- Nicoletti ほか(2019)は、イングランドのきょうだい230,000人の記録で、上の子から下の子への正の成績の波及を確認しました。
- Altmejd ほか(2021)では、チリ・クロアチア・スウェーデン・米国で、下の子が上の子と同じ大学・学部に進む傾向がありました。
- 同研究では、上の子が大学を中退すると、その進路の波及は消えました。
- Qureshi(2018)では、上の子が経験の長い教師に教わると下の子の点も上がりました。
- Feinberg ほか(2003)は、きょうだいが違う道を選ぶことは争いを和らげる方法でありうるとしています。
- 今回の根拠には、同じ塾・同じ講師に通わせる効果を調べた研究はありません。
上の子が通う個別塾に下の子も通わせるか|きょうだいの学びが波及する研究
夕暮れの自宅の玄関で、下の子が上の子の塾のかばんを見ながら、同じ教室に通いたいと話します。きょうだいの学びを扱った研究には、上の子から下の子への成績や進路の波及を報告したものがあります。同じ講師に見てもらえれば安心だという気持ちと、下の子には別の希望もあるのではないかという迷いが並ぶ場面です。通いたい理由を聞く前に、上の子の経験だけで決めてよいのでしょうか。
Nicoletti ほか(2019)は、イングランドのきょうだい230,000人の記録で、上の子から下の子への統計的に有意な正の波及を確認しました。ただし、これは学校の成績の研究であり、同じ塾に通わせる効果を確かめたものではありません。上の子の経験は下の子に伝わりえますが、同じ塾を選ぶかは下の子自身の目的と希望を聞いて判断します。
ここでは、学校の成績、大学や学部の選択、思春期の家族関係を扱った研究を読みます。どの研究も、同じ塾や同じ講師に通わせる選択そのものの答えにはなりません。上の子の経験から参考にできることと、下の子について別に確かめることを分けて整理します。
要点
- Nicoletti ほか(2019)は、イングランドのきょうだい230,000人の記録で、上の子から下の子への正の成績の波及を確認しました。
- Altmejd ほか(2021)では、チリ・クロアチア・スウェーデン・米国で、下の子が上の子と同じ大学・学部に進む傾向がありました。
- 同研究では、上の子が大学を中退すると、その進路の波及は消えました。
- Qureshi(2018)では、上の子が経験の長い教師に教わると下の子の点も上がりました。
- Feinberg ほか(2003)は、きょうだいが違う道を選ぶことは争いを和らげる方法でありうるとしています。
- 今回の根拠には、同じ塾・同じ講師に通わせる効果を調べた研究はありません。
上の子の成績は下の子に伝わるのか
イングランドの行政データを使った研究が、この問いに一つの材料を出しています。Nicoletti ほか(2019)は、きょうだい230,000人分の教科ごとのテストの点を突き合わせました。上の子から下の子への正の波及が、統計的に有意な形で確認されました。この波及は、低所得の家庭と高所得の家庭の間にある学力差の一部を説明したとしています。
ここで測られたのは学校のテストの点であり、きょうだいが同じ塾に通った場合と別々の塾に通った場合の差ではありません。成績が波及するという結果は、同じ教室を選べば同じように伸びるという保証にはなりません。学校の成績について得られた結果と、これから選ぶ塾の効果を区別して読む必要があります。
学校の成績の結果を塾選びに使うときは、いったん問いを分けます。上の子が何を学んだかという問いと、下の子が今どこで困っているかという問いです。前者について詳しく知っていても、後者を聞いたことにはならないため、下の子の答案や希望も別に確認します。
波及の向きにも特徴があります。Nicoletti ほか(2019)では、上の子から下の子への影響が確認され、逆向きの波及は確認されませんでした。この結果から、下の子が上の子を手伝えば同じ効果があるなど、逆向きの働きまで想定することはできません。家庭での助言を作る際にも、報告された向きにとどめて読みます。
家庭では、上の子が塾で何を持ち帰ったかを具体的に聞くことはできます。たとえば、どの説明が役立ったか、どの課題では助けが必要だったかという記録です。これは成績の波及の経路を特定する作業ではなく、下の子の目的と照らすための情報集めです。上の子が良かったと言う教室の名前だけでなく、その経験の中身を話し合う材料にします。
上の子が選んだ進路を下の子は追うのか
進学先の選択にも、きょうだいの間の波及が報告されています。Altmejd ほか(2021)は、チリ・クロアチア・スウェーデン・米国で、大学の合格の境目を使った分析を行いました。境目のすぐ上と下を比べる方法で、上の子の進学先が下の子に与える影響を調べています。下の子のかなりの割合が、上の子と同じ大学・学部に進みました。
ただし、Altmejd ほか(2021)では、上の子が大学を中退すると、この影響は消えました。研究は、この結果から上の子の大学での経験が重要だと考えています。合格先の名前が伝わることだけで説明するのではなく、進学した後の経験にも目を向ける必要があるという読み方です。
チリ・クロアチア・スウェーデン・米国では、同じ向きの結果が出ました。ただし、調べられたのは大学や学部の選択です。国が違っても塾で同じ効果が起きる、あるいは中学受験にも同じ結果が出るという範囲まで確かめたわけではありません。
進学先を追うことと、学力が上がることも別の成果です。下の子が同じ大学を選んだという結果から、同じ授業を受ければ成績が伸びるとは言えません。塾について考える場面では、通いたいという希望の話と、学習上の課題の話を別々に聞くための区別になります。
上の子の進路が選択肢に入ることを、下の子の意思がない証拠と受け取る必要もありません。反対に、上の子と違う選択を望むことだけで、その希望が十分に検討されたとも決められません。研究の結果を本人の動機の説明に代えず、どこに魅力を感じ、何を確かめたいのかを本人に聞きます。上の子と同じかどうかに先立って、その選択の理由を言葉にするための確認です。
同じ塾・同じ講師に通わせた場合の研究はあるのか
今回の根拠には、同じ塾・同じ講師に通わせることを直接扱った研究はありません。学校のテストや大学進学の記録と、家庭が決める塾の選択とは、比べる対象が異なります。研究がある問いとない問いを混ぜないために、よくある選択理由と報告された成果を表に分けます。
| 同じ塾を選ぶ理由 | 研究で報告されたこと | 比較・測定の方法 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 上の子と同じ塾なら安心ですか | Nicoletti ほか(2019)は上の子から下の子への成績の波及を確認しました | 教科ごとのテスト記録 | イングランドのきょうだい |
| 上の子の進路を下の子も追いますか | Altmejd ほか(2021)では同じ大学・学部に進む傾向がありました | 大学の合格の境目の上下 | チリ・クロアチア・スウェーデン・米国 |
| 同じ講師なら同じように伸びますか | 今回の根拠に塾で確かめた研究はありません | 該当する比較なし | なし |
| 同じ道を選ぶほうが関係は良いですか | Feinberg ほか(2003)は分化が争いを和らげる方法でありうるとしました | 親子の温かさときょうだい関係の変化 | 米国の185家庭 |
同じ塾を選んだ場合の効果と呼ぶには、何と比べた差なのかを確かめる必要があります。上の子の点が以前より上がったという記録だけでは、下の子が別の教室を選んだ場合との差はわかりません。研究がないことを効果がないことと同一視せず、今回の資料ではその比較に答えられないと受け止めます。
家庭で上の子と下の子の点数を並べても、同じ塾に通う効果を取り出したことにはなりません。学年、学ぶ内容、通った時期が違う記録だからです。その比較から教室の優劣を決めるより、それぞれの子が取り組んだ内容と困りごとを分けて記録します。下の子の記録は、上の子への評価を再確認するためではなく、下の子の授業を相談するために使います。
同じ講師に頼めるか、教材は共通かといった運用上の疑問は、候補の教室で確認する項目です。その答えは授業の受け方を考える情報ですが、成績への効果を示した研究結果とは区別します。同じ講師が担当するとわかっても、下の子が必要とする説明や課題まで同じでよいとは決まりません。運用の条件と、本人に必要な学習の内容を別々に確認します。
上の子の教師の経験は下の子に届くのか
Qureshi(2018)は、米国ノースカロライナ州の学校記録を使い、教師の経験がきょうだいにどう届くかを調べました。上の子が経験の長い教師に教わると、下の子のテストの点も上がりました。逆に、下の子の教師の経験は上の子の点に影響しませんでした。研究は、保護者の行動の変化より、きょうだいどうしの直接の影響が重要だと解釈しています。
この結果は、学校の教師の経験に関するものです。上の子と下の子が同じ教師に習った場合の利点を、そのまま示した結果ではありません。下の子にも影響があったという部分だけを取り出し、同じ講師を指名すればよいという結論につなげないようにします。
教師の経験についての結果を読む際には、何を測ったかも残しておきます。この研究の結果はテストの点であり、下の子がその教師を好んだか、通いやすかったかという評価ではありません。経験年数の話だけで判断せず、下の子の目的と授業で確かめたい内容を別に用意します。
講師について家庭で聞けることとしては、上の子がどこで質問し、どの説明を受けたかがあります。それは下の子に同じ効果があることを証明する情報ではありません。それでも、下の子もその単元で困っているなら、同じような説明を相談できるかを尋ねる具体的な材料になります。
上の子の記録を参考にする場合にも、良かったという評価だけを渡さないようにします。扱った単元、本人が説明できるようになった内容、まだ助けが必要だった場面を分けます。そのうえで下の子の答案と希望を示し、授業の進め方を相談します。経験年数を学習上の相性の代わりにせず、相談する内容を具体化するための手順です。
きょうだいが違う道を選ぶことの意味
Feinberg ほか(2003)は、米国の主に白人の労働者・中流の185家庭で、思春期のきょうだいの関係を追跡しました。親と子の温かさがきょうだいの間で違っていくほど、きょうだいの関係は温かくなり、争いは減りました。研究は、きょうだいが互いに違う道を選ぶことが、争いや張り合いを和らげる方法でありうるとしています。
この結果は、違う道を選ぶことが関係を悪くするとは限らない、という程度の手がかりです。塾を分けた家庭と同じ塾を選んだ家庭を比べて、関係がどう変わるかを確かめたものではありません。同じ塾にしない選択の効果を、この研究を根拠に約束することはできません。
また、Feinberg ほか(2003)が扱ったのは、親子の温かさの違いと、きょうだい関係の変化です。別の教室の話が家庭で増えると争いが減るという仕組みを調べた研究としては読めません。家庭での話し方を考えるときは、研究で観察された関係と、これから試す声のかけ方を区別します。
対象は思春期のきょうだいがいる家庭で、幼い子の塾選びも同じように説明できるとは限りません。上の子と下の子が同じ道を選ぶべきかを、関係の良し悪しだけで決める材料でもありません。教室の希望、学習の目的、比べられることへの本人の受け止めを、それぞれ聞くための問いとして残します。
下の子が別の教室を希望したら、まずその理由を本人の言葉で聞きます。同じ教室を希望した場合も、上の子と一緒だからという理由のほかに、何を学びたいのかを確認します。どちらの答えでも、研究の結論に合わせて希望を言い直させる必要はありません。家族関係の研究を選択の正解にせず、本人が何を望むかを聞く姿勢につなげます。
兄弟で同じ塾に通わせるかを決めるときに確かめること
ここまでの研究を踏まえ、家庭で確かめる項目を整理します。研究が報告した学校の成績や進路の波及と、下の子の塾での経験は分けて扱います。次の項目は同じ塾を選ぶべきかを採点するものではなく、面談で話す内容を具体化するためのものです。
- 上の子がその塾で何につまずき、何ができるようになったかを、具体的に言えますか。
- 下の子が学びたい内容や、現在困っている単元はわかっていますか。
- 下の子は上の子と比べられることを、どう受け止めていますか。
- 同じ講師を希望する場合、担当や引き継ぎの見通しを確認しましたか。
- 下の子が通いたい理由と、保護者が安心する理由を分けて話せますか。
上の子の経験は、下の子の目的と照らして初めて、相談の材料になります。上の子が数学の文章題で助けられた場合でも、下の子の困りごとが英語の長文なら、確認したい授業内容は異なります。教室への総合的な評価だけで終えず、どの教科の何を相談するかまで書き留めます。目的が同じ場合も、本人が困っている問題は別に見せます。
比較については、下の子がつらいと言っているか、どんな場面で気になるかを聞きます。同じ教室に通うと比較が強まる、と先に決めつけるための問いではありません。担当の見通しについても、継続するかどうかだけでなく、変わる場合に何を引き継ぐかを尋ねます。通う本人の意思と、授業を続ける条件を別々に確かめるための項目です。
この確認項目は、研究で検証された判定表ではありません。答えの数で決めず、下の子が困りそうな項目を面談で確かめます。同じ教室を選んだ後も、本人の目的に合っているかを話し合って見直します。
次の面談の前に、下の子へ今困っている単元と教えてほしい内容を聞きます。上の子が良かったと言う点とは分けて書き留めます。面談には下の子の希望と答案を持参し、その内容に合う授業かを相談します。
よくある質問
上の子と同じ塾に下の子を入れると、下の子の成績は上がりますか。
今回の根拠には、同じ塾に通わせること自体で成績が上がるかを調べた研究はありません。Nicoletti ほか(2019)は学校の成績の波及を報告していますが、塾をそろえる効果を確かめたものではありません。上の子が良かったと言う内容を参考にしつつ、下の子の課題と合うかを確認します。教室への評価をそのまま引き継がず、下の子が必要な授業について尋ねます。
上の子と別の塾にすると、きょうだいの関係は悪くなりますか。
Feinberg ほか(2003)は、きょうだいの分化が争いを和らげる方法でありうるとしています。ただし、塾を分けた場合の家族関係を調べた研究ではありません。同じ教室と別の教室のどちらなら関係が良くなるかを、この結果だけで決めることはできません。下の子が希望する理由と、比べられることについての気持ちを聞き、選択とは別に困りごとがないかを確かめます。
同じ講師を希望すれば、下の子も同じように伸びますか。
Qureshi(2018)では、上の子が経験の長い教師に教わると下の子の点も上がりました。ただし、学校の教師についての研究で、同じ塾の講師に習わせた場合の結果ではありません。講師の経験年数だけで、下の子も同じように伸びるとは判断できません。上の子が助けられた説明の内容を参考にしながら、下の子の答案や希望に合わせた対応が可能かを相談します。
きょうだいで塾を比べないようにするには、どう声をかければよいですか。
今回の根拠には、塾の話題で比較を避ける声かけを検証した研究はありません。Feinberg ほか(2003)の結果も、具体的な言い方の効果を示したものではありません。家庭で試す案としては、上の子の評価を先に伝えず、下の子が学びたい内容を聞く方法があります。研究で有効と確かめた手順としてではなく、本人の希望を聞くための提案として使います。
この記事の限界
当てはめられるのは学校の成績、大学や学部の選択、思春期の家族関係についての結果です。上の子と下の子が同じ個別塾や講師を選ぶ効果を直接確かめた研究は、今回の根拠にはありません。英国の学校記録、複数の国の大学進学、米国の家族関係では成果も比較方法も違い、進学先が似る結果をテストの点が伸びる結果として扱うことはできません。
上の子の経験が伝わる可能性はあっても、日本の塾で教材や担当の継続が下の子に合うかは、今回の資料から判断できません。武蔵境で教室を選ぶ際には、下の子の希望を上の子への評価と切り離し、本人の目的と課題を確かめる作業が残ります。比べられることへのつらさが続くなら、講師や学校の先生に、それぞれの子が困っている具体的な場面を伝えて相談する必要があります。
参考文献
- Altmejd A ほか. O Brother, Where Start Thou? Sibling Spillovers on College and Major Choice in Four Countries. The Quarterly Journal of Economics. 2021;136(3):1831-1886.
- Feinberg ME ほか. Sibling Differentiation: Sibling and Parent Relationship Trajectories in Adolescence. Child Development. 2003;74(5):1261-1274.
- Nicoletti C ほか. Sibling spillover effects in school achievement. Journal of Applied Econometrics. 2019;34(4):482-501.
- Qureshi JA. Siblings, Teachers, and Spillovers on Academic Achievement. Journal of Human Resources. 2018;53(1):272-297.
通知表の数字の手前で止まっている一問から、講師と二人で始める。
- 向く人: 内申が気になり始めたのに、どの教科のどこで止まっているのかを、子も保護者も言葉にできていない中学生
- 向く人: 通塾の日だけ机に向かい、ほかの日の学習習慣が続かないことを、授業の中で一緒に組み直したい家庭
- 向かない人: 英検や内申の結果を、通う回数を増やすことだけで変えたいと考えている家庭
- 向かない人: 一人の講師と向き合うより、大勢と競い合いながら速い進度で先へ進みたい人
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よくある質問
上の子と同じ塾に下の子を入れると、下の子の成績は上がりますか。
今回の根拠には、同じ塾に通わせること自体で成績が上がるかを調べた研究はありません。Nicoletti ほか(2019)は学校の成績の波及を報告していますが、塾をそろえる効果を確かめたものではありません。上の子が良かったと言う内容を参考にしつつ、下の子の課題と合うかを確認します。教室への評価をそのまま引き継がず、下の子が必要な授業について尋ねます。
上の子と別の塾にすると、きょうだいの関係は悪くなりますか。
Feinberg ほか(2003)は、きょうだいの分化が争いを和らげる方法でありうるとしています。ただし、塾を分けた場合の家族関係を調べた研究ではありません。同じ教室と別の教室のどちらなら関係が良くなるかを、この結果だけで決めることはできません。下の子が希望する理由と、比べられることについての気持ちを聞き、選択とは別に困りごとがないかを確かめます。
同じ講師を希望すれば、下の子も同じように伸びますか。
Qureshi(2018)では、上の子が経験の長い教師に教わると下の子の点も上がりました。ただし、学校の教師についての研究で、同じ塾の講師に習わせた場合の結果ではありません。講師の経験年数だけで、下の子も同じように伸びるとは判断できません。上の子が助けられた説明の内容を参考にしながら、下の子の答案や希望に合わせた対応が可能かを相談します。
きょうだいで塾を比べないようにするには、どう声をかければよいですか。
今回の根拠には、塾の話題で比較を避ける声かけを検証した研究はありません。Feinberg ほか(2003)の結果も、具体的な言い方の効果を示したものではありません。家庭で試す案としては、上の子の評価を先に伝えず、下の子が学びたい内容を聞く方法があります。研究で有効と確かめた手順としてではなく、本人の希望を聞くための提案として使います。