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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年11月5日

担任の当たり外れは成績にどこまで響くか|教師の質の研究と保護者

夕暮れの玄関で、子どもがかばんからテストを取り出して親に渡します。「担任と合わない年は、成績も下がってしまうのでしょうか」と、答案を前に疑問が浮かびます。点の下がった理由を先生との相性に求めたくなる一方、子どもの話を聞かずに気にしすぎだと済ませるのも違う気がします。塾で補うのか、学校での様子を見守るのか、判断を急ぎたくなる問いです。

この記事の要点
  • 教師の違いを調べる研究は、学校間の比較、同じ学校の学級間の比較、同じ教師の年をまたいだ比較で、問う内容が異なります。
  • 点の高さと点の伸びは別の指標です。生徒の点の伸びから教師の働きを推定する方法にも、学級の偶然の違いが混じります。
  • 学力テスト、本人が答える教室での気持ち、欠席などの記録は、それぞれ別の側面を測ります。
  • 対応を考える際は、学習のつまずきと学校で困った出来事を分け、学校に確かめたい内容を具体的にします。

担任の当たり外れは成績にどこまで響くか|教師の質の研究と保護者

夕暮れの玄関で、子どもがかばんからテストを取り出して親に渡します。「担任と合わない年は、成績も下がってしまうのでしょうか」と、答案を前に疑問が浮かびます。点の下がった理由を先生との相性に求めたくなる一方、子どもの話を聞かずに気にしすぎだと済ませるのも違う気がします。塾で補うのか、学校での様子を見守るのか、判断を急ぎたくなる問いです。

教師による差は学力や教室での過ごし方に表れるという報告がありますが、短い期間の点数だけで個々の教師の良し悪しを決めると誤りやすいです。研究でいう教師の質は、人柄の好き嫌いや保護者の評判とは別の測り方をします。教わった生徒の点がどれだけ伸びたかを調べる方法もあれば、学ぶ自信や欠席などを調べる方法もあります。しかも、異なる教師を比べる際に、生徒や学級の違いをどう扱うかで推定の確かさが変わります。

担任との関係への心配には、説明についていけないという学習上の問題と、教室で質問しづらいという過ごし方の問題が重なることもあります。両方を同じ「当たり外れ」という言葉に入れると、何を変えたいのかが曖昧になります。以下では、教師の働きを測る比較の中身を見たうえで、子どもの訴えを学校へ伝えるための手順につなげます。

要点

  • 教師の違いを調べる研究は、学校間の比較、同じ学校の学級間の比較、同じ教師の年をまたいだ比較で、問う内容が異なります。
  • 点の高さと点の伸びは別の指標です。生徒の点の伸びから教師の働きを推定する方法にも、学級の偶然の違いが混じります。
  • 学力テスト、本人が答える教室での気持ち、欠席などの記録は、それぞれ別の側面を測ります。
  • 対応を考える際は、学習のつまずきと学校で困った出来事を分け、学校に確かめたい内容を具体的にします。

担任の当たり外れを調べるには、何と比べるか

「よい先生なら成績が上がる」という話を調べるには、まず成績の意味を決めます。すでに点が高い子を多く教えている教師と、学習につまずいている子を多く教えている教師を、受け持った学級の平均点だけで並べると、出発点の違いも評価に入ってしまいます。そこで研究では、生徒の点の伸びから教師による差を測る「付加価値」という方法が使われます。これは、保護者への人気を集計する方法でも、教員が自分で授業のできを採点する方法でもありません。

Rivkin ほか(2005)は、米国テキサスの追跡データを使い、同じ学校の中の違いから教師の効果の下限を推定しました。学校同士の差をすべて教師の差に含める方法を避けても、読解と数学に大きな教師の効果があるという結果でした。学歴や経験など、外から見える教師の特徴では、その質の違いはあまり説明できませんでした。測定した生徒の伸びと、履歴に書ける資格や経験は、ここでは別々に調べる対象です。

Nye ほか(2004)は、教師と子どもを学級へ無作為に割り当てた実験のデータを分析しています。無作為の割り当てとは、くじ引きのように配属を決め、特定の特徴を持つ子どもが特定の教師に集まる偏りを減らす方法です。同じ学校内の教師の違いを調べると、読解より数学で差が大きく、家庭の経済水準の低い学校では高い学校より教師間の差が大きい結果でした。比較の単位は学校内の教師であり、経済水準による違いも学校を単位とした結果です。

同じ「教師を比べる」という言い方でも、比較する相手には次のような違いがあります。学校の中で担当が異なる生徒を比べる場合と、同じ教師を別の年に測る場合では、後者に学級の入れ替わりが入ります。さらに、点以外の指標まで見る場合には、何を成果と呼ぶかも変わります。

比較の組み方 比べる相手 確かめる問い
同じ学校の中で比べる 担当する教師が異なる生徒 学校間の違いを使わずに教師による差が出るか
学級へ無作為に割り当てる 配属を無作為に決めた教師と子ども 生徒の集まり方の偏りを減らしても差が出るか
年をまたいで比べる 同じ教師の別の年の推定値 測った働きが翌年にも安定しているか
点以外の成果と比べる 点の伸びと、気持ちや行動の変化 成果の種類を変えても教師の評価が重なるか

年ごとの点の伸びには、測定の揺れが入る

McCaffrey ほか(2009)が調べたのは、米国フロリダ州の小中学校の数学の教師です。同じ教師の付加価値を年ごとに比べた相関は、小学校で0.2〜0.5、中学校で0.3〜0.7でした。相関は、ある年に高い値だった教師が別の年にも高い値になりやすいかという、並び方の重なりを示す指標です。点数そのものの差や、生徒の正答率を示す数字とは意味が違います。

この比較では、教師の名前が同じでも、測定に使う生徒の点は年ごとに変わります。同じ人の持続する働きと、その年に集まった生徒の点のばらつきが、推定値の中で重なります。研究では、測られた教師間の違いの多くが、生徒の点の偶然のばらつきによる誤差だとされています。「今年は高く、翌年は低い」という推定の動きを、そのまま教える力の変化と扱うと、誤差まで教師の変化に数えてしまいます。

McCaffrey ほか(2009)は、2年分の推定を平均すると、その後の教師の働きを予測する力が大きく改善すると報告しました。比較しているのは、単年の推定を使う場合と、年をまたいだ情報を合わせる場合です。年ごとに違う生徒から得た結果を重ねる点に、測り方の変更があります。担当する子の得点をそのまま足し合わせる方法とは異なり、教師の働きについて計算した推定値を平均しています。

この研究の対象教科は数学なので、同じ学級のすべての教科をまとめて評価する設計とは異なります。また、比べているのは教師ごとの値であり、親が子どもの答案を前回と見比べる作業とも単位が違います。学級に属する生徒の記録を使う測定と、ある子の困りごとを見つける記録は、集める情報も比較する相手も異なります。

過去の点や身長まで変わるなら、測り方を点検する

教師が教える前の点まで、その教師の影響として計算されるなら、推定の前提を疑う理由があります。Rothstein(2010)は、米国ノースカロライナのデータで、付加価値の測り方にこの点検を行いました。使われていた計算方法では、5年生の教師が、その生徒の4年生時点のテストの伸びに大きく「効いた」という結果が出ました。ここで比べたのは担当した後の伸びだけでなく、まだ担当していない時期の伸びです。

時間の順序を逆にしても効果らしい数字が出る点が、この検証の焦点です。未来に担当する教師が過去の答案を書き換えるわけではないので、得られた数字には教師の指導以外の違いが入り込んでいます。教師に生徒が割り当てられる際の偏りなどを十分に扱えるかが、計算方法の前提に関わります。同じ分析では、個々の教師の通常の付加価値の指標は速く薄れ、長期的な効果との関連も弱いと報告されました。

別の点検をしたBitler ほか(2021)は、ニューヨーク市のデータを使い、数学や読解と並べて生徒の身長に付加価値の計算を当てました。身長にも学力とほぼ同じ大きさの教師の「効果」のばらつきが出ましたが、持続する効果と一時的な学級の違いを分ける計算方法では、身長への効果はゼロになりました。身長を調べたのは、教師の学力指導が直接変えるはずのないものにも、効果らしい値が出るかを調べるためです。学力の指標を身長に替えるだけでなく、計算の組み方も替えて比較しています。

この検証で研究者が原因として挙げているのは、年ごとの学級と教師の組み合わせによる変動です。よく使われる計算方法では、この一時的な変動を、本当に持続する教師の効果から分けにくいと説明しています。反対に、それらを分けた方法は、身長について理論上予想される結果を返しました。検証の中で問われているのは、数字が出るかどうかだけでなく、変わるはずのない対象と変わりうる対象を計算が見分けられるかという点です。

点を上げる働きと、学び続ける支えは同じか

Blazar ほか(2017)は、小学校高学年で、数学の自己効力感やクラスでの幸福感、行動にも教師による大きな効果を報告しています。自己効力感とは、自分はその課題に取り組めるという感覚で、この研究の気持ちや行動の指標は子ども自身の回答です。テストの点を上げるのが上手な教師が、態度や行動も同じように改善するとは限らない結果でした。正解の数を採点する試験と、子どもが自分の経験を答える調査を使い、教師の働きを異なる側面から捉えています。

本人の回答で測ると、学校の記録だけでは表しにくい教室での感じ方を扱えます。一方、欠席したかどうかを記録から拾う方法と、教室でどう感じているかを尋ねる方法は、同じ行動や気持ちを同じ精度で数える仕組みではありません。たとえば幸福感の回答と数学の答案は、回答する内容も評価の方法も違います。点以外の項目を加える際にも、何のデータを集めた結果かが重要です。

Jackson(2018)は、欠席、停学、成績、留年という学校での記録を、点以外の力を捉えるための指標として扱いました。テストへの教師の効果と、行動への効果の相関は弱く、行動への効果のほうが高校卒業などの長期的な結果をよく予測しました。ここでの「点以外」には、本人が答える感情だけでなく、学校生活の経過が記録として残る事柄が入っています。点と行動それぞれへの働きを、卒業などの後の結果と結びつけて比べた分析です。

大人になってからの結果まで追ったChetty ほか(2014)は、学区の記録と税の記録を結びつけました。点を伸ばす力が高い教師に担当された子どもは、大学へ進むことが多く、収入も高く、十代で子どもを持つ割合は低いという関連が報告されています。比べた相手は、点を伸ばす力が異なる教師に教わった子どもです。学校の中のテストだけで分析を終えず、その後の生活の記録を結んだ点に特徴があります。

この長期の分析と、前の節の過去の点を使った点検では、比較する時間の向きが逆です。将来の記録につなげる分析は、その後の結果と教師の働きが結びつくかを問います。担当前の点を調べる分析は、指導を受ける前からあった違いが推定に残っていないかを問います。卒業や収入を予測する指標を探す作業と、教師への割り当ての偏りを点検する作業には、それぞれ違う比較相手が使われています。

家庭で確かめる手順は、子どもの困りごとから始める

「担任が合わない」という言葉を聞いたら、最初に、何の時間に何が起きたのかを子どもの言葉で残します。説明が速くて途中から追えないのか、解けなかった問題を聞けないのか、注意された言葉が気になるのかで、学校に確かめる内容は変わります。話したくない子に詳しい説明を繰り返し求めるのは避け、本人が伝えたい部分と、親が答案から見つけた事柄を別に書きます。子どもの気持ちを聞く時間を、教師を採点する聞き取りにしないようにします。

学習上の困りごとには、具体的な問題を添えます。たとえば、式までは書けるが途中の計算で止まる場合と、問題の指示を読み取れず白紙になる場合では、依頼したい説明が違います。答案の点が下がったことだけで話を始めず、本人が困っている箇所を示せるようにします。反対に、授業中に質問することへのためらいが中心なら、問題集を増やす前に、質問する機会や方法を学校の先生に尋ねます。

学校へ伝える際には、「先生との相性が悪いようです」という評価だけを渡さず、困った場面と確かめたい内容を対にします。説明の途中で止まるなら、どこまで理解していると学校側は見ているかを聞きます。質問しづらいなら、授業中以外に聞ける機会があるかを確かめます。保護者が用意するメモは、次の項目を目安にできます。

塾で補うか待つかも、この整理に沿って決めます。特定の単元の説明や練習が不足しているなら、学校で補える内容と、学校外で手助けを求めたい内容を書き分けます。教室でのやりとりに困っている子へ、学習量だけを増やす対応は目的に合いません。学校と対応を試している間も、質問できたか、途中で止まった問題を説明できるようになったかなど、決めた項目を追います。

学校での支え方と学校外の学習を同時に大きく変えると、どの対応の後に困りごとが動いたかを追いにくくなります。待つ場合も期限を決めずに翌年度へ持ち越すのではなく、対応を試した後に話し直す機会を設けます。点の上がり下がりに加え、本人が困っていた場面の変化をメモへ足します。質問できる場面が決まったら、その後に聞けた内容を親子の記録に残します。

よくある質問

担任の評判がよくないと聞いたら、すぐ学習環境を変えますか

評判だけで変更を決めず、手順の節に沿って、子ども自身がどの場面で困っているかを確かめます。他の家庭の話と、わが子が授業で経験した内容を分けると、学校へ聞くことを絞れます。周囲が心配していても本人は説明を理解できている場合と、本人が困っているのに周囲からは好評な場合では、対応する課題が異なります。噂を確かめることと、今の子どもの学習を支えることを混ぜずに進めます。

点が下がっていなくても、子どもの訴えを学校へ伝えてよいですか

伝える理由を成績の低下が起きるまで待つ必要はありません。点以外を扱った節で見たように、学力の測定と教室での経験は別の項目です。訴えがあるときは、何を言われたか、どの活動で困ったか、本人がどんな対応を望んでいるかを、話せる範囲で具体化します。学校からも様子を聞き、子どもが伝えた内容と照らし合わせながら、次に確かめる事柄を決めます。

記録は、学校の先生を評価するために渡すものですか

ここで提案した記録の目的は、対応を頼みたい箇所を共有することです。教師の働きを計算する研究とは違い、親子のメモには学級全体や別年度との比較がそろっていません。教師同士の順位を付ける資料として扱うより、学校で試す支え方を話す資料にします。本人の言葉と答案の様子を分けて残せば、面談の後にも、何について話し合ったかを振り返れます。

この記事の限界

比べた相手には、同じ学校で教師が異なる生徒、同じ教師の別年度の生徒などがあり、教師の違いの測定でも比較の条件はそろっていません。日本の学校の担任による差を確かめた研究は採用した文献になく、米国の数学の教師など、学級担任とは役割が異なる教科の教師も対象です。学力の追跡、本人の回答、学校生活や成人後の記録では測る対象と期間が違い、担任との相性が何点に響くかという数値は示せません。

研究の手順や結果の説明は抄録を土台としており、各校の授業の進め方や、生徒への割り当ての細部までをそろえた比較には至っていません。教師の差と家庭の影響を同じ物差しで比べた数字は抄録から取れないため、どちらの影響が大きいかという順位は付けられません。

参考文献

  1. Rivkin ほか. Teachers, Schools, and Academic Achievement. Econometrica. 2005;73(2):417-458.
  2. Nye ほか. How Large Are Teacher Effects? Educational Evaluation and Policy Analysis. 2004;26(3):237-257.
  3. McCaffrey ほか. The Intertemporal Variability of Teacher Effect Estimates. Education Finance and Policy. 2009;4(4):572-606.
  4. Rothstein. Teacher Quality in Educational Production: Tracking, Decay, and Student Achievement. Quarterly Journal of Economics. 2010;125(1):175-214.
  5. Bitler ほか. Teacher Effects on Student Achievement and Height: A Cautionary Tale. Journal of Research on Educational Effectiveness. 2021;14(4):900-924.
  6. Blazar ほか. Teacher and Teaching Effects on Students’ Attitudes and Behaviors. Educational Evaluation and Policy Analysis. 2017;39(1):146-170.
  7. Jackson. What Do Test Scores Miss? The Importance of Teacher Effects on Non–Test Score Outcomes. Journal of Political Economy. 2018;126(5):2072-2107.
  8. Chetty ほか. Measuring the Impacts of Teachers II: Teacher Value-Added and Student Outcomes in Adulthood. American Economic Review. 2014;104(9):2633-2679.

通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。

  • 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
  • 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
  • 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
  • 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人

このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒、講師が一人の生徒に付きっきりの完全1対1で、大学教員や東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生などが教えます。アルバイト講師はいません。

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よくある質問

担任の評判がよくないと聞いたら、すぐ学習環境を変えますか

評判だけで変更を決めず、手順の節に沿って、子ども自身がどの場面で困っているかを確かめます。他の家庭の話と、わが子が授業で経験した内容を分けると、学校へ聞くことを絞れます。周囲が心配していても本人は説明を理解できている場合と、本人が困っているのに周囲からは好評な場合では、対応する課題が異なります。噂を確かめることと、今の子どもの学習を支えることを混ぜずに進めます。

点が下がっていなくても、子どもの訴えを学校へ伝えてよいですか

伝える理由を成績の低下が起きるまで待つ必要はありません。点以外を扱った節で見たように、学力の測定と教室での経験は別の項目です。訴えがあるときは、何を言われたか、どの活動で困ったか、本人がどんな対応を望んでいるかを、話せる範囲で具体化します。学校からも様子を聞き、子どもが伝えた内容と照らし合わせながら、次に確かめる事柄を決めます。

記録は、学校の先生を評価するために渡すものですか

ここで提案した記録の目的は、対応を頼みたい箇所を共有することです。教師の働きを計算する研究とは違い、親子のメモには学級全体や別年度との比較がそろっていません。教師同士の順位を付ける資料として扱うより、学校で試す支え方を話す資料にします。本人の言葉と答案の様子を分けて残せば、面談の後にも、何について話し合ったかを振り返れます。