- 学校の競争的な雰囲気と学力の関係は、韓国と中国の調査で結果が異なっています。
- 単語学習で競争のある組が伸びた実験がありますが、課題の難しさを調整したゲームでは不安の増加も報告されています。
- 協力して達成する目標は、競争や個人で達成する目標より、学力と友人関係で良い結果に結びついたメタ分析があります。
- 負けた後の自己評価や、学習不安を介した関係まで調べると、点の上下だけでは捉えられない面が見えてきます。
塾にライバルがいると成績は伸びるか|競争と学力の研究
駐輪場で自転車の鍵を外す子が、隣の子と今日の小テストの手応えを話しています。Liu ほか(2022)は、中国の小学生79人を対象に、単語を学ぶ授業で競争の形を変えて比べました。「競い合う相手がいる塾のほうが、うちの子も勉強するようになるのでしょうか」という疑問には、励みになる相手を期待する気持ちと、比べられてつらくならないかという心配が重なります。競争で学力が上向く報告と上向かない報告があり、塾にライバルがいれば成績が伸びるとは言えません。
ライバルという言葉は、互いに励ます友人にも、負けたくない相手にも使われます。ところが、研究で扱う競争には、学校全体の雰囲気、課題で誰が勝つかというルール、本人が競うことを好む性質など、異なる中身があります。また、単語を覚えた成果、教科の学力、学習への意欲、失敗した後の自己評価も、それぞれ別に測られています。競い合う授業と個別の授業を人数だけで並べる前に、何を競わせ、何と比べ、どの結果を確かめた研究なのかをたどります。
要点
- 学校の競争的な雰囲気と学力の関係は、韓国と中国の調査で結果が異なっています。
- 単語学習で競争のある組が伸びた実験がありますが、課題の難しさを調整したゲームでは不安の増加も報告されています。
- 協力して達成する目標は、競争や個人で達成する目標より、学力と友人関係で良い結果に結びついたメタ分析があります。
- 負けた後の自己評価や、学習不安を介した関係まで調べると、点の上下だけでは捉えられない面が見えてきます。
学校の競争的な雰囲気は学力と結びつくか
Rudolf ほか(2023)は、韓国の全国を代表する国際学力調査PISAのデータを使い、学校の競争と協力を調べました。比べたのは、生徒どうしが競争する雰囲気や協力する雰囲気の違う学校です。競争的な学校ほど数学・読解・科学の学力が高い一方、個人の生活満足度は低くなり、学校外の私教育への投資も増えるという結果でした。協力的な雰囲気については、学力への有意な効果はなく、生活満足度には正の効果が報告されています。
この分析は、学校の生徒を競争あり・なしの授業へくじで振り分ける実験とは異なります。操作変数回帰という、競争の程度と結びつく別の変数を利用して影響を推定する方法を用いています。測定の単位も、親しい相手との関係ではなく、学校全体の雰囲気です。学校外の学習への投資も分析に含め、教科の成績以外に日常生活のどの面が伴って変わるかを調べています。
一方、Chen ほか(2025)は、同じ調査年のPISAから、中国の思春期の生徒12,058人を分析しています。本人の競争好きという性質は、学力と心の健康の両方に正の関連がありました。しかし、学校の競争的な雰囲気は学力と有意に関連せず、生活満足度とは負に関連しました。有意な関連がないとは、この分析で偶然のばらつきと区別できる関係が示されなかったという意味です。
後者の研究では、競うことが好きな本人の特徴と、競争が強いと感じる環境とを分けたところが重要です。「本人が競争を好む」と「学校が競争的だと感じる」は、分析の中でも別の項目として扱われています。方法は横断研究という、同じ時点に測った項目の関係を見る調査です。個人の特徴と学校という集団の特徴を階層に分けて分析し、それぞれの関連を検討しています。
単語学習の実験では何を競わせたか
Liu ほか(2022)の対象は中国の小学6年生で、英単語をゲーム形式で学ぶ授業でした。無作為化比較試験、つまりくじ引きのような方法で組を分けて比較する試験として、競争なし、個人で競争、チームどうしで競争する条件を設けています。競争のある組は、ない組より語彙の学習効果も意欲も高くなりました。さらに、チーム対抗の組は個人で競う組より語彙の成果が高く、意欲については両者に有意差がありませんでした。
この比較には、競争を入れるかどうかに加え、勝敗を個人で決めるかチームで決めるかという違いがあります。チーム対抗も競争ですが、個人戦とは勝敗の単位が異なります。学習効果を測る試験と、意欲を測る項目を分けたため、同じ比較でも差が表れる結果と表れない結果がありました。対象となる課題は英単語の学習で、ここで測られた成果は語彙の習得です。
Yang ほか(2020)は、高校の英語の授業で、力に合わせて難しさを調整する競争ゲームと、通常のゲーム学習を比較しました。これは準実験と呼ばれる、無作為に割り当てる実験ほど条件を厳密にそろえられない比較です。調整する競争ゲームでは語彙の成績が改善し、とくに成績の低い生徒で改善が見られましたが、不安も増加しました。通常のゲームで学ぶ組には、失敗を繰り返す傾向がありました。
この高校の比較では、相手がいるかどうかだけでなく、課題の難しさをどう合わせるかが方法の中心に置かれています。比べた相手も、何もせずに待つ組や通常の説明を聞く組ではなく、別のゲームで学ぶ組です。したがって、変えた要素を「競争の追加」とひとまとめにすると、難しさの調整という手順が抜け落ちます。測定項目には語彙の試験と不安に加え、ゲーム中の行動も置かれています。
協力して達成する課題と比べるとどうか
競争の相手として何を置くかによって、比較の問いも変わります。競争をしない授業にも、自分の課題を個人で終える形と、仲間と協力して達成する形があります。前の単語学習の試験はゲーム内の競い方に注目していましたが、ここでは授業の目標構造に注目します。目標構造とは、他の人を上回ること、協力して達成すること、自分の目標を達成することなど、何を成功とするかの組み方です。
Roseth ほか(2008)は、思春期前期の子どもを扱う148の独立した研究を、メタ分析で検討しました。メタ分析は、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法です。対象には11か国の子どもと、多国籍の4標本が含まれています。協力的な目標構造は、競争的な目標構造や個人で達成する目標構造と比べ、学力の高さと良好な友人関係に結びついていました。勉強の成果と仲間との関係を並べて扱っているため、勝敗による刺激だけに注目した比較とは問いの幅も違います。
この研究でいう「個人で達成する目標」は、講師と子どもが向き合う個別指導という授業形態の名前ではありません。同じ教室にいても、目標が個人ごとに完結する場合と、仲間との達成を目指す場合があり、比較の分類はその違いに基づいています。また、協力する側も課題への目標を持っており、競争がないことを、何も目指さずに過ごすことと同一視する比較ではありません。まとめられた研究は、達成の目標をどう組むかと、学業および仲間関係の成果を対応させています。
不安と失敗後の反応まで含めた競争の条件
Li ほか(2022)は、中国・浙江省の小学生に、クラスの競争の感じ方、学習不安、学習への取り組みを尋ね、期末試験の点との関係を分析しました。競争は点を直接には予測せず、不安を高めて点の低さに結びつく経路と、取り組みを高めて点の高さに結びつく経路が示されました。ここでの経路は、複数の項目の関連を分析して組み立てたもので、原因の順番が確定した流れではなく統計上のつながりを示しています。取り組みの量や気持ちを経由する関係まで見ると、競争と点だけを結んだ場合とは異なる姿が表れています。
Lam ほか(2004)は、香港の中学初年に当たる生徒を、中国語タイピングの講座で競争あり・なしに無作為に分けました。競争のある組は易しい課題の成績が良かった一方、成績を示す目標に向かいやすく、学ぶ機会を犠牲にしやすいという結果でした。失敗後の自己評価も悪くなりましたが、楽しさと、結果の原因をどう捉えるかには有意差がありませんでした。順調に解けた課題の成績、活動中の楽しさ、失敗後に自分をどう見るかが、別々の結果として記録されています。
競争が向く条件を探す際にも、授業の名称だけでは比較の内容が決まりません。力に合う難しさなのか、個人の勝敗なのか、つまずいた直後なのかによって、研究が見ている状況が違います。以下は、効果の大小を並べる表ではなく、競争の形と注意が向く条件を分けたものです。
| 比べる条件 | 取り組みやすさを考える側 | 向かない可能性を考える側 | 研究で扱った比較 |
|---|---|---|---|
| 力と課題の関係 | 難しさが本人の力に合わせられる課題 | 同じ失敗を繰り返す課題 | 難しさを調整する競争ゲームと通常のゲーム |
| 勝敗を決める単位 | チームとして取り組む形 | 個人の勝敗が気になる状況 | チーム対抗・個人競争・競争なし |
| 失敗した後 | 課題の誤りを扱える状況 | 失敗が自分全体の評価につながる状況 | 競争あり・なしのタイピング講座 |
Becker ほか(2025)は、ドイツの中等学校で、本人とクラスそれぞれの競争心と、ストレス・不安との関係を調べました。通常の教室で紙の質問紙に回答してもらう横断調査で、本人の水準でもクラスの水準でも、競争心の強さはストレス・不安の強さと関連しました。学力についても個人とクラスの両方の水準でストレス・不安との関連を扱い、点以外の経験を測定の中心に置いています。
ライバルとの勉強を家庭で確かめる手順
家庭では、競う相手を新しく決める前に、前回の自分と比べられる記録を用意します。点だけを写すのではなく、どの種類の問題を解けたか、どこで止まったかを答案に残します。同じ点でも、以前は手を付けられなかった問題に進めた場合と、得意だった問題を急いで間違えた場合とでは、次に確かめたい内容が変わります。自分の変化を記録する欄と、勝ったか負けたかを話す欄を分ける形なら、相手の結果に埋もれずに学習内容を振り返れます。
勝敗を話題にする場合は、負けた後にどんな話をするかも先に決めます。たとえば「次は誰に勝つか」だけで会話を終えず、解けなかった箇所や、説明してほしい問題へ話を戻します。本人がまだ勝敗の話をしたくないときは、その場で感想を言わせず、後で答案を開ける時を選びます。相手との力の差が大きく、取りかかる前から苦しくなるようなら、その相手を比較の中心に置くことをやめ、課題自体の難しさを見直します。
塾で確かめる項目も、競争があるかという質問だけで終わらせず、実際の授業の進め方に沿って並べます。見学や説明で聞けた内容と、まだ聞いていない内容を分けてメモします。競争を楽しむ子にも負担に感じる子にも、以下の項目なら同じ形で質問できます。
記録を見直すときは、子どもの説明を聞き、解けた内容と負担の変化をそれぞれ書き留めます。気分の落ち込みや眠りの乱れが続くなら、学校の先生やスクールカウンセラー、医療機関に相談します。競争を続けるか休むかを決める際には、点の増減だけで会話を打ち切らず、負けた後も質問や直しに戻れているかを確かめます。まず前回の答案との違いを確かめ、次に勝敗の後に残った困りごとを聞き取ります。
よくある質問
競争が苦手なら、個別の授業を選ぶべきですか
授業の人数と競争の強さは別の軸です。「協力して達成する課題」の節で扱った目標の組み方は、個別指導か集団指導かという区分とは違います。大勢で学ぶ授業でも何を達成目標にするかは異なり、個人で進める課題にも他者と比べる要素は入り得ます。授業の呼び名だけでは、子どもがどの場面で誰と比べられるのか、質問をする時間があるのかまでは決まりません。
子どもが競争を楽しんでいるなら、心配はいりませんか
楽しいという感想は本人の経験を知る材料ですが、それだけで活動全体を説明しきるものではありません。「不安と失敗後の反応」の節では、課題中の気持ちと、失敗後に自分をどう捉えるかを別々に扱っています。また、相手と競うこと自体が好きなのか、チームで取り組むところが好きなのかでも、楽しさの中身は違います。「好きな子」「苦手な子」という分類だけで固定する問いではありません。
点が上がったら、ライバルのおかげと考えてよいですか
手順の節で残す答案の記録は、子どもにどんな変化があったかを知るためのものです。前後の点には、問題の内容や難しさ、勉強した範囲の違いも関わるため、点の差だけで原因を特定する比較とは異なります。ライバルがいた時期に伸びたという記録と、その相手がいたから伸びたという説明の間には距離があります。本人の励みになった経験を受け止めることと、成績が変わった理由の判定は分けて考えられます。
この記事の限界
測り方には、学校の雰囲気を質問紙で尋ねる調査と、授業の競争の形を変えて課題の成果を比べる試験があり、同じ競争を測っているわけではありません。塾に特定のライバルがいること自体の効果を試した研究は見つかっておらず、学校の環境やゲーム形式の競争が手がかりです。とくに語彙やタイピングの課題で得られた成果と、長期にわたる学校の成績の伸びでは、測定する内容と時間の幅が違います。
ここで扱った対象は韓国・中国・香港・ドイツなどの生徒や多国籍の研究で、授業の仕組みや課題の条件にも幅があります。採用した研究には日本の小中高生を対象に確かめたものがなく、仲の良い競争相手と重圧になる相手の境目も未測定です。
参考文献
- Liu ほか. Impact Study of the Learning Effects and Motivation of Competitive Modes in Gamified Learning. Sustainability. 2022;14(11):6626.
- Rudolf ほか. School climate, academic performance, and adolescent well-being in Korea: The roles of competition and cooperation. Child Indicators Research. 2023;16(3):917-940.
- Chen ほか. Competitive traits versus (perceived) competitive climates: Disentangling their effects on adolescents’ academic and psychological outcomes. Personality and Individual Differences. 2025;236:112992.
- Yang ほか. Balancing cognitive complexity and gaming level: Effects of a cognitive complexity-based competition game on EFL students’ English vocabulary learning performance, anxiety and behaviors. Computers & Education. 2020;148:103808.
- Roseth ほか. Promoting early adolescents’ achievement and peer relationships: The effects of cooperative, competitive, and individualistic goal structures. Psychological Bulletin. 2008;134(2):223-246.
- Li ほか. Relations Between Class Competition and Primary School Students’ Academic Achievement: Learning Anxiety and Learning Engagement as Mediators. Frontiers in Psychology. 2022;13:775213.
- Lam ほか. The effects of competition on achievement motivation in Chinese classrooms. British Journal of Educational Psychology. 2004;74(2):281-296.
- Becker ほか. Stress and anxiety in schools: a multilevel analysis of individual and class-level effects of achievement and competitiveness. Frontiers in Education. 2025;9:1519161.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒、講師が一人の生徒に付きっきりの完全1対1で、大学教員や東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生などが教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
競争が苦手なら、個別の授業を選ぶべきですか
授業の人数と競争の強さは別の軸です。「協力して達成する課題」の節で扱った目標の組み方は、個別指導か集団指導かという区分とは違います。大勢で学ぶ授業でも何を達成目標にするかは異なり、個人で進める課題にも他者と比べる要素は入り得ます。授業の呼び名だけでは、子どもがどの場面で誰と比べられるのか、質問をする時間があるのかまでは決まりません。
子どもが競争を楽しんでいるなら、心配はいりませんか
楽しいという感想は本人の経験を知る材料ですが、それだけで活動全体を説明しきるものではありません。「不安と失敗後の反応」の節では、課題中の気持ちと、失敗後に自分をどう捉えるかを別々に扱っています。また、相手と競うこと自体が好きなのか、チームで取り組むところが好きなのかでも、楽しさの中身は違います。「好きな子」「苦手な子」という分類だけで固定する問いではありません。
点が上がったら、ライバルのおかげと考えてよいですか
手順の節で残す答案の記録は、子どもにどんな変化があったかを知るためのものです。前後の点には、問題の内容や難しさ、勉強した範囲の違いも関わるため、点の差だけで原因を特定する比較とは異なります。ライバルがいた時期に伸びたという記録と、その相手がいたから伸びたという説明の間には距離があります。本人の励みになった経験を受け止めることと、成績が変わった理由の判定は分けて考えられます。