講師の動きを確かめます
見学は、子が実際に通う予定の時間帯の様子を知る機会として使います。静かな時間の印象だけを覚えるより、説明が重なる場面や、講師が別の机に移る場面まで見ると、本人の過ごし方を想像しやすくなります。何となく落ち着くかどうかに加え、次の項目をメモにすると、子との話も具体的になります。
隣の学年は、見た目で推測せず教室の説明で確かめます。そのうえで、年上がいること自体を評価するより、子が周囲を気にせず教材を開けそうかを聞きます。勉強する内容が違うと知って安心するのか、誰かの進み具合が気になるのかなど、本人の言葉をメモに残します。
声については、完全な無音かどうかだけで判断しません。講師が自分に説明している最中に別の声が重なるのか、自分で読む時間に話の内容が耳に入るのかを分けて見ます。子が気になると言った場面を添えると、席の配置や説明の仕方について具体的な話ができます。
講師の動きでは、机にいる時間の長短と、その間に何をしているかを一緒に見ます。説明を聞く時間が長くても本人が考える機会はあるか、講師が離れたときに手を止めて待つだけになっていないかを確かめます。質問したいときの知らせ方や、解けない問題をいったん置いて進める扱いも聞いておくと、本人の作業の流れをつかめます。
見学後は、保護者の印象を先に言い切らず、子に気になった場面と取り組めそうだった場面を話してもらいます。その言葉とメモを照らし合わせ、声、質問の出し方、課題の待ち時間など、調整したい点を絞ります。学年の組み合わせを大きな印象で評価するより、本人の勉強が止まった場面を言葉にするほうが、教室との話し合いを具体的にできます。
学年の違う子と同室であることだけで、伸びるかどうかは決まりません。研究を読む軸は、まとめ方の理由、指導の中身、周囲との比較への配慮です。見学で確かめた声や講師の動きと本人の言葉が、その子の勉強の進め方に合う教室を選ぶ材料です。
よくある質問
年上の子が隣にいると、勉強のやる気が出ますか
年上の子がいるという条件だけで、やる気が高まると決める根拠にはなりません。自己概念を扱った節のように、学力と自分への見方が同じ方向に動かない場合があります。隣の子を目標にできるかだけを聞くより、質問をためらった場面や自分の課題に取り組めた場面を尋ねると、本人が何を気にしているかをつかめます。進度の速さを他の子と比べず、本人が解けるようになった内容を確かめます。
学年別の教室を選んだほうが安心ですか
学年だけをそろえれば、声の重なりや説明を待つ時間も解決するとは限りません。まず本人が困っているのが周囲との比較なのか、声なのか、質問のしにくさなのかを分けて聞きます。見学の節の項目に沿って、学年別の教室でも同じ点を確かめれば、名称だけに左右されずに比べられます。本人の目的に必要な説明と演習がどのように確保されるかを、選ぶ際の中心に置けます。
年下の子に教える役を頼まれたら引き受けるべきですか
年齢差のある教え合いには利点が報告されていますが、本人の勉強と両立する形かを先に確かめます。何を教えるのか、難しい質問を誰に引き継ぐのか、本人が負担を感じたときに断れるのかを聞けます。年上だから自然に教えられると考えず、大人が支える範囲も確認します。役割への意欲と自分の課題の進み方を一緒に見て、引き受ける範囲を調整する判断ができます。
この記事の限界
適用範囲は学校の学級編成や年齢差のある指導活動であり、個別塾の同室での学習とは授業の単位が異なります。学年の違う子が別々の内容を講師と個別に進める教室を直接調べた研究は、ここで扱った研究には含まれていません。学級への子の選ばれ方や、人数の都合でまとめたか教育の目的で混ぜたかによって、研究で比べている条件も違います。
学力を調べる研究と読むことの自己概念を追う研究では測定の対象が異なり、同室で過ごす子の集中や安心感まで一括して評価する材料にはできません。塾の教室の話し声や講師の声の届き方を測った研究は、この根拠の範囲には含まれていません。
参考文献
- Veenman. Cognitive and Noncognitive Effects of Multigrade and Multi-Age Classes: A Best-Evidence Synthesis. Review of Educational Research. 1995;65(4).
- Mason ほか. “Simply No Worse and Simply No Better” May Simply Be Wrong: A Critique of Veenman’s Conclusion about Multigrade Classes. Review of Educational Research. 1996;66(3).
- Veenman. Effects of Multigrade and Multi-Age Classes Reconsidered. Review of Educational Research. 1996;66(3).
- Mason ほか. Reassessing the Effects of Combination Classes. Educational Research and Evaluation. 1997;3(1):1-53.
- Thomas. Combination Classes and Educational Achievement. Economics of Education Review. 2012;31(6):1058-1066.
- Chang ほか. Examining the Academic Effects of Cross-Age Tutoring: A Meta-Analysis. Educational Psychology Review. 2025;37(1):19.
- Munser-Kiefer ほか. Development of Self-Concept in Multi-Grade 3rd and 4th Classes. lnternational Electronic Journal of Elementary Education. 2023.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒、講師が一人の生徒に付きっきりの完全1対1で、大学教員や東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生などが教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
年上の子が隣にいると、勉強のやる気が出ますか
年上の子がいるという条件だけで、やる気が高まると決める根拠にはなりません。自己概念を扱った節のように、学力と自分への見方が同じ方向に動かない場合があります。隣の子を目標にできるかだけを聞くより、質問をためらった場面や自分の課題に取り組めた場面を尋ねると、本人が何を気にしているかをつかめます。進度の速さを他の子と比べず、本人が解けるようになった内容を確かめます。
学年別の教室を選んだほうが安心ですか
学年だけをそろえれば、声の重なりや説明を待つ時間も解決するとは限りません。まず本人が困っているのが周囲との比較なのか、声なのか、質問のしにくさなのかを分けて聞きます。見学の節の項目に沿って、学年別の教室でも同じ点を確かめれば、名称だけに左右されずに比べられます。本人の目的に必要な説明と演習がどのように確保されるかを、選ぶ際の中心に置けます。
年下の子に教える役を頼まれたら引き受けるべきですか
年齢差のある教え合いには利点が報告されていますが、本人の勉強と両立する形かを先に確かめます。何を教えるのか、難しい質問を誰に引き継ぐのか、本人が負担を感じたときに断れるのかを聞けます。年上だから自然に教えられると考えず、大人が支える範囲も確認します。役割への意欲と自分の課題の進み方を一緒に見て、引き受ける範囲を調整する判断ができます。