- 注意や記憶などの課題では改善を示す研究があり、学業成績とは分けて読む必要があります。
- 学業成績には小さな効果を示す集計と、確かな効果を示さない集計があります。
- 指導者の経験や、普段の教育を含む比較相手の違いが、結果を読むうえで重要です。
- 心の状態がわずかに悪い方向へ動いた生徒もおり、全員に同じ練習を続けさせる根拠にはなりません。
マインドフルネスの授業は子の集中を変えるか|学校の瞑想の研究と学習習慣
昇降口で靴を履き替えながら、子が授業で静かに呼吸に注意を向けた話をしています。「学校でしている練習を家でも続けたら、宿題に集中できるようになりますか」と保護者は尋ねます。マインドフルネスは、いまの呼吸や感覚に注意を向ける練習です。静かに座っている姿を見れば、勉強にも良さそうだと感じるかもしれません。
学校のマインドフルネスは注意や行動を調整する力を改善する研究がありますが、成績への効果は小さいか、確かな差が出ていません。注意の課題がうまくできたことと、教科の知識が身についたことは別です。また、本人が落ち着いたと感じることと、周りから見て静かにしていることも、同じ結果としては扱えません。研究の結論が違って見える背景には、こうした測るものの違いがあります。
学校の授業には、指導する人、集団で取り組む時間、普段の教育との組み合わせがあります。家で短く試すときとは、その条件が違います。以下では、良い結果を示した研究と、差が出なかった研究を比べ、最後に本人の負担と宿題への取りかかりを見直す手順をまとめます。
要点
- 注意や記憶などの課題では改善を示す研究があり、学業成績とは分けて読む必要があります。
- 学業成績には小さな効果を示す集計と、確かな効果を示さない集計があります。
- 指導者の経験や、普段の教育を含む比較相手の違いが、結果を読むうえで重要です。
- 心の状態がわずかに悪い方向へ動いた生徒もおり、全員に同じ練習を続けさせる根拠にはなりません。
マインドフルネスが子供に及ぼす効果は、何を測った値か
学校で瞑想を取り入れれば、気持ちが落ち着き、注意が続き、そのまま点数も上がるという期待があります。しかし研究では、その流れの各部分を別々に測っています。注意とは、必要なものに意識を向ける働きです。実行機能とは、気持ちや行動を切り替え、計画して調整する力です。学業成績は教科の学習成果であり、注意や実行機能の測定とは区別されます。
Zenner ほか(2014)は、小学校から高校までの学校で行われた研究を、メタ分析という、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法で調べました。練習した組と比較する組の差を表す効果量は、全体で g = 0.40、注意・記憶などの認知の成績では g = 0.80でした。効果量は、差の大きさを成績などのばらつきを物差しにして表した数です。点数が同じ割合だけ増えたという意味ではありません。
同じ研究では、感情の問題や第三者による評価には、偶然の揺れだけでは説明しにくい差である「統計的に有意な差」がありませんでした。著者は認知の成績やストレスからの回復への可能性を認めつつ、研究間のばらつきが大きく、人数の少ない研究が多いと注意しています。注意・記憶で大きめの差が出た結果と、研究の規模や測り方への懸念は、同じ報告の中にあります。
認知の課題の結果を「成績が伸びた」と言い換えると、この区別が消えてしまいます。第三者の評価で差が出なかった点も、課題の得点と日常に見える行動が別の測定であることを示しています。出発点となるこの分析には期待を支える結果がありますが、全領域で一様に改善したという結論ではありません。
全体の小さな効果と、無作為に分けた試験の結果
Klingbeil ほか(2017)は、子ども・若者を対象にした76研究、6121人の結果をまとめました。比較する組を置いた研究の全体の効果は g = 0.322で、小さなプラスの結果でした。対象には学校以外で行われた取り組みも含まれています。学校の授業だけを取り出して、その成績への効果を表した数ではありません。
この分析では、学校で行ったかどうかや実施量は、研究の質を考慮すると効果と関係しませんでした。実施量と効果の結びつきが残らないため、練習を増やすほど良いという説明には慎重さが要ります。また、開始前と終了後を比べる研究と、別の組を置いて比べる研究では、答えられる問いが違います。前後の変化だけなら、練習以外の授業や時間の経過も一緒に含まれるからです。
Mettler ほか(2023)は、くじ引きで組を分けて比べる無作為化比較試験に絞り、46研究を集めました。就学前から大学生までを対象とし、プログラム終了時の比較では、学業成績への効果は小さく、注意への効果は小〜中でした。始める前から意欲の高い人だけが練習を選ぶような偏りを抑えた比較でも、注意には改善の可能性が残ったという結果です。
ただし、同じ分析で対人スキルや学校での行動などには差がありませんでした。効果があったプログラムは、マインドフルネスの経験がある外部の指導者が行ったものに限られました。無作為に分けた試験という強みがあっても、対象の年齢や指導の条件は広く、すべての授業が同じように働いたわけではありません。ここでの小さな効果は、こうした異なる取り組みを集めた全体の結果として読む値です。
成績の結果がそろわない理由を、対象と比較から読む
Maynard ほか(2017)は、主に北米の小中高生を調べた研究を見直しています。集めた61研究のうち、無作為化試験と、無作為ではないものの比較できる組を設けた準実験の35研究をメタ分析に使いました。認知や社会情緒、つまり気持ちや人との関わりには小さな効果がありましたが、学業成績と行動には有意な効果がありませんでした。研究の質は中〜低いものが多く、著者は学校への広い導入に慎重な姿勢を示しています。
これは先ほどの、成績に小さな効果を見いだした分析と同じ結論ではありません。ただし、Mettler ほか(2023)は就学前や大学生も含み、無作為化試験に限定しています。Maynard ほか(2017)は小中高生が対象で、準実験も含めています。対象と研究の選び方が違うため、論文の新しさだけで結論を選ぶと、比べている集団の違いを見落とします。
さらに、比較する組が何をしていたかも重要です。新しい練習を加えた組と、別の教育的な活動を続けた組の差は、その活動に上乗せする効果を問います。単に開始時より良くなったかを問う比較とは、問いの立て方が違います。下の表では、注意、成績、気分を分け、それぞれの研究での比較を並べています。
| 測った領域 | 研究で示された結果 | 比べた相手・対象 |
|---|---|---|
| 注意・実行機能 | 注意の改善や、質の高い研究で実行機能の改善 | 比較群を置く試験など。学校の子どもを扱うレビューと、大学生まで含む分析があります |
| 学業成績 | 小さな効果を示す分析と、有意な効果がない分析 | 無作為化試験の対照群との比較、小中高生の無作為化・準実験の比較です |
| 気分・心の状態 | 幸福感の結果は一定せず、一部の生徒ではわずかに悪い方向 | 英国の学校単位の試験では、通常の心の教育と比較しています |
指導者と授業の中身は、結果のどこに関わるか
Phan ほか(2022)は、学校で行われた77研究、12,358人の結果を、研究の設計の質に沿って評価しました。対象は5大陸にわたっています。最も質の高い証拠では、注意や実行機能、人を助けるような行動に改善が見られました。一方、幸福感の結果は研究によって異なり、気分の落ち込みへの効果はありませんでした。
このレビューは、全体を同じ重さで平均するだけでなく、どの程度信頼できる設計で結果が得られたかを見ています。質の高い研究にも注意などの改善がある点は、期待を残す理由です。同時に、幸福感の結果がそろわないことから、頭の働きの改善と気分の改善をまとめて扱うと、研究の結論が曖昧になります。
著者は、別の活動を行う比較群、複数の測り方、終了後の追跡を備えた厳密な研究を求めています。別の活動を行う組は「能動的な対照群」と呼ばれ、活動に参加して大人の関心を受けることなども含めて比較する役割があります。複数の測定を使えば、本人の感じ方と課題のできを別々に調べられます。追跡を行うと、授業が終わった時点の差と、その後にも続く差を区別できます。
指導者の経験による違いを示したのは、前の節で扱ったMettler ほか(2023)の分析です。経験のある外部の指導者が行ったプログラムで効果が見られたという結果は、「マインドフルネス」という活動名だけでは授業の条件を表しきれないことを示します。Phan ほか(2022)の質の評価と併せると、問いは「実施したか」から「どんな比較と測定で改善を捉えたか」へ具体化します。指導者を変えれば同じ結果になるかという点も、授業の中身と切り離さずに読む必要があります。
全員に同じ授業を行った大規模試験で起きたこと
Montero-Marin ほか(2022)は、英国の中等学校84校、11〜13歳の8376人が参加した試験を、どの生徒にどう働いたかという観点で詳しく分析しました。学校ごとに無作為に組を分け、マインドフルネスの授業と、通常の心の教育を比べています。相手の学校も、気持ちや人との関わりを扱う教育をしていました。新しい授業の有無だけでなく、既にある教育に比べて良いかを確かめる試験です。
この分析では、心の不調の恐れがある生徒で、気分の落ち込みの恐れと幸福感がわずかに悪い方向でした。差は、臨床上の意味を持つほどの大きさではないとされています。それでも、平均の良い結果を期待して全員に同じ授業を行う際には、違う反応をする生徒がいるという論点が残ります。これは研究内で分けた集団の結果であり、読者の子を分類するための説明ではありません。
同じ分析では、マインドフルネスの技能や実行機能が伸びた生徒は、その後の心の状態も良い傾向でした。しかし授業そのものは、それらの技能を十分に教えられませんでした。技能が伸びた生徒の経過と、授業を導入した組全体の効果は別です。前者だけを取り上げて授業が有効だったと判断すると、実施した教育の評価を取り違えます。
著者の結論は、思春期の初めの生徒に、この形の授業を一律に行うことを勧めないというものです。測ったのは心の健康で、学業成績は測っていません。したがって、この試験は成績が下がった証拠ではなく、学校で広く行うときの効果と、生徒による反応の違いを考える材料です。注意の課題で良い結果が出た研究とも、測った領域を分けて位置づけられます。
家庭で短く試すなら、嫌がる様子と取りかかりを記録する
家で続けるかは、本人が望んでいるかを出発点にします。学校で取り組んだからといって、自動的に家庭の宿題へ追加する必要はありません。短い練習を試すなら、学校で何をしているかを本人に聞き、嫌な感じがしないかを先に確かめます。研究の平均の効果を目標にして、練習時間を増やしたり、静かに座れたかを採点したりする進め方は避けます。
記録の期間は2週間とし、練習したかどうかと、その後の宿題の取りかかりを並べます。これは家庭で様子を振り返るために区切る期間で、効果が出るまでの日数を示したものではありません。「集中できた」という印象だけでなく、教材を開いた後に始められたか、何に困って手が止まったかを書くと、振り返る内容が具体的になります。宿題の難しさや疲れの様子も、同じ欄に添えておきます。
嫌がったり、落ち着かなさが増えたりする場合は、練習を止めてかまいません。気分の落ち込みや眠りの乱れが続くなら、学校の先生やスクールカウンセラー、医療機関に相談します。練習をしない日も、宿題で困っている点はそのまま聞き取れます。本人の負担と取りかかりの変化が別々に残っていれば、続けるか休むかを具体的に検討できます。
よくある質問
注意が良くなるなら、テストの点も上がりますか
注意の課題の改善と、学業成績の改善は別の結果です。成績を扱った節のとおり、小さな効果を示す分析がある一方、小中高生に絞った分析では確かな差が出ていません。研究によって対象年齢や比較の方法も違うため、注意への良い結果だけで点数の上昇を見込む根拠にはなりません。教科の学習成果を測った結果を独立して読む必要があります。
学校で行っていれば、家でも続けるべきですか
家庭での継続を必須とする結論は出ていません。学校のプログラムには指導者や集団での活動があり、家で短く行う練習とは条件が違います。家庭の手順の節では、本人が望む場合に負担と宿題への取りかかりを記録する形を示しました。成績を上げるための義務を追加することと、本人に合うかを見ながら試すことは、区別して進められます。
嫌がる子も、慣れるまで続けたほうがよいですか
嫌がる反応を乗り越えさせれば効果が出る、という根拠はありません。大規模試験を扱った節でも、生徒によって心の状態の変化が異なっています。そこで見られた差は小さなものでしたが、一律に続けさせる判断を支える結果ではありません。嫌がることを本人の努力不足と扱わず、負担が増えたら止めるという家庭の手順に戻れます。
この記事の限界
比べた相手は、通常の心の教育を行う組や研究ごとに設けた対照群で異なり、学校の授業に何を上乗せした効果なのかがそろっていません。研究の多くは人数が少なく、指導者や授業の中身もばらばらで、示される効果の大きさは研究の質によって大きく変わります。終了時の注意の課題、教科の成績、後の心の状態は測定の時期も対象も異なるため、同じ力の変化として一括りにはできません。
日本の小中高生の学校・家庭・塾を対象に同じ比較を行った研究は今回の範囲になく、海外の集団授業が根拠の中心です。家庭で親子が行う短い練習と宿題の集中を直接測った研究もなく、学校で見られた変化が家庭の習慣でも生じるかは確かめられていません。
参考文献
- Zenner ほか. Mindfulness-based interventions in schools-a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Psychology. 2014;5:603.
- Klingbeil ほか. Mindfulness-based interventions with youth: A comprehensive meta-analysis of group-design studies. Journal of School Psychology. 2017;63:77-103.
- Mettler ほか. Mindfulness-based programs and school adjustment: A systematic review and meta-analysis. Journal of School Psychology. 2023;97:43-62.
- Maynard ほか. Mindfulness-based interventions for improving cognition, academic achievement, behavior, and socioemotional functioning of primary and secondary school students. Campbell Systematic Reviews. 2017;13(1).
- Phan ほか. Mindfulness-based school interventions: A systematic review of outcome evidence quality by study design. Mindfulness. 2022;13(7):1591-1613.
- Montero-Marin ほか. School-based mindfulness training in early adolescence: what works, for whom and how in the MYRIAD trial? Evidence-Based Mental Health. 2022;25(3):117-124.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
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よくある質問
注意が良くなるなら、テストの点も上がりますか
注意の課題の改善と、学業成績の改善は別の結果です。成績を扱った節のとおり、小さな効果を示す分析がある一方、小中高生に絞った分析では確かな差が出ていません。研究によって対象年齢や比較の方法も違うため、注意への良い結果だけで点数の上昇を見込む根拠にはなりません。教科の学習成果を測った結果を独立して読む必要があります。
学校で行っていれば、家でも続けるべきですか
家庭での継続を必須とする結論は出ていません。学校のプログラムには指導者や集団での活動があり、家で短く行う練習とは条件が違います。家庭の手順の節では、本人が望む場合に負担と宿題への取りかかりを記録する形を示しました。成績を上げるための義務を追加することと、本人に合うかを見ながら試すことは、区別して進められます。
嫌がる子も、慣れるまで続けたほうがよいですか
嫌がる反応を乗り越えさせれば効果が出る、という根拠はありません。大規模試験を扱った節でも、生徒によって心の状態の変化が異なっています。そこで見られた差は小さなものでしたが、一律に続けさせる判断を支える結果ではありません。嫌がることを本人の努力不足と扱わず、負担が増えたら止めるという家庭の手順に戻れます。