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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年10月22日

授業中の落書きは集中の邪魔か|手を動かすことと記憶の研究

模試返却の日、答案と授業のノートを並べると、解き直した式の横に小さな絵が目に入ることがあります。説明を写した行の端には模様が続き、別のページには登場人物らしい顔と矢印が描かれています。親には同じ落書きに見えても、子に聞くと、話の整理に使った絵と、授業とは関係なく描いた絵が混じっているかもしれません。手を動かしていたことは、話を聞く邪魔だったのでしょうか。

この記事の要点
  • 印刷された図形を塗る行為と、自由に絵を考えて描く行為は、研究でも分けて扱われています。
  • 聞くだけの条件を上回った結果があっても、ノートを取る条件より役立つとは限りません。
  • 内容そのものを描く学習法と、授業に無関係な落書きでは、覚えようとしているものが違います。
  • 家庭では絵の有無を責めず、内容とのつながり、描いた時機、説明を思い出せるかを確かめます。

授業中の落書きは集中の邪魔か|手を動かすことと記憶の研究

模試返却の日、答案と授業のノートを並べると、解き直した式の横に小さな絵が目に入ることがあります。説明を写した行の端には模様が続き、別のページには登場人物らしい顔と矢印が描かれています。親には同じ落書きに見えても、子に聞くと、話の整理に使った絵と、授業とは関係なく描いた絵が混じっているかもしれません。手を動かしていたことは、話を聞く邪魔だったのでしょうか。

自由な落書きは記憶を妨げた実験があり、集中の助けとして一律には勧められませんが、覚える内容そのものを絵にする方法とは区別が必要です。 塗りつぶしで記憶が良くなった報告もあるため、絵があるというだけで授業態度を決めるのは早計です。武蔵境で学習支援を探すときにも、ノートの見た目だけでなく、どの説明を聞き、何を覚えているかを確認する観点が役立ちます。以下の実験の多くは大学生や大人を対象とし、子どもの授業を扱う研究はイランの中学生の報告に限られます。研究ごとの描き方と比較相手を見たうえで、家ではノートを子と開くところから始めます。

要点

  • 印刷された図形を塗る行為と、自由に絵を考えて描く行為は、研究でも分けて扱われています。
  • 聞くだけの条件を上回った結果があっても、ノートを取る条件より役立つとは限りません。
  • 内容そのものを描く学習法と、授業に無関係な落書きでは、覚えようとしているものが違います。
  • 家庭では絵の有無を責めず、内容とのつながり、描いた時機、説明を思い出せるかを確かめます。

塗りつぶしで覚えやすくなった実験の条件

Andrade(2010)は、40人が退屈な電話の録音を聞く課題で、印刷された図形を塗りつぶす人と、塗りつぶさない人を比べました。聞いているあいだには、話に出てくる参加予定者の名前を拾う作業をしました。塗りつぶした群は、その聞き取り課題の成績が良く、予告なしの記憶テストでも29%多く情報を思い出しました。ここで手を動かした内容は、用意された形の内側を塗る作業でした。

この結果を読む際には、好きな人物や風景を描いていた実験ではない点が大切です。何を描くか考え、形を選び、細部を描き足す自由な絵と、決まった形を塗る作業を同じ扱いにすると、家庭で試す行動が研究の条件から離れます。さらに、比べた相手が塗りつぶしをしない群だったことも押さえます。授業で必要なことを書き留める方法を上回った、という比較ではありません。

Andrade(2010)は、塗りつぶしがぼんやりした空想を減らすために役立つのかを、今後の研究で調べられると述べています。したがって、「手を動かすと空想が減る」という仕組みまで確定した結果として扱うのは不適切です。研究で観察した記憶の差と、その差が生じた理由の説明は分けて読む必要があります。保護者が取り出せるのは、特定の聞き取り課題と描き方の組み合わせで良い結果があった、という条件つきの知見です。

中学生の授業と大学生の比較をどう読むか

Tadayon と Afhami(2017)は、イラン・テヘランの12〜13歳の女子中学生の理科の授業で、白紙を配り、落書きをしてもよい状況を調べました。落書きをした27人と、しなかった27人を比べると、した群のほうが授業後の問題の成績は良好でした。ただし、どちらの行動をするかは子ども自身が選んでいます。くじ引きのように落書きの有無を割り当てた試験とは異なります。

この違いは、「成績が良かった」という言葉の受け止め方に関わります。本人の行動によって群が異なる場合、落書き以外の特徴も群のあいだで違っている可能性が残ります。落書きが好きかどうか、授業をどう受けているかといった違いを、単に群の成績を並べるだけで取り除くことはできません。そのため、この報告は授業での興味深い観察として読み、全員に落書きを始めさせる根拠にはしない扱いが妥当です。

Nayar と Koul(2020)は、インドの大学生が、聞くだけ、ノート取り、図形の塗りつぶしをそれぞれ経験する形で、思い出す成績を比較しました。塗りつぶしもノート取りも聞くだけの方法を上回りましたが、塗りつぶしとノート取りの差は実用上それほど大きくありませんでした。同じ人が異なる方法を行う比較であり、中学生が自分で落書きを選んだ研究とは組の作り方が違います。家庭で方法を選ぶ際にも、「何もしないより良かった」と「別の学習方法より良かった」を区別する読み方が必要です。

自由に描く絵とノート取りでは結果が異なる

Boggs ほか(2017)は、大学生93人を、何もしない、図形の塗りつぶし、自由な落書き、ノート取りの条件へ無作為に分けました。無作為とは、本人の好みなどで組が決まらないように割り当てることです。会話を聞いた後の穴埋めテストでは、自由な落書きの群は、塗りつぶしやノート取りの群より成績が低くなりました。自由に描くことを、単純な塗りつぶしの代わりとして扱えない理由がここにあります。

Spencer-Mueller と Fenske(2024)は、計222人が参加した実験で、講義を聞く際の落書き、ノート取り、聞くだけなどの条件を比べました。落書きによって退屈や上の空の状態が減ることはなく、注意や情報の記憶も向上しませんでした。注意とテスト成績が最も良く、退屈と上の空が最も少なかったのは、ノート取りに集中した群でした。この報告は、落書きをしていたかだけでなく、集中の助けとされる理由に対応した測定も行っています。

親子で話すときには、「描いていると楽に聞ける」という本人の感覚と、「説明をあとから思い出せる」という結果を別々に聞く方法が考えられます。楽に感じたという返事を否定する必要はありません。そのうえで、聞いた内容を説明してもらうと、本人の感覚だけでは見えなかった点も話題にできます。話を思い出すのが難しかった場合は、絵の量を責めるより、どの説明で手が止まらなかったのかを一緒にたどるほうが、次に変える行動を選びやすくなります。

内容を絵にする方法は、落書きと分けて考える

Wammes ほか(2016)は、覚える単語を絵に描く場合と、書き写す場合を7つの実験で比べました。絵に描いた単語のほうがよく思い出される結果が得られました。これが描画効果、つまり覚える内容そのものを絵にする学習法による記憶の利点です。授業とは別の好きな絵を描きながら話を聞く行為とは、絵が向いている対象が異なります。

Meade ほか(2019)は、学ぶ際の自由な落書き、図形の塗りつぶし、内容を描くこと、書くことを区別して比較しました。内容を描く場合が最もよく思い出され、塗りつぶしは書く場合と同程度で、自由な落書きでは思い出す量が最も少なくなりました。この比較は、「絵を描くと覚えやすい」という言葉の中に、異なる行動が入ってしまう問題を示しています。家でノートを見るときには、次のように描いたものと学習内容のつながりを整理できます。

ノートに残るもの 内容との関係を確かめる視点 研究を読むときの比較
決まった図形の塗りつぶし 形を埋める作業かどうか 塗らずに聞く場合や、ノート取りとの比較
好きな人物や風景の絵 授業の話題に結びつく絵かどうか 自由な落書きと、塗りつぶしやノート取りとの比較
覚えたいものを表す絵 何の意味を表した絵かを本人が説明できるか 内容を描く場合と、書く場合との比較
人物を結ぶ矢印や簡単な図 授業のどの説明に対応しているか 家庭で分類する際の手掛かり

絵の上手さより、何を表したかを聞く

人物の顔があるページなら、その顔が物語の登場人物なのか、授業と無関係な人物なのかを子に聞きます。矢印についても、何と何を結んだのか説明してもらいます。保護者の目だけで内容との関係を判定すると、本人が意味を込めた図を見落とすおそれがあります。ここでの目的は絵の出来を評価することではなく、学んだ内容に対応している部分を見つけることです。

描き込みや順番の記憶には注意が必要

Xie ほか(2026)は、落書きの仕方と退屈の強さを組み合わせた記憶課題で、退屈が強いと自由な落書きの群の成績が下がる結果を報告しました。絵が複雑で丁寧になるほど、思い出す課題の成績も下がりました。落書きをするかどうかに加え、どれほど描き込んでいるかも見落とせない観点です。家庭で見直すなら、細部を描いていた箇所と、聞き逃したと感じる説明が重なるかを本人に尋ねる材料になります。

Tindle と Longstaff(2016)は、聞いた単語を順番どおりに思い出す課題で、聞くだけの場合と、形を描きながら聞く場合を比べました。描きながら聞く条件では、思い出せる単語が減りました。著者は、手を動かすことだけでなく動かし方の種類によって、課題に使える注意の配分が変わると解釈しています。単純な動作に見えることだけを理由に、聞き取りの邪魔にならないと決めるのは避けたいところです。

Jonker ほか(2019)は、単語を描く場合と黙読する場合を比べ、個々の単語の記憶と、並んだ順番の記憶を分けて調べました。個々の単語は絵に描くと覚えやすくなりましたが、順番は黙読のほうが良好でした。何を覚えたかと、どの順で出てきたかでは、望ましい方法が違うという結果です。したがって、順序も覚える課題では、内容を描いているだけで目的を満たせたかどうかを、順番の説明まで含めて確かめる必要があります。

描き始めると絵を仕上げることが優先になり、話に戻るのが難しい子には、聞きながら自由に描く方法を勧めにくくなります。本人が聞き逃しを感じたときは、描く手を止める、絵を続ける時間を別にする、といった変更を相談します。描く楽しみを取り上げる話にせず、説明を聞く時間の使い方として話すのが要点です。書くのが遅い子の場合も、落書きをやめれば必要な内容をすべて書けると決めず、何を書き留めるかを学校の先生と相談する余地を残します。

家ではノートの絵と説明を照らし合わせる

まず、子が見せてもよいページを一緒に選び、授業内容に関係する絵や矢印を本人に指してもらいます。次に、関係のない絵について、説明を聞いていた最中か、問題を解き終えて待っていたときかを聞きます。描いた時機が違えば、同じページに絵があるという事実の意味も変わります。ノート全体を点検するより、本人が覚えている場面に絞るほうが、行動を具体的に話せます。

続いて、そのページで習ったことをノートを閉じて説明してもらいます。答え合わせでは、説明に必要な言葉や理由が出てきたか、順序が必要なら順序まで言えたかを見ます。これは家庭で学習状況を確かめるための手順で、落書きの効果を判定する研究用の検査とは区別します。思い出せなかった部分があれば、該当する説明を開き、次に聞くときに残したい言葉を子と選びます。

方法を変えてみるなら、家で短い説明を聞く場面で、自由な絵を描く代わりに内容に関係する言葉を残してみます。終えたら、聞きやすかったかという感覚と、何を思い出せたかを子と確かめます。題材の難しさや知っていた内容も違うため、その日の出来だけで「この子には落書きが必要」と固定しない扱いにします。うまく説明できなかった箇所を次の学習で扱えば、試したことを学び直しにつなげられます。

学校や塾に相談するときには、絵が多いという印象だけでなく、どの内容を思い出せなかったかを具体的に伝えます。先生が見ている授業中の様子と、家での説明を合わせれば、聞く場面と書く場面のどこを変えるか話し合えます。題名への答えは、自由な落書きには邪魔になる条件があり、集中の助けという説明だけで続ける方法にはしない、というものです。Spencer-Mueller と Fenske(2024)の計222人の実験でも、落書きによる注意や記憶の向上は見られず、最も良い成績を示したのはノート取りに集中した群でした。

よくある質問

落書きがあるだけで、話を聞いていないと判断できますか

絵が残っていることだけでは、描いていた時機も、聞き取った内容もわかりません。上の家庭での手順に沿って、授業内容を表した絵か、説明を聞く最中に描いたのかを確認します。本人に内容を説明してもらい、聞き逃した部分があればそこを扱います。ノートの見た目から子の態度を決めるより、何を理解し、何を補う必要があるかを話題にするほうが、次の学習の相談を具体的にできます。

集中できると本人が言うなら、そのまま続けてよいですか

本人の感じ方は聞きつつ、学んだ内容を思い出せるかも合わせて確かめます。ノート取りと比較した節で見たように、楽に聞くためのつもりの行動が、記憶の助けになるとは限りません。話を追えない、絵の続きが気になって説明を聞き逃すといった様子があれば、描く時機を分ける変更を相談します。本人の感覚を否定するためではなく、聞きやすさと学習の結果を両方確かめるための話し合いです。

授業内容の絵なら、どんどん増やしたほうがよいですか

絵の多さを目標にするより、覚えたいものを表しているかを確かめます。順番の記憶を扱った節のとおり、内容を思い出すことと、並びを正しく言えることは別の確認が必要です。描いた後に意味を説明し、順序が大切なら順序も言ってみます。絵を完成させることに時間を使い、必要な説明を追えなくなる場合は、描く量や時機を見直す対象になります。

この記事の限界

研究の対象者は大学生や大人が中心で、子どもの授業の報告はイランの女子中学生を対象にした比較です。その比較も本人が落書きを選んでおり、日本の小中高生が授業中に描く場合の効果を直接示すものではありません。

測定は録音や講義を聞いた後の記憶課題が中心で、学校の成績が長期にどう変わるかという問いは残ります。注意に特別な支援が必要な子にとって手を動かすことが役立つかも、この研究群の結果からは判断できません。授業を聞く困りごとが続く場合は、描いているときの様子と聞き逃した内容を学校の先生に伝え、本人に合う支援を相談する必要があります。

参考文献

  1. Andrade J. What does doodling do? Applied Cognitive Psychology. 2010;24(1):100-106.
  2. Tadayon M, Afhami R. Doodling Effects on Junior High School Students’ Learning. International Journal of Art & Design Education. 2017;36(1):118-125.
  3. Nayar B, Koul S. The Journey from Recall to Knowledge: A Study of Two Factors – Structured Doodling and Note-Taking on a Student’s Recall Ability. International Journal of Educational Management. 2020;34(1):127-138.
  4. Wammes JD, Meade ME, Fernandes MA. The drawing effect: Evidence for reliable and robust memory benefits in free recall. Q J Exp Psychol (Hove). 2016;69(9):1752-1776.
  5. Boggs JB, Cohen JL, Marchand GC. The effects of doodling on recall ability. Psychological Thought. 2017;10(1):206-216.
  6. Spencer-Mueller EK, Fenske MJ. Note-taking for the win: Doodling does not reduce boredom or mind-wandering, nor enhance attention or retention of lecture material. Q J Exp Psychol (Hove). 2024;77(8):1780-1796.
  7. Meade ME, Wammes JD, Fernandes MA. Comparing the influence of doodling, drawing, and writing at encoding on memory. Can J Exp Psychol. 2019;73(1):28-36.
  8. Xie L, Xu C, Gao R. Effects of Doodling Style, Boredom, and Sensation Seeking on Recall Tasks. Scand J Psychol. 2026;67(3):898-908.
  9. Tindle R, Longstaff MG. Fine motor movements while drawing during the encoding phase of a serial verbal recall task reduce working memory performance. Acta Psychol (Amst). 2016;164:96-102.
  10. Jonker TR, Wammes JD, MacLeod CM. Drawing enhances item information but undermines sequence information in memory. J Exp Psychol Learn Mem Cogn. 2019;45(4):689-699.

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よくある質問

落書きがあるだけで、話を聞いていないと判断できますか

絵が残っていることだけでは、描いていた時機も、聞き取った内容もわかりません。上の家庭での手順に沿って、授業内容を表した絵か、説明を聞く最中に描いたのかを確認します。本人に内容を説明してもらい、聞き逃した部分があればそこを扱います。ノートの見た目から子の態度を決めるより、何を理解し、何を補う必要があるかを話題にするほうが、次の学習の相談を具体的にできます。

集中できると本人が言うなら、そのまま続けてよいですか

本人の感じ方は聞きつつ、学んだ内容を思い出せるかも合わせて確かめます。ノート取りと比較した節で見たように、楽に聞くためのつもりの行動が、記憶の助けになるとは限りません。話を追えない、絵の続きが気になって説明を聞き逃すといった様子があれば、描く時機を分ける変更を相談します。本人の感覚を否定するためではなく、聞きやすさと学習の結果を両方確かめるための話し合いです。

授業内容の絵なら、どんどん増やしたほうがよいですか

絵の多さを目標にするより、覚えたいものを表しているかを確かめます。順番の記憶を扱った節のとおり、内容を思い出すことと、並びを正しく言えることは別の確認が必要です。描いた後に意味を説明し、順序が大切なら順序も言ってみます。絵を完成させることに時間を使い、必要な説明を追えなくなる場合は、描く量や時機を見直す対象になります。